サイクルコンピュータ「ブリヂストンサイクル emeters」



品名ブリヂストンサイクル「emeters」
購入価格7,560円
購入日2009年4月18日
使用期間約1カ月

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。

 先日、自転車を買った。といっても完全に実用系な自転車ではなく、クロスバイクというカテゴリに属し、街中のポタリングや郊外のサイクリングなど、長距離にも対応できるタイプだ。

 このタイプの自転車を買った目的はシンプルで、運動をしたいからだ。筆者は一日中机の前に座ってPCと向かい合う時間が多く、運動量が少ない。週末の趣味にしている散歩も、10km歩くのがせいぜいで、「運動をした」とは言い難いし、そもそもの目的は撮影だ。一方、自転車なら毎日30分~1時間程度乗れば、それだけに集中できるし、そこそこ運動をした気分になれる。実際にはジョギングや散歩と比較して消費カロリーはそれほど高くないようだが、あまり負担にならず、毎日続けやすい運動だと思う。

 目的が運動となると、どのぐらいの距離を走ったのか、そしてそれに伴うカロリーの消費量が気になるところだ。そこでサイクルコンピュータの登場である。サイクルコンピュータは、タイヤの回転を検知することで、走行速度や距離を検知するためのものだが、消費カロリーを算出して、表示できるものも数多く存在する。

 早速ヨドバシカメラマルチメディアAkibaに自転車でそのまま出向き、サイクルコンピュータを物色した。単に速度や走行距離、タイムなどを計るだけのサイクルコンピュータなら、多数存在しており、価格は1,000円クラスから10,000円クラスまである。その中で、ブリヂストンの「emeters」は、PCと連携できるというユニークな機能を持っていることがわかった。実売価格は7,560円と高価格帯だったが、これが面白そうだったので、迷わず購入した。

●簡単に使えるemeters

 emetersの設計自体は、他のサイクルコンピュータとあまり変わらない。センサーは有線式で、前輪のスポークに磁石を取り付け、磁石の接近をセンサーが検知し、回転数を検知して距離やカロリー消費量などを計算する。唯一違うのはUSBでPCと接続できる点だ。

 自転車への取り付けは簡単で、工具が必要なのは自転車のハンドルにクレードルを固定させるための十字型のネジ一本だけ。磁石は手回しネジでスポークにとりつけられ、センサーやコードは付属のタイバンドで締め付けられる。購入時は店員に工具いらずと言われたが、結局この箇所だけ必要。これを取り付けて家に帰る距離を計測したかったため、その場で購入したポイントを利用して、十字ドライバを購入して取り付けた。取り付け自体は2分程度で終わった。

 次に本体の設定を行なう。といっても手順は簡単で、電池の絶縁フィルムを抜いてから一回リセットをし、説明書に従って日付と時間、車輪の円周を入力するだけで設定が完了する。普通の自転車ならインチ、ロードバイク系ならcm表記で入力する。もしやや特殊なサイズだった場合もカスタム設定があるし、換算表も説明書にあるので問題ないだろう。余談だが、大抵の場合、タイヤの直径はタイヤの横に記載されているので、そちらを見れば一発だ。

 計測は2種類。1つは何も操作せずに接続しておくだけで計測する「基本モード」。これは1日単位で最大30日分のデータを保存でき、走行距離、消費カロリー、走行時間を記録する。これは1日を超えると自動的にリセットされる仕組みになっている。このため当然、日付を跨いだ計測はできない。しかし、その日であれば、メーター単体で閲覧することが可能だ。表示データはMODEボタンを押すことで切り替えられ、積算距離、走行距離、時速(km/h)、走行時間、消費カロリーの順に切り替わる。

 もう1つはSTART/STOPボタンを押して計測する「TT(タイムトライアル)モード」で、任意の時間から計測することができる。最大60回までの計測が可能で、軽く押すことで途中の一時停止もできる(停止は長押し)。例えば家から決められたコースへの移動は計測に入れず、コース走行中だけ計測するといったことを想定している。

 TTモードは、基本モードとは別の領域に保存され、メーター単体では閲覧ができず(計測中も基本モードのデータを表示)、クレードルでPCと接続し、emetersのホームページでのみ閲覧が可能になっている。PCとの接続を前提とした、割り切った仕様といえよう。

 と、使い方を見るだけではやや複雑そうだが、実際の所あまり意識する必要がなく、「単なる移動手段として使う時は装着するだけ、運動目的で使う時はTTモードを開始しておく、終わったらPCに取り付けてデータを転送する」ということだけ覚えておけばよい。

emeters本体本体背面。接続用の端子が見える本体下部にSTART/STOPボタンを備える
付属のUSBクレードル端子はカバーされており、不用意に触れてしまうことはないセンサーは自転車の前車輪に取り付ける

 PCへの装着は専用のクレードルを使い、USBで接続する。ソフトは専用サイトからダウンロードする。なお、サイト会員登録は製品同封のパスワードを入力する必要がある。ソフトの機能は非常に割り切っていて、データのアップロード、アカウントの切り替え、アカウントの追加、アップロードせずにTTモードデータをクリアする機能しか備えていない。

emetersアップロードソフトのUI。シンプルでわかりやすいデータアップロード中はこのような画面になり、終了するとWebブラウザが開き、本ソフトが自動終了する

 アカウントの切り替えは、家族での運用を想定し、複数のemetersのデータを、1台のPCで複数のアカウントにアップロードするものだ。一方、もし1人で2台のemeters、すなわち2台の自転車を持っている場合は、アカウントの切り替えを行なわずにアップロードできる。その場合は同一ユーザーのデータと見なし、サイト上ではそのまま加算される仕組みになっている。ただしその場合は、同一の時間帯にTTモードで走った2台分のデータは加算されない仕組みになっている(1人が2台の自転車に同時に乗れないため)。

 アップロードを行なうと、自動的に内部のTTモードのデータがクリアされる。このため、帰ったらとりあえずPCに繋げるといった習慣をつけておけば、データが60本以上になってしまい、それ以上保存できないといった状況に陥ることはまずないだろう。


●とりあえず装着して走ってみる

 とりあえず装着して、基本モードで秋葉原から自宅(北松戸駅近辺)まで走ってみた。その結果距離は20.39kmで、平均時速は14.04km/h、そして気になる消費カロリーは224kcalとなった。

 この消費カロリーは、平地/無風状態で走った場合の平均値ということなので、アップダウンが多かったこのコースはもうちょっとかかっていると思われる。が、いくらなんでも2時間近くかかる長時間の運動だったにもかかわらず、少なすぎるとは思う。

 試しに、同じ道のりをマピオンが提供している「キョリ測」で計ってみると、キョリは19.9kmであり、平均時速11km/hで走ったとすると、筆者の年齢(26歳)と体重(70kg)からして750kcal消費しているという計算が出た。

 調べてみると、キョリ測による消費カロリーの表記は、体重×時間×基礎代謝(BM)×基準値(METS)で求められている。一方emetersは、平地/無風状態で走ることを条件とし、速度と走行時間から算出されている。

 誤差と呼ぶには大きすぎるが、いずれにしても正確に消費カロリーを計る方法ではないので、どちらの値を「信じる」のかは自由だ。気軽に「運動した」と思い込むのならキョリ測、ダイエット中で厳しく消費カロリーを見積もるならemetersといったところだろうか。

 余談だが、一般的に言われている筆者の年代の基礎代謝は約1,500kcal前後なので、1時間あたり約62.5kcal。自転車に乗って移動すると基礎代謝の約3倍~5.9倍のカロリーが消費されるので、2時間の消費カロリーは375kcal~737.5kcalが妥当である。

 次にTTモードで、家の近くで自分で適当に決めた9.52kmのコースを走ってみる。平均時速は19.56km/h、消費カロリーは145.9kcalとなった。距離こそ秋葉原から戻った距離の半分だが、消費カロリーは半分よりやや多めとなった。上記の計算式である程度わかっていることだが、速くこげばそれだけ消費カロリーが増えるようだ。

 その後も何度かTTモードで計測したが、ほぼ同じ傾向が得られた。すなわち消費カロリーをあげるためには、より高速に自転車をこげばよい。ある意味当然な結果だが、ここまで数値化されて、さらに視覚的にも説明が加われば、理解が深まるというものだ。

●運動をするというモチベーションを維持するための仕組みも

 emetersのサイトには、自転車に乗って、運動を続けさせることへ誘導させるため、いくつかモチベーションをアップさせるための仕組みが用意されている。

 まずは、基本モードの走行データを日別に表示して管理できることだ。サイトで表示される基本モードで走行した日別のデータは、データのあり/なしに関わらず、日を増すごとに推移し追加されていく。このため、その日走っていないと当然0になる。グラフどんどん埋まらないと済まない人にとっては、これだけでも一種の達成目標となるだろう。

 もう1つはサイクリングでダイエットを目指す人向けと言える機能だが、体脂肪と体重の管理もできるようになっている。こちらはデータに連動して手入力をする必要はあるが、サイクリングによる体重と体脂肪の変化を見ることができるので、走行データと関連した推移を見ていくのは楽しいだろう。

 グラフは基本モードだけでなく、TTモードもアップロードされるわけだが、こちらは回数にあわせて増えていく格好だ。TTモードでしか利用できない機能として、データ管理でコース名を追加できるということ。コース名を追加することで、以降グラフでそのコースのみの絞り込み表示ができ、同じコースでのタイム短縮などを狙う場合に使えるようになる。しかし、「サイクリングマップ」とは連動しておらず、やや残念だ。

データをアップロードした直後の画面データの表示を統合して見やすくすることもできるこちらはWebページでのみ閲覧可能なTTモードのデータ

 そのサイクリングマップだが、これは地図上に自由にコースを作成したり、他人のコースを閲覧したりできる機能だ。自分で「運動用」、「通勤用」と決めたコースがあるならば、ここに登録することで、他人も閲覧できるようになる。

 コースは地域別に検索できるだけでなく、10km/20km/30km/50km/100km/200kmまでと、200km以上に分類して閲覧することも可能だ。登録したコースの高低差も表示されるので、走行前の参考になる。もし他人が登録したコースが気になって、そのコースの距離を走るだけの自信があるなら、チャレンジするとよいだろう。

自宅の周囲を周回するコースをつくってみたところ松戸市付近で10km前後のコースを絞って検索したところ中には50km以上のコースも。往復で100kmなので大変だ

 ここまではデータ管理でモチベーションをアップさせる方法だ。走行データをみっちり管理したいユーザーに重視される機能といえよう。

 もう1つのモチベーションをアップさせる方法はコミュニティだ。前述のように、サイクリングマップで他人のコースを参照可能になっているが、ここから例えば近所でコースを作成した人の走行データを参照したり、お友達として申請するといったことも可能だ。

 もちろん他のユーザーを検索する方法はほかにもあり、地域や性別、年代、自転車の車種などで検索をすることも可能だ。

 ただ検索して友達に登録しただけでは意味がないので、日記を付けてお互いの日記を参照したり、コミュニティを作成したり、それに参加する機能もある。emetersを使っている同士でコミュニティが展開されるわけだ。しばらく乗っていなさそうな友達を励ましたり、自分も励まされたりできるかもしれない。

ユーザー一覧の画面コミュニティの画面

 以上見てきた、モチベーションをアップさせる方法は、純粋にサイクリングを運動としてみなすユーザーに対して有効なわけだが、単なる移動手段として自転車を使うユーザーに対しても“救済手段”が用意されている。それが「エコポイント」というシステムだ。

 これは、燃費10km/Lの自動車が4.3km走行すると、1kgのCO2が排出されることから換算したもので、「代わりに4.3kmを自転車で走行すればCO2の排出量がほぼ0になる」というコンセプトのもと、4.3km走行ごとに1リーフの単位でポイントが付加されていくというもの。一定のリーフポイントを達成すると自分のバッジのデザインが変わるので、移動手段を目的にするならば、チャレンジすると良いだろう。

 サイトによれば、emetersを標準装備している自転車は、同社の「MARiPOSA」シリーズ3モデル、そして「MarkRosa eSPECIALモデル」シリーズ2機種に搭載されている。この2シリーズはどちらかと言えばカジュアルな自転車で、完全な“スポーツ仕様”とは言い難い。そのためサイトにこのような一般ユーザー向けの仕組みが用意されるというのは、無理もないだろう。

●サイクリングを楽しくする一品

 というわけで、一通りemetersについて見てきたが、これが単なる測定機能付きのサイクルコンピュータだったら、きっと自転車に取り付けたまま、一日の運動結果を見て終わっていたことだろう。

 一方、本製品は独自のデータ管理機能、Webサイトでのコミュニティ形成、そしてエコの観点から、うまくPCとの連携を取り入れ、サイクリングすることへのモチベーションを高めてくれる。サイクリング愛好者かどうかを問わず、幅広いユーザーが気軽に利用できる製品だと言えよう。

(2009年 5月 15日)

[Text by 劉 尭]