西川和久の不定期コラム
デル「Latitude 10」
~13時間もバッテリ駆動可能なWindows 8タブレット
(2013/1/31 00:00)
デルは1月18日、従来法人向けに販売していたWindows 8タブレット「Latitude 10」を個人向けにも発売開始した。10.1型でClover Trailを搭載し、約658gとパーソナル用途としても興味深いスペックだ。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けする。
10.1型で約658gのコンパクトなWindows 8タブレット
プロセッサはAtom Z2760。2コア4スレッドで、クロックは状況に応じて変化し、最大1.8GHz。キャッシュは各コアに対して512KBとなる。Z型番なので、グラフィックスはもちろん、ビデオデコード/エンコードエンジン、カメラ撮影処理エンジン、暗号化エンジン、I/Oなどを装備したSoCタイプのプロセッサだ。
メモリは仕様上最大2GBとなっている。また64bitには非対応となっており、搭載OSは32bit版のWindows 8となる。フラッシュストレージは64GBだ。
グラフィックスはプロセッサ内蔵「Intel Graphics Media Accelerator」。外部出力はMini HDMI出力を搭載。液晶パネルは光沢タイプの10.1型IPS式で、解像度は1,366×768ドット。5点マルチタッチ対応だ。オプションでスタイラスペンにも対応する。
ネットワークはIEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0+LE。有線LANに関しては、後述するドッキングステーション側にポートがある。
そのほかのインターフェイスは、USB 2.0×1、Micro USB(充電用)、ドックコネクタ、前面200万画素/背面800万画素カメラ(LEDフラッシュ付き)、SDカードスロット、音声入出力。USBが3.0でなく、2.0なのはプロセッサ側の仕様で仕方ない部分だ。
ACアダプタのコネクタ形状からも分かるように、通常はドックコネクタからの充電となるが、充電用のMicro USBも搭載しているため、市場でよく流通しているさまざまな充電器から充電可能となる。
デル「Latitude 10」の仕様 | |
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プロセッサ | Atom Z2760(2コア/4スレッド、1.5GHz、 最大1.8GHz、キャッシュ512KB×2) |
メモリ | 2GB |
フラッシュストレージ | 64GB |
OS | Windows 8(32bit) |
ディスプレイ | IPS方式パネル10.1型液晶ディスプレイ(光沢)、 1,366×768ドット、5点タッチ対応 |
グラフィックス | Intel Graphics Media Accelerator (PowerVR SGX 545相当) |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0+LE |
インターフェイス | USB 2.0×1、Micro USB(充電用)、 ドックコネクタ、前面200万画素/背面800万画素カメラ(LEDフラッシュ付き)、 SDカードスロット、音声入出力、Mini HDMI出力 |
ドック | Gigabit Ethernet、USB 2.0×4、HDMI出力 |
サイズ/重量 | 274×176.6×10.5mm(幅×奥行き×高さ)/約658g |
バッテリ | 2セルバッテリ(30Wh) |
直販価格 | 54,980円 |
サイズは274×176.6×10.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約658g。9.7型のiPadと比較すると、画面のアスペクト比の違いから、幅は少し大きく、奥行きは若干短い。重量は659g vs 650g(Wi-Fiモデル)でほぼ同じだ。バッテリは着脱式で2セル(30Wh)と、オプションで倍の4セル(60Wh)も選択できる。バッテリ駆動時間は非公開であるが、後半のベンチマークテストで驚くべき結果となった。
BTOはWindows 8のエディション、2セル(30Wh)か4セル(60Wh)のバッテリ、Microsoft Officeの有無などが選択可能だ。
また下位モデルとして「Latitude 10 Essentials」も用意され、49,980円と若干安価なものの、その分、スタイラスペン/バッテリ交換が非対応となり、背面カメラのLEDフラッシュやMicro USB、Mini HDMI出力が非装備となる。
まず第1印象は、10.1型パネル搭載ということもあり、一般的なWindows用タブレットより、かなり小さく薄く、そして軽く感じる。実際持ち上げた時の感触はiPadと大差無い。若干、液晶のフチが広いのが残念なところか。
左サイドにボリューム、右サイドにMini HDMI出力、USB 2.0、音声入出力。上サイドに回転ロックボタン、電源スイッチ、SDカードスロット、下サイドにドックコネクタ、充電用Micro USBがある。ACアダプタのサイズは約8.6×2.4×3.6cm。
IPS式液晶パネルのクオリティは抜群だ。最近では安価なiPadやAndroid機の方が高クオリティのパネルを搭載しているため、安価なWindowsタブレットはどうしても見劣りする部分だった。しかしLatitude 10は、発色はもちろん、視野角、コントラスト、明るさも十分対抗できる内容になっている。唯一残念なのは、いわゆる「Retina」相当の解像度では無いこと。この点は、本機に限らずWindowsマシン全体の今後の課題と言えるだろう。
タブレットとして珍しいのは、バッテリ交換が可能になっていることだ。詳しくは後述するが、ほぼ半日動作できてしまうため、交換の必要性が低いかもしれない。
タッチは5点とは言え、非常にスムーズでWindows 8を快適に操作できる。振動、ノイズ、発熱に関しては全く問題ないレベルだ。サウンドはサイズを考えると頑張っているものの、最大出力にすると、ソースによっては音が若干歪む。カメラに関してはまだiPadの画質レベルにはなっておらず、今後に期待と言ったところ。
今回は同時に「Dell モバイル・ドッキングステーション」も試す機会を得たので、紹介したい。価格は12,980円だ。なお、下位モデルの「Latitude 10 Essentials」のBTOでは、項目自体が無く、選択できないので注意が必要だ。
フロントにUSB 2.0×1、音声入出力。リアに電源入力(ドックコネクタ)、USB 2.0×3、Gigabit Ethernet、HDMI出力を装備。Gigabit Ethernetに関しては内部でUSB接続のモジュールを使用している。重量は実測で822g。Latitude 10を装着しても適度に安定感がある。またドックコネクタの部分は手前に傾き、着脱時により簡単に操作ができるようになっている。
この状態で充電可能なのはもちろんだが、USBもしくはBluetoothを使い、マウスとキーボードを接続すると、小型デスクトップPCに変身する。
Windows 8の場合、主にWindowsストアアプリを使おうとしても、少し込み入った操作をした途端、デスクトップ環境に戻され、この場合、タッチだけで操作するのはかなり厳しい。できれば揃えたいオプションだ。
驚きのバッテリ駆動12時間越え!
試用機のOSは32bit版Windows 8 Pro。標準ではWindows 8だが、BTOでエディションの選択が可能だ。メモリはAtom Z2760の仕様上最大の2GBを搭載済みだ。
ストレージはデバイスマネージャによると「MMC Memory Card」とあるだけで、詳細は不明だ。C:ドライブのみの1パーティションで約53.4GB割当てられ、空き40.1GB(ただしWindows Updateがかかってしまったため、若干異なる可能性がある)。このクラスで扱うデータを考えると何とかなるだろう。またクラウドやSDカードにデータを逃がす方法もある。
初期起動時のスタート画面は、1画面+α。「新しいDellにWindows8入門」と「Skype」が追加されている。デスクトップはごみ箱のみ。
Wi-Fiモジュールは「Broadcom 802.11abgn Wireless SDIO Adpter」。またリストに表示されている「LAN7500 USB 2.0 to Ethernet 10/100/1000 Adapter」はドッキングステーション側のものだ。
プリインストールされているソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「Dell Windows 8をお使いになる前に」、「Skype」だけだ。ストレージの容量を考慮してか非常に少ない。
デスクトップアプリは、「Dell Backup and Recovery」と「Windows Essentials 2012」。Dell Backup and Recoveryは、一見、Windowsストアアプリに見えるが、UIを似せたデスクトップアプリだった。
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7とBBenchの結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(今回の条件的には特に問題はない)。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 3.3。プロセッサ 3.4、メモリ 4.7、グラフィックス 3.7、ゲーム用グラフィックス 3.3、プライマリハードディスク 5.8。PCMark 7は1268 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 12043、FPU 9392、MEM 9593、HDD 9672、GDI 2039、D2D 488、OGL 7843。
以前レポートしたClover Trail搭載、日本HP「ENVY x2 11-g005TU スタンダードモデル」に近い結果となっている。Atomプロセッサなので全体的に低いスコア(ALU/FPU/MEMはCore i7-3517Uの4分の1程度)となっているものの、Windowsストアアプリはストレス無く使え、デスクトップ環境も軽めの作業であれば普通に操作できる。またOpenGLだけはIntel HD Graphics 4000より速いようである。
BBenchは、バックライト最小+1(最小にするとバックライトOFFになる)、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/ONでの結果だ。バッテリの残3%で47,819秒/約13.3時間だった。
つまり、驚くことに12時間を軽く越えたことになる。先述のとおり、タブレットとしては珍しくバッテリ交換も可能なため、Windowsが動くPCとしては、桁違いに長時間バッテリ駆動が可能なモデルだ。これまでいろいろなPCを試用して来たが、これだけ長時間動くのは初めてだ。
以上のように、デル「Latitude 10」は、Atom Z2760を搭載し、重量が約658gと、スペック上では比較的平凡なWindows 8タブレットだが、標準の2セル(30Wh)のバッテリで、何と13.3時間動いてしまう長時間バッテリ駆動なタブレットだ。ユーザーにとってこのバッテリ駆動時間は最大の魅力となるだろう。
プロセッサがAtomなので処理速度は大きく期待できないものの、IPS液晶はキレイで、価格も直販で54,980円と安価だ。ある意味、ディスプレイの解像度以外iPadと大差ないともいえる。長時間駆動が可能なので、外出先などでコンテンツを大量に消費するユーザーにとって、最適な1台と言えるだろう。