富士通「LIFEBOOK SH76/C」
~第2世代Core i5搭載でWiDiに対応したモバイルノート



LIFEBOOK SH76/C

発売中
価格:オープンプライス



 富士通から登場した「LIFEBOOK SH76/C」は、コードネームSandy Bridgeこと第2世代Core i5を搭載したモバイルノートである。富士通の春モデルの中でも、主力として推している製品であり、筐体も一新されている。旧SHシリーズと同様にモバイル・マルチベイを採用し、携帯性重視かバッテリ駆動時間重視かによって、構成を変えられることが特徴だ。直販価格は179,800円となっている。

●マグネシウム合金製天板を採用した堅牢ボディ

 LIFEBOOK SH76/C(以下、SH76/C)は、13.3型ワイド液晶搭載のモバイルノートであり、旧SHシリーズとは筐体も一新された。ボディカラーは、光沢のあるグラファイトブラックで、質感は高い。本体のサイズは、321×228.5×24.2~32.3mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.66kg(DVDスーパードライブ装着時)である。13.3型ワイド液晶搭載2スピンドルノートとしては比較的軽量であり、気軽に携帯できる範囲だ。天板はマグネシウム合金製で、高い強度を実現。

 CPUとしては、Core i5-2520M(2.5GHz)を搭載。デュアルコアだが、Hyper-Threadingテクノロジーをサポートしており、最大4スレッドの同時実行が可能だ。また、Turbo Boostにより、最大3.2GHzまでクロックが上昇する。

 メモリは標準で4GB実装されており、通常の利用には十分だ。ただし、出荷時の状態で、2基のSO-DIMMスロットにそれぞれ2GB SO-DIMMが装着されているため、SO-DIMMスロットの空きはない。メモリは最大8GBまで増設可能だが、その際は標準実装されている2GB SO-DIMM×2を外す必要があるので注意したい。

 HDDは2.5インチ640GBで、回転数は5,400rpmである。HDDの容量もかなり余裕がある。光学ドライブとしては、DVDスーパーマルチドライブを搭載する。なお、光学ドライブはモバイル・マルチベイに装着されているため、着脱が可能だ。光学ドライブを外して、代わりにオプションのモバイル・マルチベイ用カバーを装着することで、重量は約1.52kgに軽減される。モバイルノートながらA4ノートに負けない基本性能といってよいだろう。OSとしては、Windows 7 Home Premium 64bit版がプリインストールされている。

LIFEBOOK SH76/Cの上面。ボディカラーは光沢のあるグラファイトブラックだ「DOS/V POWER REPORT」誌とLIFEBOOK SH76/Cのサイズ比較。LIFEBOOK SH76/Cのほうが奥行きが19.5mm、横幅が44mm大きいLIFEBOOK SH76/Cの底面。メモリスロットやHDDはそれぞれ独立したカバーで覆われている
底面のカバーを外すと、メモリスロットやHDDにアクセスできるメモリスロットとして、SO-DIMMスロットを2基備えている。ただし、標準で2GB SO-DIMMが2枚装着されているので空きスロットはない本体を分解せずにHDDにアクセスできるので、HDDの換装も容易だ(もちろん、メーカー保証外の行為となるが)
底面右上には、ダストカバーが用意されている。取り外すことで、ヒートシンクに詰まったホコリを掃除できるダストカバーを取り外したところ。掃除機などでホコリを吸い出せる。利用時はカバーをつけたままにする
光学ドライブとして、DVDスーパーマルチドライブを搭載。DVDスーパーマルチドライブは、モバイル・マルチベイに装着されており、着脱が可能DVDスーパーマルチドライブを外したところ。ドライブの代わりにオプションの増設用内蔵バッテリユニットや、モバイル・マルチベイ用カバーを装着できる

●LEDバックライト採用の薄型軽量液晶パネルを採用

 液晶ディスプレイとしては、13.3型ワイド液晶を採用。解像度は1,366×768ドットである。光沢(グレア)タイプの液晶であり、発色は鮮やかだが、外光の映り込みがやや気になることがある。なお、バックライトにはLEDが採用されており、低消費電力かつ輝度が高い。また、下位モデルのSH53/Cに搭載されている液晶よりも薄型で軽いことも特徴だ。

 液晶上部に、約30万画素のWebカメラを搭載しており、ビデオチャットなどに利用できる。また、人感センサーとしての利用にも対応しており、PCの前から人が離れたら液晶を自動的にオフにし、戻ると自動的にオンにすることも可能だ。

液晶は13.3型ワイドで、解像度は1,366×768ドット。光沢タイプの液晶なので、発色は鮮やかだが、外光の映り込みがやや気になることがある液晶上部に、約30万画素のWebカメラを搭載。ビデオチャットなどに利用できるほか、人感センサーとして使うことも可能Sense YOU Technologyと呼ばれるユーティリティによって、Webカメラを人感センサーとして使える

●スクロール専用の円形パッドも装備

 キーボードは全86キーで、キーピッチは約19mm、キーストロークは約2.7mmとやや深めだ。キー配列も標準的で不等キーピッチもないため、効率の良いキー入力が可能だ。ポインティングデバイスとしては、パッドタイプのフラットポイントを搭載。メインのパッドの右側にスクロールパッドと呼ばれる円形の小さなパッドを備えているが、このパッドはスクロール専用パッドで、周囲をクルクルなぞることで、連続的な上下スクロールが可能だ。

 キーボード上部には、5つのワンタッチボタンが用意されている。右から2つ目のボタンはECOボタンで、ワンタッチで省電力重視のECOモードと通常モードを切り替えられる。ECOモード有効時は、キーボード上部左側にあるインジケーターLEDの左端のECO LEDが点灯する。

キーボードは全86キーで、キーピッチは約19mm、キーストロークは約2.7mm。キー配列も標準的でタイピングしやすいポインティングデバイスとして、フラットポイントを搭載。右側の円形のパッドは、スクロールパッドで、クルクルなぞることで、上下スクロールが可能
キーボード上部には、5つのワンタッチボタンが用意されている。左からSupportボタン、Internetボタン、Mailボタン、ECOボタン、Dictionaryボタンと呼ばれるECOモード有効時には、左端のECO LEDが点灯する

●USB 3.0ポートやHDMI端子、ExpressCardスロットも搭載

 インターフェイスも充実しており、USB 3.0×1とUSB 2.0×2、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、HDMI出力端子、有線LAN(Gigabit Ethernet)などを装備するほか、ExpressCard/54スロットも備えている。左側面のUSB 2.0ポートは、電源オフUSB充電機能に対応しており、本体の電源を切った状態でもUSBへの給電が可能だ。さらに、ダイレクト・メモリースロット(SDメモリーカードスロット)も用意されている。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANとWiMAXを搭載する。正面右側にはワイヤレススイッチが用意されており、ワンタッチでワイヤレス機能のON/OFFを行なえるので便利だ。また、無線LANを利用してTVなどにワイヤレスで映像を出力する、Wireless Display(WiDi)にも対応している(TV側には、サードパーティから発売されているWiDiアダプタが必要)。

左側面には、USB 3.0、USB 2.0(電源オフUSB充電機能対応)、HDMI出力、マイク入力、ヘッドフォン出力が用意されている右側面には、ExpressCardスロットとモバイル・マルチベイ、USB 2.0、有線LANが用意されているExpressCardスロットのフタはダミーカード方式になっている
正面には、ダイレクト・メモリスロットとワイヤレススイッチが用意されている正面右側に、ワイヤレススイッチが用意されており、ワイヤレス機能のON/OFFを行なえるので便利だ

●増設用バッテリ装着で最大約14.6時間駆動が可能

 標準バッテリは10.8V/6,200mAhの6セル仕様で、公称約11時間の連続駆動が可能だ。さらに、モバイル・マルチベイにオプションの増設用バッテリを装着することで、最大約14.6時間もの長時間駆動が可能になる。

 実際に、標準バッテリのみ装着した状態で、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebサイトへのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、輝度は中)、5時間57分であった。公称の半分強だが、無線LANを常時ONにした状態で、これだけ持てばモバイルノートとして十分合格といえるだろう。さらに長時間のバッテリ駆動が必要なら増設用バッテリを利用すればよい。ACアダプタのサイズはこのクラスとしては標準的だが、Let'snoteなどに比べるとやや大きく、重い。

LIFEBOOK SH76/Cの標準バッテリ。10.8V/6,200mAhの6セル仕様であるCDケース(左)とバッテリのサイズ比較
ACアダプタは、このクラスとしては標準的なサイズだが、Let'snoteなどに比べると大きいCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●A4サイズノートに負けないパフォーマンスを実現

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは、「PCMark05」「PCMark Vantage」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用として、ソニー「VAIO S」、富士通「LIFEBOOK PH50/C」、ソニー「VAIO Y(YB)」、ソニー「VAIO Y(YA)」、パナソニック「Let'snote J9ハイパフォーマンスモデル」の値も掲載した。

 PCMark05のCPU Scoreの値は、9211と非常に高く、第1世代のCore i5を搭載するLet'snote J9はもちろんのこと、同じ第2世代Core i5を搭載するVAIO Sに比べても13%ほど高い。SH76/Cは、VAIO Sよりもプロセッサ・ナンバーが上(動作クロックが高い)のCPUを搭載しているためだ。A4ノートと比べても遜色のないパフォーマンスであり、重さ2kg未満のモバイルノートとしては、非常に高性能だといえる。動画エンコードなど負荷の高い作業も、十分にこなせる。

【表】ベンチマーク結果

LIFEBOOK SH76/CVAIO S(SPEEDモード)VAIO S
(STAMINAモード)
LIFEBOOK PH50/CVAIO Y(YB)VAIO Y(YA)Let'snote J9ハイパフォーマンスモデル
CPUCore i5-2520M
(2.5GHz)
Core i5-2410M
(2.3GHz)
Core i5-2410M
(2.3GHz)
AMD E-350
(1.6GHz)
AMD E-350
(1.6GHz)
Core i3-380UM
(1.33GHz)
Core i5-460M
(2.53GHz)
ビデオチップCPU内蔵コアRadeon HD 6470MRadeon HD 6470MCPU内蔵コアCPU内蔵コアCPU内蔵コアCPU内蔵コア
PCMark05
PCMarks7584N/AN/AN/A2860N/A7746
CPU Score9211816081632830275835867149
Memory Score9846792080602056203434655629
Graphics Score5288602240672555244415722239
HDD Score56765372532448035097525128319
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score7188576953432271N/A3219未計測
Memories Score4263397434241634N/A2045未計測
TV and Movie Score4594383938131496N/A2331未計測
Gaming Score4864464838842042N/A2093未計測
Music Score6784583957262607N/A3529未計測
Communications Score9615543853882363N/A2829未計測
Productivity Score5241463545561568N/A2907未計測
HDD Score3593324332392617N/A3063未計測
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score68645438490521912041未計測未計測
Memories Score40813759345515271553未計測未計測
TV and Movie Score45093764359315761560未計測未計測
Gaming Score40784068338517771789未計測未計測
Music Score63085670517725262510未計測未計測
Communications Score88405085477321532083未計測未計測
Productivity Score48074209414415201473未計測未計測
HDD Score36583242326226552676未計測未計測
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)110051211574505845563328023345
CPU Score1402212613555474266131144
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH3850687834282238212413172445
LOW5568989351123487328619103893
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP10099.9799.9759.6756.677.798.27
HP10099.9799.9799.9799.9799.9799.97
SP/LP99.9799.9710099.9799.9710099.97
LLP99.9799.9799.9799.9799.9710099.97
DP(CPU負荷)13172062723729
HP(CPU負荷)67948612113
SP/LP(CPU負荷)4462941208
LLP(CPU負荷)3352244146
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード71.50MB/sec81.37MB/sec78.12MB/sec78.38MB/sec70.34MB/sec88.75MB/sec189.4MB/sec
シーケンシャルライト72.73MB/sec80.86MB/sec77.74MB/sec77.35MB/sec75.5MB/sec87.92MB/sec154.6MB/sec
512Kランダムリード36.46MB/sec31.90MB/sec31.53MB/sec32.48MB/sec30.76MB/sec35.09MB/sec172.5MB/sec
512Kランダムライト63.73MB/sec33.41MB/sec32.22MB/sec33.71MB/sec39.55MB/sec43.82MB/sec106.2MB/sec
4Kランダムリード0.558MB/sec0.415MB/sec0.409MB/sec0.448MB/sec0.422MB/sec0.443MB/sec12.8MB/sec
4Kランダムライト1.149MB/sec1.143MB/sec1.103MB/sec1.081MB/sec1.395MB/sec1.500MB/sec20.91MB/sec
BBench
Sバッテリ(標準バッテリ)5時間57分3時間37分5時間36分5時間49分5時間28分5時間14分未計測
Lバッテリ未計測未計測未計測なし未計測未計測10時間15分

●パフォーマンスも携帯性も重視という人にお勧め

 SH76/Cは、気軽に持ち歩けるサイズと重量のモバイルノートながら、メインマシンとして使うにも十分なパフォーマンスを持っており、製品としての完成度は高い。独自のモバイル・マルチベイにより、構成を変えられることも魅力だ。

 また、広辞苑や新和英中辞典、新漢語林MXなどの電子辞書や、ハガキ作成ソフトの「筆ぐるめ Ver.18」などの実用的なアプリがプリインストールされていることも評価できる。単体GPUは搭載していないので、ゲーム用には向かないが、それ以外の用途なら快適に行なえるモバイルノートであり、性能と携帯性の両方を重視する人にお勧めしたい。

バックナンバー

(2011年 3月 25日)

[Text by 石井 英男]