■西川和久の不定期コラム■
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10月19日ASUSは2種類のタブレットとタッチ対応のモバイルノートPCを発表した。いずれもWindows 8搭載(1機種Windows RT)モデルだ。編集部からモバイルノートPCの「VivoBook X202E」が送られて来たので、試用レポートをお届けする。
●タッチ機能付き11.6型クラムシェル型ノートPC
ここのところWindows 8を搭載したノートPCなどが数多く発表されているものの、その多くが10万円越え。もっと気楽に購入したいユーザーにとっては高嶺の花だ。そんな中、5万円程度でタッチパネルにも対応したモバイルノートPCがASUSから発表された。主な仕様は以下の通り。
【表】ASUS「VivoBook X202E」の仕様CPU | Intel Core i3-3217U(2コア/4スレッド、1.8GHz、 キャッシュ3MB、TDP 17W) |
チップセット | Intel HM76 Express |
メモリ | 4GB |
HDD | 500GB |
OS | Windows 8(64bit) |
ディスプレイ | 11.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット、10点マルチタッチ対応 |
グラフィックス | Intel HD Graphics 4000、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth V4.0 |
その他 | USB 3.0×1、USB 2.0×2、SDカードスロット、音声入出力 |
サイズ/重量 | 303×200×8.5~21.7mm(幅×奥行き×高さ)/約1.3kg |
バッテリ駆動時間 | 最大約5.2時間 |
価格 | 54,800円 |
プロセッサはIntel Core i3-3217U。2コア4スレッドでクロックは1.8GHz。i3なのでTurbo Boostには対応していない。キャッシュは3MB。TDPは17Wで省エネ駆動に期待できる。チップセットはIntel HM76 Express。メモリは4GB。HDDは500GBだ。OSは64bit版Windows 8。
液晶パネルは10点対応の11.6型液晶ディスプレイ。光沢タイプで解像度は1,366×768ドット。外部出力用として、HDMI出力とミニD-Sub15ピンを備えている。グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000。
余談になるが、最近筆者は自前の「ThinkPad X201i」へWindows 8 Proを入れ、マルチディスプレイにして運用している。セカンドディスプレイ側は主にデスクトップアプリ、ノートPC側はWindowsストアアプリ。セカンドディスプレイの方はPhotoshopなどを使うため、指紋が付くのが嫌で画面にはタッチしたくないものの、Windowsストアアプリ側の画面はタッチ対応の方が使いやすいと思っている。本機ならこのような使い方もOKだ。
ネットワークは、有線LANがEthernet。無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetooth V4.0も搭載している。有線LANがGigabit Ethernetでないのは残念なところだろう。
そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×1、USB 2.0×2、SDカードスロット、音声入出力。USB 3.0は1ポートのみだが無いよりは断然良いだろう。
サイズは303×200×8.5~21.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.3kg。普段の持ち運び用にしても大丈夫だ。バッテリ駆動時間は最大約5.2時間。交換できないだけに、実際の駆動時間が気になるところ。後半のベンチマークテストで検証したい。
カラーバリエーションは“スチールグレー”と”シャンパンゴールド”の2種類。価格は54,800円。購入しやすい値段設定だ。なお、主要部分はそのまま(Intel HM70 Express/約5.1時間)、プロセッサをIntel Pentium 987(1.5GHz)にした下位モデルは49,800円とさらに安価に設定されている。
筐体は同社お馴染みのメタリック仕上げでUltrabookのような雰囲気だ。チープな感じは全く無い。天板は濃いブラウン、先端に少し明るいラインが入りアクセントになっている。液晶パネルのフチは光沢ブラック、裏は非光沢ブラック、パームレストや側面は明るいゴールドっぽい配色。仕事でもホビーでも違和感無く使えるだろう。ACアダプタは約50×50×30mm(幅×奥行き×高さ)とかなり小型で一緒に持ち運ぶのも苦にならない。
左側面にはEthernet、HDMI出力、USB 2.0、USB 3.0、ロックポート。右側面にはミニD-Sub15ピン、USB 2.0、音声入出力、SDカードスロットを配置。裏側はメモリやHDDアクセス用の小さいパネルは無く、1一枚の大きなパネルで全面を覆っている。
【お詫びと訂正】初出時にUSBポートの配置を誤って記載しておりました。お詫びして訂正させて頂きます。
液晶パネルはIPS式では無いため、視野角はあまり広くないももの、一般的には問題にならないレベルだ。明るさ発色に関してはクラス相応と言ったところか。輝度を最小にしても十分画面の内容が確認できるため、バッテリ駆動時にも有効だ。タッチの感度は非常に良く、違和感無くWindows 8を操作できる。
キーボードはアイソレーションタイプで主なキーのキーピッチは約19mm。ただし一部狭くなっているキーもある。中央を強く押すと若干たわむものの許容範囲だろう。パームレストは、前面のかなりの部分に割り当てられ使い易い。タッチパッドは約105×65mmと大きく1枚板でボタンの替わりに左右に傾くタイプだ。タッチパネルを使わなくても十分使える。
振動やノイズなどはほとんど感じられず合格レベル。発熱はパームレスト部分は冷たいものの、キーボード中央辺りがほんのり暖かくなる。
サウンドはかなり高域にエネルギーバランスが寄っていてシャリシャリした音質だが、品の良い音で出力もあるので、イコライザーなどを少し操作し、低音側をブーストすれば結構いい感じだ。
●爆速では無いが普通に使えるWindows 8マシンOSは64bit版のWindows 8。メモリが4GBなので、Intel HD Graphics 4000との組み合わせは気になる部分。スタート画面は2面であっさりした構成だ。ASUSアプリの項目が2つあり、1つはWindowsストアアプリが9本。もう1つはデスクトップアプリが3本(内1つはデモ動画)登録されている。デスクトップはショートカットなど何も無く非常にシンプル。玄人に受けそうだ。
HDDは500GB/5,400rpm/キャッシュ16MBの「ST500LT012」を搭載。C:ドライブ約186GB、D:ドライブ約258GBの2パーティション構成で、C:ドライブの空き158GBとなる。個人的には少し半端なパーティションの配分ではと思っている。
有線/無線LAN、BluetoothはQualcomm製だ。前半に書いたように、有線LANはEthernetでGigabit Ethernetではない。
スタート画面1。Windows 8標準のWindowsストアアプリが並ぶ | スタート画面2。ASUSアプリ以降がプリインストール | 起動時のデスクトップには何も無くいたってシンプル |
デバイスドライバ/主要なデバイス。HDDは500GB/5,400rpm/キャッシュ16MBの「ST500LT012」。有線/無線LAN、BluetoothはQualcomm製 | HDDのパーティション。C:ドライブ約186GB、D:ドライブ約258GBの2パーティション構成だ |
プリインストールされているソフトウェアは、Windowsストアアプリが、ASUS Calculator、ASUS Converter、Fresh Paint、Skype、世界の時計。ただ同社製のアプリが、Windowsストアアプリのサンプルアプリ的なものばかりで残念なところ。今後充実して行くことに期待したい。
アプリ画面1 | アプリ画面2 | ASUS 世界の時計 |
ASUS Calculator | ASUS Converter |
デスクトップアプリケーションは、ASUS Install、ASUS Instant Connect Installer、ASUS InstantOn、ASUS Live Update、ASUS Tutor、ASUS VivoBook、eManual、LifeFrame、Power4Gear Hybrid、Splendid Compatibility Tool、Splendid Utility、USB Charger Plus、WebStorage Sync Agent、WinFlashなど同社お馴染みのツール系と、Kingsoft Office。独自のPower4Gear HybridやInstantOnはWindows 8でも有効だ。
ASUS Product Demo Movie | Power4Gear Hybrid | ASUS ViviBook |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとPCMark 7、BBenchの結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(今回の条件的には特に問題は無い)。なおWindows 8になってからWindows エクスペリエンス インデックスの最大が7.9から9.9へ変更となっている。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.4。プロセッサ 6.3、メモリ 5.9、グラフィックス 4.4、ゲーム用グラフィックス 6.0、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 7は2075 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 28286、FPU 26467、MEM 20630、HDD 9778、GDI 8899、D2D 1295、OGL 3130。
Core i3とIntel HD Graphics 4000、そして5,400rpmのHDDという構成なので、高速では無いものの、普段使い用としてはまったく問題無いレベルだ。参考までに筆者のThinkPad X201i(Core i3-M330/2.13GHz、メモリ8GB)は、6.1/6.1/4.5/5.2/5.9。かなり近いスコアだが、Windowsストアアプリを複数起動しつつ、PhotoshopやIllustratorで同時に編集可能。難なく仕事をこなしている。
BBenchは、Power4Gear Battery Saving、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/ONでの結果だ。バッテリの残5%で14,856秒/4.1時間。公称約5.2時間なので8割程度の結果となった。丸1日外で使うのは厳しいが、外出時に少し使う程度であれば大丈夫だろう。駅などの待ち時間で使う場合、サスペンドからの復帰も速くイライラすることも無い。
以上のようにASUS「VivoBook X202E」は、価格が5万円台と安価だが、TDP 17WクラスのCore i3を搭載し、10点対応のマルチタッチパネルを装備したWindows 8マシンだ。バッテリ駆動時間はBBenchで4.1時間と若干短めとは言え、重量は1.3kgと普段持ち運ぶのにも問題無いノートと言えるだろう。
有線LANがGigabit Ethernet非対応なのは残念だが、USB 3.0も含め一通りインタフェースは揃っている。安価ながらもWindows 8の新UIをタッチパネルで使いたいモバイルノートPCを探しているユーザーにとって、有力な候補になる1台だろう。