福田昭のセミコン業界最前線
HDD世界出荷台数は過去6年で約3分の2に減少
~日本HDD協会2017年1月セミナーレポート(HDD編)
2017年2月21日 13:45
HDD関連の業界団体である日本HDD協会(IDEMAJAPAN)は1月27日に「2017年の業界動向 クラウド、フォグの中でHDDが果たす役割とは…」と題するセミナーを開催した。
毎年1月に開催されるこのセミナーでは、ストレージ市場を展望する講演が恒例となっている。今年は市場調査会社テクノ・システム・リサーチのシニアディレクターを務める馬籠敏夫氏が「2016年のHDD市場を振り返りながら2017年以降を展望する」と題して、HDD市場とSSD市場について講演した。馬籠氏はストレージ業界ではベテランのアナリストとして知られており、その市場分析は高く評価されている。
講演ではまずHDD市場の分析結果を説明し、次にSSD市場の分析結果、そしてストレージを利用するPC市場やエンタープライズ市場などの分析結果を解説していた。本編では、HDD市場に関する講演内容をご紹介する。
なお、本セミナーの講演内容は報道関係者を含めて撮影と録音が禁止されている。本レポートに掲載した画像は、講演者と日本HDD協会のご厚意によって掲載の許可を得たものであることをお断りしておく。
昨年のHDD出荷台数は前年比9.2%減の4億2,575万台と推定
HDDの年間出荷台数(世界市場)は、2010年に6億5,140万台でピークを迎えてから、減少傾向が続いてきた。昨年(2016年)の出荷台数は、前年比9.2%減の4億2,575万台と推定した。2年連続のマイナス成長である。ピーク時点から比べると、2億2,500万台強の減少で、台数の比率では約3分の2(65%)に減少したことになる。
出荷台数を製品種別ごとに見ていこう。エンタープライズ向け、ニアライン向け、3.5インチATA向け(3.5インチ型)、2.5インチのモバイル向け(2.5インチ型)、1.8インチ型に分けている。
昨年(2016年)の推定出荷台数はエンタープライズ向けが前年比24.5%減の2,421万台、ニアライン向けが同15.7%増の4,300万台、3.5インチ型が同12.7%減の1億4,049万台、2.5インチ型が同8.6%減の2億1,805万台、1.8インチ型がほぼゼロ、である。ニアライン向けが増加しているほかは、全ての製品種別で出荷台数が減少した。
今年のHDD出荷台数は前年比4.2%減の4億770万台と予測
今年(2017年)のHDD年間出荷台数(世界市場)は前年比4.2%減の4億770万台と予測した。減少幅は縮まるものの、減少傾向は今年も続く製品種別ごとでは、エンタープライズ向けが前年比0.9%減、ニアライン向けが同5.1%増、3.5インチ型が同7.5%減、2.5インチ型が同4.4%減である。増減の幅は小さくなるものの、ニアラインが増加し、そのほかが減少するという図式は変わらない。
SeagateとWDグループで市場の8割を占める
HDD市場をメーカー別ブランドで見ると、Seagate (Seagate Technology)、WD (Western Digtal)、HGST (Western Digitalの傘下で別ブランド)、東芝の4つに分かれる。台数ベースの市場占有率(シェア)はおおむね、Seagateが35%、WDが30%、HGSTが15%、東芝が20%という割合になっている。
製品種別ごとにブランドの強さ(出荷台数)を見ていくと、エンタープライズ向けではSeagateが強い。ニアライン向けではSeagate、WD、HGSTの3者がほぼ横並びとなっている。3.5インチ型ではSeagateとWDがトップ2を形成する。2.5インチ型ではWDが強く、Seagateが続く。なお東芝は、出荷台数ベースでは2.5インチ型を主体にHDD事業を展開している。
ギガバイト単価は年率20%で減少中
2015年から2017年のHDD市場全体を概観すると、出荷金額は2015年が275億7,700万ドルで、2016年は前年比8.3%減の253億1,000万ドルと推定した。2017年は、同3.4%減の244億6,200万ドルになると予測する。
出荷台数と出荷金額の推移から分かるのは、平均単価のわずかな上昇である。2015年の平均単価は58.8ドルだった。2016年の平均単価は59.4ドルと推定する。2017年の平均単価は60.0ドルに上昇すると予測する。
総出荷記憶容量は、2015年が535.8EB(エクサバイト)である。2016年は前年比18.1%増の633EBと推定した。2017年は同19.5%増の756EBと予測する。出荷台数が減少しているにも関わらず、総出荷記憶容量は20%近い拡大が続く。これを支えるのが、1台当たりの記憶容量(平均記憶容量)の著しい増大である。2015年には平均記憶容量は1,142.8GB(ギガバイト)であったのに対し、2016年の推定値は30.0%成長の1,485.8GBとなった。2017年は24.8%成長の1,854.3GBと予測する。
そして記憶容量当たりの価格は、依然として速いペースで減少する。ギガバイト単価(1GB当たりの価格)は2015年が0.051ドルだった。これが2016年には前年比21.6%減の0.040ドルに低下したと推定した。2017年は、同20.0%減の0.032ドルに減少する。
HDDの最大用途は依然としてPC向け
昨年のHDD市場(出荷台数)を用途別に見ると、PC向けが1億9,700万台で46%を占める。依然としてPC向けがHDDの最大用途であり、半分近くを占めていることが分かる。PC向けが用途別の台数で最大分野であることは、今後も変わらない。今年(2017年)のPC向け出荷台数は1億8,450万台と予測。台数は前年比6.3%減である。HDDの出荷台数全体に占める割合は45%で、前年とほぼ同じである。
HDD市場とHDD産業に関してはこのほか、3社に収斂したHDDメーカーはいずれも、SSD事業も手がける総合ストレージ企業になっていること、HDDの部品メーカーと材料メーカーの淘汰が今後は進むこと、クラウドコンピューティングやIoT、人工知能(AI)、4K/8Kの超高精細ビデオなどが大容量ストレージの需要を牽引すること、などを指摘していた。
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