西川和久の不定期コラム
「Cosmo Communicator」ついに登場。「Gemini PDA」からどのぐらい進化したをチェック
2020年1月30日 11:00
2019年12月21日、リンクスインターナショナルはPlanet Computers製「Cosmo Communicator」の国内販売を開始した。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
「Gemini PDA」からいろいろ性能/機能アップ!
ちょうど前モデルに相当する「Gemini PDA」も筆者が試用しているので、興味のある方はあわせてご覧いただきたいが、今回ご紹介する「Cosmo Communicator」はこの後継機となる。
クラムシェルで(ある意味フォルダブル?)、5.99型2,160×1,080ドット液晶とQWERTY配列メンブレンキーボード搭載という、主要な要素はGemini PDAとほぼ同じだが、プロセッサの強化、メモリ/ストレージの増量、背面に1.91型タッチOLEDの搭載、Nano SIM(eSIM互換/1つはmicroSDカードと排他)スロット×2、背面カメラの追加、キーボードバックライト、Androidが9になった点などが、おもな違いとなる。
また、以前はMicro SIM/microSDカードを入れるのに、付属の「COVER REMOVAL TOOL」を使い、本体裏側をこじ開ける仕組みだったが、今回Nano SIM/microSDカードスロットに関しては、一般的なスマートフォン同様、イジェクトピンを使って側面から出し入れ可能になった。従来の機構は“開ける”と言うより“こじ開ける”的な感じだったので、本機の方がより安心だ。
おもな仕様は以下のとお。
Planet Computers「Cosmo Communicator」の仕様 | |
---|---|
SoC | MediaTek Helio P70(Arm Cortex-A53+Arm Cortex-A73/最大2.1GHz/Octaコア、Mali-G72 MP3) |
メモリ | 6GB |
ストレージ | eMMC 128GB |
OS | Android 9 |
ディスプレイ | 5.99型2,160×1,080(403ppi)、マルチタッチ対応/1.91型タッチOLED(外部スクリーン) |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5 |
SIM | Nano SIM(eSIM互換)スロット×2 |
対応バンド | GSM 850/900/1,800/1,900MHz CDMA 850/1900MHz BC0 BC1+ EVDO WCDMA 900/2100MHz LTE 1/2/3/4/5/7/8/11/17/18/19/26/28A/28B/41/71 |
インターフェイス | USB Type-C×2、microSDカードスロット(nanoSIM一つと排他)、3.5mmヘッドホンジャック、ステレオスピーカー、マイクロフォン |
センサー | 指紋センサー、AGPS、加速度センサー、コンパス、光センサー、ジャイロ |
カメラ | 前面500万画素、背面2,400万画素 |
サイズ/重量 | 171.4×79.3×17.3mm(幅×奥行き×高さ)/重量約326g |
バッテリ | 4,220mAh(リチウムイオン) |
税別店頭予想価格 | 88,000円前後 |
SoCはMediaTek Helio P70。Arm Cortex-A53+Arm Cortex-A73/最大2.1GHz、OctaコアでGPUとしてMali-G72 MP3を内包している。あまり知らないSoCと言うこともあり調べたところ、こちらに詳細が載っている。
これによれば、カメラISPは2,000万+1,600万画素/3,200万画素/4,800万画素、GPUの最大クロック900MHz、ディスプレイ最大解像度2,160×1,080ドットなどとなっている。また、ビデオエンコーダはH.264、ビデオ再生支援はH.264/H.265(HEVC)に対応。さらに、AIアクセラレータが搭載されているようだ。
メモリは6GB、ストレージはeMMC 128GB、OSはAndroid 9。前モデルが4GB/64GBだったので結構な増量だ。
ディスプレイは5.99型2,160×1,080(403ppi)、マルチタッチ対応で、これは従来と同じだが、背面に1.91型タッチOLEDを搭載している。写真からもわかるように、いろいろな情報が表示され、蓋を閉めたままでもそれなりに状況把握ができ便利だ(以前はLED 5つによる発光パターンのみ)。
ネットワークはIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5。SIMはNano SIM(eSIM互換)スロット×2。対応バンドは表のとおり。LTEの対応バンドが増えている。
インターフェイスは、USB Type-C×2、microSDカードスロット、3.5mmヘッドフォンジャック、ステレオスピーカー、マイクロフォン。ただし、microSDカードスロットはNano SIMのうち1つは排他となる。カメラは前面500万画素、背面2,400万画素。センサーは指紋センサー、AGPS、加速度センサー、コンパス、光センサー、ジャイロを搭載。
本機最大の特徴であるキーボードは、日本語かな印字でバックライト搭載のQWERTY配列。フットプリント的にキーピッチは狭くなっているものの、このタイプが好きな人にはたまらない一品だろう。
4,220mAhのリチウムイオンバッテリを内蔵し、サイズ171.4×79.3×17.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量約326g。前モデルと比較して若干厚みと重量が増えているものの、ほぼ同じだ。税別店頭予想価格は88,000円前後。13,000円ほど高くなっている。メモリ/ストレージの増量、背面ディスプレイ、バックライト、背面カメラ追加など物理的にスペックアップしている部分があるので妥当なところか。
筐体は多くの部分が金属製でダークシルバー。左右など一部プラスチックでブラックと言った感じでルックスは悪くない。ただし、扉の写真やiPhone Xと比較している写真からもわかるように、幅79.3mmは結構広く、重量も実測で327gと重い。握って電話として使うには少々つらそうだ。
前面は左上にあるのが前面カメラ。左は3.5mmジャック、Type-C。パネル側面にSIMカードスロット。奥がNano SIM(SIM1)、手前がNano SIM(SIM2)/microSD。右は電源ボタン、Type-C。背面は背面カメラ、1.91型タッチOLED、トグルスイッチ兼指紋センサーを配置。付属品はイジェクトピン、USBケーブル、ACアダプタ(5V/2A)。横からの写真でわかるようにヒンジの部分が足代わりになり、若干キーボードが傾き、打ちがしやすくなっている。パネルの角度はこの位置で固定だ。
5.99型2,160×1,080のメインディスプレイは、明るさ、コントラスト、発色、視野角すべて良好。なかなか高品質のものが使われている。403ppiあるためジャギなども見えない。もちろんタッチも問題ない。
背面サブディスプレイの1.91型タッチOLEDは、一部写真を掲載したが、表示や通知だけでなくタッチで再生などもコントロールもでき、以前のLED 5つよりグッと便利に、そして蓋を閉じたままという意味で、スマートフォンとしても使いやすくなっている。写真は縦表示だが、横表示にも対応する(サブディスプレイ/設定/画面の向き)。個人的に前モデルと比較して、最大の改善点はここだと思っている。
なおこの背面サブディスプレイは、ファームウェアが本体とは別になっており、後述するCover Display Assistantでアップデートを行なうことができる。たまたま試用中にアップデートがあったので実行したところ20分以上かかるため、時間、そしてバッテリに余裕がある時に行なった方がよい。
本機最大の特徴であるQWERTY配列メンブレンキーボードは、キーピッチは約14mmと狭いものの、ストロークもそこそこあり、軽めだが打鍵感もなかなか良い。また変な並びもなく、素直に配置されているのには感心する。追加となったキーボードバックライトは、暗いところで使う時にありがたい。一応刻印はあるが、おもに使いそうな機能キーは以下のとおり。
・Fn+N バックライト+
・Fn+B バックライト-
・Fn+V ボリューム+
・Fn+C ボリューム-
・Fn+R 画面キャプチャ
・Shift+Fn+N キーボードバックライト+
・Shift+Fn+B キーボードバックライト-
カメラは少し試してみたが、背面/前面ともにとりあえず写る程度のもので今回作例は省略した(アプリの機能もほぼない)。ここはもう少し頑張って欲しいところ。
振動やノイズはもちろん皆無。発熱もとくに気にならなかった。サウンドは両側面のスリットにスピーカーが埋め込まれている。かなりパワーがあり、このサイズのデバイスとしては鳴りっぷりも良い。Bluetoothのコーディックは、SBC/AAC/aptX(HD)/LDAC対応だ(開発者向けオプションより)。
セットアップ
初期設定は、一般的なAndroid搭載スマートフォンと比較して、ネットワーク、Googleアカウントなどの項目は一切なく、言語/キーボードレイアウトを選ぶのみと、簡素化されている。Wi-Fi/SIM(APN)、Googleアカウントなどは、後から必要に応じて行なうことになる。本機の購入層を考えるとこれはこれでアリだろう。
前モデルではCOVER REMOVAL TOOLを使い、パネルごと外す必要があったSIM入れ替えは、普通にイジェクトピンでスロットにアクセスできるようになった。SIMを挿入するとパネルが開くので、それに従い操作すれば簡単に開通する。またeSIMにも対応しており必要に応じてeSIM Walletを使い設定する。
指紋センサーは背面のトグルスイッチの部分にあり、パターン/PIN/パスワードの設定後、指紋登録が可能になる。登録は、開いたまま、つまりキーボードが出たまま操作するので、少しやりにくいが、設定自体は簡単に行なえる。認識も瞬時だ。
初期設定も含め玄人仕様!?
初期起動後のホーム画面は1画面。フォト、連絡先、Gmail、Airmail、Chrome、時計、ファイルマネージャー、Notes。Dockにカメラ、電話、メッセージ、Agendaを配置。Androidのバージョンは9。ストレージは128GB中11.22GBが使用中だ。
上から下へのスワイプで通知パネル、下から上へのスワイプでアプリメニュー、壁紙長押しで壁紙/ウィジェット/設定、そしてPlanetキー(左Alt)でApp Barを表示する。画面分割にも対応。多くはAndroidそのものなので、とくに操作に難しい部分はない。
IMEはGboardが入っているものの、かな入力になってしまうので、筆者の場合は、Google日本語入力を後からインストールしてローマ字入力とした。
設定/Cosomo Settingsは、ナビゲーションバーを左へ、ナビゲーションバーを消す、開いたときにApp Barを表示、電源ボタンでスピーカーフォンモードへ、LEDisonを背面サブディスプレイで表示、eSIMをSIM2で使用、背面サブディスプレイオフ……など、Cosmo Communicator固有の設定が行なえる(ただしすべて英語表記)。
アプリは、「カメラ」、「カレンダー」、「ドライブ」、「ハングアウト」、「ファイル」、「ファイマネージャー」、「フォト」、「ブラウザ」、「マップ」、「メッセージ」、「緊急速報メール」、「時計」、「設定」、「電卓」、「電話」、「連絡先」、「Agenda」、「Airmail」、「App Bar」、「Chrome」、「Cover Display Assistant」、「Data」、「Duo」、「eSIM Wallet」、「FMラジオ」、「Gmail」、「Google」、「LEDison」、「Notes」、「Planet Voice Assistant」、「Planetキーボード」、「PlanetSyncAdapter」、「Playストア」、「Play Music」、「Playムービー&TV」、「SIM Toolkit」、「YouTube」。
このなかでAgenda、Airmail、App Bar、Cover Display Assistant、Data、eSIM Wallet、LEDison、Notes、Planet Voice Assistant、Planetキーボード、PlanetSyncAdapter、SIM Toolkitなどが本機固有のアプリで、おもにPIM(Personal Information Manager)系と設定系に分かれている。一部全画面表示可能なものもあり、画面を広く使うこともできる。
全般的に設定は必要に応じて、本機固有の部分は英語表記が多いなど、普通の人が使うには結構ハードルが高く、どちらかといえば玄人向けの製品といえる。
ウィジェットは、「カレンダー」、「ドライブ」、「ブラウザ」、「ホーム画面のヒント」、「マップ」、「メッセージ」、「時計」、「設定」、「連絡先」、「Agenda」、「Airmail」、「Chrome」、「Gmail」、「Google」、「Google Play Music」。
爆速ではないものの、実用レベルでは困らない性能
ベンチマークテストは簡易式だが「AnTuTu Benchmark」と「Google Octane 2.0」を使用した。AnTuTu Benchmarkは186,280、Google Octane 2.0は9,965。Google Octaneは筆者が合格ラインとしている1万に近くまずまず。価格帯としてはもう少し速いにこしたことはないが、実際操作しても遅いと思うことはとくになかった(ゲーム系は除く)。
バッテリベンチマークは、輝度/音量50%、キーボードバックライトOFFの状態で、フルHD動画をWi-Fi経由で再生。約10時間半ほどで電源が落ちた。短くもないが、長くもないと言ったところか。
以前「Gemini PDA」のときに書いたのとおおむね変わらないが、短期間使った感想など。ここ数年、筆者はスマートフォンに関してはほとんど電話はせず、意思疎通はメールとメッセージで行なっている。基本1人で仕事をしているのため、下手すると1週間誰とも話してないなんてことも(笑)。
そう言った意味でスマートフォンはSNSやニュース、音楽/動画などコンテンツ消費が主となっている。つまり、LTE内蔵超小型タブレット的な使い方だ。このような用途であれば本機のような物理的キーボードタイプも良さそうだが、実際はそうでもなかった。つまり“見るだけ”なのにキーボードが開いている状態が邪魔なのだ。とくに横位置では画面が狭いため、縦位置にするとこのキーボードは何の役にもたたない存在となってしまう。
また、これは本機の問題ではないが、相変わらずAndroidアプリは横表示の弱いものが多く、スマートフォンUIのまま横に広がるだけとなる。画面分割した方が見やすいほどだ。
普通のスマートフォンと違う点として、縦表示は自動的に切り替わらず、App Barの「Force Rotate」を使って明示的に指示する必要がある。ここは「ん?」となる部分だ。
すでにフリック入力の方が早く、長文も書ける世代が多く、物理キーボードにこだわりを持つのは結構年齢層が限られる。そのど真ん中ともいえる筆者がこう思うのだから、欲しい人は限られるだろう。ニッチな市場であるが、されど……と言う感じだろうか。
以上のように、Planet Computers「Cosmo Communicator」は、MediaTek Helio P70/6GB/128GB/5.99型2,160×1,080を搭載し、QWERTY配列メンブレンキーボードを採用したPDAだ。1.91型とはいえ、背面サブディスプレイによってスマートフォン的な操作もしやすくなった。
昨今のハイエンドスマートフォンと比べるとさすがにパワーは見劣りするものの、通常用途では困らない範囲で作動する。スマートフォンに物理的なキーボードが魅力的だと思うユーザーに是非試して欲しい1台だ。