■西川和久の不定期コラム■
昨年(2011年)年末辺りから、高価だったDDR3 8GBのメモリが一気に値下がりし、SO-DIMMも含め8GB×2の計16GBでも1万円前後の価格となった。そこで今回は、現在筆者のメインマシンになっているMac miniを16GB化し、仮想PCも含め快適な環境を構築してみたい。
なお記事中にもあるように、アップルが公認している方法ではなく、サポートは受けられないので、自己責任でお試しいただきたい。
●8GBのLion上でWindows 7を使うとメモリが厳しい
現在筆者のメインマシンは、昨年の『Apple「Mac mini」Windows 7編~Boot CampとParallels Desktop 6でWindows 7マシンとして使う』などでも記事にしたように、第2世代Coreプロセッサを搭載した「Mac mini」(Mid 2011)だ。Parallels Desktop 6(後に7へアップデート)をインストールし、Mac OS X LionとWindows 7を同時に動かしている。メモリは4GB×2の計8GB。この時、仮想PCに割り当てるメモリ容量は3GBで、理由は3GB以上割り当てるとLion側が極度にメモリ不足になるためだ。
ただこの設定でもParallels Desktop起動直後はメモリがそれなりに余っているものの、数時間使うと、あっと言う間にLion側の空きメモリが無くなって行く……。Webブラウザ程度は使えるが、Xcodeなど開発環境を同時に動かすと、とても重くなり、待ち時間が大幅に増えてしまう。ならばと仮想PCに割り当てているメモリを3GBから2GBへ減らしてしまうと、当然ながらPhotoshopなどWindows側の大型アプリケーションの作動が重くなる。
限られたリソースの中、問題を解決するには、Lion側でメモリを使う処理をする場合、Parallels Desktopの仮想PCをサスペンドしメモリを開放、通常使用に戻るとき、サスペンドから仮想PCを復帰させる手を使っていた。しかしこの手法は面倒であり、「もっとメモリがあればいいのに」と、いつも思うようになってしまった。
そんな中、昨年発売されたSandy Bridge搭載、MacBook Pro(Early 2011)および、Mac mini(Mid 2011)は“非公式”ながら8GBのSO-DIMM DDR3-1333MHz(PC3-10600)を2枚搭載できると言う記事をあっちこっちで見かけた。
Boot CampしたWindows 7のデバイスマネージャで調べた結果、搭載しているチップセットはIntel HM65 Express。このチップセットを搭載した多くのPCのメモリは最大8GBまでだ。しかし考えて見ると、第2世代Coreプロセッサのメモリコントローラは、プロセッサ側にあり、チップセット側の機能ではない。
このMac miniにはCore i5-2520Mが使われており、データシートによると、最大メモリ容量は16GBになっている。これが16GB化できるカラクリだ。Apple Storeの組合せでは最大8GBなので、Appleの公式な見解としては8GBまでなのだろう。とは言え、当時は8GBモジュールはまだ高価過ぎた(10万円前後)こともあり手を出さなかった。マシンスペック的に最大8GBになっているもの同じ理由だと思われる。
ところが昨年の後半から4万円程度になり、11月末頃にはついに1万円前後までいきなり価格が落ちたため、早速入手し試してみることにした。購入したのはCFDのDDR3-1333MHz SO-DIMM 8GBの2枚セット。ただ出始めは即完売だったようで、予約してから数週間後の入手だ。もともとMac miniは2GB×2の計4GBで購入、その後すぐに4GB×2の計8GBへ入れ替えたため、3回目のメモリ増設となる。
Mac miniのメモリ交換自体は非常に簡単だ。裏の丸いパネルを少し回すと外れ、メモリスロットへアクセスできる。交換後、Lionを起動、無事16GBになったことを確認。既に1カ月程度使っているが、特に問題無く作動中だ。今もこの環境で原稿を書いている。
もちろん効果は抜群だ。4GBでWindows 7を起動し、Webブラウザ、iTunes、Xcodeなどを使ってもまだ8GBほどLion側にメモリが残っている。なかなか快適な環境だ。加えてAndroid SDKを動かしてもまだ余裕がある。複数の仮想PCを同時に動かさない限り、この余っている8GBを使い切るのは難しそうだ。8GBか16GBかの差は非常に大きい。
●仮想PCの速度もアップ
先に書いた通り、Parallels DesktopのWindows 7の仮想PCへ割り当てるメモリを3GBから4GBへ変更した。これは普段使っているアプリケーションなどを考えると元の3GBのままでも良いのだが、以前テストした時、4GBの方がベンチマークテストのスコアが向上したためだ。また当時とバージョンも違うため、念のためにと再度テストしたところ、掲載した結果の通り。やはり仮想PCのメモリを3GB割当てるより4GBにした方が若干速度はアップする。
4GBの仮想PCでWindows 7を動かした時のWindows エクスペリエンス インデックスは6.5/7.6/5.3/5.1/6.4 | 4GBの仮想PCでWindows 7を動かした時のCrystalMarkは28530/25670/31103/5708/11322/1859/2356 |
Windows エクスペリエンス インデックスは、6.6/5.9/5.4/5.1/6.4から6.5/7.6/5.3/5.1/6.4と、プロセッサとグラフィックスが-0.1、メモリは+1.7となる。多少凸凹気味ではあるもののメモリの+1.7は魅力的だろう。
CrystalMarkは、29326/25107/30056/5706/11267/1827/2317から28530/25670/31103/5708/11322/1859/2356と、ALUだけが若干マイナス、メモリアクセスは向上と、ほぼ同等の結果になっている。HDDが相変わらず遅いのは、Boot Campした素のWindowsでも同じなので仕方ないが、その他の値は、一般的なPCと大差無く、何のストレスも感じず作業できる。
もちろんBoot Camp後のWindows 7も16GBを認識しているが、素のWindows 7なら前の8GBでも余っている上、使用時間の95%はLion+Parallels Desktop 7なので、こちらに関しては特にメリットは感じていない。
さてここから先は余談になるが、筆者が使っているノートPCは、ThinkPad X201i。第1世代のCore i3を搭載したマシンだ。チップセットはIntel QM57 Express、グラフィックスはIntel HDグラフィックス、そしてメモリはPC3-8500 DDR3。もともと2GB×1で購入し、その後、+2GBを追加計4GBで使っている。
最近出先でPhotoshop CS5とIllustrator CS5を同時に使うことが増え、さすがにメモリ不足で重くメモリの増設を考えていた。そんな矢先、Mac miniの4GB×2が余り、こちらへ移動。同じDDR3でもPC3-8500とPC3-10600の違いがあり、仕様的にはオーバースペックだが、基本的に下位互換なので問題無く使用できる。
余った4GB×2をThinkPad X201iへ。もともと2GB×1へ+2GBしたため、メモリモジュールの色が違っている | 問題なく8GBを認識。Intel HD Graphicsがメモリ共有するため実質7.8GBとなる | 若干スコアが上昇した。6.2/5.9/4.6/5.3/5.9から6.2/6.3/4.6/5.3/5.9とメモリだけ+0.4向上 |
早速交換してWindows エクスペリエンス インデックスを調べたところ、6.2/5.9/4.6/5.3/5.9から6.2/6.3/4.6/5.3/5.9と、メモリだけ+0.4向上。PC3-8500が標準仕様のPCでもPC3-10600のメモリへ変更するとメモリアクセスの効率が良くなるのだろうか。Intel HD Graphicsがメモリ共有するため実質最大7.8GBとなるものの、こちらも快適な環境となった。
いずれにしても規格さえ合えばメモリはいろいろ使い回しできるので、複数PCを所有している場合は、あまり無駄にならずに済む。とは言え、本来Windows 7を使うなら普通は十分な容量と思われる2GB×2の計4GBが2組(PC3-8500とPC3-10600)残ってしまった。どちらもSO-DIMMなので該当機種は手持ちで無し。Z68でSO-DIMMを利用できるMini-ITXマザーボードでも試そうかと考え中だ。
以上のように、非公式とは言えメモリが16GBになったMac miniは、仮想PCに4GBを割り当て、64bit版のWindows 7を動かしても、まだLion上は8GB程度残り、何をするにも快適な環境となった。Windows 7自体の作動も速くなり2度美味しい。更にもともと付いていた4GB×2計8GBのメモリを、他のCore iプロセッサ搭載機などDDR3を使うPCへ回せば3度美味しいというオマケ付だ。
通常、仮想PCを使わない限り、ここまでのメモリ容量は必要ないものの、Mac OS X上でWindowsを使っているユーザーも多いと思う。もし該当する機種であれば、試してみてはいかがだろうか。約1万円ほどの投資でその効果は絶大だ!