買い物山脈

世界に1つだけの電動昇降デスクを作った、無垢一枚板で

製品名
無垢一枚板+FlexiSpot E7H
購入価格
14万1,500円
購入時期
2025年3月21日
使用期間
7日間
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです

 電動昇降デスクはこれまでに何度かメーカーからお借りしてレビューとかをしてきた。自分用に1つ欲しいなあと指をくわえて眺めつつ、しかし自宅に設置するには仕事部屋の狭さからレイアウトを考え直さなければならなくて、後回しにしていたのだった。

 それに、デスクというのは一度買い替えたら何年も使い続けるもの。今のデスクは15年以上使っているくらいだし、だったら少しこだわってみたい。たとえば標準的な天板ではなく、無垢材とかにしてみるのはどうだろう。ちょっとお金はかかるかもしれないけれど、きっとより愛着も湧くだろうし一生物になるはず。

 そんなわけで、いろいろとレイアウトシミュレーション(パワポ使用)したうえで、満を持して、フツーのデスクから卒業し、電動昇降デスクを導入することに。もちろん天板は別購入である。

サイズや配置をあれこれパワポでシミュレーションした名残

とにかく一枚板が重要だ

 電動昇降デスクのフレームについては、大まかにFlexiSpotにしようというのは決めていた。それよりも問題は天板だ。当初はFlexiSpotの製品ページにある「より高い品質の天板はこちらへ」のリンクからたどれる、ハイグレード天板のどれかかなあと考えていた。

FlexiSpotの製品ページにある「より高い品質の天板はこちらへ」をクリック
すると、標準よりもハイグレードな天板が数種類から選べる

 ただ、選択肢に一枚板というのはなく、集成材か、幅はぎのどちらかだ。幅はぎというのは、ある程度幅のある板を複数枚並べてくっ付けたようなもの。デスクとして使えるほど幅広な一枚板となると、当然ながらそれだけの太さのある木材から切り出すことになるので貴重だし、高価になってしまう。

 そうしたことから、やや細い木材を寄せ集めて幅はぎとすることでコストとのバランスを取るのだけれど、FlexiSpotのページで注文できるものはその割に結構値が張る気がするし、納期も数カ月と長い。「思い立ったらすぐ電動昇降デスク」というわけにはいかないようだ。ということで、近所の材木屋さんに相談してみたり、ネット通販とかを巡ったりして板を探す日々が始まった。

この納期の長さがネックでハイグレード天板を選ばなかった人も多いかもしれない

 木の性質上、特に無垢材の場合は時間経過とともにどうしても反りが発生する可能性があり、それをある程度抑えるためには厚みを稼ぐしかない(または背面に反り防止の金属プレートを埋め込んだりすることもある)。薄いほど反りやすいため、一般的なデスク天板の20mmとか30mmとかの厚みのものは一枚板ではまずありえない。最低でも50mm前後からになるようだ。

 しかしながら、厚みがあると椅子のアームレストがぶつかるなど使い勝手があまり良くなさそうな気もする。電動昇降デスクなら楽に昇降できるからそれほど問題にならないかもしれないが、椅子を引いたときにデスク天板とぶつかりやすそうなのはどうなのだろう……と思い、薄く作られていることもある幅はぎでもいいかなあ、などと考え始めていた。

 ところが、である。板との出会いは一期一会、とはよく言ったもので、ちょうどこのタイミングで、筆者の求めるサイズ、形状にかなり近い一枚板が、運良くネット通販にてアウトレット的な価格で出品されていた。これは逃したらアカンと思い、すかさず購入したのである。

なんか良さげなサイズの一枚板を見つけたので即購入

 もともと1,400×700mmのサイズで検討していたのだが、1,500×610~670mmという微妙に想定より大きいのか小さいのか分からない感じの、しかし形状としては限りなく長方形なデスク向けっぽい雰囲気。ややくの字になっていて、内側に座るとちょうど良さそう。厚みは50mmだが、まあなんとかなるんじゃないの?むしろ安定感を考えるとけっこういいんじゃない?ってことで決めてしまった。

 お値段は8万2,000円となかなか。でも、このサイズや整った形状を考えると格安と言っていいのではないか。もちろん素材が何かというのも関係してくるが、こちらはクスノキ。家具に使われることも多いようなので、デスクにしてもおそらく問題ないはず。実際に届いたものに触れてみると、素材としては割と柔らかめのようで傷が付きやすい感じはするものの、それも含めて「味」になるだろうと思った。

 というか、もし傷が付いてしまったとしても、ヤスリで磨けばいい。水をこぼして放置してしまってもシミができるほど汚れやすいが、それもヤスリで磨けばいい。そういうところも一枚板というか、(幅はぎも含めて)無垢材のいいところなのである、たぶん。

せっかくの貴重な一枚板、前準備も重要だ

 そんなこんなで自宅に届いたクスノキの一枚板。以下の写真だとまな板レベルに見えるかもしれないが、実際には割と大きいし重い。しかし質感はめちゃくちゃいい。頬ずりしたくなる。購入元のサイトでは情報が少なく、重さが分からなかったのでちょっと心配していたものの、一緒に体重計に乗って計測してみたところでは推定約24kgだった。100kgとかあったらどうしようかと思ったが、そこまでではなくてほっとした。

自宅に届いたクスノキの一枚板
なんか、いい

 一枚板と同時にFlexiSpotの電動昇降デスクのフレームも購入した。天板の重さはまだ不明な段階だったけれど、できるだけ耐荷重の高いものがよかろうと考えて、160kgに耐えられる「E7H」(価格約5万3,000円)をチョイスした。200kgの耐荷重を誇る「E7Q」というモデルもあるが、こちらは天板の奥行きが800mm以上のものに適合するということで、今回の場合はフィットしなかった。

FlexiSpotの電動昇降デスクフレームも着弾

 じゃじゃじゃあ、さっそく一枚板をこの電動昇降デスクのフレームにがっちゃんこしましょうかあ!……といきたいところだが、そうはいかない。せっかく手に入れた貴重な一枚板。きっとこれからウン十年とお付き合いしていく相棒でもある。デスク天板として最高のパフォーマンスを発揮できるように前準備が必要だ。

 というのも、先ほど少し説明したように、無垢材というのは反りが発生する可能性がある。それを可能な限り抑えるためにも、儀式的な処置をしておくことが大事なのだ。具体的には表面塗装をすることが推奨されている。金属プレートを埋め込む手もあるが、それをネットショップの方で加工してもらうとなると、どちらを表にするか購入時に決めなければいけないので、実物を見られないネット通販でそれはまあまあなリスクである。

 ゆえに、せめて表面塗装をしておきたい。それによって多少の耐水性なども付加できる。塗装の仕方にもいろいろ選択肢があるけれど、木材の自然な風合いを生かしたいのであれば、やはり自然素材を使いたいもの。その代表例としては「ワトコオイル」や「蜜蝋ワックス」と呼ばれるものがある。

「ワトコオイル」と「蜜蝋ワックス」

 どちらか1つだけでも良さそうだったが、ここでケチっていても仕方がないので2つとも施工することに。無垢材は定期的に再塗装を施すことでより長く使えるそうなので、両方多めに購入しておいた。こういった表面塗装は購入元にお願いできる場合もあるが、今回は自分でやってみる。

 届いた一枚板はすでに120番相当のヤスリがけがされているとのことで、それだけでも肌触りはすごく良さげ。でも念のため240番と400番のヤスリをかけた後、ワトコオイルを三度塗りし、蜜蝋ワックスを塗りたくる。作業開始からここまでで丸々半日かかり、夜になってしまったのでそのまま一晩寝かせることにした。

ワトコオイルをハケで塗っていく
一気にツヤが出て色に深みが増した
乾拭きして三度塗り
最後に蜜蝋ワックスを塗りつける
でもって一晩放置する

フレームを取り付ける方法も重要だ

FlexiSpot E7Hのパーツ類

 翌日、いよいよ電動昇降デスクのフレームを取り付けていく。が、せっかく手に入れた貴重な(以下略)。FlexiSpot付属の木ネジをそのままブチ込むわけにはいかない。少なくとも下穴を開けないと割れる可能性がなきにしもあらずだし(50mmの厚みがあるのでたぶん大丈夫そうだが)、樹齢何十年ともしれないクスノキさんに何だか申し訳が立たない気がした。

 そのため、見た目がきれいになるように、それと後々分解しなければならなくなったときも対応できるように、鬼目ナットというヤツを埋め込むことにする。鬼目ナットやら、それに合うネジやら、ワッシャやら、イイ感じの大きさの下穴を空けるための電動ドリルパーツやらをホームセンターを巡ってかき集めてから作業を開始。日曜日ではあったが、すでにお昼を過ぎていた。

マニュアルのこのへんとフレームの穴を見て、必要そうなネジとかをホームセンターで購入
鬼目ナットなどなど

 ちなみにFlexiSpotのE7Hのフレームの場合、付属ネジは多くがM4サイズとなる。しかし今回の一枚板の厚み、重さを考えると、M4は頼りないように思った。フレームに空いている穴自体はM6まで対応できるので、それに合わせてメインの鬼目ナットとネジはM6とし、中央付近のネジはM5、コントローラを固定するところはM4とした。これらネジ類などで6,000円以上かかったが、誤差と思いたい。

板の表をどちらにするのかも重要
結局こちらの面を表にすることにした
仮組みして下穴を鉛筆とかでマーキングしていく
まっすぐな長方形の板ではないので、左右端のオフセット位置だけ合わせて、あとはなんとなく
祈りながら下穴を開けていく。もう後戻りはできない
鬼目ナットをねじ込んだ
一部をツバ付きの鬼目ナットにしてしまったが、本当はツバなしの方が良さそう
フレームをねじ留め。1カ所だけねじ穴が1mmほどズレたものの、ギリギリなんとななった
脚を取り付けていく
コントローラも下穴+鬼目ナットで固定
配線して……
カバーを装着。デスクのどこに何を取り付けるのかまだはっきりしないので、付属のケーブルトレーはまだ装着しない

ヤバい、ヨダレ出そう

できあがった電動昇降デスクをとりあえず仕事部屋に置いてみた

 そうして組み上がった無垢一枚板の電動昇降デスク。いかがだろうか、この堂々たる風格。重厚でどっしりとしたたたずまい。集成材や幅はぎの天板とは比べ物にならないオーラを感じなくもない。上から体重をかけたところできしみもしないし、1ミクロン(感覚値)もたわんだりしない、恐ろしく頑丈なデスクだ。

ビフォー
アフター(暫定)

 でもって、質感がとんでもなく素晴らしい。オイルなどで表面加工を施すことによって、しっとりとした深みのある色合いに変わり、一枚板ならではの表情豊かなテクスチャが鮮明に浮かび上がる。自然木なのに、目を凝らすとデジタルチックな網目模様も見えて、おもしろい。

デジタルチックな網目模様みたいなものが。いやー、写真じゃ分かんないかなー

 触れればまさしく木。最初のうちはオイルっぽさが残っていたものの、数日もたてばそれも落ち着いて、木の温かみ、さらさらとした感触が直に伝わってくる。この世に1つしかない自分だけのデスクができあがったと実感する。いい、すごくいい。良すぎて誰かに自慢したい。みんな見てくれ!オイラのデスクを!!

めーちゃくちゃいい。この良さは分からないよなー、直接見てもらわないとなー

 それはともかく、デスクがなければ仕事もできないってことで、休日のうちに急いで完成させたこともあり、いろいろなモノの配置がまだまだ暫定ではある。スピーカーを置いているが、本当はデスク以外のところに移動したいし、マイクはちょっと遠いかもしれない。PCまわりの配線やスマホなどの充電器/ケーブルもきれいに整えたい。

 その点、簡単に上げ下げできる電動昇降デスクであることも、すごく都合が良かったりする。今後いろいろカスタマイズしていくにあたり、普通のデスクだと下に潜り込んで身を小さくしながら作業しなければならない。でも、電動昇降デスクなら高くしておけるので圧倒的に作業性が高い。筆者の仕事部屋は狭いので、くぐってデスクの前後を行き来しやすいのもいいところだ。

もちろん電動で昇降させられるので、高さ調整は簡単
こんな風に高くしておけば作業も楽ちん

デスク以外のアイテムにも気を使いたくなるぞ

 こうやってデスクが一枚板のナチュラル素材になると、上に置くアイテムもなんとなく同じ木製のものにしたくなってくる。たとえばパームレストとか、マウスパッドとか。試しに木製のメガネスタンドがあったのでデスク上に置いてみたら、これまた1つ格が上がった気がする。ナチュラリスト一直線。こうなると今使っているチェアも少しグレードを上げたくなってきたような。切り株とか?

木製アイテムとのマッチングの素晴らしさ

 それにしても、この満たされ感はすごい。使い切れもしないハイスペックなパーツでPCを組み上げ、ベンチマークテストでトップクラスの性能を叩き出したときのものに近いかもしれない。もしくはみんなが憧れる国民的アイドルとお付き合いできたとき、みたいな?もちろんそんな経験はないが?

 というわけで無垢一枚板の電動昇降デスク、ぜひみなさんも機会があったら作ってみてほしい。トータル14万円ほどかかってしまったが、30年使うとすればたったの年5,000円以下である。仕事のやる気にもダイレクトに影響するので、簡単に元が取れるはずだ!