西川和久の不定期コラム

TSUKUMO「N140J-710A/E」

~SSDに加えHDDを増設できるUltrabook

 株式会社Project Whiteは4月18日、TSUKUMOのeX.Computerシリーズとして初のUltrabookを発売した。Core i7+SSD 256GBとCore i5+SSD 128GBの2モデルがラインナップされ、その上位モデルが編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

ポイントをおさえたオーソドックスな設計+秘密のプラスα

 同社のサイトを見ると、これまでのノートPC(ゲームノートPCと言う別カテゴリもある)は15.6型が主で、プロセッサにCore i5/i7、ストレージにSSD、グラフィックスにGeForce GT 650Mなど、どちらかと言えばハイエンド寄りのモデルとなっていた。

 そこへ今回、同社としては初となるUltrabookを投入。14.1型で薄くて軽く、オーソドックスながら、一風変わった特徴もあるモデルだ。主な仕様は以下の通り。

TSUKUMO「N140J-710A/E」の仕様
プロセッサCore i7-3537U(2コア/4スレッド、2.0GHz/Turbo Boost 3.1GHz、キャッシュ4MB、TDP 17W)
メモリ4GB(PC3-12800 DDR3 SODIMM)、1スロット(空き0)、最大8GB
チップセットIntel HM76 Express
SDD256GB
OSWindows 7 Home Premium(64bit)
ディスプレイ14.1型液晶ディスプレイ(非光沢)、1,366×768ドット、ミニD-Sub15ピン
グラフィックスIntel HD Graphics 4000
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0
その他USB 3.0×1、USB 2.0×2、130万画素Webカメラ、SDカード/メモリースティックスロット、音声入出力
サイズ/重量333×229.5×19mm(幅×奥行き×高さ)/約1.6kg
バッテリ駆動時間最大約6時間
価格84,980円

 プロセッサはCore i7-3537U。2コア/4スレッドでクロックは2.0GHz。Turbo Boost時3.1GHzまで上昇する。チップセットはIntel HM76 Express。メモリは4GB。OSは64bit版Windows 7 Home Premiumだが、Windows 8も選択可能だ。SSDは256GB。大容量データをローカールで扱わない、通常用途ならこの容量であれば不足することもないだろう。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000。外部出力としてミニD-Sub15ピンを装備する。HDMIやDisplayPortなどデジタル系の出力がないのは残念なところ。液晶パネルは非光沢の14.1型で解像度は1,366×768ドットだ。

 ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetooth 4.0にも対応している。

 その他のインターフェイスは、USB 3.0×1、USB 2.0×2、130万画素Webカメラ、SDカード/メモリースティックスロット、音声入出力。先のGigabit Ethernetも含めUSB 3.0も搭載しているので、転送速度がボトルネックになることもなく、Ultrabookとして安価なモデルながらポイントを押さえている。

 本体サイズは約333×229.5×19mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.6kg。バッテリ駆動は最大約6時間。価格は84,980円。BTOでは、OS、Micrsoft Officeの有無、セキュリティソフトウェア、メモリ容量(4/8GB)、SSD容量(128/256GB)などの選択が可能だ。

 下位モデルの「N140J-500A/E」は、プロセッサをCore i5-3337U(1.8G)、SSDを128GBへ変更し、69,980円となる。

 なお、BTOで注文すると、先着でDVDスーパーマルチドライブが無償プレゼントされる。

前面。上部中央に130万画素Webカメラ。液晶パネル下側のフチが少し広めだ
斜め後ろから。バッテリは内蔵で交換できない。シンプルなデザインだ
底面。1枚のパネルで覆われ、ストレージやメモリへアクセスできる小さいパネルはない
左側面。ミニD-Sub15ピン、USB 2.0×2、SDカード/メモリースティックスロット
キーボード。アイソレーション式。タッチパッドの手前にインジケータ系LEDを配置
右側面。電源、Gigabit Ethernet、USB 3.0×1、音声入出力
キーピッチは実測で約19mm
ACアダプタのサイズは105×44×30mm(同)、重量は212g。コネクタはメガネタイプ
重量は実測で1,515g

 天板はアルミ素材、筐体はヘアライン処理された渋いシルバー系のクラウド・ブルーと呼ばれる色が使われ、落ち着いた雰囲気を醸し出し、安っぽい雰囲気は皆無だ。重量は実測で1,515gとUltrabookとしては若干重いが、十分持ち運び可能な範囲だろう。

 上中央に130万画素Webカメラがあり、液晶パネル下側のフチが少し広め。裏は1枚のパネルで覆われ、ストレージやメモリへアクセスできる小さいパネルはない。左側面はミニD-Sub15ピン、USB 2.0×2、SDカード/スティックスロット。右側面は電源入力。Gigabit Ethernet、USB 3.0×1、音声入出力を配置している。バッテリは内蔵で交換できない。ACアダプタは、サイズ105×44×30mm(同)、重量212g。コネクタはメガネタイプになっている。

 液晶パネルは非光沢で映り込みが少なく、目に優しい。ただしIPS式と比較すると視野角は狭く、少し角度が付くとかなり発色が変わってしまう。クオリティはクラス相応と言ったところか。

 パームレストは余裕があり、タッチパッドの面積も十分広いので操作しやすい。ボタンは左右が傾く1本バータイプだ。

 キーボードはアイソレーションタイプで主要キーのキーピッチは約19mm。一部ピッチが狭いキーもあるが、特に気になる程でもない。中央を強く押すと若干たわむものの、筆者的には許容範囲だ。

 熱や振動、ノイズに関しては、試用した範囲では問題ないレベルに収まっている。サウンドは、可もなく不可もなくノートPCとしては一般的。最大出力は十分とまでは言えないが、それなりの音量だ。

 これらから分かるように、全体的に際立った特徴はないが、14.1型のUltrabookとしては無難にまとめられた1台に仕上がっている。

 しかし、本製品には冒頭の見出しに書いた「秘密のプラスα」の仕様がある。それは、SSDにmSATAタイプを採用し、別途SATA HDDのスペースが空いていることだ。自己責任になるものの、HDDを追加し、SSD+HDDの構成にすることが可能となるのだ。高速なSSDでブートし、大容量のHDDにデータ保存という使い方は、かなり魅力的な環境と言えるだろう。おそらくこういった仕様のUltrabookは、国内ではこれが唯一だろう。

 取り付け方法は、裏パネルにあるネジ18本を全て外せば、簡単にパネルを撤去すことができる。写真にある右上の広いスペース(赤の半透明)がHDD用だ。コネクタはテープで固定されているので、それを剥がし、HDDを接続し、左右のラバーで固定すれば作業は完了となる。

 ただし利用できるHDDは、2.5インチSATA接続で、厚さ7mmのものに限られるので要注意。その際、メモリスロットへもアクセスできるので、4GBから8GBへの変更も可能だ(これも自己責任)。

全部で18本のネジを外す。液晶パネルのヒンジの部分も含めネジを全て外す。ネジは3種類あるので、戻す際は間違わないよう気をつける
裏のパネルを外したところ。パネル全体を持ち上げればスッと外れる。赤い部分がHDDスペース
HDDを装着したところ。コネクタのテープを剥がし、HDDを接続。左右のラバーで固定する

Core i7-3537U+SSDとして平均的なパフォーマンス

 OSは64bit版のWindows 7 Home Premium。メモリは4GBで、できれば8GB欲しいところ。起動時のデスクトップは、壁紙のみ同社オリジナルが使われている以外は、素のWindows 7だ。左側にショートカットなどは一切ない。

 SSDはmSATAタイプの「M4-CT256M4SSD3」が使われ、C:ドライブのみの1パーティション。約234GBが割り当てられている。初期起動時の空きは208GB。

 Wi-FiモジュールはQualcomm Atheros製、Gigabit EthernetはRealtek製だ。Intel HM76 Expressのチップセットを採用したシステムとしては特殊な部分はない。

起動時のデスクトップ。壁紙だけが同社のオリジナル以外は素のWindows 7
デバイスマネージャ/主要なデバイス。SSDはM4-CT256M4SSD3、Wi-FiモジュールはQualcomm Atheros製、Gigabit EthernetはRealtek製
SSDのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約234GB割当てられている

 プリインストール済みのソフトウェアは非常に少なく、「Intel Rapid Start Technology」、「Windows Live Sync」、「Micrsoft Silverlight」、「Windows Liveおすすめパック」、「Finger Sensing Pad Driver」、「McAfee インターネットセキュリティ」など、主に定番のツールやドライバ系となる。

Intel Rapid Start Technology Manager
指検出パッド・コンフィギュレータ
McAfee インターネットセキュリティ

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7とBBenchの結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(今回の条件的には特に問題はない)。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.1。プロセッサ 7.1、メモリ 5.9、グラフィックス 5.1、ゲーム用グラフィックス 6.4、プライマリハードディスク 7.9。PCMark 7は4481 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 45944、FPU 44962、MEM 28940、HDD 39045、GDI 14845、D2D 2216、OGL 6406。

 プロセッサパワーに比べメモリが少し遅いのは、シングルチャネルのためだろう。ただし、一般的な用途であれば下位のCore i5-3337Uを選択しても問題無く使えるだろう。

 BBenchは省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、WiFi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で24,004秒/6.7時間。仕様上の最大約6時間を超えた。SSDはWindows 7で最大の7.9なので起動/復帰も速く、よほどヘビーに使わない限り、屋外でも1日運用可能だ。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合 5.1。プロセッサ 7.1、メモリ 5.9、グラフィックス 5.1、ゲーム用グラフィックス 6.4、プライマリハードディスク 7.9
PCMark 7。4481 PCMarks
BBench。省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、WiFi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で24,004秒/6.7時間
CrystalMark。ALU 45944、FPU 44962、MEM 28940、HDD 39045、GDI 14845、D2D 2216、OGL 6406

 以上のように「N140J-710A/E」は、非光沢の14.1型HD液晶パネルと、Core i7-3537Uを搭載したUltrabookだ。下位モデルは6万円台と安価ながら、有線LANがGigabit Ethernet、USB 3.0も1ポートと、しっかりポイントを押さえている。加えて自己責任になるが、HDDを増設してSSD+HDDの構成にできるもは他の製品にない魅力。BBenchでバッテリ駆動6時間超えと屋外での使用にも十分耐えうる。

 非IPS式なので視野角が狭く、ミニD-Sub15ピンのみと、デジタル出力がないのは残念だが、後にHDDやメモリのパワーアップもしたいと考えるユーザーの候補になる1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/