PC短評
Xeon/Quadroや4Kディスプレイを搭載可能なモバイルワークステーション「ThinkPad P72」
2018年10月3日 06:00
レノボ・ジャパン株式会社の「ThinkPad P72」は、17.3型の液晶ディスプレイを搭載するモバイルワークステーションだ。本体サイズは約416×281×24.5~29.4mm(幅×奥行き×高さ)/重量約3.4㎏と重量級のノートで、税別直販価格は318,000円からとなっている。
17.3型の液晶ディスプレイは非光沢のIPSパネルを採用し、解像度は3,840×2,160ドット(4K)表示か、1,920×1,080ドット(フルHD)表示のいずれかが選択できる。
今回試用したモデルは4Kパネル搭載だ。筆者は高解像度が好みなので、100%表示のまま試用してみたが、広大な作業領域は複数のウィンドウを並べて使いたくなる気持ちよさだ。複数のアプリケーションを併用する場合や写真/動画編集の場合、威力を発揮するだろう。
ただ、このサイズのディスプレイで4K解像度となると、画面表示はかなり精細になり、文字などは細かすぎて読めない場合などもあるので、好みでスケーリングの設定を変更するなどして利用するのもいいだろう。
CPUは第8世代Xeon/Coreプロセッサが選択可能で、メモリは最大128GB(ECCメモリは最大64GBでXeonモデルのみ選択可能)、GPUにはQuadro P600/P2000/P3200/P4200/P5200から選択が可能で、ストレージは最大6TBまでとなっている。
今回の試用モデルでは、CPUに6コア/12スレッド、最大4.4GHz駆動のXeon E-2176Mを搭載、GPUにはGP104コアのQuadro P4200を備え、メモリ16GB、SSDは容量512GBのUnion Memory製NVMe SSD「AM6672」を搭載していた。
底面部は7本のネジを外すことで開けられる。開くと保護シートが取り付けられたM.2 スロット×2と、DDR4 SO-DIMMスロット×2にアクセスできる。今回の試用機のスロットを見ると、M.2が1基のみ使用されており、もう1基と、2基のメモリスロット×2は空いていた。
また、2.5型SATA SSDもカスタマイズで選択可能で、底面下部には2.5型SSDの収納スペースが用意されていた。ただし接続には専用コネクタが必要になるようで、後からユーザーが追加することはできなさそうだ。
インターフェイスは、背面にUSB 3.0、Thunderbolt 3×2、HDMI出力、DC IN、左側面にはUSB 3.0、右側面に音声入出力、SDカードリーダ、USB 3.0×2、Mini DisplayPort、Gigabit Ethernetを備える。USBが面ごとに用意されているので、USBの位置を気にすることなく自由に本体を設置できるのはありがたい。
バッテリ容量は8,550mAhで、最大約18時間駆動が可能。ACアダプタは230W出力のものが付属するが、かなり大型のため、本体と一緒に持ち運ぶには少々大きめの印象だ。なお、DC INの形状はThinkPad X1 Carbonなどと同じだが、これらを接続すると起動したままの状態では充電できない旨のメッセージが表示される。
キーボードは右側にはテンキーも配置しているフルサイズのものを搭載。暗闇などで利用する2段階のキーボードライトも備える。キーピッチは約19㎜を確保し、キータッチはやや硬めだが、それほど指への負担にはならず、それでいて押したことが実感できるクリック感があるなど、ThinkPadシリーズらしいキーボードとなっている。
ThinkPadブランドの象徴とも言えるTrackPointも備えており、同社製品を使い続けるユーザーなら安心して利用できるほか、設定でオン/オフも行なえるので、外付けマウスなどを使う場合にもTrackPointが邪魔にならないようになっている。
ディスプレイ上部には、カスタマイズで、Windows Hello対応のIRカメラ(HD720p対応)を搭載し、顔認証に利用できるほか、キーボード下部には指紋認証センサーを搭載する。いずれもロック解除などに使う際には何かのキー入力を行なうことなく、スムーズにロックが解除が行なえるので、かなり重宝する。
試用感
ThinkPad Pシリーズと言えば、3Dモデリングや映像制作など、かなり負荷が高い処理を行なうのに最適なパフォーマンスを発揮できる高スペックのワークステーションシリーズだ。P72はその最新モデルだが、CPUに第8世代のXeonが選択可能だったり、NVIDIAのワークステーション向けGPU、Quadroシリーズを選択して搭載できるなど、スペックでは妥協していない。
2017年発売の前モデルP71との比較では、30㎜以上あった厚みを抑えて30㎜未満となっている。実際に手に持った感じでは、閉じた状態で持ち運ぶさいに、持ちやすいことは実感できる。とはいえ、このクラスのノートでは、あまり厚みや重量は気にしないと思われるので、むしろ第8世代CPUが搭載可能になり、Coreシリーズ選択時であれば、最大メモリ容量が128GBに増えた点が1番のポイントだと言える。
GPUについては、前モデルと同じくPascal世代のQuadroシリーズが搭載可能。P3200以上を選択することで、VR READY認証を取得しているので、ノート単体でVR環境を構築し、VR向けソフトウェアの開発などにも利用できる。
本製品では、2つのファンを搭載し、CPUとGPUの状況に応じてリアルタイムに回転の制御を行ない、高い冷却性能と静音性を両立する「FLEX Performace Cooling」技術を備える。実際に使っていると、デスクトップを表示したり、ファイル操作をしているような状態ではほとんどファンは回転せず、かなり静かな状態だが、PCMark 10など、本体に負荷をかけ始めると段々とファンの音が大きくなってくるなど、きっちりと制御されている感じは伝わってくる。
パフォーマンスが売りとなる本製品でPCMark 10を走らせたところ、スコアは5,257と、かなり高スコアを出した。また今回はOpenGLのベンチマークとして、CINEBENCH R15も走らせたが、こちらもOpenGLで176.82fps、Single Coreで192、All Coreで1083とかなりの高パフォーマンスを発揮している。
個人的な考えだが、TrackPointが使えるゲーミングノートという観点からみれば、ThinkPad PシリーズかThinkPad X1 Extremeしか選択肢がないともいえる。ゲーミングノートは高額な製品が多いため、もしThinkPadブランドを愛用している人がゲーミングノートの購入を検討しているなら、ちょっと割高になるが、思い切ってPシリーズを選択するというのもアリかもしれない。