Hothotレビュー
富士通「GRANNOTE AH90/P」
~大人世代向けの15.6型ハイグレードノートPC
(2014/3/15 06:00)
富士通の2014年春モデルで、新たに追加された製品が「GRANNOTE AH90/P」と「LIFEBOOK TH90/P」の2モデルである(それ以外の製品は、2013年秋冬モデルを継続販売)。前者は、大人世代向けという新たなカテゴリーのノートPCで、後者はコンバーチブルタイプのUltrabookである。
どちらも、富士通の力の入れ具合がよく分かる意欲的な新製品であるが、ここでは、前者のGRANNOTE AH90/Pを試用する機会を得たので、レビューしていきたい。ただし、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や仕様、パフォーマンスなどが異なる可能性がある。
塗装や材質にこだわり、高級感を演出
GRANNOTE AH90/P(以下GRANNOTE)は、60歳前後の“大人世代”をメインターゲットにしたノートPCである。PCの分野で、若年層を狙った製品や女性をターゲットにした製品はそう珍しくはないが、60歳前後のシニア層をターゲットにしたノートPCは珍しい。富士通は以前、「らくらくパソコン」というPC初心者やシニア層向けのPCをリリースしていたが、GRANNOTEは、らくらくパソコンのコンセプトをさらに深めた製品ということもできるだろう。ハードウェア、ソフトウェアともに、シニア層が使いやすいように、さまざまな工夫が盛り込まれていることが魅力である。
まずは、その外観から見ていこう。GRANNOTEは、大人世代をターゲットにした製品ということで、デザインや外観にもこだわっている。上面は、美しい光沢があるシャンパンブラックで、大理石のような高級感がある。キーボード面は、磨りガラスのような加工が施されたアクリルパネルが貼られており、上品かつ落ち着いた印象を受ける。15.6型液晶搭載ノートPCなので、本体のサイズは、377.1×263.7×31mm(幅×奥行き×高さ)と比較的大きく、重量も約2.8kgと重い部類だが、基本的に据え置きで使う製品なので、特に問題にはならないだろう。
ノートPCとしての基本性能も十分に高い。CPUとして、第4世代CoreプロセッサであるCore i7-4500U(1.80GHz)を搭載し、メモリは標準で8GB実装している。メモリスロットは2基で空きはないが、出荷時に装着されている4GB SO-DIMM 2枚を外して、代わりに8GB SO-DIMMを装着することで、最大16GBまで増設が可能だ。ストレージとしては1TB HDDを搭載。光学ドライブとしては、スロットイン方式のBDドライブ(BDXL対応)を搭載。メディアの入れ替え時にトレイが出っ張らないので、見た目もスマートだ。OSは、Windows 8.1 64bit版がプリインストールされている。
周囲の環境や使用者の年代に合わせて液晶の色味を自動調整
GRANNOTEは、60代前後をターゲットに開発された製品であり、これまでのノートPCにはなかったさまざまな機能が搭載されている。その中でも目玉となるのが、周囲の環境や使用者の年代に合わせて液晶の色味を自動調整する機能だ。液晶上部に、RGBセンサーと照度センサーの2種類のセンサーを搭載しており、周囲の光の環境に応じて、自動的に画面の色味をベストな状態に調整する「インテリカラー」機能を搭載している。照度センサーを搭載して、周囲の明るさに応じて画面の輝度を最適な状態に調整する機能を備えたノートPCは多いが、RGBセンサーまで搭載した製品は珍しい。もちろん、GRANNNOTEでも、照度センサーを利用した自動輝度調整機能も搭載されている。
さらに、使用者の年代に合わせて色味を自動調整する「あわせるビュー」機能も搭載している。年をとると、視界が黄色みを帯びて、青や緑の色が見えにくくなる。あわせるビューでは、あらかじめ年代を指定しておくことで補正が必要なら、画像の青み成分を強調することで、識別しやすい配色に補正してくれるという機能だ。年代は、50代以下、60代、70代以上の3段階で指定でき、60代または70代以上に設定すると、あわせるビューが有効になる(もちろん、無効にすることも可能)。また、画面表示だけでなく、音声についても、年齢が高くなると高音域が聞き取りにくくなるので、高音域を強調する「あわせるボイス」機能が搭載されている。
液晶は15.6型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応である。IPS液晶を採用しているため、視野角が広く、色純度も高い。タッチ操作も可能だ。また、液晶表面がグレア(光沢)とノングレア(つや消し)の中間であるハーフグレア仕上げになっているため、鮮やかさと外光の映り込みにくさをうまく両立させている。タッチパネルも搭載しており、Windows 8.1の新UIとの相性も最高だ。液晶上部には、前述したRGBセンサーと照度センサーのほか、約200万画素のWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
深いキーストロークと3段階の押下圧による使いやすいキーボード
GRANNOTEは、キーボードへのこだわりも並大抵ではない。一般的なノートPCのキーストロークは深いものでも2mm程度で、薄さを重視したUltrabookでは1.5mm程度のものも多いが、GRANNOTEでは約3mmという深いキーストロークを実現しており、打ち心地がよい。キートップが球面状に凹んだ球面シリンドリカルキートップを採用していることも、打ち心地の向上に貢献している。
さらに、押す指の力にあわせてキーの押下圧(重さ)を3段階に変更していることもポイントだ。具体的には、力の弱い薬指や小指で押すキーは最も押下圧を小さくし、人差し指と中指で押すキーは中間の押下圧に、最も力の強い親指で押すキーは、最も押下圧が大きくなっている。これによって、どの指でタイピングしても快適な打鍵感が得られるのだ。実際にタイピングしてみたが、他のノートPCのキーボードとは確かに一線を画す、優れた打鍵感であった。キーボードにこだわる人や、長文を入力する機会の多い人には魅力的であろう。バックライトも搭載されており、美しく点灯する。キーボードの上部にはワンタッチボタンが用意されており、よく使われる機能をワンタッチで呼び出すことができる。
ポインティングデバイスとしては、パッドタイプのフラットポイントを搭載しているが、最近流行のパッドとクリックボタンが一体化したタイプではなく、左右のクリックボタンが独立して設けられていることも評価できる。慣れれば、一体化タイプでも自由に操作できるようになるが、やはり、クリックボタンが独立しているほうが、操作しやすく、ミスも少ない。特に年齢層の高い方々にはありがたいだろう。
マウスも専用設計の高機能なものが付属
GRANNNOTEでは、付属のワイヤレスマウスも専用設計の高機能なものとなっている。レーザー方式のマウスだが、5ボタン+左右チルト対応スクロールホイールを備えており、マウスだけで、Windows 8.1のさまざまな操作が可能である。スクロールホイールを押してから回すと画面の拡大・縮小が可能で、右に倒すとアプリ切り替え、左に倒すとチャーム表示になる。また、スクロールホイールの手前にはスタートボタンがあり、いつでもスタート画面を呼び出すことができる。さらに、左右側面には、進むボタンと戻るボタンが用意されており、ネットサーフィンなども非常に快適だ。
インターフェイスも充実している。USB 3.0×4(うち1つは電源オフUSB充電に対応)やHDMI出力、有線LANなどを備えているほか、SDカード対応のダイレクト・メモリースロットも用意されている。キーボード面にもインターフェイスのアイコンが描かれているほか、キーボードバックライトに合わせてアイコンのバックライトが点灯するので、見た目も美しく、わかりやすい。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LAN機能とBluetooth 4.0+HSをサポートするほか、パームレストの右側にNFCポートも用意されている。
公称バッテリ駆動時間は約10.5時間であり、15.6型クラスのノートPCとしてはかなり長い。実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、5時間43分という結果になった。公称に比べるとかなり短いが、このクラスの製品としては十分であろう。ACアダプタもコンパクトで軽く、邪魔にならない。
独自サービスやソフトも充実
GRANNOTEは、使い勝手のよいキーボードやマウス、ハーフグレアの液晶パネルなど、ハードウェアに工夫が凝らされているが、サービスやプリインストールソフトについてもこだわりが感じられる。まず、Officeスイートである「Microsoft Office Home and Business 2013」とGRANNOTEだけのオリジナルOfficeテンプレートがプリインストールされており、さまざまなシーンで活用できる。また、GRANNNOTE専用の特典付きサービス&電話サポートが受けられる「サービスパック」や大人のためのSNS「らくらくコミュニティ」専用アプリなどもプリインストールされている。さらに、GRANNOTEユーザーの専用サイト「GRANNOTE特選サイト」へのショートカットアイコンもデスクトップに用意されている。
SSD搭載機に比べるとパフォーマンスは低いが、日常的な利用には十分な性能
参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「CrystalDiskMark 3.0.3a」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用に、レノボ・ジャパン「新しいThinkPad X1 Carbon」、ソニー「VAIO Tap 11」、ソニー「VAIO Pro 11」、パナソニック「Let'snote LX3」のスコアも掲載した。
GRANNOTE | 新しいThinkPad X1 Carbon | VAIO Tap 11 | VAIO Pro 11 | Let'snote LX3 | |
---|---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-4500U (1.8GHz) | Core i7-4600U (2.1GHz) | Pentium 3560Y (1.2GHz) | Core i5-4200U (1.6GHz) | Core i7-4500U (1.8GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics 4400 |
PCMark05 | |||||
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 8869 | 9802 | 3709 | 7864 | 9379 |
Memory Score | 7781 | 9851 | 3762 | 9978 | 8599 |
Graphics Score | 2948 | 2706 | 1834 | 2144 | 3302 |
HDD Score | 6072 | 56273 | 47532 | 55122 | 56040 |
PCMark Vantage 64bit | |||||
PCMark Score | 6690 | 15934 | 5687 | 12881 | 15540 |
Memories Score | 4356 | 8842 | 4814 | 7106 | 8493 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 4631 | 10957 | 5483 | 7025 | 11030 |
Music Score | 6628 | 13732 | 7092 | 15744 | 18077 |
Communications Score | 10819 | 19675 | 6546 | 14934 | 17972 |
Productivity Score | 4276 | 19615 | 8563 | 16209 | 21503 |
HDD Score | 3731 | 50926 | 48228 | 50784 | 47907 |
PCMark Vantage 32bit | |||||
PCMark Score | 6110 | 14618 | 5371 | 11944 | 14111 |
Memories Score | 4448 | 8244 | 4581 | 6994 | 8104 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 4118 | 9269 | 4588 | 7554 | 9699 |
Music Score | 6169 | 15706 | 6817 | 14962 | 16543 |
Communications Score | 9619 | 17806 | 5995 | 13508 | 16043 |
Productivity Score | 4001 | 17590 | 8336 | 15325 | 19719 |
HDD Score | 3672 | 46669 | 49186 | 51157 | 48117 |
PCMark 7 v1.4.0 | |||||
PCMark score | 2903 | 5294 | 3006 | 4016 | 5310 |
Lightweight score | 1448 | 3632 | 2102 | 4892 | 5789 |
Productivity score | 931 | 2695 | 1506 | 3835 | 4724 |
Entertainment score | 2800 | 3824 | 1934 | 2645 | 3816 |
Creativity score | 5802 | 10006 | 4323 | 8312 | 9986 |
Computation score | 14807 | 18443 | 4513 | 9970 | 16901 |
System storage score | 1586 | 5339 | 5183 | 5317 | 5491 |
Raw system storage score | 350 | 5344 | 4886 | 5679 | 6121 |
3DMark | |||||
Ice Storm | 40312 | 42672 | 15527 | 27312 | 44155 |
Cloud Gate | 4150 | 4522 | 1707 | 3461 | 4900 |
Fire Strike | 553 | 604 | 237 | 469 | 721 |
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編 | |||||
1,280×720ドット 最高品質 | 1451 | 1621 | 695 | 未計測 | 1580 |
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 1490 | 1635 | 716 | 未計測 | 1598 |
1,280×720ドット 高品質(ノートPC) | 2159 | 2314 | 1031 | 未計測 | 1894 |
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 3209 | 3471 | 1445 | 未計測 | 3350 |
1280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 3223 | 3473 | 1448 | 未計測 | 3279 |
CrsytalDiskMark 3.0.3a | |||||
シーケンシャルリード | 89.99MB/sec | 510.5MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
シーケンシャルライト | 92.64MB/sec | 252.2MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
512Kランダムリード | 35.31MB/sec | 427.8MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
512Kランダムライト | 47.48MB/sec | 250.1MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
4Kランダムリード | 0.426MB/sec | 31.42MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
4Kランダムライト | 1.098MB/sec | 102.5MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
4K QD32ランダムリード | 1.056MB/sec | 382.9MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
4K QD32ランダムライト | 1.124MB/sec | 224.4MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||||
シーケンシャルリード | 94.49MB/sec | 517.5MB/sec | 487.2MB/sec | 481.2MB/sec | 513.8MB/sec |
シーケンシャルライト | 96.49MB/sec | 253.4MB/sec | 156.4MB/sec | 139.3MB/sec | 455.1MB/sec |
512Kランダムリード | 36.96MB/sec | 432.0MB/sec | 366.9MB/sec | 419.4MB/sec | 454.6MB/sec |
512Kランダムライト | 56.66MB/sec | 228.0MB/sec | 142.3MB/sec | 140.7MB/sec | 444.9MB/sec |
4Kランダムリード | 0.416MB/sec | 32.00MB/sec | 20.53MB/sec | 33.36MB/sec | 24.57MB/sec |
4Kランダムライト | 1.560MB/sec | 100.5MB/sec | 54.06MB/sec | 99.30MB/sec | 56.09MB/sec |
BBench | |||||
標準バッテリ | 5時間43分 | 7時間39分 | 6時間13分 | 8時間5分 | 19時間16分 |
結果は上の表に示した通りで、CPUのパフォーマンスを計測するPCMark05のCPU Scoreは8869で、同じCore i7-4700Uを搭載したLet'snote LX3の9379に比べるとやや低いが、Core i5-4200Uを搭載したVAIO Pro 11の7864よりは上だ。ただ、比較用に用意したマシンはすべてストレージとしてSSDを搭載しているため、ストレージ周りのスコアは大差で負けてしまっている。PCMark VantageやPCMark 7のスコアが奮わないのも、ストレージ性能が足を引っぱっているためである。もちろん、SSDを搭載したUltrabookに比べると、アプリの起動などは多少待たされる感覚があるが、実用上は十分な性能である。
こだわりのノートPCが欲しい人や親世代へのプレゼントなどにお勧め
GRANNOTEは、60代前後をメインターゲットとしたユニークな製品である。ハードウェア、ソフトウェア両面において、シニア層が使いやすいように、さまざまな工夫が凝らされており、なかなか意欲的な製品である。その分、コストはかかっていると思われ、実際の価格もやや高めではあるが、それだけの価値はある。タッチ操作にも対応しており、サービスやサポートも充実しているので、親世代にPCをプレゼントしたい人にもお勧めだ。