西川和久の不定期コラム

エプソンダイレクト「Endeavor TN30E」

~Celeron N2940を搭載した11.6型フルHDの2-in-1

エプソンダイレクト「Endeavor TN30E」

 エプソンダイレクトは12月9日、同社としては初の2-in-1を発表、同日より受注を開始する。11.6型で10万円未満の2-in-1は競合製品も少なく、なかなか面白い存在になりそうだ。編集部から試作機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。

8型タブレットと比較していろいろな面で余裕がある11.6型

 同社はこれまで、11.6型フルHD(1,920×1,080ドット)のタブレット「Endeavor TN10E」(AMD A4-1200 APU/メモリ4GB/ストレージ128GB)を販売してきたが、今回の発表で10.1型WXGA(1,280×800ドット)タブレット「Endeavor TN20E」(Celeron N2807/メモリ2GB/ストレージ64GB)と、同社初の2-in-1「Endeavor TN30E」をラインナップに追加した。「Endeavor TN10E」も並行して販売を続けるため、10.1型タブレット、11.6型タブレット、11.6型2-in-1と、3種類のデバイスから用途や予算に応じて選べるようになる。

 今回ご紹介するのは、2-in-1の「Endeavor TN30E」。主な仕様は以下の通りだが、「Endeavor TN10E」がそのまま2-in-1に変化したのではなく、AMDプラットフォームからIntelプラットフォームへと変わり、新設計モデルとなっている。

エプソンダイレクト「Endeavor TN30E」の仕様
プロセッサCeleron N2940(4コア4スレッド、クロック 1.83/2.25GHz、キャッシュ 2MB、TDP 7.5W/SDP 4.5W)
メモリ4GB
ストレージeMMC 64GB(オプション:HDD 500GB、5,400rpm/ドッキング時)
OSWindows 8.1 (64bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics、Mini HDMI出力
ディスプレイ光沢タイプIPS式11.6型フルHD(1,920×1,080ドット)、10点タッチ対応
ネットワークIEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.0+HS
インターフェイスMicro USB 3.0×1、USB 2.0×2(ドッキング時)、Micro HDMI出力、microSDカードスロット、音声入出力、前面103万画素
サイズ/重量(本体)300×194×11mm(幅×奥行き×高さ)/約720g
サイズ/重量(ドッキング時)300×222×26mm(同)/約1.6kg
バッテリ駆動時間約6.8時間(本体のみ)/約11.5時間(ドッキング時)
その他タッチペン標準搭載
税別価格79,000円(HDDなし)、HDD 500GBありは6,000円増

 プロセッサはCeleron N2940。Celeronとしては珍しく4コア4スレッド。クロックは1.83GHzから最大2.25GHz。キャッシュは2MB。TDP/SDPはそれぞれ7.5W/4.5Wとなる。メモリは4GBを搭載。8型はメモリ2GBの製品が多いこともあり、Windowsを使用する上で優位点となる。OSは64bit版Windows 8.1 Update。BTOで64bit版Windows 8.1 Pro Updateも選択可能だ。

 ストレージは本体側にeMMC 64GB。またオプション(税別6,000円)でキーボードドック側に500GBのHDDを搭載可能だ。ただしこのHDDはUSB 2.0接続(60MB/sec)となる。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics。外部出力用としてMini HDMIを装備している。ディスプレイは、IPS式光沢タイプの11.6型フルHD(1,920×1,080ドット)。10点タッチ対応で、タッチペンが標準搭載だ。

 そのほかのインターフェイスは、IEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.0+HS、Micro USB 3.0×1、microSDカードスロット、音声入出力、前面103万画素。キーボードドック側に、USB 2.0×2と電源入力がある。できればキーボードドック側にもUSB 3.0が欲しかったところ。もしUSB 3.0対応であれば、先の内蔵HDDも含め、高速な外部ストレージを接続できただけに残念だ。

 本体単独の場合のサイズは300×194×11mm(同)、重量約720g。ドッキング時はサイズ300×222×26mm(同)、重量約1.6kgとなる。後者の重量が同クラスのノートPCと比較して重めなのが惜しいが、キーボードドックにもバッテリを内蔵しているので仕方ないだろう。

 バッテリ駆動時間は、JEITA測定法1.0で本体のみが約6.8時間、ドッキング時が約11.5時間となる。

 税別価格は79,000円(HDDなし)。冒頭に書いたように、11.6型の2-in-1で10万円を切る競合機種はほとんどなく、「おっ!」っと思う人も多いのではないだろうか。

前面。液晶パネル中央上に103万画素Webカメラ、その右側にカメラランプとバッテリ充電LED、中央下にWindowsボタン。キーボードドック正面側面左側にステータスLEDとタッチペンソケット
左側面/上側面(本体)。左側面に左スピーカー。上側面にマイク、音量±ボタン、音声入出力
右側面。本体、電源スイッチ、画面回転ロックボタン、microSDカードスロット、Micro USB 3.0、Mini HDMI出力、右スピーカー。キーボードドック、電源入力、USB 2.0×2。キーボードドック左側はなにもない
斜め後ろから。本体をキーボードドックの凹で支えているのが分かる
キーボードドック。テンキーなしのアイソレーションキーボード。いびつなキーもなく使いやすい。タッチパッドは1枚プレートタイプ。キーレイアウトは同時に発表のあったNA511Eと同じ
キーボードドック裏。内蔵HDDはパネルを外さないと交換できないようだ
ドッキング部分。中央がコネクタ、左右の凸凹は位置合わせと固定用。信号的にはUSB 2.0接続
スタンドモード。パネルが最大295度回転しスタンドモードに対応。また270~295度の時、自動的にキーボードロックがかかる仕掛けが入っている
キーピッチ。実測で約19mmだが、仕様上は18.41mmでストロークは1.5±0.2mm
付属のACアダプタとタッチペン。サイズ約87×35×26mm(同)、重量139gと小型だ
本体のみの重量は実測で709gと仕様より若干軽い
HDDを内蔵したキーボードの重量は実測で895g。本体と合わせて1,604gとなる

 本体のタブレット部は、一般的な10~11型にありがちなデザインと質感で特に変わっている部分はない。正面中央上に103万画素のWebカメラ、その左にカメラランプとバッテリ充電LED、中央下にWindowsボタン。上側面にマイク、音量±ボタン、音声入出力。左側面は左スピーカーのみ、右側面は電源スイッチ、画面回転ロックボタン、microSDカードスロット、Micro USB 3.0、Mini HDMI出力、右スピーカーと、コネクタ類は音声入出力以外全て右側に集中している。下側面はキーボードドック用のコネクタや電源入力などがある。

 キーボードドックは、右側面に電源入力とUSB 2.0が2つ。左側面には何もない。正面側面左寄りに各ステータスLEDとタッチペンソケットを配置。付属のACアダプタはサイズ約87×35×26mm(同)、重量139gと小型だ。

 合体時、液晶パネルは最大295度回転し、いわゆるスタンドモードにも対応している。270~295度の時、自動的にキーボードロックがかかり、影響がない仕掛けも盛り込まれている。

 重量は本体のみの実測で709g、合体時に1,604g。前者の場合は気にならないものの、後者の場合、持ち上げるとズッシリ重い。合体時のデザインはシンプルかつブラックとカッコいいだけに、もう少し軽くなって欲しいところ。この点は、内蔵バッテリの容量とのトレードオフなので、仕方ない部分でもある。

 11.6型フルHDの液晶パネルは文字もそれなりの大きさで見え良好だ。付属のタッチペンを使わなくても細かい部分を指で操作できる。IPS式で視野角も広く、明るさ・コントラスト・発色も問題なし。クオリティの高いパネルが使われていると思われる。10点タッチもスムーズだ。

 キーボードドック側のキーボードはアイソレーション式で、仕様上、キーピッチ18.41mmでストロークは1.5±0.2mm。レイアウトは同時に発表のあったNA511Eと同じで、いびつな部分もなく普通に操作できる。ただ試作機だからかも知れないが、数字など上部のキーが少したわむのが気になった。

 ノイズや振動、発熱に関しては、試用した限り特に気にならなかった。サウンドは左右にスピーカーがあり、ステレオ感が得られるものの、出力が全く足らないためか細い音で鳴る。せっかくステレオスピーカーを搭載しているのに残念だ。

8型Windowsタブレットより少しだけ高性能

 OSは64bit版Windows 8.1 Update。8型のWindowsタブレット(の多く)とは違い、メモリが4GBあるので、いろいろと操作しても余裕がある。powercfg/aで調べたところInstantGoは未対応だった。

 初期起動のスタート画面は2画面。「楽天gateway」以降がプリインストールとなる。「Yahoo!天気・災害」までの5つがWindowsストアアプリ、最後の「PCお役立ちナビ」がデスクトップアプリだ。

 デスクトップは同社お馴染みの壁紙とアプリへのショートカットが並んでいる。どのモデルも共通なので、ユーザーは移行する時、安心感があるだろう。これだけ長年同じパターンというのも珍しい。

 eMMCは64GBの「Hynix HCG8e」。C:ドライブのもの1パーティションで約43GBが割り当てられ、空きは37GB。回復パーティションに15GBも割り当てられているので、かなり容量が減っている。キーボードドック側のHDDは500GB/5,400rpmの「HGST HTS 545050A7E680」が使われていた。空きは約466GB。デバイスマネージャの表示からUSB接続なのが分かる。Wi-FiとBluetoothはRealtek製だ。

スタート画面1。Windows 8.1標準
スタート画面2。楽天gateway以降がプリインストール
起動時のデスクトップ。同社お馴染みの壁紙とアプリへのショートカットが並んでいる
デバイスマネージャ/主要なデバイス。eMMCは64GBの「Hynix HCG8e」。キーボードドック側のHDDはUSB接続の「HGST HTS 545050A7E680」。Wi-FiとBluetoothはRealtek製
ストレージのパーティション。eMMCはC:ドライブのみの1パーティションで約43GBが、HDDのD:ドライブも1パーティションで約466GB割り当てられている

 プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「Fresh Paint」、「NAVITIME」、「Yahoo!天気・災害」、「Bing翻訳」、「楽天gateway」など、一般的なので画面キャプチャは掲載していない。

アプリ画面1
アプリ画面2
アプリ画面3

 デスクトップアプリは、「PCお役立ちナビ」、「おすすめアプリケーションのインストール」といった同社お馴染みのソフトウェアと、Intelなどのツール系となり、特に本機固有のものはない。

PCお役立ちナビ
おすすめアプリケーションのインストール
Elan Smart-Pad

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、「PCMark 8 バージョン2」、「BBench」の結果を見たい。「CrystalMark」のスコアも掲載した(4コア4スレッドで条件的には問題ない)。

 winsat formalの結果は、総合 4.4。プロセッサ 6.4、メモリ 5.9、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 4.4、プライマリハードディスク 6.95。PCMark 8 バージョン2は1279。CrystalMarkは、ALU 29542、FPU 25331、MEM 27695、HDD 20811、GDI 5508、D2D n/a、OGL 3478。参考までにGoogle Octane 2.0は4275だった。

 先日ご紹介したドスパラ「Diginnos Tablet DG-D08IW」などで使われている、Atom Z3735F(4コア4スレッド、クロック 1.33GHz/1.83GHz)より若干であるが全ての項目においてスコアが上回っている。これらの積み重ねもあるのだろうか、操作しても気持ち速い印象を受ける。

 BBenchは省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの測定で、タブレット単独時はバッテリ残5%で21,864秒/6.1時間。キーボードドックを付けた状態では、バッテリ残5%で34,810秒/9.7時間。

 前者はほぼ仕様通り。後者は仕様上の約11.5時間にはとどかなかったものの、単独でもドッキング時でもそれなりの長時間使用が可能だ。ただバックライト最少は暗く、実際はもう少し短くなると思われる。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 4.4。プロセッサ 6.4、メモリ 5.9、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 4.4、プライマリハードディスク 6.95
PCMark 8 バージョン2のスコアは1279
BBenchは省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果。タブレット単体はバッテリ残5%で21,864秒/6.1時間
同じ条件でキーボードドックに付けた状態のBBenchの結果。バッテリ残5%で34,810秒/9.7時間
CrystalMarkの結果。ALU 29542、FPU 25331、MEM 27695、HDD 20811、GDI 5508、D2D n/a、OGL 3478

 以上のようにエプソンダイレクトの「Endeavor TN30E」は、11.6型フルHDの液晶パネルとCeleron N2940を搭載した2-in-1だ。メモリ4GBなので多くの8型よりも余裕がある。実測のバッテリ駆動時間で単体使用6.1時間、ドッキング時9.7時間と、長時間運用できるのも魅力的だ。

 ドッキング時約1.6kgの重量は、同クラスのノートPCと比較すると重めだが、10万円を切る2-in-1は競合製品も少なく、はまる人にはピッタリはまりそうな1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/