~10万円を切る3波デジタルチューナ搭載液晶一体型PC |
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)から登場した「HP All-in-One PC200」(以下All-in-One PC200)は、21.5型ワイド液晶を搭載した液晶一体型PCだ。同社では、2010年3月に18.5型ワイド液晶を搭載した「HP Pavilion All-in-One PC MS200」を発売しているが、All-in-One PC200は、その上位モデルとなる。All-in-One PC200は、地上/BS/110度CSの3波デジタルチューナを搭載していることが特徴だ。直販モデルと店頭モデルの2モデルがあり、後者のほうがCPUやHDD容量などのスペックが高い。直販モデルの価格は99,960円と、10万円を切っており、コストパフォーマンスも魅力だ。今回は、直販モデルを試用する機会を得たので、さっそくレビューしていきたい。
●デュアルコアのPentiumを搭載
All-in-One PC200のボディは、一見ただの液晶TVか液晶ディスプレイのように見える、オーソドックスでシンプルなデザインである。上品で目立ちすぎないため、万人向けであろう。ボディカラーは光沢のあるブラックのみだ。本体サイズは、545.5×428.56×220.09mm(幅×高さ×奥行き)で、重量は約8.25kgである。220.09mmという奥行きはスタンドの奥行きであり、本体部分の厚さは65.19mmとかなりスリムだ。
直販モデルでは、CPUとしてPentium E5400(2.7GHz)を搭載。Pentiumというブランド名が付いているが、デュアルコアCPU「Core 2 Duo」の廉価版であり、このクラスとして必要にして十分なパフォーマンスを実現できる。店頭モデルでは、上位のCore 2 Duo E7500(2.93GHz)が搭載されている。チップセットは、グラフィックス機能統合型のIntel G45S Expressを搭載。メモリはPC3-10600 DDR3 SO-DIMMスロットが2基用意されており、直販モデルでは1GB SO-DIMM×2の2GB、店頭モデルでは2GB SO-DIMM×2の4GBが実装されている。なお、メモリの最大容量は4GBなので、店頭モデルのメモリをそれ以上増設することはできない。HDD容量は、直販モデルが500GB、店頭モデルが750GBである。OSは、Windows 7 Home Premium 32bit版がプリインストールされている。
●ノングレアタイプのフルHD表示対応液晶を採用
液晶は21.5型ワイドで、解像度は1,920×1,080ドットのフルHDである。コンシューマ向けの液晶一体型PCでは、光沢タイプの液晶を採用しているものが多いが、All-in-One PC200の液晶はノングレアタイプであり、外光が映り込みにくい。むしろ、液晶周囲のベゼル部分が光沢のあるブラックなので、ベゼル部分への映り込みが気になる。ノングレアタイプのほうが、まぶしさを感じにくく、長時間使っていても疲れが少ない。解像度が高いので、複数のウィンドウを同時に開いても快適に作業がおこなえる。また、輝点ゼロが保証されていることも評価できる。液晶上部には、VGA解像度のWebカメラとアレイマイクが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
スタンドにはスイベル機構が搭載されており、スタンドを動かさずに液晶を左右に回転できる。また、前後のチルト調整も可能で、チルト角度は0~30度である。
●地上/BS/110度CS対応3波チューナを搭載
All-in-One PC200は、地上/BS/110度CS対応の3波デジタルチューナを搭載しており、地上デジタル放送やBS/110度CSデジタル放送の番組の視聴や録画が可能なことも魅力だ。チューナカードはAVerMedia製で、背面右上のカバーを外してB-CASカードを装着する。TV放送の視聴や録画は、Windows 7標準のWindows Media Center機能を利用する。
なお、地上デジタル放送用とBS/110度CSデジタル用ではアンテナ端子が別々になっているので、両方を視聴する場合は、両方のアンテナ端子にアンテナケーブルを接続する必要がある。アンテナ端子は別々だが、地上デジタル放送とBS/110度CSデジタル放送を同時に視聴することや録画することはできない。データ放送の双方向サービスやダビング10にも対応しており、Windows Media Center対応の赤外線リモコンも付属しているので、離れた場所から家電感覚で操作できる。
キーボードは有線接続のUSBキーボードで、キーピッチは広く、キー配列も標準的なので使いやすい。マウスも一般的な光学式ホイールが付属する。キーボードやマウスは無線式のほうが、ケーブルが邪魔にならず、離れた場所からでも利用できるので便利だが、コストを重視して有線タイプを選択したのであろう。なお、キーボードは底面の中央が凹んでおり、使わないときには、本体のスタンド部分に収納できるようになっている。
●LightScribe対応DVDスーパーマルチドライブを装備
光学ドライブとして、右側面にDVDスーパーマルチドライブを搭載しているが、このDVDスーパーマルチドライブはメディアのレーベル面に直接印字できるLightScribe機能をサポートしている。LightScribe機能の利用には、LightScribe対応メディアが必要だが、プリンタを使わずにレーベル面に文字や画像を印字できるのは便利だ。
インターフェイスとしては、USB 2.0×7(左側面2、背面5)やGigabit Ethernetなどを備えるほか、SDカード/メモリースティック/xD-Picture Cardに対応した6in1メディアスロットも搭載する。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANをサポートしているが、Bluetoothには対応していない。
電源回路は内蔵しておらず、電源は付属のACアダプタ経由で供給される。出力は150WとノートPCのACアダプタに比べると大きいので、サイズもやや大きめだ。
独自ソフトとして、ランチャーソフトの「PC Dock」とマルチメディアプレイヤーの「HP MediaSmart」がプリインストールされている。HP MediaSmartは、DVD、音楽、フォト、ビデオの4つのモードを備え、直感的な操作でデジタルコンテンツを楽しめる。
●Core 2 Duo搭載ノートPCと同等以上の性能
参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」である。比較対照用として、レノボ「IdeaCentre A600」「ThinkPad X201」「ThinkPad T400s Windows 7モデル」、デル「Studio 15 OPIデザイン」の値も掲載した。
PCMark05の総合スコアであるPCMarksは5071で、通常電圧版のCore 2 Duo搭載のThinkPad T400sよりも13%ほど高い。CPUクロックが高いだけでなく、HDDが3.5インチなのでディスクパフォーマンスが高いということも効いているのであろう。今回試用した直販モデルの実装メモリは2GBだが、Windows 7 Home Premiumも快適に動作していた。ただし、単体GPUは搭載しておらず、チップセット統合のグラフィックス機能を利用しているので、3D描画性能に関しては期待できない。総合的にみて、Core i5搭載ノートPCには多少見劣りするものの、Core 2 Duo搭載ノートPCとは同等以上の性能を持つといってよいだろう。
HP All-in-One PC200 | IdeaCentre A600 | ThinkPad X201 | ThinkPad T410s | ThinkPad T400s Windows 7モデル | Studio 15 OPIデザイン | |
CPU | Pentium E5400(2.7GHz) | Core 2 Duo P8700(2.53GHz) | Core i5-540M(2.53GHz) | Core i5-520M(2.4GHz) | Core 2 Duo SP9400(2.4GHz) | Core i5-430M(2.26GHz) |
ビデオチップ | Intel G45S内蔵コア | Mobility Radeon HD 4350 | CPU内蔵コア | CPU内蔵コア | Intel GS45内蔵コア | Mobility Radeon HD 4570 |
PCMarks | 5071 | N/A | 6163 | 5677 | 4480 | N/A |
CPU Score | 6540 | 6393 | 7637 | 7375 | 6092 | 6677 |
Memory Score | 4941 | 5253 | 6286 | 6184 | 5276 | 5738 |
Graphics Score | 2002 | 4442 | 2670 | 2610 | 2057 | 5234 |
HDD Score | 7693 | 6738 | 5534 | 4291 | 4471 | 4646 |
3DMark03 | ||||||
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 2855 | 8890 | 4111 | 4101 | 2493 | 10687 |
CPU Score | 1006 | 1604 | 1121 | 1068 | 980 | 1604 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||||
HIGH | 2623 | 5872 | 2516 | 2458 | 2487 | 5991 |
LOW | 3911 | 8807 | 3885 | 3808 | 3868 | 8933 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | ||||||
DP | 99.97 | 99.97 | 100 | 96.63 | 99.93 | 100 |
HP | 99.97 | 100 | 100 | 99.97 | 99.93 | 100 |
SP/LP | 99.97 | 99.97 | 99.97 | 100 | 99.97 | 99.97 |
LLP | 99.97 | 99.97 | 100 | 99.97 | 99.97 | 100 |
DP(CPU負荷) | 50 | 40 | 19 | 21 | 48 | 19 |
HP(CPU負荷) | 36 | 23 | 10 | 12 | 19 | 11 |
SP/LP(CPU負荷) | 20 | 13 | 7 | 7 | 10 | 8 |
LLP(CPU負荷) | 21 | 10 | 6 | 6 | 7 | 8 |
CrystalDiskMark 2.2 | ||||||
シーケンシャルリード | 115.4MB/s | 123.1MB/s | 72.04MB/s | 36.20MB/s | 47.04MB/s | 60.85MB/s |
シーケンシャルライト | 120.6MB/s | 122.9MB/s | 70.53MB/s | 40.05MB/s | 48.16MB/s | 60.53MB/s |
512Kランダムリード | 28.84MB/s | 53.46MB/s | 32.85MB/s | 23.30MB/s | 26.89MB/s | 27.79MB/s |
512Kランダムライト | 80.88MB/s | 75.92MB/s | 35.23MB/s | 24.25MB/s | 30.03MB/s | 40.09MB/s |
4Kランダムリード | 0.462MB/s | 0.751MB/s | 0.462MB/s | 0.425MB/s | 0.450MB/s | 0.424MB/s |
4Kランダムライト | 0.800MB/s | 1.665MB/s | 1.171MB/s | 0.961MB/s | 1.049MB/s | 1.399MB/s |
●コストパフォーマンスの高さが魅力
All-in-One PC200は、3波デジタルチューナとノングレアのフルHD液晶を搭載しながら、直販モデルでは10万円を切る価格を実現しており、コストパフォーマンスは高い。単体GPUを搭載していないので、ゲーム用途には向かないが、Webやメール、文書作成などをおこなうのなら、十分なパフォーマンスである。1台でTVとPC、DVDレコーダーの3役を果たすので、一人暮らしを始めた人など、できるだけ部屋に置く機器を減らしたいという人にもお勧めだ。
(2010年 5月 13日)
[Text by 石井 英男]