実録! 俺のバックアップ術
【特別版】Windows 7サポート終了直前! Synology製NASによるイメージ/ファイルバックアップでトラブルを回避
2019年5月21日 12:00
Windows 7のサポート終了が2020年1月14日と目前に迫ってきていることもあり、PCの刷新を考えている人も少なくないことだろう。Windows 7世代のPCはハードウェアの仕様的にもかなり古くなっているので、ハードウェアごとWindows 10へと移行するのが理想だ。とはいえ、予算的に厳しい場合には、OSだけのアップグレードだけとなることもある。
旧世代PCのOSをアップグレードする場合、トラブルが発生する場合もある。多くの場合は、とくにトラブルなくアップグレードできるが、まれにハードウェアとの互換性が取れずに正常起動しなくなったり、操作ミスによって保存データを消失させてしまう可能性もある。そういったトラブルに備えておくには、あらかじめPCの内蔵ストレージをバックアップしておくことが最善策となる。
もちろん、OSのアップグレードのさいだけでなく、普段からのバックアップが重要なのは言うまでもない。そして、OSアップグレード時だけでなく、普段からのPCのバックアップを省力化したいなら、NASを使ったバックアップがベストだ。そこで今回は、「実録! 俺のバックアップ術」の特別企画としてSynologyのNASを使った便利なバックアップ手段を紹介したい。
PCのトラブルに備えるには、NASを使ったバックアップが最強
PCのトラブルでも、とくに深刻なトラブルが保存しているデータの消失だ。データが消失する原因としては、ハードウェアの故障、ソフトウェアのトラブル、ウィルス感染、誤操作などさまざまなものが考えられる。もしそれが、失われては困る仕事のデータや家族の写真だったりしたら、取り返しがつかない事態となってしまう。
そういったデータ消失のトラブルに備えるには、普段からのバックアップが最善の対策となる。ただ、実際に普段からPCをバックアップしているという人はかなり少ないのが実情だ。その理由としては、バックアップ作業が面倒というものが最も大きいと思う。確かに、PCに外付けストレージを接続してバックアップソフトを起動し、バックアップする、といった作業を毎日行なうのはかなり面倒だ。
そこでお勧めなのが、NASを使ったバックアップだ。NASを使ったバックアップでは、PCにいちいちバックアップ用ストレージを接続する手間が省けるだけでなく、NASに用意されているバックアップツールを利用すれば毎日のバックアップも自動で行なわれるため、手軽にデータの安全性を高めることが可能となる。複数のPCを利用している場合でも、1台のNASですべてのPCをバックアップできる。
SynologyのNASなら業務向けの「Active Backup for Business」が無償利用可能
市場ではさまざまなNAS製品が販売されているが、近年とくに注目されているのがSynology製のNASだ。NASとしての基本性能の高さに加えて、アプリケーションを追加することでユーザーが自由に機能を強化できるといった魅力によって、ビジネスユーザーから一般ユーザーまで、幅広い層から支持されている。
もちろん、Synology製のNASにもPCのバックアップツールが用意されている。その1つが「Active Backup for Business」(以下、ABB)だ。名称からもわかるように、ABBは業務向けのバックアップツールとして用意されているもので、基本的にはSOHOや小・中規模企業をメインターゲットとしている。しかし、ABBは無償で利用でき、利用者制限も一切ないので、一般ユーザーも無償で問題なく利用できるのだ。基本的には個人利用だと「Cloud Station」でもじゅうぶんだが、システムイメージのバックアップまで考えるなら、ABBが必要となる。
ABBは、Synology製NAS OS「DiskStation Manager 6.2」向けとして用意されたバックアップツールだ。業務シーンで多数利用されているクライアントPCを簡単にバックアップするだけでなく、バックアップデータの管理などもできる。
ABBでは、Windows 7 SP1以降のWindowsベースのクライアントPC、Windowsサーバー、VMWareベースの仮想マシン、SMBプロトコルおよびrsyncプロトコルのファイルサーバーのバックアップをサポートしている。
1台のNASで複数のPCやサーバーなどのバックアップが行なえるのはもちろん、バックアップデータの復元などの管理も一元的に行なえる。こういった点は業務向けらしい特徴と言えるが、個人で利用する場合でも、複数のクライアントPCのバックアップを一元的に管理できるという点は、かなり便利だ。
また、バックアップの効率を高める機能も用意されている。通常、複数のクライアントPCをバックアップする場合には、大容量のバックアップ領域の確保が必要となるが、ABBでは「グローバル重複排除技術」という機能によって、複数のPCをまたいで同一のデータを抽出し、そのデータを省いてバックアップされる。これによってバックアップ容量が大幅に節約され、NASのストレージを有効活用できる。
バックアップデータを容易に復元できる点も大きな特徴だ。ABBではシステム丸ごとの復元も、ファイル単位での復元もできる。なかでもファイル単位の復元はブラウザででき、非常に簡単だ。ストレージまるごと復元したい場合は、USBメモリを利用した復元ツールで簡単に行なえる。
一般ユーザーが利用する場面は基本的にないと思うが、ABBではバックアップデータを「Synology Virtual Machine Manager」と呼ばれる仮想マシン環境に展開して起動させることも可能となっている。業務シーンでは、PCのトラブル時でも短時間で業務を再開できることが重要となるが、この機能によって、トラブルへも短時間で対応できるという大きな利点となるだろう。
クライアントPCに専用ソフトをインストールするだけで自動的にフルバックアップ
では、実際のバックアップ手順を見ていこう。今回は、Windows 10 ProをインストールしたクライアントPCのバックアップ手順を紹介する。
まず、必要となる機材の紹介から。当然ながらSynology製のNASが必要となる。こちらは、先ほども紹介したようにDiskStation Manager 6.2が動作するものが必須となる。DiskStation Manager 6.2は現在販売されている最新モデルはもちろんのこと、数世代前の製品までサポートしていので、数年前からSynologyのNASを利用している場合でも問題なく利用可能だ。今回は、5つの3.5インチリムーバブルベイを備える「DiskStation DS1019+」を利用している。
NASが用意できれば、NASの設定メニューに用意されている「パッケージセンター」からABBをインストールする。この作業は、ほかのツールをインストールする場合と同じ手順で、とくに難しいことはない。
続いて、クライアントPCに「Synology Active Backuo for Businessエージェント」(以下、ABBエージェント)をインストールする。こちらはSynologyのホームページにある「ダウンロードセンター」からダウンロードできる。
初期設定だが、こちらも非常に簡単だ。クライアントPCでABBエージェントを起動して、NASのIPアドレスと登録しているID、パスワードを入力してNASに接続する。以上でクライアントPCでの初期設定は完了となる。
このように、NASにABBをインストールし、クライアントPC側でABBエージェントを起動してNASに接続した時点で、NASのABBにそのクライアントPCがバックアップ対象として自動的に登録される。さらに、毎日決められた時間にバックアップが行なわれるようにバックアップ設定も自動的に登録され、以後自動的にバックアップが行なわれるようになる。
つまり、単にバックアップを行ないたいだけなら、ABBエージェントをインストールしてNASに接続するだけでいい。しかもその後の毎日のバックアップもバックグラウンドで自動的に行なわれるので、まったく手間がかからない。この簡単さは、ユーザーにとって大きな魅力となるはずだ。
自動登録されるバックアップ設定は、毎週平日(月曜から金曜)の22時00分に「ベアメタルバックアップ」を行なうという内容となった。ベアメタルバックアップは、PCに搭載されている全内蔵ストレージの全領域を対象とした、いわゆるフルバックアップを行なうものだ。基本的にはこの設定のままでも問題ないが、バックアップを実行する時間を変更したり、バックアップする曜日を変更することも可能。その場合は、NASのコントロールパネルからABBを起動してバックアップ対象のPCを選択し、バックアップ設定を変更すればいい。
バックアップ方法は、フルバックアップの「ベアメタルバックアップ」に加えて、システム領域のみをバックアップする「システムボリューム」、そしてあらかじめ指定したドライブレターの割り振られているパーティションのみをバックアップする「カスタマイズされたボリューム」の3種類が用意されている。ベアメタルバックアップの利用が基本となるが、ユーザーごとの目的に応じて選択できる点は嬉しい。また、バックアップを行なう曜日や時間も自由に変更可能だ。
また、バックアップは「増分バックアップ」となる。初回はフルバックアップを行なうために時間がかかるが、2回目以降は増分のみのバックアップとなるため、比較的短時間で終了する。初回バックアップについては、1TBのSSDを搭載し、600GBほどの容量を消費、LANに無線LAN(IEEE 802.11ac 2×2)で接続している場合で3時間ほどかかった。また、容量256GBのSSDで80GBほど容量を消費し、LANにGigabit Ethernetで接続しているデスクトップPCでは20分ほどで終了。そして、それ以降の増分バックアップは、いずれのPCでも10分かからず終了している。
なお、ABBのバックアップは、基本的にPCが起動している状態でのみ動作するようになっている。そのため、設定したバックアップ時間にPCがスリープ状態だったりシャットダウンしているとバックアップは行なえない。その場合には、その後PCが起動したタイミングでバックアップが行なわれることになる。
そのため、バックアップの時間はなるべくPCが起動している時間を設定しておいたほうが安全だ。その場合、作業中などにバックグラウンドでバックアップタスクが走ることになるが、実際に試してみてもバックアップタスクの処理はそれほど重くなく、作業中でもほぼ気にならなかったので、心配は無用だ。
復元はファイル単位で行なえ、フルリストアも起動用USBメモリで簡単
続いて復元の方法だ。ABBでバックアップしたデータを復元する方法としてはファイル単位での復元と、フルリストアの2種類が用意されている。
まずファイル単位での復元だが、こちらは非常に簡単だ。クライアントPCにインストールしたABBエージェントを起動し、メニュー右の「サーバー情報」にある「ポータルを復元」ボタンをクリックする。次にブラウザからNASのログイン画面が表示されるので、登録したIDをパスワードを入力。すると、バックアップデータがエクスプローラーのようにドライブごとにバックアップしたフォルダやファイルが表示される。あとは、目的のファイルを指定して復元ボタンを押すかダウンロードすることで復元できる。
このとき、復元するファイルはバックアップした日付をさかのぼって復元することも可能。下部に日付のバーが表示されており、そこから復元したい日付を選択すれば、その日にバックアップされたファイルを復元できる。
復元とはいっても、操作感はまるでWebサイトなどからファイルをダウンロードするのとほとんど変わらず、非常に簡単だ。しかも、バックアップしたPCからだけでなく、ほかのPCからでもアクセスし復元可能なので、大きなトラブル時出も特定ファイルだけすぐに取り出したい、といった場面にも簡単に対応できる。たとえば、あるデータを編集していたものの、2日前の状態に戻したいという場合などに便利に活用できる。
続いてフルリストアだ。今回は起動用USBメモリを作成して行なう方法を紹介する。
まずはじめに、Synologyのホームページのダウンロードセンターから「Active Backup for Businessリカバリメディアクリエーター」をダウンロードする。次に、USBメモリを用意。容量は2GB以上あれば十分だ。そして、用意したUSBメモリを装着してActive Backup for Businessリカバリメディアクリエーターを起動すれば、リカバリメディアを作成できる。
リカバリメディアを作成するには「Windowsアセスメント&ディベロップメントキット(Windows ADK)」をダウンロードする必要があるが、そちらもActive Backup for Businessリカバリメディアクリエーターからダウンロードできる。なお、Windows ADKでインストールする必要があるのは「Deployment Tool」と「Windows Preinstallation Environment(Windows PE)」のみで構わないので、その2つにのみチェックを入れてインストールすればいい。
Windows ADKのインストールが終わったら、Active Backup for Businessリカバリメディアクリエーターの指示に従ってリカバリメディアを作成する。
ところで、リカバリメディアを利用してPCを起動しフルリストアを行なう場合には、最低限LANに接続しNASへとアクセスできなければならない。ただし、Windows PEの仕様により、リカバリメディアで起動しても標準ではGigabit Ethernetが認識しない。そのため、ドライバをダウンロードして事前に、リカバリメディアに転送する必要がある。この時に用意するドライバは、Windows 10用となる。筆者が利用しているデスクトップPCにはIntel製のGigabit Ethernetチップを搭載しているため、IntelのサポートページからWindows 10用のドライバをダウンロードし、リカバリメディアに転送しておくことでNASにアクセスできた。
リカバリメディアをPCに装着してPCを起動すると、「Active Backup for Business リカバリーウィザード」が起動する。LANに接続されたらNASのIPアドレスとID、パスワードを入力してNASにログイン。すると、PCのバックアップ履歴が表示されるので、その中から復元したいタイミングのバックアップデータを選択する。以上で、選択したバックアップデータを利用してPCがフルリストアされる。
ちなみに、デスクトップPCは256GBのSSDで80GBほど消費している状態だったが、わずか12分少々でリストアが完了。その後PCを再起動すると、以前の状態で問題なく起動した。リカバリメディアの作成やドライバの用意など、少々面倒な部分はあるものの、ほぼフルオートでリストアが可能という手軽さは、トラブル発生時も安心できると言っていいだろう。
手軽かつ安心なPCバックアップ手段としておすすめ
ABBには、ここまで見てきたもの以外にも、バックアップデータの一括管理や仮想環境への対応などさまざまな機能が用意されており、業務向けをターゲットとしているだけあって非常に高機能なバックアップツールとなっている。それでいて、個人でも無料で利用できるのは非常にありがたい。はっきり言って、Synology製のNASを利用しているなら、ABBを使わないのはもったいないと思えるほどだ。
ABBは、手間をかけることなく手軽にスケジュールバックアップが行なえるとともに、復元も簡単ということから、メインのバックアップ手段として大いにお勧めできる。また、これまでもSynologyのNASは使っていながら、PCのバックアップはほかのツールを使っているという場合でも、さらに安全度を高める意味で、ABBを追加して2重にバックアップを行なうようにするというのもいいだろう。
PCのトラブルはいつ発生するかわからない。そして、重要なデータが失われてからでは遅いのだ。だからこそ、手軽かつ安心にPCをバックアップできるSynologyのABBを利用して、万が一のトラブルに備えてもらいたい。
製作協力:Synology