Hothotレビュー

富士通「GRANNOTE AH90/P」

~大人世代向けの15.6型ハイグレードノートPC

富士通「GRANNOTE AH90/P」
発売中

価格:オープンプライス(直販219,800円)

 富士通の2014年春モデルで、新たに追加された製品が「GRANNOTE AH90/P」と「LIFEBOOK TH90/P」の2モデルである(それ以外の製品は、2013年秋冬モデルを継続販売)。前者は、大人世代向けという新たなカテゴリーのノートPCで、後者はコンバーチブルタイプのUltrabookである。

 どちらも、富士通の力の入れ具合がよく分かる意欲的な新製品であるが、ここでは、前者のGRANNOTE AH90/Pを試用する機会を得たので、レビューしていきたい。ただし、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や仕様、パフォーマンスなどが異なる可能性がある。

塗装や材質にこだわり、高級感を演出

 GRANNOTE AH90/P(以下GRANNOTE)は、60歳前後の“大人世代”をメインターゲットにしたノートPCである。PCの分野で、若年層を狙った製品や女性をターゲットにした製品はそう珍しくはないが、60歳前後のシニア層をターゲットにしたノートPCは珍しい。富士通は以前、「らくらくパソコン」というPC初心者やシニア層向けのPCをリリースしていたが、GRANNOTEは、らくらくパソコンのコンセプトをさらに深めた製品ということもできるだろう。ハードウェア、ソフトウェアともに、シニア層が使いやすいように、さまざまな工夫が盛り込まれていることが魅力である。

 まずは、その外観から見ていこう。GRANNOTEは、大人世代をターゲットにした製品ということで、デザインや外観にもこだわっている。上面は、美しい光沢があるシャンパンブラックで、大理石のような高級感がある。キーボード面は、磨りガラスのような加工が施されたアクリルパネルが貼られており、上品かつ落ち着いた印象を受ける。15.6型液晶搭載ノートPCなので、本体のサイズは、377.1×263.7×31mm(幅×奥行き×高さ)と比較的大きく、重量も約2.8kgと重い部類だが、基本的に据え置きで使う製品なので、特に問題にはならないだろう。

 ノートPCとしての基本性能も十分に高い。CPUとして、第4世代CoreプロセッサであるCore i7-4500U(1.80GHz)を搭載し、メモリは標準で8GB実装している。メモリスロットは2基で空きはないが、出荷時に装着されている4GB SO-DIMM 2枚を外して、代わりに8GB SO-DIMMを装着することで、最大16GBまで増設が可能だ。ストレージとしては1TB HDDを搭載。光学ドライブとしては、スロットイン方式のBDドライブ(BDXL対応)を搭載。メディアの入れ替え時にトレイが出っ張らないので、見た目もスマートだ。OSは、Windows 8.1 64bit版がプリインストールされている。

GRANNOTE AH90/Pの上面。きらめくような光沢があるシャンパンブラックで、高級感がある
GRANNOTE AH90/Pの底面。フラットでデザイン的にもすっきりしている
「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。幅はGRANNOTE AH90/Pのほうが100.1mm大きく、奥行きもGRANNOTE AH90/Pのほうが54.7mm大きい
光学ドライブとして、スロットイン方式のBDドライブ(BDXL対応)を搭載する

周囲の環境や使用者の年代に合わせて液晶の色味を自動調整

 GRANNOTEは、60代前後をターゲットに開発された製品であり、これまでのノートPCにはなかったさまざまな機能が搭載されている。その中でも目玉となるのが、周囲の環境や使用者の年代に合わせて液晶の色味を自動調整する機能だ。液晶上部に、RGBセンサーと照度センサーの2種類のセンサーを搭載しており、周囲の光の環境に応じて、自動的に画面の色味をベストな状態に調整する「インテリカラー」機能を搭載している。照度センサーを搭載して、周囲の明るさに応じて画面の輝度を最適な状態に調整する機能を備えたノートPCは多いが、RGBセンサーまで搭載した製品は珍しい。もちろん、GRANNNOTEでも、照度センサーを利用した自動輝度調整機能も搭載されている。

 さらに、使用者の年代に合わせて色味を自動調整する「あわせるビュー」機能も搭載している。年をとると、視界が黄色みを帯びて、青や緑の色が見えにくくなる。あわせるビューでは、あらかじめ年代を指定しておくことで補正が必要なら、画像の青み成分を強調することで、識別しやすい配色に補正してくれるという機能だ。年代は、50代以下、60代、70代以上の3段階で指定でき、60代または70代以上に設定すると、あわせるビューが有効になる(もちろん、無効にすることも可能)。また、画面表示だけでなく、音声についても、年齢が高くなると高音域が聞き取りにくくなるので、高音域を強調する「あわせるボイス」機能が搭載されている。

 液晶は15.6型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応である。IPS液晶を採用しているため、視野角が広く、色純度も高い。タッチ操作も可能だ。また、液晶表面がグレア(光沢)とノングレア(つや消し)の中間であるハーフグレア仕上げになっているため、鮮やかさと外光の映り込みにくさをうまく両立させている。タッチパネルも搭載しており、Windows 8.1の新UIとの相性も最高だ。液晶上部には、前述したRGBセンサーと照度センサーのほか、約200万画素のWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。

液晶は15.6型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応。IPS液晶を採用しており、視野角が広い。また、ノングレアとグレアの中間のハーフグレア仕様で、映り込みも抑えられている
液晶上部に、RGBセンサーと照度センサー、約200万画素Webカメラ、マイクが搭載されている
あわせる設定ユーティリティで、年代を設定できるほか、ユーザーモードで細かくカスタマイズすることも可能だ

深いキーストロークと3段階の押下圧による使いやすいキーボード

 GRANNOTEは、キーボードへのこだわりも並大抵ではない。一般的なノートPCのキーストロークは深いものでも2mm程度で、薄さを重視したUltrabookでは1.5mm程度のものも多いが、GRANNOTEでは約3mmという深いキーストロークを実現しており、打ち心地がよい。キートップが球面状に凹んだ球面シリンドリカルキートップを採用していることも、打ち心地の向上に貢献している。

 さらに、押す指の力にあわせてキーの押下圧(重さ)を3段階に変更していることもポイントだ。具体的には、力の弱い薬指や小指で押すキーは最も押下圧を小さくし、人差し指と中指で押すキーは中間の押下圧に、最も力の強い親指で押すキーは、最も押下圧が大きくなっている。これによって、どの指でタイピングしても快適な打鍵感が得られるのだ。実際にタイピングしてみたが、他のノートPCのキーボードとは確かに一線を画す、優れた打鍵感であった。キーボードにこだわる人や、長文を入力する機会の多い人には魅力的であろう。バックライトも搭載されており、美しく点灯する。キーボードの上部にはワンタッチボタンが用意されており、よく使われる機能をワンタッチで呼び出すことができる。

 ポインティングデバイスとしては、パッドタイプのフラットポイントを搭載しているが、最近流行のパッドとクリックボタンが一体化したタイプではなく、左右のクリックボタンが独立して設けられていることも評価できる。慣れれば、一体化タイプでも自由に操作できるようになるが、やはり、クリックボタンが独立しているほうが、操作しやすく、ミスも少ない。特に年齢層の高い方々にはありがたいだろう。

キーボードは全108キーで、キーピッチは約18.4mm、キーストロークは約3mm。特にキーストロークが深いことが特徴だ
キーボードバックライトを点灯させたところ。暗い場所でも快適にタイピングが可能だ
キートップが球面状に凹んでいる球面シリンドリカルキートップを採用
ポインティングデバイスとしては、フラットポイントを搭載。左右クリックボタンが独立しているので、クリックやドラッグ&ドロップなどの操作がやりやすい
キーボード上部にはワンタッチボタンを搭載

マウスも専用設計の高機能なものが付属

 GRANNNOTEでは、付属のワイヤレスマウスも専用設計の高機能なものとなっている。レーザー方式のマウスだが、5ボタン+左右チルト対応スクロールホイールを備えており、マウスだけで、Windows 8.1のさまざまな操作が可能である。スクロールホイールを押してから回すと画面の拡大・縮小が可能で、右に倒すとアプリ切り替え、左に倒すとチャーム表示になる。また、スクロールホイールの手前にはスタートボタンがあり、いつでもスタート画面を呼び出すことができる。さらに、左右側面には、進むボタンと戻るボタンが用意されており、ネットサーフィンなども非常に快適だ。

 インターフェイスも充実している。USB 3.0×4(うち1つは電源オフUSB充電に対応)やHDMI出力、有線LANなどを備えているほか、SDカード対応のダイレクト・メモリースロットも用意されている。キーボード面にもインターフェイスのアイコンが描かれているほか、キーボードバックライトに合わせてアイコンのバックライトが点灯するので、見た目も美しく、わかりやすい。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LAN機能とBluetooth 4.0+HSをサポートするほか、パームレストの右側にNFCポートも用意されている。

 公称バッテリ駆動時間は約10.5時間であり、15.6型クラスのノートPCとしてはかなり長い。実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、5時間43分という結果になった。公称に比べるとかなり短いが、このクラスの製品としては十分であろう。ACアダプタもコンパクトで軽く、邪魔にならない。

5ボタン+左右チルト対応スクロールホイールを備えた高機能マウスが付属
マウスの右側面には、進むボタンが用意されている
マウスの左側面には、戻るボタンが用意されている
マウスの底面。レーザー方式で、場所を問わず利用できる
左側面には、ダイレクト・メモリースロットとHDMI出力、USB 3.0×3、マイク入力/ヘッドフォン出力が用意されている
左側面のコネクタ部分のアップ
右側面には、BDドライブとUSB 3.0、有線LANが用意されている
右側面のコネクタ部分のアップ
キーボード面にインターフェイスのアイコンが描かれており、LEDバックライトも用意されているので分かりやすい
ACアダプタのサイズも比較的小さい

独自サービスやソフトも充実

 GRANNOTEは、使い勝手のよいキーボードやマウス、ハーフグレアの液晶パネルなど、ハードウェアに工夫が凝らされているが、サービスやプリインストールソフトについてもこだわりが感じられる。まず、Officeスイートである「Microsoft Office Home and Business 2013」とGRANNOTEだけのオリジナルOfficeテンプレートがプリインストールされており、さまざまなシーンで活用できる。また、GRANNNOTE専用の特典付きサービス&電話サポートが受けられる「サービスパック」や大人のためのSNS「らくらくコミュニティ」専用アプリなどもプリインストールされている。さらに、GRANNOTEユーザーの専用サイト「GRANNOTE特選サイト」へのショートカットアイコンもデスクトップに用意されている。

大人のためのSNS「らくらくコミュニティ」専用アプリがプリインストールされている
日本将棋連盟公認の本格的なオンライン将棋「将棋ウォーズ」もプリインストールされている

SSD搭載機に比べるとパフォーマンスは低いが、日常的な利用には十分な性能

 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「CrystalDiskMark 3.0.3a」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用に、レノボ・ジャパン「新しいThinkPad X1 Carbon」、ソニー「VAIO Tap 11」、ソニー「VAIO Pro 11」、パナソニック「Let'snote LX3」のスコアも掲載した。

 GRANNOTE新しいThinkPad X1 CarbonVAIO Tap 11VAIO Pro 11Let'snote LX3
CPUCore i7-4500U (1.8GHz)Core i7-4600U (2.1GHz)Pentium 3560Y (1.2GHz)Core i5-4200U (1.6GHz)Core i7-4500U (1.8GHz)
ビデオチップIntel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4400Intel HD GraphicsIntel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4400
PCMark05
PCMarksN/AN/AN/AN/AN/A
CPU Score88699802370978649379
Memory Score77819851376299788599
Graphics Score29482706183421443302
HDD Score607256273475325512256040
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score66901593456871288115540
Memories Score43568842481471068493
TV and Movie ScoreFailedFailedFailedFailedFailed
Gaming Score4631109575483702511030
Music Score66281373270921574418077
Communications Score108191967565461493417972
Productivity Score42761961585631620921503
HDD Score373150926482285078447907
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score61101461853711194414111
Memories Score44488244458169948104
TV and Movie ScoreFailedFailedFailedFailedFailed
Gaming Score41189269458875549699
Music Score61691570668171496216543
Communications Score96191780659951350816043
Productivity Score40011759083361532519719
HDD Score367246669491865115748117
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score29035294300640165310
Lightweight score14483632210248925789
Productivity score9312695150638354724
Entertainment score28003824193426453816
Creativity score580210006432383129986
Computation score14807184434513997016901
System storage score15865339518353175491
Raw system storage score3505344488656796121
3DMark
Ice Storm4031242672155272731244155
Cloud Gate41504522170734614900
Fire Strike553604237469721
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1,280×720ドット 最高品質14511621695未計測1580
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC)14901635716未計測1598
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)215923141031未計測1894
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)320934711445未計測3350
1280×720ドット 標準品質(ノートPC)322334731448未計測3279
CrsytalDiskMark 3.0.3a
シーケンシャルリード89.99MB/sec510.5MB/sec未計測未計測未計測
シーケンシャルライト92.64MB/sec252.2MB/sec未計測未計測未計測
512Kランダムリード35.31MB/sec427.8MB/sec未計測未計測未計測
512Kランダムライト47.48MB/sec250.1MB/sec未計測未計測未計測
4Kランダムリード0.426MB/sec31.42MB/sec未計測未計測未計測
4Kランダムライト1.098MB/sec102.5MB/sec未計測未計測未計測
4K QD32ランダムリード1.056MB/sec382.9MB/sec未計測未計測未計測
4K QD32ランダムライト1.124MB/sec224.4MB/sec未計測未計測未計測
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード94.49MB/sec517.5MB/sec487.2MB/sec481.2MB/sec513.8MB/sec
シーケンシャルライト96.49MB/sec253.4MB/sec156.4MB/sec139.3MB/sec455.1MB/sec
512Kランダムリード36.96MB/sec432.0MB/sec366.9MB/sec419.4MB/sec454.6MB/sec
512Kランダムライト56.66MB/sec228.0MB/sec142.3MB/sec140.7MB/sec444.9MB/sec
4Kランダムリード0.416MB/sec32.00MB/sec20.53MB/sec33.36MB/sec24.57MB/sec
4Kランダムライト1.560MB/sec100.5MB/sec54.06MB/sec99.30MB/sec56.09MB/sec
BBench
標準バッテリ5時間43分7時間39分6時間13分8時間5分19時間16分

 結果は上の表に示した通りで、CPUのパフォーマンスを計測するPCMark05のCPU Scoreは8869で、同じCore i7-4700Uを搭載したLet'snote LX3の9379に比べるとやや低いが、Core i5-4200Uを搭載したVAIO Pro 11の7864よりは上だ。ただ、比較用に用意したマシンはすべてストレージとしてSSDを搭載しているため、ストレージ周りのスコアは大差で負けてしまっている。PCMark VantageやPCMark 7のスコアが奮わないのも、ストレージ性能が足を引っぱっているためである。もちろん、SSDを搭載したUltrabookに比べると、アプリの起動などは多少待たされる感覚があるが、実用上は十分な性能である。

こだわりのノートPCが欲しい人や親世代へのプレゼントなどにお勧め

 GRANNOTEは、60代前後をメインターゲットとしたユニークな製品である。ハードウェア、ソフトウェア両面において、シニア層が使いやすいように、さまざまな工夫が凝らされており、なかなか意欲的な製品である。その分、コストはかかっていると思われ、実際の価格もやや高めではあるが、それだけの価値はある。タッチ操作にも対応しており、サービスやサポートも充実しているので、親世代にPCをプレゼントしたい人にもお勧めだ。

(石井 英男)