西川和久の不定期コラム

Google「Nexus 7」
~7型のAndroid 4.1搭載タブレット



 Googleは9月25日、米国などで先行販売していたタブレット、Nexus 7を国内でも投入することを発表。Google Playからは同日、大手量販店では10月2日から発売となった。筆者は9月25日に注文し、翌日には無事到着。約1週間使用してのレポートをお届けする。


●発表日の朝

 Nexus 7は、数日前から「どうやら25日正午、Googleが国内投入する発表があるらしい」と言う噂は流れていた。また数カ月前にNexus 7を国内で販売するのに必要な“技適マーク”を取得したニュースもあったので、いずれにしても時間の問題であることは、ITに少し詳しい人なら分かっていた情報だ。そう言う筆者も、秋葉原へ行く度に並行輸入版を衝動買いしそうになったが「もうすぐ出るだろう」と踏み止まり、この日に至った経緯がある。

 筆者が既に「iPad」全世代とモトローラ「XOOM」の計4台のタブレットを所有しているにも関わらず、Nexus 7に興味を持った理由は、「7型」、「クアッドコア」、「Android 4.1」の3つのポイントが挙げられる。

 まず、筆者が所有するタブレットはすべて10型前後で、重量も600~700g。確かに持ち運びやすいサイズであり、一般的なノートPCと比較すれば軽く、ほかを知らなければ特に文句は無いだろう。しかしずっと手で持ち続けるには少々重い。対してNexus 7は340gとほぼ半分で、長時間持った時の負担が少ない。また、クアッドコアのTegra 3プロセッサは5つ目のコア“コンパニオンプロセッサ”を搭載するなど、技術的に興味深い。さらにAndroid 4.1は未だ使ったことがないため好奇心から……と、こんな具合だ。

 また価格も16GBモデルで19,800円。加えてGoogle Playで2,000円分が無料になる特典付き(取得は2012年10月30日、利用は2013年10月31日まで有効)。もう十分衝動買いできる価格レンジで、悩まず発注した。主な仕様は以下の通り。

【表】Google「Nexus 7」の仕様
CPUTegra 3プロセッサ(クアッドコア/1.3GHz)
メモリ1GB
ストレージ16GB
OSAndroid 4.1
ディスプレイ7型IPSディスプレイ、1,280×800ドット(216ppi)
ネットワークIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0+EDR
その他マイク、スピーカー、NFC(Android ビーム)、加速度計、
GPS、ジャイロスコープ、MicroUSB、
ヘッドフォン出力、120万画素フロントカメラ
バッテリ4,325mAh(約9~10時間駆動、連続待受300時間)
サイズ120×198.5×10.45mm(幅×奥行き×高さ)
重量340g
価格19,800円

 プロセッサはTegra 3。クアッドコアでクロック1.3GHz。アイドル時や、あまり負荷がかからない処理用として“コンパニオンプロセッサ”も搭載。省電力化に重要な役割を担う。GPUコア数は12。メモリは1GB、ストレージは16GBだ。海外では8GBモデルもあるが、こちらは一部ISPが回線とセット販売している。写真や音楽、動画データをローカルで大量に抱え込むと容量不足になると思われるが、うまくクラウド側に逃がせば特に問題無いだろう。

 ディスプレイはIPS方式の7型で解像度は1,280×800ドット。従って216ppiとなり、New iPad(264ppi)とまでとは行かないものの、かなり高精細となる。XOOMも同じ解像度だが、こちらは10.1型。これだけでもドットの密度が随分違う。

 ネットワークは、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0+EDR。その他のインターフェイスは、マイク、スピーカー、NFC(Android ビーム)、加速度計、GPS、ジャイロスコープ、MicroUSB、ヘッドフォン出力、120万画素フロントカメラを備える。

 コストからの兼ね合いからか、SDカードスロットなど外部メディア、リアカメラ、HDMI出力などには対応していないのが残念なところだ。特に10型のタブレットで写真撮影は厳しいものの(かっこ悪いし手ブレし易い)、このサイズなら十分考えられるだけに、高画質のリアカメラは欲しかった。

 バッテリは4,325mAh。同社の資料によると、HD動画再生で9時間、Webブラウジングで10時間、電子書籍で10時間、連続待受で300時間となっている。

 サイズは120×198.5×10.45mm(幅×奥行き×高さ)、重量340g。iPadとの比較写真をご覧頂きたいが、重さだけでなく、大きさも約半分になっているのが分かる。そしてこれだけのものが19,800円とは、バーゲン価格ではないだろうか。

何と発送メールが届いた約24時間後には到着

 さて、25日の朝、発表会の情報が確定した時、Facebookのタイムラインに「もうGoogle Playで購入可能になっている!」との文字。確かめてみると、発表会までは未だ数時間あるのにも関わらず購入可能になっていた。実はこの日、1日撮影で朝8時集合、戻りは早くても12時間後だった事もあり、出遅れるのが嫌で7時35分に注文したところ、同日14時には発送したとのメールが届き、この時点においてFedexの情報を見ると到着は27日の夕方となっていた。

 翌日26日は昼から打合せがあったのだが、戻ると不在票が届いていた。香港からの発送で約24時間後には到着とは驚くべき早さだ。あわてて連絡し、1時間後には無事受領した。どのルートで運ばれたかわかるよう、Fedexのトラッキング表を掲載したので参考にして欲しい。ただあまりの注文の多さからか、発送しているにも関わらず数日経っても届かないと言うトラブルも発生しているようだ。10月2日からはショップでの店頭販売も行なわれているので、在庫があればこちらを利用するのも手だろう。


表。上中央にWebカメラ。最大輝度は結構明るい裏。Nexusのロゴ、スピーカー用のメッシュ、“技適マーク”などのシール左側面。下側にドック用の接点がある
右側面。電源ボタンとボリュームボタン。[電源]+[ボリューム-]同時押しで画面キャプチャが撮れる上面。右端に小さい穴が。リセット用だろうか底面。MicroUSBコネクタとヘッドフォン端子
USBケーブル、USBタイプのACアダプタ(5V/2A)、簡易マニュアルなどが付属するiPadとの比較。9.7型4:3のパネルを搭載したiPadだと約半分のサイズ。ただし厚みはそれなりにあるXOOMとの比較。10.1型16:9のパネルを搭載したXOOMだと横方向に半分とはならない

 パッケージから取り出した第1印象は「小さい! 軽い!」の一言だ。XOOMもiPadも使い出した当初は十分小さくて軽いと思ったが、その感触を更に上回る。ただし、厚みは1cmほどあるので「薄い!」という印象はなかった。

 ルックスは非常にシンプル。ちょっと昔のiPhone 3Gに似た雰囲気を持ち、裏はマットな手触りだ。ゴージャスでもチープでも無く、割と無難にまとめられている。筆者の手が小さいこともあるだろうが、片手で持つには若干幅が大きめだが、軽いこともあり、持つ事自体は苦にならない。

 7型のIPSパネルは、輝度も十分、発色も自然で写真も動画も楽しめる。この価格でこれだけのパネルを搭載とは正直驚きだ。IPSの割には若干視野角が狭い気もするが、用途を考えると特に問題にならないレベルだろう。また表面には指紋が付き難い加工を施しているようで、頻繁に使っても画面を拭きたくなる程は汚れない。

 操作系は右側面に集中し、上に電源ボタン、その下にボリュームボタンがある。MicroUSBコネクタとヘッドフォン端子は下側面。上側面にある小さい穴はリセット用だろうか。裏はNexusのロゴとスピーカー用のメッシュ。加えて“技適マーク”などのシールも貼られている。左側面の接点のような部分はオプションのドック用だ。

 付属品は充電用のUSBケーブルとUSBタイプのACアダプタのみ。当初、パッケージや簡易マニュアルは英語のままだと思っていたが、実際は全て日本語化され、日本専用のものに仕上げられている。

 サウンドは7型のタブレットとしては結構出力があり音質も自然。クラスを考えれば予想以上だ。総じて好印象であり、ハードウェアとしてはなかなか魅力的な内容に仕上がっている。

●セットアップ&ファーストインプレッション

 セットアップは非常に簡単。筆者の場合工場出荷時で約60%ほどバッテリが残っていたので、開封後、そのまま作業をすることが可能だった。全工程の画面キャプチャを掲載したので、参考にして欲しいが、基本的に「言語設定」→「Wi-Fi選択」→「Googleアカウントの設定」→「その他」の流れで、iOSの初期設定と良く似ている。

 画面キャプチャからも分かるように、特に難しいところは無い。また、Google Playで購入する場合は、出荷時に予め自分のGoogleアカウントを設定済みにするサービスも行なわれている。あまり自信が無い(または面倒な)時などは利用するといいだろう。

Welcome/言語の設定日本語へWi-Fiの選択
Googleアカウントの設定ログインバックアップと復元
位置情報の利用セットアップ完了ホーム画面を表示

 電源ONから起動するまでは約35秒。ホーム画面が表示され一番最初に思ったことは「あれ? タブレットUIじゃない!」ということだった。7型タブレットと、言われているだけにてっきりタブレットUIだと思っていたが、スマートフォンUIになっていたのだ。Android 4系はタブレットUIとスマートフォンUIの2モードを持っており、システムプロパティのある値でどちらで動くかが管理されている。日頃XOOMを使っているだけにタブレットUIの方が使いやすいのだが、これは時間の問題で慣れてしまった。

 余談になるがこのシステムプロパティ、標準の状態では変更できず、書き換えるにはroot化が必要だ。ここではあえて触れないが、「Nexus 7 root化 タブレットUI」で検索すると山のように情報が出るので、興味がある人は見て欲しい。だた方法自体は簡単なのだが、未確認情報で「root化するとDTCP-IPが無効になる」との噂があり、これが理由で現時点では試していない。できればシステムとして切り替え機能を持って欲しかったところだ。

 標準搭載のアプリは、「カレンダー」、「カレント」、「ギャラリー」、「ダウンロード」、「トーク」、「ナビ」、「マップ」、「メール」、「メッセンジャー」、「ローカル」、「音声検索」、「時計」、「設定」、「電卓」、「連絡帳」、「Chrome」、「Earth」、「Gmail」、「Google」、「Google+」、「Latitude」、「Playストア」、「Playブックス」、「Playミュージック」、「Playムービー」、「YouTube」など。

 Android 4.0系との一番の違いは標準ブラウザが「Chrome」になったこと。PCで使っているChromeのブックマーク共有もでき、いつもの環境が即使えるので重宝する。また、指で押すには細かい部分をタップした場合、自動的に虫眼鏡で見たようにその部分だけ拡大表示する機能も持っている。

 ただ4系のブラウザにはフルスクリーン表示機能があったが、このChromeでは現在非対応(プラグインもいいのが無い)。加えてAdobe Flash Playerも作動しない。この2点は人によっては気になるだろうか。

ホーム画面3ページ目ホーム画面4ページ目工場出荷時のアプリ
ウェジェット1ページ目ウェジェット2ページ目ウェジェット3ページ目
ウェジェット4ページ目ウェジェット5ページ目通知バーに早くもアプリの更新通知が
更新が必要なアプリ2本ストレージの状態タブレット情報

 起動直後のホーム画面は非常にシンプル。設定されているのは5つのスクリーンのうちの3と4だけ。それもご覧のように、「マイライブラリ」と「PLAYでおすすめ/おすすめアプリ」のみで、1/2ページ目および5ページ目はブランクだ。これまでAndroidを触ったことがあるユーザーなら、必要なアプリやウェジェットを配置するのは容易であるが、初心者には少しハードルが高いかも知れない。せめて加えて「時計」、「電源管理」程度はあっても良さそうだ。

 Androidのバージョンは4.1.1の「Jelly Bean」。現状4.1を使えるデバイスは数少なく、4.0系との主な違いは、表示フレームレートの向上(60fps)、通知バーの変更など、細かい修正だ。確かに60fpsの表示はかなりスムーズで、カクカクした感じがまるでない。プロセッサパワーも加わり、XOOMとはまるで別次元の作動速度だ。これなら日頃New iPadを使っている筆者でさえもストレスは感じない。

 初期起動時のストレージ容量は(標準アプリをアップデートした後なので工場出荷時とは若干異なる)、合計13.36GBで空き容量13.06GBとなっている。先に書いた通り、それほど余裕が無いので、出来るだけデータはクラウドへ逃がした方がいいだろう。

●その他使用感など

 約1週間使用して、ちょっとしたトピックを2つほどあげると、1つは「Flash Playerを使う方法」。もう1つは「nasneに録画した地デジを観る方法」となるだろうか。

 ご存知のようにAndroid 4.1はFlash Playerに対応していない。Chromeはもちろん、試した範囲だとOperaもだめだった。唯一の方法はFirefoxを使い、Android 4.0用のFlash Playerを組み込むことだ。

 方法は、 設定で「提供元不明のアプリ」をOKにした後、FirefoxでAdobeのFlashダウンロードサイトへアクセスし、「Flash Player 11.1.for Android 4.0 (11.1.115.17)」をダウンロードすること。インストールすればFirefoxでのみFlash Playerが表示可能になる。ただしこの方法は、4.1へ4.0用のモジュールを組み込んでおり、恒久的に可能かどうかは不明。あくまでも現時点での対処方法だ。

Firefoxで「Flash Player 11.1.for Android 4.0 (11.1.115.17)」をタップインストール中Flash Playerが作動

 もう1点は、DTCP-IP対応のDLNAクライアントである「Twonky Beam」を使い、DLNAサーバーになっているnasneに録画した地デジを観ることができた点だ。ただし、筆者が試したのは3倍速録画のみで、DRモードも可能かどうかは不明だ。この機能があるだけで、仮にNexus 7に飽きてしまっても文鎮化することは避けられそうだ(笑)。

 1点残念なのは「ライブチャンネル」(リアルタイムに放送されている番組のストリーム)が観れないこと。もちろんDTCP-IPなどで保護されていないコンテンツなら、「Twonky Beam」に限らず、他のDLNAクライアントアプリでも再生可能だ。

 Nexus 7のパフォーマンスを調べるため、簡単なベンチマークテストを行なった。使ったアプリは「AnTuTu 安兎兎ベンチマーク」。スコアは10,735。水平ランキングによると、1万以上のスコアを叩き出す機種は現在6モデル。最上位は「Galaxy Note2」になっている。Nexus 7でも快適なだけに、一度Galaxy Note2も触ってみたい。

AnTuTu 安兎兎ベンチマーク/スコア 10,735AnTuTu 安兎兎ベンチマーク/水平ランキング。Nexus 7は上位に食い込むTwonky Beamでnaseに録画した地デジが観れる
250億ダウンロード記念。限定だがアプリが一本25円Chromeの自動拡大機能Google Now。使い込むほどカードが増えると言うが一向に増えない

 そのほか、評価中Google Play 250億ダウンロード記念として、何本かのアプリが25円になっていた。筆者は付いてきた2,000円でATOKを含む何本かアプリを購入した。

【お詫びと訂正】初出時に2,000円分の特典利用期限が10月30日までとしておりましたが、これは取得期限で、取得した特典の利用期限は2013年10月31日までとなります。お詫びして訂正させて頂きます。

 バッテリ駆動時間は、サイズの関係から容量が少ない分、数時間使っていると50%になる。日頃New iPadを使っている感覚だと意外と持たない印象だ。この関係で少なくとも2日に1度は寝る前に充電している。

 こうして1週間経った今、結果的にNew iPadはほとんど触らなくなってしまった。筆者の場合、日中はPCが作動しているのでタブレットは使わず、仕事が終わり、余暇の時間帯にタブレットの出番となる。つまり音楽を聴いたり映画を観たり、酒を飲んだりと、ゴロゴロしている時間だ。

 この時、New iPadの大きいのはまだしも、手で持ち続けるには重く、何かに置いて見ることになる。そうすると近眼&老眼の場合、コンテンツによってタブレットとの距離感が微妙。見るものによってメガネを付けたり外したりと結構面倒なのだ。

 ところがNexus 7だと、片手で持ったまま、しかもメガネは何を見るにしても外しっ放しと、非常に楽に扱える。これはNexus 7と言うより7型パネルの特性なのだが、よく使うアプリもFacebookだったりTwitterだったり、iOSと比較して大差無く、快適に過ごせるのがその理由だ。7型にこんな利点があるとは思っていなかった。

 加えてウェジェットをホーム画面に置けると言うiOSにはない機能で、ちょっとした時、小さい画面で有効に情報を見ることが出来るのも気に入っている点となる。

 以上のようにGoogle「Nexus 7」は、7型IPSパネルでAndroid 4.1を搭載したタブレットだ。Tegra 3プロセッサにより作動も高速。340gと手で持つのも苦にならない重量も魅力的だ。しかも価格は19,800円。コストパフォーマンスは抜群と言えよう。

 SDカードなど外部メディアが使えない、リアカメラ/HDMI出力なし、スマートフォンUIに固定……など少し残念な部分もあるが、軽量で軽快なため非常に使いやすく、タブレットに興味のあるすべてのユーザーにお勧めできる逸品といえるだろう。