Mac Info

AppleシリコンMacで正規版Windows 11を使おう!「Parallels Desktop」導入編

 Microsoftが正式にサポートしたことにより、Appleシリコン搭載MacでWindows 11を実行することが可能になりました。仮想化ソフトと聞くと難しいと感じるかも知れませんが、Microsoftが推奨する最新のParallels Desktopを利用すれば、Windows11のインストールが実に簡単に行なえます。ここではインストール時の注意点も含めながら、手順をいちから解説していきます。

2023年2月末にMicrosoftは「Apple M1およびM2チップを搭載したMacコンピューターでWindows 11を使用するためのオプション」という記事を公開。AppleシリコンMacでWindows 11を稼働することを正式サポートしました

Parallels Desktopをダウンロードする

 現在のMacでWindowsのソフトを利用するには「仮想化ソフトウェア」(以下、仮想化ソフト)が欠かせません。Intel製CPUを搭載していた頃のMacでは、標準搭載される「Boot Camp」を利用してMac上でWindowsをネイティブに動かせましたが、ArmベースのCPUを搭載したApple自社製のAppleシリコンではBoot Campを利用できないからです。

 また、Mac向けの仮想化ソフトには無料のものから市販ソフトまで複数存在しますが、MicrosoftがAppleシリコンMacにWindows 11をインストールする方法として現時点で公式で承認しているのは「Parallels Desktop」のみです。

 AppleシリコンMacにWindows 11をインストールするには、MacにParallels Desktopをインストールするのが最初のステップなので、公式サイトまたはAmazonなどから最新版「Parallels Desktop 18 for Mac」(以下、Parallels Desktop)を入手しましょう(アップグレード版は公式ストアのみ)。

 なお、Parallels Desktopの新規ライセンス購入時にはパッケージ版またはサブスクリプション版を選ぶことができます。エディションとしてはStandard、Pro、Businessの3種類が用意されており、一般的な用途にはStandard、開発者やテスター、パワーユーザーにはPro、職場利用する場合はBusinessが最適です。

 もし新規ライセンスをいきなり購入するのを不安に感じる場合は、14日間の無償トライアルを利用し、しばらく使ってみて気に入ったら新規ライセンスにアップグレードするのがいいでしょう。

Parallels Desktopの公式サイトにアクセスして[今すぐ購入]または[今すぐトライ]をクリックします(ここでは[今すぐトライアル]をクリックしてトライアル版をインストールする方法を解説します)
14日間無料のトライアル版のダウンロードページが表示されますので、[無償トライアルをダウンロード]をクリックします
ダウンロードを許可すると、ディスクイメージが[ダウンロード]フォルダなどに保存されます。ディスクイメージ内の[Parallels Desktopのインストール]をダブルクリックします
警告のダイアログが表示されたら[開く]をクリックして続行します。使用許諾契約の画面が表示されたら一読して[同意する]をクリックしましょう
Parallels Desktopを利用するには[デスクトップ][書類][ダウンロード]の各フォルダへのアクセスを許可する必要があります。画面の指示とダイアログの表示に従い[OK]をクリックします

Windows 11をインストールする

 Parallels Desktopのインストールが完了したら、Windows 11のインストール作業に移ります。とは言っても、Parallels DesktopはWindows 11のダウンロードから初期セットアップまでをほぼ自動で行なってくれるため、難しい作業は必要ありません。基本的にはMacへのインストール後に表示される画面の手順に従っていくだけです。

 ただし、Appleシリコン搭載MacにWindows 11をインストールするうえでは、いくつか注意したい点があります。

 まず、従来の32ビットのx86や64ビットのx64に対応したWindowsは利用できません。インストールできるのは、64ビットのArmプロセッサに対応した(Arm版の)Windows 11(Windows 11 ProとWindows 11 Enterprise)となります。

 Arm版のWindows 11では、3Dアクセラレーションの「DirectX 12」または「Opne GL3.3」以上をサポートしていないので、これらが必須のゲームやアプリなどが利用できない場合があります。心配な場合は、事前に動作環境をチェックしておきましょう。

 また、x86/x64向けのWindowsアプリはエミュレーションで実行できますが、完全な動作保証はありません。そのため、特定の業務用ソフトなどを仮想マシンで実行する場合は、事前にトライアル版で試すことをおすすめします。

 さらに、仮想マシンのイメージは十数GB以上になり、使っていくうちに20GBや30GBを超えることも珍しくないため、Macのストレージの空き容量にも注意しましょう。

新規にWindows 11の仮想マシンをインストールするには、「インストールアシスタント」画面から[MicrosoftからWindows 11を入手]をクリックします。「Ubuntu Linux」など他の無料システムもインストール可能です
インストールアシスタントを使うと、Windows 11のダウンロードからインストールまで自動で行なえます。Windows 11のインストーラは5GB程度あり、インストール後は十数GB以上必要としますので、ストレージの空き容量は十分確保しておきましょう
キーボード配列の選択などWindows 11の初期セットアップが行なわれます。カメラやマイクのアクセスを求められたら許可し、「インストールが完了しました」画面が表示されたら画面をクリックします
仮想マシンの利用を開始する際には、Parallelsアカウントの登録とサインインが必要です。新規ユーザーの場合はメールアドレスによる登録が可能で、Apple IDやGoogleアカウントなどのシングルサインオンにも対応しています
無償トライアルの終了後はライセンスを購入して製品をアクティベートします。Windows 11を初めて起動する際には使用許諾契約の画面が表示されるので、こちらも一読して[同意]をクリックして続行します
Windows 11のインストールが成功したメッセージが画面に表示されたら作業は完了です。必要に応じて「Parallels Tools」のアップデートを実行して最新の状態にしておきます
これで一連のインストール作業は終了です。MacのデスクトップにはParallels Desktop上で稼働するWindows 11のデスクトップが表示され、1つのアプリのように操作することができます

Windows 11のライセンス認証を行なおう

 Windows 11自体はとてもあっさりとインストールされてしまうので最初は気が付きにくいのですが、Windows 11のライセンスは有償のため、ライセンスコードの購入と認証が必要です。

 量販店やECストアで販売されているパッケージ版やPCパーツ店などで販売されているDSP版は、USBメディアやDVDで提供されていますが、これはIntel版のWindows 11であることに注意しましょう。

 AppleシリコンMacで使えるArm版Windows 11の場合は、購入後に認証用のコードがメールで送付されるライセンスコードの製品を選びましょう。

 Microsoftストアから直接ライセンスコードを購入するのがもっとも楽ですが、この場合は割引セールなどが行なわれない点には注意が必要です。

 購入するエディションについては、前述の通りAppleシリコンMacの場合はWindows 11 ProとWindows 11 Enterpriseのいずれかが正式サポート対象のため、多くの場合は標準価格が2万8,380円のWindows 11 Proを選ぶことになるでしょう。

 なお、通常の用途であれば1万9,360円で販売されているWindows 11 Homeでも問題ないように思われるかもしれません。しかし、現状ではWindows 11 Homeの利用はMicrosoftの正規サポートが得られません。

 非公認の方法でParallels DesktopにHome版のインストールができたという情報もありますが、本記事では推奨しません。

Windows 11は試用期間の30日間が過ぎるとフル機能が利用できなくなりますので、ライセンス認証を行ないます。Microsoftストアから新規に製品版のライセンスを購入することもできます
Windows 11の[設定]→[システム]を開き、[ライセンス認証を今すぐ実行]をクリック。そして[プロダクトキーを変更する]の横にある[変更]ボタンを押してライセンスコードを入力します

仮想マシンの構成をカスタマイズしよう

 これでWindows 11を使い始めることができますが、その前に仮想マシン自体の構成を確認しておくといいでしょう。仮想マシンの構成を確認するには、Parallels Desktopの[処理]→[ストップ]でいったんWindows 11のシステムを停止し、[処理]メニューの[構成]または「コントロールセンター」から構成の設定画面を表示します。

 初期設定では、インストールしたMacのスペックに合わせて自動的にCPUコア数やメモリの割り当て量が決まるので、そのまま使い続けても大きな問題はありません。

 たとえば、8コアCPUと8GBのメモリを搭載したM1チップ搭載のMacBook Airで確認したところ、仮想マシンにCPUが4コア、メモリは6GB割り当てられていました。このスペックはエントリーモデルのWindows PCに相当するもので、ブラウジングや表計算など通常の用途では問題ないレベルです。

 ただし、ここで割り当てられている6GBのメモリのうち3GBはグラフィックスに用いられるので実質的なメモリは3GBとなり、特に3Dを多用するゲームなどでは動作が厳しいことも考えられます。

 そのため、仮想マシンを快適に利用するには、16GBのメモリを搭載したMacがおすすめです。このくらいの余裕があれば、CPUやメモリの設定を[自動]から[手動]に切り替えて、作業に合わせて割り当て量を増やすことが可能です。

起動中のWindows 11はメニューバーの[処理]メニューから[サスペンド]や[レジューム]を実行できます。仮想マシンの構成を確認・変更する場合は[ストップ]で停止します
[ウインドウ]メニューから[コントロールセンター]を表示して、コントロールセンターで歯車アイコンの[設定]をクリックします
インストールしたWindows 11の構成を変更できます。[一般]タブでは、仮想マシンのプロファイルを[業務用ツール]と[ゲームのみ]から変更できます(Standard Editionの場合)
[ハードウェア]タブでサイドバーから[CPUおよびメモリ]を選択すると仮想マシンに割り当てるCPUのコア数とメモリ容量が指定できます。通常は[自動]で構いませんが、[手動]を選択すると変更可能です
Windows 11の「設定」のシステム情報で仮想マシンを確認すると、AppleシリコンMacは64ビットのArmプロセッサとして認識されていることが分かります

Parallels Desktopの使いこなしは次回お届け

 ここまで見てきたように、macOSの動作条件、Mac本体のスペック、Arm版Windows 11のサポート範囲、仮想マシンの構成、ライセンス認証するWindows 11のエディションなど事前に確認すべき項目がいくつかありますが、Parallels Desktopを利用すれば実にスマートにAppleシリコンMacにWindows 11を導入できます。

 また、Parallels DesktopにはMac上でWindowsを利用するための便利機能が多数搭載されています。WindowsのソフトをあたかもMacのソフトのように利用したり、MacとWindows間でファイル共有を楽に行なったりすることができますので、それらについては次回の記事で詳しくお届けしましょう。