レノボ・ジャパン「IdeaPad Z575 129996J」
~A8-3520M搭載のメインストリームノート



レノボ・ジャパン
「IdeaPad Z575 129996J」

発売中
価格:オープンプライス



 レノボ・ジャパンから、一般ユーザー向けノートPC「IdeaPad」シリーズの最新モデル「IdeaPad Z575 129996J」(以下Z575)が登場した。3月9日発売とのことだが、すでに量販店で購入可能となっている。価格はオープンプライスで、実売価格は59,800円前後だ。15.6型ワイド液晶を搭載する、売れ筋のメインストリームノートだが、Intel製CPUを搭載する製品が多い中、AMD製APUの最新モデル「A8-3520M」を搭載することで、競合製品との差別化が図られている。

●AMDの統合プロセッサ「A8-3520M」を搭載

 Z575は、レノボ・ジャパンが発売する一般ユーザー向けノートPC「IdeaPad」シリーズの中でも、必要十分なスペックを備えつつ、10万円を下回る手頃な価格が設定された、メインストリーム向けノートPC「IdeaPad Z」シリーズに属する製品だ。

 Z575は、安価なメインストリーム向けノートPCということで、スペック的には大きな特徴がなさそうに思うかもしれないが、従来モデルから引き続き、競合製品と大きく異なる特徴がある。それは、CPUとしてAMD製のグラフィックス機能統合プロセッサ「Fusion APU」シリーズが搭載されているという部分だ。Z575には「A8-3520M」が搭載されている。

 A8-3520Mは、クアッドコアのCPUと、DirectX 11対応のグラフィックス機能を統合した、Fusion APUシリーズの最新モデル。動作クロックは1.6GHzとなっている。加えて、動作状況に応じてCPUコアの動作クロックを上昇させる「AMD Turbo CORE Technology」にも対応しており、最大2.5GHzまで動作クロックが上昇。これにより、負荷の高いソフトを利用する場合には通常よりも高クロックで動作させることで快適度が高まることになる。もちろん、負荷が低い時には動作クロックを下げて省電力性を高めることも可能だ。

 本体サイズは、376×250×32.3~34.5mm(幅×奥行き×高さ)。コンパクトではないものの、15.6型ワイド液晶を搭載するノートPCとしては標準的な大きさだ。重量は、スペック値では約2.6kg、実測では2,556gだった。こちらもこのサイズのノートPCとしてほぼ標準的だ。さすがにモバイル性はかなり低いが、家庭内で違う部屋に持ち運んで使う程度なら苦にはならないはずだ。

 本体デザインは、これといって目立つ特徴があるわけではなく、かなりオーソドックスだ。高級さを感じることはないが、安っぽくもなく、この価格帯のノートPCとしては、まあまあ満足できるデザインと言える。

本体天板部分。ヘアライン処理が施されており、低価格ノートだが十分満足できるデザインとなっている。フットプリントは376×250mm(幅×奥行き)だ本体正面。下部はプラスチック素材が強く感じられるため、このクラスの製品らしい雰囲気だ左側面からみると、前方から後方までほぼフラットなボディということが分かる。高さは32.3~34.5mmだ
後方には外部コネクタはなく、中央部にバッテリーが取り付けられている右側面。ThinkPadシリーズと違い、前方や後方の角が丸く削り取られている本体重量は、実測で2,558gだった

●DirectX 11対応のグラフィックス機能を統合

 Fusion APUには、Intel製CPUに対する強みとなる部分がある。それは、統合されているグラフィックス機能だ。Fusion APUには、DirectX 11ベースのGPUである「Radeon HD 6620G」が統合されており、Intel製CPUに内蔵されるグラフィックス機能よりも優れた描画能力を実現している。

 Radeon HD 6620Gは、AMD製のデスクトップ向けGPU「Radeon HD 5670」とほぼ同等の機能を持つGPUだ。グラフィックスメモリにメインメモリを利用するため、デスクトップ向けと同等の描画能力が発揮されるわけではないものの、競合CPUの統合グラフィックス機能に比べて圧倒的に優れた描画能力を発揮する。

 そこで、ベンチマークソフトを利用して描画能力をチェックしてみた。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「3DMark11 v1.03」、「3DMark Vantage Bulld 1.0.1 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」と、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」、「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」。比較として、CPUにCeleron B815(1.60GHz)を搭載する、ユニットコムの「Lesance NB P3534-SP」でも同じテストを行なった。

【表1】3Dベンチマーク結果

IdeaPad Z575Lesance NB P3534-SP
CPUA8-3520M(1.60/2.50GHz)Celeron B815(1.60GHz)
チップセットAMD A60MIntel HM65 Express
ビデオチップRadeon HD 6620GIntel HD Graphics
メモリPC3-8500 DDR3 SDRAM 4GB×2PC3-8500 DDR3 SDRAM 4GB×2
ストレージ500GB HDDD(WD5000BPVT)320GB HDD
OSWindows 7 Home Premium SP1 64bitWindows 7 Home Premium SP1 64bit
3DMark11 v1.03 1280×720ドット
3DMark 11 Score829N/A
Graphics Score746N/A
Physics Score2448N/A
Combined Score723N/A
3DMark Vantage Bulld 1.0.1 0906a 1280×1024ドット
3DMark Score3123909
GPU Score2715723
CPU Score56883985
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score58833081
SM2.0 Score20981063
HDR/SM3.0 Score25721299
CPU Score24611635
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】
1,280×720ドット22491019
1,920×1,080ドット1206498
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット2602933
1,920×1,080ドット1434468

 結果を見ると、Z575の結果がかなり優れていることがわかる。また、今回は掲載していないが、Core i5-2520M搭載ノートよりも結果は上回っている。さらに、DirectX 11ベースということで、3DMark 11が正常に動作しているという点も大きな特徴だ。最新の3Dゲームを快適にプレイできるほどではないが、数年前に登場した3Dゲームや、最近増えているカジュアル3Dネットワークゲームなら余裕で動作するだろう。このクラスのノートPCとしては、十分に優れた描画能力を有しているのは間違いない。

 さらにRadeon HD 6620Gには、動画再生支援機能の「UVD 3.0」も搭載。H.264やVC-1、MPEG-2/4の再生支援に対応しており、フルHD動画もCPUに負荷をかけずに再生できる。Z575はBDを搭載しないが、Web動画やデジカメなどで撮影したフルHD動画などもスムーズに再生可能。こういった点から、AV用途やホビー用途にも十分活用できるだろう。

●メインメモリを標準で8GB搭載

 CPU以外のスペックは、メインメモリ容量が従来モデルの4GBから、倍の8GBに強化されているが、その他は従来モデルとほぼ同等。ストレージデバイスは、500GBのHDDと、DVDスーパーマルチドライブを標準搭載。無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANとBluetooth 2.1+EDRを搭載する。

 外部接続ポートは、本体左側にミニD-Sub15ピンとHDMI出力、USB 2.0とeSATAの共用ポート、USB 2.0ポートを、本体右側にUSB 2.0が2ポートと100BASE-TX対応のEthernet、ヘッドフォン出力とマイク入力端子を用意。USB 3.0ポートが用意されない点は少々残念だが、そこはeSATAポートが補ってくれるだろう。また、正面右側には、SDカードやメモリースティックなど5種類のメモリーカードを利用できる5 in 1メディアカードリーダーが用意されている。液晶パネル上部には、約200万画素のWebカメラも標準で搭載している。

 液晶パネルは、1,366×768ドット表示対応の15.6型ワイド液晶を搭載する。液晶パネル表面は光沢処理となっているため、発色は鮮やかだが、外光の映り込みはやや激しい。また、上下の視野角がやや狭い点も気になったが、表示品質は、このクラスのノートPCとしては標準的だ。

 キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプの「AccuType キーボード」が搭載されている。ただ、一般的なアイソレーションキーボードと比べ、キーの打ち心地がかなり優れる。フルサイズのキーピッチを確保しているのはもちろん、ストロークが深く、クリック感もしっかりしていて、デスクトップ用のキーボードに近い使い勝手だ。キー配列も自然で、非常に扱いやすい。それに対し、ポインティングデバイスのタッチパッドは、面積が広く、パッド部分の操作性は申し分ないが、クリックボタンが左右一体となっている点が気になった。

左側面には、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、USB 2.0/eSATA共用ポート、USB 2.0ポートを配置左側面後部には電源コネクタがある。横のスリットは排気口で、高負荷時にはやや大きな空冷ファンの動作音がするものの、通常時は十分静かだ右側面前方には、ヘッドホン出力とマイク入力、USB 2.0ポートを配置
右側面後方には、USB 2.0ポートと100BASE-TX対応のEthernetがあるDVDスーパーマルチドライブは右側面に搭載前面右側に、5-in-1メディアカードリーダーを配置。また、内蔵無線機能のON/OFFスイッチも用意されている
底面のフタを開けると、メインメモリスロットと内蔵HDDにアクセス可能メインメモリは、標準で最大容量となる8GB(4GBモジュール×2枚)を搭載している標準で、500GBのHDDを搭載する
1,366×768ドット表示対応の15.6型ワイド液晶を搭載。光沢液晶のため発色は鮮やかだが、映り込みは気になる。また上下の視野角もやや狭い液晶上部には、約200万画素のWebカメラが搭載されるアイソレーションタイプのAccuType キーボードを搭載。ThinkPadシリーズのキーボードに近く、かなり使いやすい
19mmフルピッチで、ストロークが深くクリック感もしっかりしているので、使い勝手は抜群だポインティングデバイスのタッチパッドは面積が広く、2本指でのジェスチャー操作にも対応し使いやすい。ただ、クリックボタンが一体型になっている点が少々残念

●描画能力に優れるメインストリームノートを探している人におすすめ

 では、パフォーマンスをチェックしていこう。先ほど、描画能力については紹介したので、ここでは総合ベンチマークソフトの結果のみを紹介する。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 7 v1.0.4」、「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」だ。比較として、ユニットコムのLesance NB P3534-SPでも同じテストを行なった。

【表2】ベンチマーク結果

IdeaPad Z575Lesance NB P3534-SP
CPUA8-3520M(1.60/2.50GHz)Celeron B815(1.60GHz)
チップセットAMD A60MIntel HM65 Express
ビデオチップRadeon HD 6620GIntel HD Graphics
メモリPC3-8500 DDR3 SDRAM 4GB×2PC3-8500 DDR3 SDRAM 4GB×2
ストレージ500GB HDDD(WD5000BPVT)320GB HDD
OSWindows 7 Home Premium SP1 64bitWindows 7 Home Premium SP1 64bit
PCMark 7 v1.0.4
PCMark score15401472
Lightweight score12711323
Productivity score940834
Creativity score17921677
Entertainment score17751426
Computation score17182364
System storage score13471268
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a
PCMark Suite41323578
Memories Suite30772385
TV and Movies Suite31352462
Gaming Suite37112995
Music Suite40643567
Communications Suite42003685
Productivity Suite33053006
HDD Test Suite26072329
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/A
CPU Score60434423
Memory Score43294515
Graphics Score62002965
HDD Score46073515
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ6.85.3
メモリ7.37.5
グラフィックス5.95.0
ゲーム用グラフィックス6.54.6
プライマリハードディスク5.95.9

 結果を見ると、Lesance NB P3534-SPに一部負けている部分も見られるが、多くの結果が優れるており、少なくともCeleron B815よりは優れたパフォーマンスが発揮されると考えられる。ただ、A8-3520MはクアッドコアCPUであり、その点を考慮するとやや物足りない結果といえる。おそらく、Core i3と比較すると、大部分で劣る結果になるものと思われる。つまり、CPUコア部分の処理能力に関しては、Intel製CPUを搭載する競合製品よりやや劣ると考えていいだろう。

 とはいえ、Officeなどのビジネス系ソフトやインターネットアクセスなどを行なうには十分なパフォーマンスが備わっており、画像処理など、よほど処理の重い作業を行なわない限り、処理能力が気になることはない。また、上でも紹介しているように、描画能力に優れるため、トータルでの体感速度は、Intel製CPU搭載ノートと比較しても全く遜色がなく、用途によっては、より快適に利用できるはずだ。

 この製品はモバイル向けではないものの、念のためバッテリ駆動時間も計測してみた。BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れ、省電力設定をオリジナル設定の「スーバー省エネルギー」に設定し、無線LANをオンにして計測してみたところ、約2時間36分であった。これだけの駆動時間があれば、家庭内で移動して利用する場合でも問題ないだろう。

容量4,400mAhのバッテリを搭載。駆動時間は、カタログ値では約4.3時間だ付属のACアダプタ。スリムな形状で、このクラスの製品に付属するACアダプタとしてはかなりコンパクトだ

 Z575は、従来モデルからCPUとメインメモリ容量が強化された、正統進化モデルだ。このクラスの製品は、製品間の差が少なく、デザインなどで選択する人が多いと思うが、そういった中で、AMD製プロセッサ採用により、他とは異なる仕様を実現するとともに、描画能力の点では競合製品を上回る魅力を備えている。

 実売6万円前後という価格は、AMD製プロセッサを搭載するノートPCとしては若干高価に感じるかもしれないが、それでも競合製品と同レベルの性能を有しており、そういった意味では高いということはないだろう。もちろん、より上位のAV性能に優れるノートPCとの比較では、プロセッサの処理能力や描画能力が見劣りするのは事実だが、このクラスとしては、十分魅力のある製品だ。描画能力に優れるメインストリームノートを探している人におすすめしたい。

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(2012年 3月 6日)

[Text by 但見 浩]