福田昭のセミコン業界最前線
SSD世界出荷台数は過去6年で約12倍に急成長
~日本HDD協会2017年1月セミナーレポート(SSD編)
2017年2月23日 16:25
ハードディスク装置(HDD)関連の業界団体である日本HDD協会(IDEMA JAPAN)は今年(2017年)の1月27日に「2017年の業界動向 クラウド、フォグの中でHDDが果たす役割とは……」と題するセミナーを開催した。その中で市場調査会社テクノ・システム・リサーチのシニアディレクターを務める馬籠敏夫氏が、「2016年のHDD市場を振り返りながら2017年以降を展望する」と題して講演した内容をご紹介する。HDD市場に関する講演部分については既報でご報告した。今回はSSD市場に関する講演部分をレポートする。
なお、本セミナーの講演内容は報道関係者を含めて撮影と録音が禁止されている。本レポートに掲載した画像は、講演者と日本HDD協会のご厚意によって掲載の許可を得たものであることをお断りしておく。
昨年のSSD出荷台数は前年比17.1%増の1億845万台と推定
SSDの年間出荷台数(世界市場)は2009年以降、急激に増加してきた。昨年(2016年)の出荷台数は前年比17.1%増の1億845万台と推定した。2010年以降、7年連続の2桁成長である。2010年にSSDの年間出荷台数は880万台だったので、この6年間で12.3倍と急激に増加したことになる。そして2016年は初めて、年間の出荷台数が1億台を突破した年でもある。
出荷台数を用途別に見ると、PC向けが6,580万台で最も多く、全体の6割(60.7%)を占める。次いで後付け(アドオン)向けが2,750万台と多い。それからエンタープライズ向けが1,120万台である。産業・その他向けは395万台とまだ少ない。
今年のSSD出荷台数は前年比16.2%増の1億2,600万台と予測
今年のSSD年間出荷台数(世界市場)は、前年比16.2%増の1億2,600万台と予測した。8年連続の2桁成長となる可能性が高い。
出荷台数の予測値を用途別に見ると、PC向けが前年比21.6%増の8,000万台で、昨年と変わらず、最も多い。全体の63.5%を占める。エンタープライズ向けは同16.1%増の1,300万台、後付け(アドオン)向けは同5.5%増の2,900万台と予測した。産業・その他向けは同1.3%増の400万台とわずかな成長にとどまる。
縮小するHDD市場と膨張するSSD市場
SSDの出荷台数とHDDの出荷台数の比率(SSD/HDD)は、2010年にはわずか1%に過ぎなかった。それが2016年には、25%に達している。出荷金額の比率はもっと近く、47%に達した。SSDの市場規模(金額ベース)は既に、HDDの半分近くにまで成長している。2016年の推定値は119億7,500万ドルである。
総出荷記憶容量はHDDが632.60EB(エクサバイト)と膨大であるのに対し、SSDは36.04EBとまだ少ない。両者には約17倍の開きがある。依然としてHDDが、情報処理を担うストレージの主役として君臨していることが分かる。
1台当たりの記憶容量(平均記憶容量)はHDDが1,485.8GB、SSDが332.3GBである。記憶容量当たりの価格(GB単価)は、HDDが0.040ドルと低く、SSDが0.332ドルと高い。まだ8.3倍の差がある。平均単価はHDDが59.4ドル、SSDが110.4ドルとSSDが2倍近く高い。
SSDベンダーのトップはSamsungで台数の4割強を占める
SSD市場(台数ベース)をベンダーごとに順位付けすると、Samsung Electronicsが他社を圧倒してトップに君臨している。いずれも2015年のデータだが、Samsungのシェアは42.6%である。2位はSanDisk(現在はWestern Digitalの傘下)で、10.6%を占める。その後はKingston Technologyが9.2%、Intelが7.3%、Micron Technologyが5.5%、Lite-ON Technologyが5.1%、東芝が4.6%と続く。2位以下は群雄割拠状態にある。
2015年のSSD出荷台数をPC向けに限ると、ここでもSamsungが断トツである。市場占有率(シェア)は56.2%で半分を超える。2位はSanDiskで12%、3位は東芝で6.0%、4位はLite-ONで5.3%と続く。
2015年のSSD出荷台数をエンタープライズ向けで見ると、Intelが強い。エンタープライズ向けの約3割、29.8%を占める。2位はSamsungで、シェアは26.3%である。3位はHGST(Western Digitalの傘下)。シェアは13.5%である。これら3社でエンタープライズ向け全体の7割を占める。
数量はPC向け、金額はエンタープライズ向けが最大市場
なおSSD市場を台数ベースではなく、金額ベースでみると様相がやや違ってくることに注意されたい。上記の図表に詳しく数値が掲載されているが、2015年の用途別最大市場はPC向けではなく、エンタープライズ向けである。エンタープライズ向けの市場規模(金額ベース)は47億380万ドル、PC向けの市場規模は38億6,230万ドルとなっている。市場全体の金額は108億7,440万ドルなので、エンタープライズ向けは43%、PC向けは35%を占める。
数量と金額の逆転は、SSDの価格が2つの用途で大幅に異なることによる。SSDの平均単価はPC向けが69.1ドルであるのに対し、エンタープライズ向けは612.0ドルと9倍近くも高い。
従って金額ベースのSSDベンダーランキングは、数量ベースのランキングとはかなり違う。トップはSamsungで数量ベースと変わらないものの、2位はIntel、3位はSanDiskであり、エンタープライズ向けに強いIntelが金額ベースではSanDiskを抜いている。そして4位はなんとHGSTである。HGSTはPC向けSSDの製品はなきに等しく、ほぼ全てがエンタープライズ向けと言って良い。
3D NANDフラッシュの出荷数量でもSamsungがほぼ独走
SSDの記憶素子であるNANDフラッシュメモリの出荷動向にも、講演ではふれていた。昨年(2016年)第4四半期(10月~12月期)のNANDフラッシュメモリの出荷数量(世界市場)は21億3,564万個(300mmウェハ1枚から520個のシリコンダイを出荷すると仮定して換算)と推定した。
21億個強のNANDフラッシュメモリをメーカー別に見ると、東芝-SanDisk連合が最も多くて7億6,440万個、次いでSamsungの6億3,024万個、そしてIntel-Micron連合の4億1,652万個、最後にSK Hynixの3億2,448万個となっている。
記憶容量と製造技術によって分類した内訳は、記憶容量が64Gbit以下のプレーナチップ、記憶容量が128Gbitのプレーナチップ、記憶容量が256Gbitの3D NANDチップの3種類である。
注目の3D NANDチップの出荷数量は1億5,794万個で、全体の約21億個に比べると7.4%とまだわずかだ。メーカー別ではSamsungの出荷数量が9,463万個と独走しており、3D NANDチップ全体の60%を占める。Samsungに続くのは東芝-SanDisk連合で3,822万個、さらにIntel-Micron連合が2,009万個である。SK Hynixの出荷数量は500万個とまだわずかだ。
NANDフラッシュの不足状態は2017年6月までは継続
まとめとして、SSD市場とSSD産業の構造は、2017年以降は新しい段階に入ると指摘していた。2010年~2016年は、ストレージ市場においてHDDを置き換えること(HDDと互換のフォームファクタとインタフェース)によってSSDは市場を拡大してきた。2017年以降はHDDの置き換えに加え、独自のフォームファクタと独自のインタフェースを備えたSSDが市場の拡大を牽引するようになる。
また当面の懸案事項であるNANDフラッシュメモリの不足状態は、当初の見込みよりも改善が先延ばしになりつつある。メモリユーザーにとって最も楽観的なシナリオは、品不足が続くのは2017年3月までというものだった。しかしここにきて3月末の需給緩和は無理であり、品不足の状況は2017年6月、さらには2017年12月まで続くというシナリオが浮上してきた。NANDフラッシュメモリの需給がタイトな状況は、予想外に長引くかもしれない。