西川和久の不定期コラム
エプソンダイレクト「Endeavor TN30E」
~Celeron N2940を搭載した11.6型フルHDの2-in-1
(2014/12/9 11:05)
エプソンダイレクトは12月9日、同社としては初の2-in-1を発表、同日より受注を開始する。11.6型で10万円未満の2-in-1は競合製品も少なく、なかなか面白い存在になりそうだ。編集部から試作機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。
8型タブレットと比較していろいろな面で余裕がある11.6型
同社はこれまで、11.6型フルHD(1,920×1,080ドット)のタブレット「Endeavor TN10E」(AMD A4-1200 APU/メモリ4GB/ストレージ128GB)を販売してきたが、今回の発表で10.1型WXGA(1,280×800ドット)タブレット「Endeavor TN20E」(Celeron N2807/メモリ2GB/ストレージ64GB)と、同社初の2-in-1「Endeavor TN30E」をラインナップに追加した。「Endeavor TN10E」も並行して販売を続けるため、10.1型タブレット、11.6型タブレット、11.6型2-in-1と、3種類のデバイスから用途や予算に応じて選べるようになる。
今回ご紹介するのは、2-in-1の「Endeavor TN30E」。主な仕様は以下の通りだが、「Endeavor TN10E」がそのまま2-in-1に変化したのではなく、AMDプラットフォームからIntelプラットフォームへと変わり、新設計モデルとなっている。
エプソンダイレクト「Endeavor TN30E」の仕様 | |
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プロセッサ | Celeron N2940(4コア4スレッド、クロック 1.83/2.25GHz、キャッシュ 2MB、TDP 7.5W/SDP 4.5W) |
メモリ | 4GB |
ストレージ | eMMC 64GB(オプション:HDD 500GB、5,400rpm/ドッキング時) |
OS | Windows 8.1 (64bit) |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics、Mini HDMI出力 |
ディスプレイ | 光沢タイプIPS式11.6型フルHD(1,920×1,080ドット)、10点タッチ対応 |
ネットワーク | IEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.0+HS |
インターフェイス | Micro USB 3.0×1、USB 2.0×2(ドッキング時)、Micro HDMI出力、microSDカードスロット、音声入出力、前面103万画素 |
サイズ/重量(本体) | 300×194×11mm(幅×奥行き×高さ)/約720g |
サイズ/重量(ドッキング時) | 300×222×26mm(同)/約1.6kg |
バッテリ駆動時間 | 約6.8時間(本体のみ)/約11.5時間(ドッキング時) |
その他 | タッチペン標準搭載 |
税別価格 | 79,000円(HDDなし)、HDD 500GBありは6,000円増 |
プロセッサはCeleron N2940。Celeronとしては珍しく4コア4スレッド。クロックは1.83GHzから最大2.25GHz。キャッシュは2MB。TDP/SDPはそれぞれ7.5W/4.5Wとなる。メモリは4GBを搭載。8型はメモリ2GBの製品が多いこともあり、Windowsを使用する上で優位点となる。OSは64bit版Windows 8.1 Update。BTOで64bit版Windows 8.1 Pro Updateも選択可能だ。
ストレージは本体側にeMMC 64GB。またオプション(税別6,000円)でキーボードドック側に500GBのHDDを搭載可能だ。ただしこのHDDはUSB 2.0接続(60MB/sec)となる。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics。外部出力用としてMini HDMIを装備している。ディスプレイは、IPS式光沢タイプの11.6型フルHD(1,920×1,080ドット)。10点タッチ対応で、タッチペンが標準搭載だ。
そのほかのインターフェイスは、IEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.0+HS、Micro USB 3.0×1、microSDカードスロット、音声入出力、前面103万画素。キーボードドック側に、USB 2.0×2と電源入力がある。できればキーボードドック側にもUSB 3.0が欲しかったところ。もしUSB 3.0対応であれば、先の内蔵HDDも含め、高速な外部ストレージを接続できただけに残念だ。
本体単独の場合のサイズは300×194×11mm(同)、重量約720g。ドッキング時はサイズ300×222×26mm(同)、重量約1.6kgとなる。後者の重量が同クラスのノートPCと比較して重めなのが惜しいが、キーボードドックにもバッテリを内蔵しているので仕方ないだろう。
バッテリ駆動時間は、JEITA測定法1.0で本体のみが約6.8時間、ドッキング時が約11.5時間となる。
税別価格は79,000円(HDDなし)。冒頭に書いたように、11.6型の2-in-1で10万円を切る競合機種はほとんどなく、「おっ!」っと思う人も多いのではないだろうか。
本体のタブレット部は、一般的な10~11型にありがちなデザインと質感で特に変わっている部分はない。正面中央上に103万画素のWebカメラ、その左にカメラランプとバッテリ充電LED、中央下にWindowsボタン。上側面にマイク、音量±ボタン、音声入出力。左側面は左スピーカーのみ、右側面は電源スイッチ、画面回転ロックボタン、microSDカードスロット、Micro USB 3.0、Mini HDMI出力、右スピーカーと、コネクタ類は音声入出力以外全て右側に集中している。下側面はキーボードドック用のコネクタや電源入力などがある。
キーボードドックは、右側面に電源入力とUSB 2.0が2つ。左側面には何もない。正面側面左寄りに各ステータスLEDとタッチペンソケットを配置。付属のACアダプタはサイズ約87×35×26mm(同)、重量139gと小型だ。
合体時、液晶パネルは最大295度回転し、いわゆるスタンドモードにも対応している。270~295度の時、自動的にキーボードロックがかかり、影響がない仕掛けも盛り込まれている。
重量は本体のみの実測で709g、合体時に1,604g。前者の場合は気にならないものの、後者の場合、持ち上げるとズッシリ重い。合体時のデザインはシンプルかつブラックとカッコいいだけに、もう少し軽くなって欲しいところ。この点は、内蔵バッテリの容量とのトレードオフなので、仕方ない部分でもある。
11.6型フルHDの液晶パネルは文字もそれなりの大きさで見え良好だ。付属のタッチペンを使わなくても細かい部分を指で操作できる。IPS式で視野角も広く、明るさ・コントラスト・発色も問題なし。クオリティの高いパネルが使われていると思われる。10点タッチもスムーズだ。
キーボードドック側のキーボードはアイソレーション式で、仕様上、キーピッチ18.41mmでストロークは1.5±0.2mm。レイアウトは同時に発表のあったNA511Eと同じで、いびつな部分もなく普通に操作できる。ただ試作機だからかも知れないが、数字など上部のキーが少したわむのが気になった。
ノイズや振動、発熱に関しては、試用した限り特に気にならなかった。サウンドは左右にスピーカーがあり、ステレオ感が得られるものの、出力が全く足らないためか細い音で鳴る。せっかくステレオスピーカーを搭載しているのに残念だ。
8型Windowsタブレットより少しだけ高性能
OSは64bit版Windows 8.1 Update。8型のWindowsタブレット(の多く)とは違い、メモリが4GBあるので、いろいろと操作しても余裕がある。powercfg/aで調べたところInstantGoは未対応だった。
初期起動のスタート画面は2画面。「楽天gateway」以降がプリインストールとなる。「Yahoo!天気・災害」までの5つがWindowsストアアプリ、最後の「PCお役立ちナビ」がデスクトップアプリだ。
デスクトップは同社お馴染みの壁紙とアプリへのショートカットが並んでいる。どのモデルも共通なので、ユーザーは移行する時、安心感があるだろう。これだけ長年同じパターンというのも珍しい。
eMMCは64GBの「Hynix HCG8e」。C:ドライブのもの1パーティションで約43GBが割り当てられ、空きは37GB。回復パーティションに15GBも割り当てられているので、かなり容量が減っている。キーボードドック側のHDDは500GB/5,400rpmの「HGST HTS 545050A7E680」が使われていた。空きは約466GB。デバイスマネージャの表示からUSB接続なのが分かる。Wi-FiとBluetoothはRealtek製だ。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「Fresh Paint」、「NAVITIME」、「Yahoo!天気・災害」、「Bing翻訳」、「楽天gateway」など、一般的なので画面キャプチャは掲載していない。
デスクトップアプリは、「PCお役立ちナビ」、「おすすめアプリケーションのインストール」といった同社お馴染みのソフトウェアと、Intelなどのツール系となり、特に本機固有のものはない。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、「PCMark 8 バージョン2」、「BBench」の結果を見たい。「CrystalMark」のスコアも掲載した(4コア4スレッドで条件的には問題ない)。
winsat formalの結果は、総合 4.4。プロセッサ 6.4、メモリ 5.9、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 4.4、プライマリハードディスク 6.95。PCMark 8 バージョン2は1279。CrystalMarkは、ALU 29542、FPU 25331、MEM 27695、HDD 20811、GDI 5508、D2D n/a、OGL 3478。参考までにGoogle Octane 2.0は4275だった。
先日ご紹介したドスパラ「Diginnos Tablet DG-D08IW」などで使われている、Atom Z3735F(4コア4スレッド、クロック 1.33GHz/1.83GHz)より若干であるが全ての項目においてスコアが上回っている。これらの積み重ねもあるのだろうか、操作しても気持ち速い印象を受ける。
BBenchは省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの測定で、タブレット単独時はバッテリ残5%で21,864秒/6.1時間。キーボードドックを付けた状態では、バッテリ残5%で34,810秒/9.7時間。
前者はほぼ仕様通り。後者は仕様上の約11.5時間にはとどかなかったものの、単独でもドッキング時でもそれなりの長時間使用が可能だ。ただバックライト最少は暗く、実際はもう少し短くなると思われる。
以上のようにエプソンダイレクトの「Endeavor TN30E」は、11.6型フルHDの液晶パネルとCeleron N2940を搭載した2-in-1だ。メモリ4GBなので多くの8型よりも余裕がある。実測のバッテリ駆動時間で単体使用6.1時間、ドッキング時9.7時間と、長時間運用できるのも魅力的だ。
ドッキング時約1.6kgの重量は、同クラスのノートPCと比較すると重めだが、10万円を切る2-in-1は競合製品も少なく、はまる人にはピッタリはまりそうな1台と言えよう。