西川和久の不定期コラム

ASUS「Eee PC VX6」
~次世代ION搭載のランボルギーニコラボモデル!



 ASUSTeKは10月14日、今年冬モデルとして9機種16モデルを一斉に発表した。その中にランボルギーニコラボモデル、「Eee PC VX6」が含まれる。これまでコラボレーションモデルは主に15型タイプのメインストリーム機ばかりだったが、Eee PCブランドでは今回初めて。一般モデルとどこが違うのか、試用レポートをお届けする。

●次世代NVIDIA IONを搭載

 「Eee PC VX6」のランボルギーニコラボ部分に触れる前に、基本的なシステム構成を押さえたい。まず第一に注目すべきは、グラフィックスに次世代NVIDIA IONを搭載していることだ。CPUがAtom D525なので、通常だと内蔵GMA 3150を利用するが、そのパフォーマンスがあまり高くないのはご存知の通り。

 初代のIONはチップセットだったが、メモリコントローラーとグラフィックコアを統合したプロセッサ「Pineview」になってからこの手法が使えなくなったため、NVIDIAは、単体GPUとして次世代IONを開発した経緯がある。ただし、本製品はOptimus Technologyに対応し、ハイパフォーマンス時はION、省電力時は内蔵GMA 3150へシームレスに自動切り換えられ、用途や状況に応じて電力消費を抑えることができる。主な仕様は以下の通り。

【表】Eee PC VX6の仕様
CPUIntel Atom D525(2Core/1.8GHz/キャッシュ512KB×2)
チップセットIntel NM10 Express
メモリ2GB/DDR3-800、2スロット(空き1)、最大4GB
HDD320GB(5,400rpm)
OSWindows 7 Home Premium(32bit版)
ディスプレイ12.1型ワイドTFTカラー液晶(LEDバックライト)、1,366×768ドット
GPU次世代NVIDIA ION(Optimus Technology対応)/ビデオメモリ512MB、ミニD-Sub15ピン×1、HDMI出力×1
ネットワークEthernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0+HS
その他USB 3.0×2、USB 2.0×1、メディアスロット、Webカメラ、内蔵マイク、オーディオ入出力
サイズ/重量297×204×23~38mm(幅×奥行き×高さ)/約1.5kg
バッテリ駆動時間約5時間
価格74,800円

 CPUは、Intel Atom D525。2コア/4スレッド、1.8GHz、キャッシュ512KB×2。Zシリーズを除けば、デュアルコアとしては最高クロックだ。チップセットはIntel NM10 Express。メモリはDDR3-800 2GB×1で、最大4GB。ここまでは一般的なネットブックと同じだが、冒頭に書いたように、グラフィックスはIONも搭載している。ディスプレイ出力は、D-Sub15ピンに加えHDMI出力にも対応する。

 OSは32bit版のWindows 7 Home Premiumだ。さすがにこれだけのハードウェアでStarterではいろいろ不満になるので、良い選択だろう。ただ、32bitなので、メモリ4GBにした時に1GB余ることになる。HDDは5,400rpmの320GBが使われている。

 液晶パネルは12.1型、解像度1,366×768ドットで、ワンランク上のサイズ/解像度だ。これなら特に小さいとか狭いとか思うことは無いだろう。

 ネットワークは、有線LAN 10BASE-T/100BASE-TX、無線LAN IEEE 802.11b/g/n、そしてBluetooth 3.0対応。毎回この手のノートPCで書いているがGigabit Ethernetに非対応なのは残念な部分。

 その他のインターフェースは、USB 2.0×1(USB Charge+機能対応)、USB 3.0×2、メディアスロット、Webカメラ、内蔵マイク、オーディオ入出力となる。USB Charge+は、電源OFF時でもUSBから充電できる機能だ。USB 3.0が2ポートあるのも嬉しいポイントだろう。

天板は、渋い光沢のブラックでLamborghiniのエンブレムがある正面。タッチパッドの中央側面部分にHDDなどのアクセスLEDが見えるパネルを開けるとメモリに直ぐアクセスできる。1スロット空いている。左右のスピーカーは下向きに付いている
左側面。電源入力、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、USB 2.0、メディアスロットアイソレーションタイプのキーボード。パームレストの周囲の形や色が一般モデルと異なっている右側面。ロックポート、Ethernet、USB 3.0×2、マイク入力/ヘッドフォン出力
キーピッチは実測で18mmACアダプタは結構小さい。コネクタはメガネタイプ重量は実測で1,556g

 なお、VX6とハードウェア的にはほぼ同じで外観が一般モデルの「Eee PC 1215N」も用意されている。カラーバリエーションは、グロッシーレッドと、グロッシーブラック、シルバーの3色。掲載した写真からも分かるように、全体のデザイン、電源スイッチ周辺やタッチパッドのレイアウトなど細かい部分が異なる。価格は59,800円と安価に設定されている。

Eee PC 1215N/斜め前から斜め後ろからEee PC VX6との箱も含めたツーショット

 比較用に同時にEee PC VX6とEee PC 1215Nが届いたのだが、まず箱が全く違う。VX6の箱は、とてもノートPCが入っているようには思えない。他社になるが、HP ENVYと雰囲気が似ている。中身はあまり変わらないので、重さ自体は同じであるが、大きさは幅が約1.5倍ほど長くなっている。

 そしてまず驚いたのが起動音。ノートPCも含め一般的なパソコンは「ピッ」と起動時にビープ音が鳴るだけだが、このEee PC VX6はLamborghiniのエンブレムが回り、排気音が鳴るのだ。動画を掲載したのでご覧頂きたい。

【動画】起動の様子

 ツヤありブラックの天板は、ランボルギーニのボンネット風のデザインと言うことらしい。色はシルバーとチョコレート色で、なかなかクールでシャープなイメージだ。

 12.1型1,366×768ドットの液晶パネルは、もはやネットブックではなく、普通のノートPC。視野角はあまり広い方ではないものの、十分明るくハイコントラスト。光沢タイプなので、映り込みはあるが、これは最近多くのノートPCがそうなので、さほど気にならなくなって来た。

 キーボードはアイソレーションタイプで、Eee PC 1215Nと同じユニットが使われている。ただし、キーボードとキーボードの間に埋め込まれているパネルはデザインに合わせて色が違う。キータッチなどに関しては、中央を強く押すと若干たわむものの、通常使用では特に問題無い。

 タッチパッドは、Eee PC 1215Nと随分違い、まず手前に電源/バッテリ/HDDなどのステータスの印がある1本バー式のボタンになっている。ボタンは重くなく軽くもなく、ちょうどいい。LEDはすぐ下の側面にある。タッチパッドは少し台形になっており、デザインにアクセントを付けている。パームレストはボディサイズに余裕があるので、スペースは十分割確保されている。

 熱やノイズ、振動に関しては、特に気になるほどではなく、IONが乗っている割にはうまく処理できているようだ。

 ステレオスピーカーに関しては、品のある音質で高域の抜けも良い。ドラムのハイハットなどが心地よく聴こえる。B&O ICEpower認定のVX6専用オーディオ搭載しているので、これが効いているのだろう。

●Atomプロセッサ搭載機としては高いパフォーマンス

 起動時のデスクトップは、同社の今年モデルと同じで、中央上に「Eee Docking」、左側のショートカットも同じ構成だ。ただ画面が広い分、ショートカットは2段内に収まっている。壁紙もランボルギーニとのコラボで、6種類ある。またオリジナルの動画スクリーンセーバーが標準で設定されている。なかなか迫力のある動画となっている。

 HDDは320GBのWestern Digital WD3200BEVTを搭載している。5,400rpmでキャッシュ8MBだ。ユーザーが使えるのは、Cドライブ約100GB、Dドライブ約183GBの2パーティションとなる。

 USB 3.0コントローラーはNEC製。冒頭で触れたように、NVIDIA Optimus Technologyに対応しているので、グラフィックスはIONに加え、GMA 3150も有効になっている。

起動時のデスクトップ。何ともカッコいい壁紙だ。左側に並ぶショートカットは一般モデルと同じHDDはWestern Digital WD3200BEVT(320GB/5,400rpm/キャッシュ8MB)が使われている。ディスプレイアダプタにNVIDIA IONの文字が見えるユーザーが使えるのはCドライブ約100GBとDドライブ約183GBの2パーティション

【動画】迫力のVX6オリジナルスクリーンセーバー

 プリインストールアプリケーションは、同社のツール系、ASUS VIBE、ASUS WebStorage、ASUS Update for Eee PC、Eee Docking、Eee Splendidなど。他社製は、CyberLink YouCam、ウィルスバスター2010(期間限定版)、iフィルター5.0、Kingsoft Office 2010 30日お試し版となる。

USB 3.0ホストコントローラーはNEC製16コアで専用メモリ512MBなのが分かる大迫力のVX6オリジナルスクリーンセーバー

 ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見たい。カッコ内の値は同じくデュアルコアAtom N550(2Core/1.5GHz/キャッシュ512KB×2)にIntel NM10 Express/内蔵Intel GMA 3150の「HP Mini 210-2000」の値を参考までに掲載した(括弧内)。

 まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は3.2(2.5)。内訳は、プロセッサ3.5(2.5)、メモリ4.9(4.8)、グラフィックス3.2(3.0)、ゲーム用グラフィックス3.7(3.0)、プライマリハードディスク5.4(5.6)。HDDは7,200rpmのHP Mini 210-2000が有利だが、CPU、グラフィックス関連はVX6が差をつけている。

 CrystalMarkは、総合 44,854(38,042)、ALU 10,848(9,068)、FPU 8,778(7,448)、MEM 8,544(6,584)、HDD 8,515(11,766)、GDI 2,201(1,765)、D2D 1,156(979)、OGL 4,812(432)傾向は、Windows エクスペリエンス インデックスと同じであるが、特にOGLが桁違いに速い。IONの効果が現れている。次世代ION機は今回初めて触るのだが、総じてGMA 3150よりパフォーマンスは高く、非常に快適に操作できた。なかなか魅力的なソリューションと言えよう。

 BBenchは、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果だ。バッテリの残5%で17,660秒(4.9時間)だった。スペック上、最大約5時間なので、ほぼそのままの値だ。

 YouTubeのテストは、ハードウェアアクセラレーション対応のFlash Player 10.1で試したところ、ウィンドウ表示では1080p/720p共に30fps(コマ落ちなし)で再生することを確認した。但し、フルスクリーンにするとどちらも20fps程度(コマ落ちなし)に下がってしまった。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合は3.2。プロセッサ3.5、メモリ4.9、グラフィックス3.2、ゲーム用グラフィックス3.7、プライマリハードディスク5.4
CrystalMark。総合 44,854、ALU 10,848、FPU 8,778、MEM 8,544、HDD 8,515、GDI 2,201、D2D 1,156、OGL 4,812
BBench。バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果だ。バッテリの残5%で17,660秒(4.9時間)


 以上のように「Eee PC VX6」は、ランボルギーニの名前に恥じない、Atomプロセッサ搭載ミニノートPCとしては最高速で、NVIDIA ION+12.1型1,366×768ドットのLED液晶パネル搭載も魅力的。エンブレムや排気音、スクリーンセーバーなどもファンにはたまらないギミックだろう。また本文で少し紹介したが、ハードウェアだけに興味のある人は安価な「Eee PC 1215N」という選択肢もある。どちらも一般的なネットブックには無いパワーを持つ製品だ。