西川和久の不定期コラム

日本HP「Pavilion 11-k000 x360」

~Braswellを搭載し液晶が360度回転する11.6型ノートPC

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は7月8日、2015年夏モデルを発表した。その中で、Braswellを搭載し液晶が360度回転する11.6型ノートPC「Pavilion 11-k000 x360」が編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

BraswellなCeleronを搭載

 少し前にBraswellなCeleron N3150を搭載したマザーボードASRock「N3150B-ITX」をご紹介したが、ノートPCとしては初なので、改めてBraswellについて簡単に説明したい。

 BraswellはBay Trail-Mの後継で(対してBay Trail-Tの後継はCherry Trail)、Intelのサイトによると現在、Celeron N3000、Celeron N3050、Celeron N3150、Pentium N3700と、4種類ある。コア数はN3000/N3050が2つ、N3150/N3700が4つ。クロックは順に最大2.08/2.16/2.08/2.40GHz。N3000とN3150は最大クロックが同じ2.08GHzだがコア数が違うわけだ。

 CPUに関してはBay Trail-Mと比較してコア数とクロック数はSKUによって凹凸があり一長一短。しかし、対応メモリがDDR3L-1333(一部1066)かDDR3L-1600の違いがあるため、同コア数同クロック数であればBraswellの方が優位となる。

 一方内包するGPUは、同じIntel HD Graphicsでも、EU数はCeleronが12、Pentiumが16と増え、H.265の4K/30fpsのデコード、H.264の4Kエンコード、3画面同時出力対応など、大幅に拡張され、Bay Trail-Mとは比較にならないほどパワーアップしている。

 今回手元に届いた「Pavilion 11-k000 x360」は、Celeron N3050を搭載したノートPCだ。主な仕様は以下の通り。

【表】日本HP「Pavilion 11-k000 x360」の仕様
プロセッサCeleron N3050(2コア2スレッド、クロック 1.6GHz/2.16GHz、キャッシュ2MB、TDP/SDP 6W/4W)
メモリ4GB/DDR3L-1600
ストレージSSHD(ハイブリッドHDD) 500GB
OSWindows 8.1 Update(64bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics、HDMI
ディスプレイ11.6型1,366×768ドット(光沢あり)、10点タッチ対応
ネットワークEthernet、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0
インターフェイスUSB 3.0×2、USB 2.0、SDカードスロット、音声入出力、92万画素Webカメラ
サイズ/重量306×208×21.5~23mm(幅×奥行き×高さ)/約1.46kg
バッテリ駆動時間最大約6時間15分(2セル)
カラーバリエーションサンセットレッド、 ミンティグリーン
店頭予想価格7万円前後

 プロセッサは、Celeron N3050。2コア2スレッドで、クロックは1.6GHzから最大2.16GHz。キャッシュは2MB、TDP/SDPは6W/4Wとなる。ファンレスなのも見逃せないポイントだ。メモリは4GB/DDR3L-1600。ストレージはSSHDで500GBを搭載している。OSは64bit版のWindoows 8.1 Update。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵、Intel HD Graphics。外部出力用としてHDMIを備えている。液晶ディスプレイは、光沢ありの11.6型1,366×768ドット。10点タッチ対応だ。

 インターフェイスは、Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0、USB 3.0×2、USB 2.0、SDカードスロット、音声入出力、92万画素Webカメラ。有線LANがGbEでないのは残念であるが、IEEE 802.11acに対応している上、必要であればUSB 3.0で拡張可能。目くじら立てるほどでも無い。USBの電源オフ時の給電には対応してないようだ。

 本体サイズは306×208×21.5~23mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.46kg。このクラスとしては標準的だろう。2セルのバッテリを内蔵し、バッテリ駆動時間は最大6時間15分。カラーバリエーションはサンセットレッドとミンティグリーンの2色用意されている。

 本機最大の特徴は、パネルが360度回転し、クラムシェルモード、スタンドモード、テントモード、タブレットモードと、4つのモードに変身できること。前回のレノボ「Lenovo FLEX 3」も同タイプだったが、流行っているのだろうか。

 店頭予想価格は7万円前後。「Lenovo FLEX 3」がBay Trail-M/2GB/HDD 500GBで約5.5万円(ただしクーポンを適応するとさらに安くなる)。Braswell/4GB/SSHD 500GBでこの価格差は少し高いように思えてしまうのがやや残念である。

前面。液晶パネル中央上に92万画素Webカメラ。パネルのフチが少し太め
斜め後ろから。淡いグリーン、中央にロゴと、これはこれでなかなかお洒落
底面。左右のメッシュの下にスピーカー。メモリやストレージにアクセスできる小さいパネルはない。バッテリは内蔵で着脱できない
左側面。電源ボタン、ロックポート、USB 2.0、SDカードスロット、音量±ボタン、HDDアクセスLED
キーボードはアイソレーションタイプ。タッチパッドは1枚プレート型
右側面。電源入力、Ethernet、USB 3.0×2、Windowsボタン、音声入出力
スタンドモード
テントモード
タブレットモード
キーピッチは実測で約19mm。主要部分ほぼ全てのピッチが同じなので扱いやすい
付属のACアダプタ。約95×40×25mm(幅×奥行き×高さ、突起物、ケーブル含まず)/189g
重量は実測で1,469gと仕様通り

 筐体はパステルカラーのグリーンで覆われ、キーボードとパームレスト部分のみブラック。あまり見かけない組合せだが、これはこれでなかなか可愛いくお洒落。サンセットレッドも気になるところ。持った時の印象は軽くもなく重くもなく、見た目とのバランスが一致しているようだ。

 フロントは液晶パネル中央上に92万画素Webカメラ。ただパネルのフチが少し太めで、この点だけ個人的には残念。左側面に電源ボタン、ロックポート、USB 2.0、SDカードスロット、音量±ボタン、HDDアクセスLED。右側面に電源入力、Ethernet、USB 3.0×2、Windowsボタン、音声入出力を配置。裏は手前左右にスピーカー用のスリットがある。付属のACアダプタはサイズ約9.5×4×2.5cm(突起物、ケーブル含まず)、重量189g。

 光沢ありの11.6型液晶パネルは、IPS式でないため、視野角は広くない。明るさや発色、コントラストは、前回の「Lenovo FLEX 3」と同程度だろうか(若干彩度が高め)。価格的にもうワンランク上のパネルが欲しいところか。10点タッチに関しては問題無く操作できる。

 キーボードはアイソレーション型だ。キートップがザラザラしており、少し珍しいタイプとなっている。キーピッチは主要キーのほとんどの部分で約19mm確保され、たわむこともなく良好。タッチパッドは物理的なボタンの無い1枚プレートタイプで十分な面積が確保されている。クリックもいい感じだ。

 ファンレスなのでノイズはなく、振動も特に感じないものの、ベンチマークテストなど負荷をかけると、パームレストの部分はほとんど変わらないが、裏全体の温度が少し上がり暖かくなる感じだ。

 サウンドはパワーがあり最大にしても歪まず、中域中心でバランスの良くふくやかな音質だ。どちらかと言えば、過去にHPが採用した低域重視のBeas Audioとは明らかに傾向が異なっている。

SSHDと4GBメモリで比較的軽い作動

 OSは64bit版Windows 8.1 Update。メモリ4GBでSSHDを搭載しているため、後述するベンチマークテストの結果から得られるイメージより、実際は少し速く作動する感じだ。正直、前回掲載した「Lenovo FLEX 3」(Celeron N2840/2GB/HDD 500GB)と比較するとサクサク感がかなり異なる。powercfg/aで確認したところ、InstantGoには未対応だった。

 初期起動時のスタート画面は、「スタート画面にタイルを縮小して表示ON」にした状態で2画面。HPアプリ以降がプリインストールとなるが、「HPに登録」や「マカフィーセントラル」などが1画面目の第1ブロックに入っている。デスクトップは壁紙の変更と、「Booking.com」、「Connected Photo」、「Evernote」、「マカフィーリブセーフインターネット」のショートカットを配置している。

 ストレージは500GB/5,400pm/64MBだが8GBのSSD/MLCを搭載しているSSHDの「ST500LM000」を採用。C:ドライブとD:ドライブの2パーティション構成で、実質システムとユーザーが使えるのはC:ドライブ。約446GBが割当てらて空きは421GBだ。

 EthernetはRealtek製、Wi-FiはIntel Dual Band Wireless-AC 3160。BluetoothもIntel製だ。方向センサーなども搭載している。

スタート画面1。ほぼWindows標準だが、「HPに登録」や「マカフィーセントラル」などが1画面目の第1ブロックに配置されている(スタート画面にタイルを縮小して表示ON)
スタート画面2。HPアプリ以降がプリインストール
起動時のデスクトップ。壁紙の変更といくつかのショートカット。またHP 3D DriveGuardやHP CoolSenseも常駐している
デバイスマネージャー/主要なデバイス。ストレージは500GB/5,400pm/64MBで8GBのSSD/MLCを搭載しているSSHD「ST500LM000」。EthernetはRealtek製、Wi-FiはIntel Dual Band Wireless-AC 3160。BluetoothもIntel製
C:ドライブとD:ドライブの2パーティション構成。それぞれ約446GBと18.57GBが割り当てられている

 プリインストールのソフトウェアは、「HP Connected Photo」、「HPに登録」、「mysms」、「The Weather Channel for HP」、「TripAdvisor」、「Windows 8入門」、「マカフィーセントラル」など。ほとんど以前から搭載しているものばかりだ。

アプリ画面1
アプリ画面2
アプリ画面3
HPに登録
Windows 8入門

 デスクトップアプリは、「HP AC Power Control」、「HP Documentation」、「HP Recovery Manager」、「HP Recovery Media Creation」、「HP Support Assistant」、「B&O Play」、「YouCam 5」、「Media Suite」、「PhotoDirector」、「Power Media Player 12」、「PowerDirector」、「Power2Go」、「PowerBackup」、「7-Zip File Manager」、「Desktop Burning Gadget」、「Evernote」、「Foxit PhantomPDF」、「ISO Viewer」、「Virtual Device」、「HP SimplePass」、「マカフィーリブセーフインターネットなど。ストレージの容量が多いこともあり、いろいろな種類のアプリが入っている。

 またアプリ画面には無いが、同社お馴染みの「HP 3D DriveGuard」や「HP CoolSense」も組み込まれている。

 この中でB&O Playは目新しいアプリだ。これまでHPはBeas Audioを採用していたが、ご存じのようにAppleがBeas Audio買収したため、Bang & Olufsenに切替えたのだと思われる。個人的にはどちらかと言えばこちら(B&O)の方が好みだったりする。

HP AC Power Control
HP Recovery Manager
B&O Play

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(2コア2スレッドで条件的には問題ない)。なおASRock「N3150B-ITX」(Intel Celeron N3150/4GB/SSD)のスコアをカッコ内に並記した。

 winsat formalの結果は、総合 3.9(4.8)。プロセッサ 4.9(6.5)、メモリ 5.9(5.9)、グラフィックス 3.9(5.2)、ゲーム用グラフィックス 4.3(4.8)、プライマリハードディスク 5.9(7.45)。ただし64bit版の場合、搭載メモリの関係からスコアが制限され最大5.9となっている(Celeron N3150も同様)。winsatで生成されるXMLのメモリBandwidthは、6685.68026(10943.10734)MB/sだった。

 PCMark 8 バージョン2のHomeは1137(1468)。CrystalMarkは、ALU 14423(27304)、FPU 12168(23672)、MEM 15599(26836)、HDD 16112(24740)、GDI 4086(5124)、D2D 3131(3771)、OGL 3243(3885)。参考までにGoogle Octane 2.0は3,785(4,024)。

 同じBraswellなCeleronでも、2コアか4コアでかなりの差が出ている。またメモリは4GB×1でシングルなのだろうか。2GB×2の4GB構成になっているCeleron N3150と比較して半分近い値だ。

 PCMark 8 バージョン2のHome/詳細では、プロセッサの温度が取れていない。クロックも定格の1.6GHz固定になっているが、タスクマネージャでは最大2.16GHzまで振れているので、単にどちらも値が取れていないと思われる。

 BBenchは、省電力、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残7%で22,323秒/6.2時間。ほぼ仕様通りとなった。

winsat formalコマンドの実行結果は総合 3.9。プロセッサ 4.9、メモリ 5.9、グラフィックス 3.9、ゲーム用グラフィックス 4.3、プライマリハードディスク 5.9
PCMark 8 バージョン2のHomeは1137
PCMark 8 バージョン2のHome/詳細。プロセッサの温度が取れていない。またクロックもタスクマネージャでは最大2.16GHzまで振れているので、単にどちらも値が取れていないと思われる
BBench。省電力、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果。バッテリの残7%で22,323秒/6.2時間
CrystalMark。ALU 14423、FPU 12168、MEM 15599、HDD 16112、GDI 4086、D2D 3131、OGL 3243

 以上のようにPavilion 11-k000 x360は、BraswellのCeleronを採用し、液晶パネルが360度回転する11.6型のノートPCだ。メモリ4GBでSSHD 500GBと言うこともあり、結構サクサク作動する。サウンドもクオリティが高く、仕様の範囲内では特に気になる部分もない。

 価格的に少し高めな気がしないでもないが、Braswell/ファンレスでお洒落なノートPCを探しているユーザーにお勧めの1台と言えるだろう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/