■西川和久の不定期コラム■
10月19日、富士通はスレートPCにキーボードが合体する11.6型の“ハイブリッドPC”「FMV STYLISTIC QH77/J」を発表、同月26日から発売した。Windows 8発表時に多く展示されていたこのタイプ、筆者としても触るのは初だ。楽しみのながらの試用レポートをお届けする。
●合体式の11.6型ハイブリッドPC
この「STYLISTIC QH77/J」、ベースは7月10日に発表された「STYLISTIC Q702/F」と思われ、(内部の詳細は異なるかも知れないが)スペックは同じでOSがWindows 8かWindows 7 Professionalかの違いとなる。主な仕様は以下の通り。
□富士通「FMV STYLISTIC QH77/J」の仕様CPU | Core i5-3427U(2コア/4スレッド、1.8GHz/ Turbo Boost 2.8GHz、キャッシュ3MB、TDP 17W) |
チップセット | Intel QM77 Express |
メモリ | 4GB(オンボード/交換不可) |
SSD | 64GB |
OS | Windows 8(64bit) |
ディスプレイ | 11.6型IPS液晶ディスプレイ(非光沢)、1,366×768ドット、 静電容量式10点対応 |
グラフィックス | CPU内蔵Intel HD Graphics 4000、HDMI出力 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0 |
その他 | USB 3.0×1、USB 2.0×1、SDカードスロット、 指紋センサー、音声入出力、フロント92万画素/ リア500万画素Webカメラ、スタイラスペン付属 |
キーボード側 | USB 2.0×2、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピン、 バッテリ内蔵(着脱式) |
サイズ/重量(スレートPC時) | 302×195×12.7mm(幅×奥行き×高さ)/約850g/約4.8時間 |
サイズ/重量(ノートPC時) | 302×203×26.1mm(幅×奥行き×高さ)/約1.7kg/約10.7時間 |
店頭予想価格 | 16万円強 |
プロセッサはCore i5-3427U。2コア4スレッドでクロックは1.8GHz。Turbo Boost時2.8GHzまで上昇する。キャッシュは3MBでTDPは17W。チップセットはIntel QM77 Expressを採用。メモリは4GBオンボードで交換不可となる。SSDは64GB。OSは64bit版Windows 8。
液晶パネルは非光沢の11.6型IPS式だ。解像度は1,366×768ドットで静電容量式10点対応。スタイラスペンも付属する。出力は本体側にHDMI出力、キーボード側にミニD-Sub15ピンを備えている。
ネットワークは有線LANがGigabit Ethernetだが、これはキーボード側のみに備えている。スレート側の無線LANはIEEE 802.11a/b/g/nで、Bluetooth 4.0にも対応する。その他のインターフェイスはUSB 3.0×1、USB 2.0×1、SDカードスロット、指紋センサー、音声入出力、フロント92万画素/リア500万画素Webカメラ、指紋センサー。キーボード側にUSB 2.0×2となる。一通り揃っている上にフロントとリアカメラがあるのがスレートPCらしい点と言えるだろう。
スレートPC使用時のサイズは302×195×12.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約850gで、バッテリ駆動時間約4.8時間。一方キーボードドッキング時のサイズは302×203×26.1mm(同)で、重量は約1.7kg、バッテリ駆動時間は約10.7時間となる。
また本体側はバッテリ固定で交換できないものの、キーボード側のバッテリは着脱可能だ。合体時約1.7kgと11.6型としては少し重めだが、これだけのバッテリ駆動が可能であれば、丸1日外で作業しても問題無い。価格はドッキングできると言うギミックがある分、16万円強と少々高めだ。
左から見たところ | 右から見たところ |
【動画】キーボード部から外し、縦横回転、そして合体 |
全体の雰囲気は普段より多めに写真を掲載したので参考にして欲しい。なかなかメカニカルでカッコいい雰囲気を醸し出す。個人的にもこの手のPCは初めて触ったが、机の上ではノートPC、余暇で趣味的に使うにはスレートPCと、着脱も簡単で、思った以上に使い勝手は良い。ホビーはもちろん、企業でも色々用途がありそうなスタイルと言えよう。
トップカバー(スレートPCリア)にはリアカメラと指紋センサー、左側にUSB 3.0、SDカードスロット、電源コネクタ。右側にUSB 2.0、HDMI出力、電源ボタン、音量±ボタン、回転ロックボタン、無線ON/OFF、マイク入力、ヘッドフォン出力。下側はスピーカーと共にドッキング用のコネクタが見える。フロントにはフロントカメラ。音量±ボタンと回転ロックボタンが独立してハードウェア的にあるのは操作し易くポイントが高い。特に音量はとっさの時にソフトウェア制御だとあたふたすることがあるのでありがたい。
キーボード側には、左側に電源コネクタ、ミニD-Sub15ピン、USB 2.0。右側にEthernet、USB 2.0、スタイラスペン収容穴。裏側はバッテリが入っており着脱可能だ。キーボード側にUSB 3.0が無いのは残念と言えば残念だ。
液晶パネルは非光沢で映り込みが少なく作業しやすい。また指紋が付き難いコーティングがされているのか、少々触っても気にならない。IPSパネルだけあって視野角は広く、発色やコントラストも自然だが、輝度が若干暗めだ。最小にしても普通に見えるので、バッテリ駆動時にも有効だろう。
ノイズや振動はもともと0スピンドル、そしてTDP 17WのCPUと言うこともあり皆無だ。発熱も試用した範囲では感じられなかった。
サウンドはスレートPC時は下側(手前)にありダイレクトに、ノートPC時は下から机などに反射して耳に届く。あまり出力は無いものの、安っぽい音でなく落ち着いて聴ける。
●Core i5とSSDでサクサク動く快適なPCOSは64bit版Windows 8。メモリが4GBと固定なので、Intel HD Graphics 4000との兼ね合いが気になる部分だ。スタート画面は全部で3面。Windowsストアアプリを比較的多く搭載している。その分、デスクトップは同社としては控えめで、ショートカットが多少多めに並ぶだけのレイアウトとなる。
SSDはSATA 6Gbpsの「Samsung MZMPC064HBDR」を使用。実質C:ドライブのみの1パーティション構成で初期起動時空きは約16GB。iOSやAndroid系のタブレットであれば一般的かも知れないが、PCとしてはこの容量はかなり少ない。回復パーティションに16GB割振られているのも結構痛い。
ネットワークは有線と無線がIntel製、BluetoothはBroadcom製を採用。デバイスマネージャには指紋センサーも見える。
インストールされているソフトウェアは、Windowsストアアプリは、BooksV、My Cloudサービス最新情報、My Cloudスタート、My Cloudノート、My Cloudビデオ、My Cloudフォト、My Cloudミュージック、Norton Studio、SUUMO、Yahoo!オークション、キャッシュバック特典ガチャ、健康生活日記、じゃらん、富士通アドバイザー、ホットペッパーグルメ、ホットペッパービューティ、マイミュージアム、楽天gateway、楽天レシピなどかなり豊富だ。これだけでも結構楽しめ、特に独自のMy Cloudシリーズが目に留まる。
また筆者が試用している間にMy Cloudシリーズのアップデートがあり、メンテナンスもきっちり行なわれているようだ。加えてMy Cloud ビデオ+をインストールすることにより、録画番組を一元管理・閲覧可能(おそらくDTCP-IP対応版)となる。
アプリ画面1 | アプリ画面2 | アプリ画面3 |
アプリ画面4 | 富士通パソコン ユーザー登録 | My Cloud スタート |
My Cloud ビデオ | 富士通アドバイザー | My Cloud フォト |
My Cloud BooksV | My Cloud ノート | My Cloud ミュージック |
My Cloud キャッシュバック特典ガチャ | My Cloud 健康生活日記 |
デスクトップアプリは、@niftyでブロードバンド、@メニュー、Corel WinDVD、Corel Digital Studio、DataShare、DigiBookBrowser、Finger Zoom、F-Launcher、F-LINK、省電力ユーティリティ、節電ナビ、バックアップナビ、バッテリユーティリティ、ピークシフト設定、Display Manager、Office Home and Business 2010、NetworkPlayerサーバー、Norton Internt Security、アップデートナビ、サポートツール、富士通アドバイザー、筆ぐるめ、ゆったり設定miniなど、ツール系から大型アプリまで豊富に揃っている。この辺りは国産ならではだ。
PCカルテ | パソコンの準備(@メニュー) | @メニュー |
省電力ユーティリティ | 節電ナビ | ピークシフト設定 |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとPCMark 7、BBenchの結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(今回の条件的には特に問題は無い)。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.6。プロセッサ 6.5、メモリ 5.9、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 5.9、プライマリハードディスク 8.1。PCMark 7は4078 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 37632、FPU 28094、MEM 23861、HDD 34567、GDI 11067、D2D 1433、OGL 4517。SSDがかなり高速で、その分、全体的な動きは非常に良い。
BBenchはスレートPC時、省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/ONでの結果だ。バッテリの残10%で12,592秒/3.5時間。ノートPC時、同じ条件において、バッテリの残10%で2,2294秒/6.2時間。
BBenchでは普段閾値5%での時間を計っているが(多くの場合標準設定)、今回は10%がメーカー標準となっていたこともあり、そのまま計り、若干短くなっている。スペック上の4.8時間/10.7時間には届かなかったものの、キーボードドック装着でバッテリが倍ほど持つ雰囲気。これだけ持てば1日外で使っても大丈夫そうだ。
以上のように富士通「FMV STYLISTIC QH77/J」は、用途に応じてスレートPCかノートPCか使い分けできる11.6型のハイブリッドPCだ。Core i5でSSDとパフォーマンスも十分。加えてBBenchでのバッテリ駆動も6時間越えと長時間動く。
ただ出荷時で約16GBしかSSDの容量が残っていないのは少々厳しいだろう。プリインストールのアプリを整理するか、128GBモデルを用意するなど一工夫欲しいところ。とは言え、合体式のWindows 8マシンに興味のあるユーザーは試してみる価値のある1台と言えよう。