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EIZO「FlexScan EV2455」

~ベゼル幅わずか1mmのフレームレス液晶

FlexScan EV2455
液晶サイズ24.1型
パネル方式IPS方式
表示解像度1,920×1,200ドット
アスペクト比16:10
画素ピッチ0.27×0.27mm
表面処理非光沢
タッチパネルなし
バックライト方式LED
応答速度5ms(中間色)
コントラスト比1,000:1(標準)
視野角水平178度/垂直178度
輝度300cd/平方m
表示色約1,677万色
走査周波数デジタル
水平:31kHz~76kHz、垂直:59~61Hz
アナログ
水平:31~81kHz、垂直:55~76Hz
チルト角度下5度、上35度
高さ調節131mm
スイベル344度
ピボット機能あり(右90度、左90度)
入力端子DVI-D×1
DisplayPort×1
HDMI×1
ミニD-Sub 15ピン×1
USB 3.0アップストリームポート
ステレオミニジャック
出力端子USB 3.0ダウンストリームポート×2
ヘッドフォン出力
スピーカー1.0W+1.0W
VESAマウント対応(100×100mm)
電源内蔵
消費電力標準13W、最大49W
付属品DVI-Dケーブル
アナログRGBケーブル
USB 3.0ケーブル
電源ケーブル
ユーティリティディスク
本体サイズ530.8×233×357.2~488.2mm(幅×奥行き×高さ)
重量約6.5kg

 EIZOは、液晶ディスプレイ新モデル「FlexScan EV2455」を発売した。ベゼル幅が1mmと非常に狭い新デザインを採用することで、マルチディスプレイ環境に最適という。また、ちらつきの低減やブルーライトカットなどの眼精疲労防止機能の充実も特徴となっている。価格はオープンプライスで、直販価格は62,640円。

本体デザイン

 「FlexScan EV2455」(以下、EV2455)の最大の特徴となるのが本体デザインだ。スクエアな液晶部と円形のスタンドという、従来のFlexScanシリーズと同様のデザインは継承しているが、その中でとことんまでシンプルなデザインが追求されている。

 最も目をひくのがベゼル幅の狭さで、左右および上部のベゼル幅はわずか1mmしかなく、ベゼルの存在がほとんど気にならない。液晶部の表示領域は、ベゼル部より5.2mm内側となるため、非表示部分の幅はベゼル部を合わせて6.2mmとなるが、それでも十分に狭い。このベゼル幅の狭さによる最大の利点となるのが、マルチディスプレイ環境での快適性だ。今回は単体での試用だったためマルチディスプレイ環境を試せなかったが、ディスプレイ表示の繋ぎ目の不自然さが最小限に抑えられるほか、ディスプレイ間で視点を移動する際にベゼル部を認識することが少なくなることで、スムーズな視点移動が可能になると考えられる。

 EIZOが“ノイズレス”と呼ぶ無駄を削ぎ落としたデザインも特徴の1つ。正面から見る限り、液晶部分に継ぎ目は全く認識できず、一体感がある。また、液晶下部の電源やOSD操作用などのボタンも従来までの物理ボタンからタッチセンサー式に変更。凹凸を解消するとともに、矢印などのガイドも省かれており、従来にも増してすっきりとした印象が強まっている。

 スタンド部の機能性の高さも特筆すべき部分だ。液晶面のチルト角度調節は下5度から上35度と幅が広く、高さは131mm、スイベルは344度の範囲内で調節できる。また、ピボット機構もサポートするとともに、左右双方に90度回転可能となっている。このため、縦画面でマルチディスプレイを実現する場合でも、上部のベゼル幅が狭い部分を合わせるように設置できる。なお、チルト角度調節は一般的な液晶ディスプレイと異なり、後部スタンドの中央付近を折り曲げるようにして行なうため、やや違和感を感じた。

 本体サイズは530.8×233×357.2~488.2mm(幅×奥行き×高さ)。ベゼル幅が狭いこともあって、24型液晶ディスプレイとしてトップクラスのコンパクトさが実現されている。電源ボタンおよびOSD操作用のボタンは液晶画面下部ベゼル部に配置。ボタンはタッチセンサーを採用するが、反応は良く操作性は悪くない。

液晶パネル

 1,920×1,200ドット表示対応の24.1型パネルを採用。パネルの方式はIPS方式。視野角は水平、垂直とも178度で、視点を移動させても色合いや明るさの変化を感じることはほとんどなかった。マルチディスプレイ環境ではパネルによって画面を見る角度が変わる場合もあるが、そういった場面でも表示品質の違いを認識することはなさそうだ。

 パネル表面は非光沢処理となっている。外光の映り込みはほとんど気にならならず、文字入力作業の多いビジネス用途でも快適に利用できる。タッチパネルは非搭載だ。

 バックライトはLEDで、輝度は300cd/平方m。輝度を最大に設定した場合にはややまぶしく感じるが、通常は照度センサーを利用して周囲の明るさに応じた輝度の自動調節が機能するので、まぶしいと感じることはほぼないだろう。

 また、高輝度時にはバックライトをDC方式で、低輝度時には高周波のPWM方式で調光を行なう「EyeCare調光」と呼ばれる独自の調光方式を採用。常に画面のちらつきをほとんど感じることなく快適に利用できる点も魅力に感じた。EIZOの発表では、競合製品に比べてちらつきが74%カットされているとのことだが、実際に長時間画面を見ても、ちらつきで目が疲れると感じることはほとんどなかった。なお、従来モデルに引き続いてブルーライトカット機能も搭載しており、ちらつきの低減と合わせて眼精疲労防止性能はかなり優れると言っていいだろう。

 コントラスト比は標準で1,000:1、応答速度は中間色で5msと、IPSパネルとして標準的。オーバードライブ機能も備えているので、動画再生時などでも残像を気になる場面はほぼなかった。

接続端子

 映像入力端子は、DVI-D×1、DisplayPort×1、HDMI×1、ミニD-Sub 15ピン×1の計4系統を用意。ビジネス用途をメインターゲットにしていることを考えると、必要十分な端子数だ。

 映像端子以外としては、サウンド入力端子とヘッドフォン出力端子、USB 3.0 Hub機能(アップストリーム×1、ダウンストリーム×2)を備える。これらサウンド入出力端子とUSBポートは左側面に備わっているため、ヘッドフォンやUSB周辺機器の接続もやりやすい。特にUSBポートはUSB 3.0対応のため、高速なUSB周辺機器も利用できる点は嬉しい。

 また、標準で1W+1Wのステレオスピーカーも搭載し、HDMIとDisplayPort、サウンド入力の音声を再生できる。スピーカーは液晶底面部に搭載。音質は液晶ディスプレイ内蔵スピーカーとして標準的で、音楽鑑賞用途などには向かないが、OSやアプリの告知音などを再生するといった用途であれば、特に不満はない。

OSD

 EV2455のOSDは、設定できる項目がそれほど豊富ではない。「sRGB」、「Paper」、「Movie」の3種類のプリセットモードに加えて、色温度やコントラスト、ガンマレベルなどを調節できるユーザーモードを備えるが、ユーザーモードでのカラー調節は赤、緑、青のゲイン調節ができるだけとなっている。ただ、プロのグラフィックス用途で活用する場合を除いて、表示される色合いなどを細かく調節する場面はほとんどなく、EV2455がメインターゲットとする一般ビジネス用途では十分な設定項目と言える。

 OSDの操作は、液晶下部に用意されているタッチセンサー式のボタンを利用して行なう。ボタンをタッチすると、ボタン上部の液晶画面に操作ガイドが表示されるため、操作時に戸惑うことは少ない。ただ、ボタンが横に並ぶため、直感的な操作はやや難しい。

 ところで、EV2455ではPCとUSB接続することにより専用ソフト「ScreenManager Pro」を利用した表示設定の調節が可能となる。OSDで設定できるものは全てこのScreenManager Proを利用して設定できる。いちいちディスプレイ本体に手を伸ばすことなく設定できるのはもちろん、本体のボタンを利用せず快適に設定できる点は大きな魅力だ。

 また、ScreenManager Proには、利用するアプリケーションに応じて表示設定を自動的に変更する機能や、複数のディスプレイに同じ表示設定を反映する機能も備える。1度の操作で全てのディスプレイに同じ表示設定が反映されるため、EV2455を複数台利用したマルチディスプレイ環境では特に重宝するだろう。

画質

 EV2455は、ビジネス用途や一般個人をメインターゲットとするメインストリーム向けの「FlexScan EV」シリーズに属する製品だ。プロのグラフィックス用途をターゲットとする「ColorEdge」シリーズのような、広色域表示のサポートや高度なカラーキャリブレーション機能などは備えていない。事実、EV2455では色再現域の情報を公開していない。また、発色の鮮やかさという点では、ColorEdgeシリーズなどのプロのグラフィックス用途をターゲットとする製品に比べるとやや劣るように感じる。例えば、青や赤はやや落ち着いた印象で、鮮烈さが強く伝わってくるようなことはなかった。

 とはいえ、出荷時に全製品でガンマや表示色の調節を行なうことで、ほぼ均一な表示品質が得られるように配慮されるとともに、8bitの入力映像信号を内部で10bit演算処理することで滑らかな階調を実現する「10bit-LUT」の採用なども合わせ、メインストリーム向けの製品ながら上位製品に匹敵する表示品質を実現している。少なくとも低価格で販売されている液晶ディスプレイのような、のっぺりとした無調整に近い画質ということはなく、映像や写真などの表示品質も十分に満足できるものだ。

 パネルはIPS方式で視野角は十分に広く、視点を大きく移動させても色合いや明るさの変化は非常に少ない。また、座る位置を大きくずらしても、表示品質の大きな変化は感じなかったので、マルチディスプレイ環境で複数並べて利用する場合でも、表示品質に不満を感じることはほぼないだろう。

 応答速度は中間色で5msとIPSパネルとしてほぼ標準的。オーバードライブ機能を活用すれば、映像コンテンツなどで残像を感じることはほぼなかったが、3D表示のゲームなどで高速に視点をぐるぐる移動させた場合などでは、わずかに残像を感じる場面があった。このあたりは、応答速度の速いTNパネルには敵わない部分と言える。また、表示遅延に関しては、家庭用ゲーム機を接続して入力のシビアなゲームをプレイしてみたが、ほぼ違和感なくプレイできたので、ほぼ問題ないレベルと言える。

 画質と関係ない部分では、エコ機能の充実が大きな特徴だ。周囲の明るさに応じて自動的に輝度を調節する「Auto EcoView」や、表示内容に応じて輝度を自動調節する「EcoView Optimizer 2」、使用者の有無を検知して自動的にスリープモードに移行する「EcoView Sense」などによる優れた省電力機能は、特にオフィスでの利用で喜ばれる機能だろう。

 EV2455は、メインストリーム向けとしては高価な製品だ。ただ、上位モデルに匹敵する表示品質や、高機能なスタンドの採用、優れた省電力機能、非常に幅の狭いベゼルによるマルチディスプレイ環境での利便性に優れる点など、その価格に見合う価値を十分に備えている。また、ちらつきが少なく、長時間の利用でも目の疲れが少ないという点も大きな魅力で、特にディスプレイを長時間利用するオフィスユースでは、ほかの製品との違いを如実に実感できるだろう。幅広いユーザーに柔軟に対応できる製品なのは間違いないが、中でも長時間ディスプレイを見る機会が多いという人に特にお勧めしたい。

(平澤 寿康)