ソニー「VAIO P」
~人気のポケットスタイルPCがさらに進化



ソニー「VAIO P」

5月22日 発売

価格:オープンプライス



 ソニーの「VAIO P」は、2009年1月に初代モデルが発表された「VAIO type P」の後継となる製品だ。VAIO type Pは、1,600×768ドットの8型ウルトラワイド液晶を搭載し、最軽量構成時約588gという驚異的な軽さを実現したジャストキーボードサイズの小型モバイルPCである。その斬新なスタイルと高い携帯性でモバイラーの支持を集め、一時は品薄になるほどの人気を誇った。

 初代VAIO type Pは、OSとしてWindows Vista Home BasicやWindows Vista Home Premium、Windows Vista Businessが搭載されていたが、その後2009年6月に、Windows XP Home Edition搭載モデルが追加され、Windows XP用ドライバも提供された。その後、Windows 7の登場にあわせ、Vsitaモデルの後継としてWindows 7 Home Premium搭載モデルが登場したが、これらのモデルはすべてマイナーチェンジであり、大幅な機能強化はなかった。

 しかし、今回発表されたVAIO Pは、ボディサイズこそ旧モデルと変わらないが、モバイルグリップスタイルを実現するタッチパッドの装備をはじめ、地磁気センサーや加速度センサーを搭載するなど、さまざまな点で強化が行なわれ、進化した第2世代VAIO Pと呼ぶにふさわしい製品に仕上がっている。VAIO Pは、構成が固定されている店頭モデルと、CPUやストレージ、OSなどの変更が可能なVAIOオーナーメードモデルがあるが、ここでは店頭モデルを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部やパフォーマンスが異なる可能性がある。PlayStation 3のリモートプレイに関しては、僚誌GAME Watchでお伝えする予定だ。

●ボディサイズは同じだが、デザインやカラーは一新

 2009年に登場したVAIO type Pは、Atom搭載ネットブックとCPUなどのスペックは似ているが、フットプリントが長形3号封筒とほぼ同じ245×120×19.8mm(幅×奥行き×高さ)で、最軽量構成時なら600gを切るという、携帯性の高さが最大の魅力であったが、今回登場したVAIO Pも、ボディサイズは初代VAIO type Pと全く同じ245×120×19.8mm(同)である。

 ただし、デザインやカラーリングが変更されている。VAIO Pでは、「つつむ、たたむ」をイメージし、天板からヒンジ部分、底面、キーボードまで同じカラーで包み込むデザインを採用。横からでは「の」の字を寝かせたように見えるこのデザインは、ユニークで美しい。ボディカラーも一新され、店頭モデルではホワイト、オレンジ、ピンクの3色から選択できるほか、VAIOオーナーメードモデルでは、店頭モデルの3色に加えて、ブラックとグリーンも追加され、5色から選べる。本体重量は構成によって異なるが、店頭モデルでは619g、VAIOオーナーメードモデルでは最軽量構成時595gとなる。

VAIO Pの上面。試用機のボディカラーはホワイトだが、店頭モデルではホワイト以外にオレンジとピンクが用意されているVAIO Pの底面。ネジの頭などが見えないように配慮されており、見た目も美しいバッテリを外したところ。バッテリのサイズは旧モデルよりも大きくなり、容量が2,100mAhから2,500mAhに増加している
VAIO Pの厚さは19.8mmと薄いので、カバンなどへの出し入れも楽だ。左はDVDトールケース。側面は「の」の字を横にしたようなデザインになっている「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。VAIO Pの小ささがよく分かる。サイズは、旧モデルと変わらない試用機の本体重量は実測で611gであった

●VAIOオーナーメードモデルではAtom Z560と新チップセットUS15Xを選択可能

 VAIO Pは初代VAIO type Pと同じく、CPUにAtom Zシリーズを搭載しているが、パフォーマンスも強化されている。店頭モデルは仕様固定で、CPUがAtom Z530(1.6GHz)、チップセットがUS15W、メモリが2GB(増設不可)となる。旧VAIO Pの店頭モデルであるVGN-P72K/Wは、CPUがAtom Z520(1.33GHz)だったので、クロックが20%ほど向上しており、より快適に動作する。

 さらに、BTOによるカスタマイズが可能なVAIOオーナーメードモデルでは、CPUの選択肢としてAtom Z530/Z550/Z560の3種類が用意されている。2GHz動作のAtom Z550は、従来のVAIO PのVAIOオーナーメードモデルでは選択できたが、今回新たに2.13GHz動作のAtom Z560が追加されている。さらに、チップセットもUS15Wの高速版である新モデルUS15Xを選択できるようになった。US15WとUS15Xの違いは、内蔵グラフィックスコアの動作クロックであり、US15Wのグラフィックスコアのクロックは200MHzなのに対し、US15Xのグラフィックスコアは266MHzで動作する。クロックは33%向上しており、Atom Zシリーズの最大の弱点といえる、描画のもっさり感が大きく改善されているという。

 なお、US15Xは、Atom Z560搭載時のみ選択が可能となっており、他のCPUとの組み合わせはできない。今回試用したのは店頭モデルなので、パフォーマンスについては従来のAtom Z530搭載機とほとんど変わらないが、Windows 7をさらに快適に利用したいという人は、VAIOオーナーメードモデルでAtom Z560+US15Xを選択することをお勧めする。メモリは、VAIOオーナーメードモデルでも2GB固定で、増設はできない。

 また、従来はストレージとして60GB HDDや80GB HDDを選択することが可能であったが(店頭モデルのWindows XPモデルは、80GB HDD搭載)、新VAIO Pでは、HDDの選択肢がなくなり、すべてSSD搭載となった。店頭モデルは64GB SSD搭載で、VAIOオーナーメードモデルでは64GB SSD/128GB SSD/256GB SSDから選択できる。なお、64GB SSDのインターフェイスはPATA(Ultra ATA)だが、128GB SSDと256GB SSDはSATA対応であり、US15W/US15XとはSATA-PATA変換ブリッジチップ経由で接続されている(US15W/US15XはPATAのみ対応)。

 液晶のサイズや解像度は旧モデルと同じく、8型ウルトラワイドで、解像度は1,600×768ドットである。VAIO Pの液晶は非常に高精細で、表示できる情報量が多いことが魅力だが、その反面、文字が小さく、見にくいという不満もあった。しかし、新VAIO Pでは、出荷時のDPI設定が96dpiから120dpiに変更され、アイコンや文字などが大きく表示されるようになり、より見やすく、操作しやすくなっている。また、液晶解像度をワンタッチで1,280×600ドットに切り替え可能な解像度切り替えボタンも用意されているので、より使い勝手が向上している。

VAIO Pでは、8型ウルトラワイド液晶を採用しており、解像度は1,600×768ドットとかなり横長である液晶を最大限に開いた状態。180度まで開くことはできない

●照度センサーや加速度センサー、地磁気センサーを搭載

 新VAIO Pのウリの1つが、各種センサーの搭載によって、インテリジェントな動作を実現したことだ。Windows 7ではセンサーAPIが新たに用意され、さまざまなセンサーからの情報をアプリケーションで利用するための基盤が整っているのだが、センサーAPI対応のセンサーを搭載したPCはほとんど出ていない(加速度センサーを搭載した製品は以前からあるが、落下や衝撃を検知してHDDのヘッドを退避する用途にしか使われていないものがほとんど)。しかし、新VAIO Pでは、照度センサー、加速度センサー、地磁気センサーを内蔵しており、それらのセンサーを活かす機能やアプリケーションも搭載されている。

 照度センサーは、周囲の明るさを検知するためのセンサーであり、周囲の明るさに応じて、液晶バックライトの輝度を自動的に調整することが可能だ。周囲が暗くなれば、それに応じてバックライトの輝度を下げるので、消費電力を削減でき、液晶がまぶしすぎると感じることもなくなる。

 また、加速度センサーによって、本体の傾きを知ることができるので、本体を左右に傾けたり、回転させることでジェスチャー操作が行なえる。具体的には、本体を左に傾けることでブラウザなどの「戻る」操作が、本体を右に傾けることで「進む」操作が可能になるほか、本体を縦に回転させることで、液晶の表示方向を切り替えられる。液晶表示方向の切り替えにあわせて、ポインティングデバイスの移動方向や上下左右カーソルキーが、ユーザーから見た向きに自動的に設定が変わるので、非常に便利だ。縦長のデザインのWebサイトなどは、本体を縦にしてみると見やすいだろう。

 地磁気センサーは、電子コンパスとも呼ばれ、ユーザーの向いている方向の検知が可能だ。3軸のセンサーを搭載しているので、水平方向だけでなく、3次元空間のすべての方向の検知が可能である。地磁気センサーを利用するアプリケーションとして、VAIO Location Searchやデジタルコンパスガジェットがプリインストールされている。VAIO Location Searchは、GPS(WWAN機能搭載モデルのみ、店頭モデルには非搭載)や無線LANを利用した測位ソリューション「Place Engine」を使って、位置情報を取得し、その周辺の地図や情報を表示してくれるアプリケーションだが、新VAIO Pではさらに地磁気センサーとの連携によって、ユーザーが向いている方向を示してくれるようになった。いわゆる方向音痴には非常にありがたい機能だ。進行方向に応じて地図が回転するヘディングアップ表示はサポートしていないが、技術的には可能であり、今後の対応が期待できる。

 VAIO Location Searchは、デスクトップミニアプリという位置づけになっており、ウィンドウサイズが固定になっており、地図の表示範囲が狭いことが気になった。デジタルコンパスガジェットは、ユーザーが向いている方向を常に表示してくれるので、地磁気センサー非対応の地図ソフトやブラウザと組み合わせても、方角確認が可能だ。また、スポット探索レーダーソフトの「x-Radar」もバージョンアップしており、マクロレーダー形式では、地磁気センサーからの情報でレーダーが回転する(ヘディングアップ形式)ようになった。

キーボード上部に照度センサーを搭載(白い丸が照度センサー)。周囲の明るさに応じて、液晶バックライトの輝度を自動調整でき、バッテリ駆動時間の延長に貢献する【動画】照度センサーのテスト。照度センサーを指で覆うと、液晶バックライトの輝度が下がるバックライトの自動輝度設定を有効にするかどうかは、「VAIOの設定」ユーティリティで変更できる
【動画】加速度センサーを搭載しているので、本体を左右に傾けることで、「進む」や「戻る」の操作が可能【動画】加速度センサーにより、本体の回転の検出が可能で、表示方向を切り替えられる【動画】地磁気センサー(電子コンパス)の搭載により、VAIO Location Searchで、自分の向いている方向を表示できる(地図の上中央やや右よりにある矢印とその右の方角が変わっていることに注目)
VAIO Location Searchでは、GPSやPlace Engineを利用して位置情報を取得し、地図や天気などの情報を知ることができるVAIO Location Searchでは、地図として「PetaMap」と「Google Map」を利用できるPetaMapでは、ユーザーが登録したスポット情報が表示される
PetaMapでスポットをクリックすれば、詳細情報が表示される地磁気センサー対応のデジタルコンパスガジェットがプリインストールされているデジタルコンパスガジェットを常駐させたところ。大きな文字で表示されているのが向かって手前側で、小さい文字で表示されるのが奥側である
【動画】デジタルコンパスガジェットの動作の様子スポット探索レーダーソフト「x-Rader」の画面。こちらはサイズの小さなマスコットレーダー形式。現在地や場所を指定して、その周囲にあるスポットを検索できるスポットを選択すると、詳細情報が表示される
詳細情報画面で「地図を表示」をクリックすると、プロアトラスSV5が起動し、その場所が地図上で表示されるx-Radarのマクロレーダー形式の表示画面。こちらのほうがサイズが大きく、地磁気センサーとの連携に対応しており、本体の向きを変えるとそれに応じてレーダーが回転する

●液晶の左右にタッチパッドとクリックボタンを搭載

 新VAIO Pは、キーボードやポインティングデバイスといったユーザーインターフェイス面も進化している。キーボードのキーピッチは旧モデルと同じだが、「全角/半角」キーの配置が変更され、より一般的なキー配置に近づいた。初代VAIO type Pと同様に両手でタッチタイプが可能であり、長文を打つ用途にも十分使える。

 また、液晶の右側にタッチパッド、左側にクリックボタンが用意されたことも特筆できる。液晶を両手で持って、両手の親指でポインティング操作をおこなうモバイルグリップスタイルでの利用が可能になり、立ったままビューアとして利用する場合などの操作性が大きく向上した。タッチパッドはややサイズが小さいが、慣れれば結構快適に操作が可能だ。また、左右のクリックボタンを同時に押しながら、タッチパッドを上下にスライドさせることで、上下スクロール操作が行なえる。従来通り、スティックポインターも搭載しており、机などに本体を置いて使う場合は、スティックポインターを利用すればよい。

 キーボード右下のワンタッチボタンも、旧モデルとは一新されており、ボタンが2つから3つに増え、デフォルトで割り当てられている機能も変更された。ワンタッチボタンは、左から「アシストボタン」「解像度切り替えボタン」「WEBボタン」となっており、アシストボタンを押すと、リカバリーユーティリティが起動する。Windows起動中に解像度切り替えボタンを押すと、表示解像度が1,600×768ドットから1,280×600ドットに切り替わる(もう一度押すと、また1,600×768ドットになる)。また、電源オフの状態でWEBボタンを押すと、Windowsを起動せずに、Linux環境でのWebブラウザ「SplashTop Browser」が起動し、WLANやWWANを利用して、Webブラウズが可能になる(電源オンの状態でWEBボタンを押すと、IEが起動する)。SplashTop Browserは、電源オフの状態からWindowsを起動するよりも短い時間で起動するので、急いでいるときに便利だ。

横方向のキーピッチは約16.5mmだが、縦方向は約15.5mmで、キートップはやや横長だ。旧モデルのキーボードとは「半角/全角」キーの配置が変更されており、より一般的で使いやすくなっている新たに液晶の右にタッチパッド、左にクリックボタンを搭載した正方形の枠で囲まれている部分がタッチパッドである。その上にはWebカメラが搭載されている
液晶の左に左右クリックボタンが配置されている。左右ボタンが隣り合っているので、慣れないと間違えやすい液晶の左右を両手で持って、タッチパッドを使って操作をおこなう「モバイルグリップスタイル」での利用が可能になった【動画】モバイルグリップスタイルで操作をしているところ
旧モデルと同じく、スティックポインターも装備3つのワンタッチボタンを搭載。左から「アシストボタン」「解像度切り替えボタン」「WEBボタン」である
電源オフの状態でアシストボタンを押すと、リカバリーユーティリティ「VAIO Care レスキュー」が起動する【動画】Windows起動中に解像度切り替えボタンを押すと、表示解像度が1,600×768ドットから1,280×600ドットに切り替わる(もう一度押すと、また1,600×768ドットになる)
電源オフの状態でWEBボタンを押すと、SplashTop Browserが起動する【動画】電源オフの状態からSplashTop Browserの起動が完了するまでの時間は約30秒【動画】電源オフの状態からWindowsの起動が完了するまでの時間は約41秒

●店頭モデルにもWiMAXが標準搭載

 搭載インターフェイスは、旧VAIO Pと基本的に同じで、USB 2.0×2、ディスプレイ/LAN接続用コネクタ、ヘッドフォン出力、SDメモリーカードスロット、メモリースティックデュオスロットが用意されている。

 ワイヤレス機能は強化され、店頭モデルでも、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとBluetooth以外に、WiMAXに標準対応するようになった。WiMAX/WiFiモジュールは最新のIntel Centrino Advanced-N + WiMAX 6250 AGNではなく、Intel WiMAX/WiFi Link 5150なので、最大通信速度は下り13Mbps、上り3Mbpsとなるが、標準でWiMAXをサポートしたことは嬉しい。また、VAIOオーナーメードモデルでは、従来はできなかった、WiMAXとWWANの同時搭載が可能になり、無線LANとBluetoothとあわせて4種類のワイヤレス機能をサポートできるようになった。いわゆる無線全部入りモデルだ。どこからでもインターネットに接続したいという人は、全部入りがお勧めだ。

 また、VAIOオーナーメードモデルでは、WWANのキャリアとして、従来のNTTドコモだけでなく、日本通信の「b-mobile Doccia」にも正式対応するようになり、1,000円単位でのプリペイド方式でWWANを利用できるようになった。なお、VAIOオーナーメードモデルでは、ワンセグチューナーの搭載も可能だが、WWANとワンセグチューナーの同時搭載はできず、排他となる。

左側面には、USB 2.0とヘッドフォン出力、ワイヤレススイッチが用意されている。また、ストラップ取り付け用のストラップホルダーも設けられている右側面には、USB 2.0とディスプレイ/LANアダプタ接続用コネクタが用意されている前面には、SDカードスロットとメモリースティックデュオスロットが用意されている
SDカードスロットとメモリースティックデュオスロットのフタはダミーカード方式だ店頭モデルにはWWANは搭載されていないが、VAIOオーナーメードモデルでは、WWANの搭載が可能で、その場合はここにSIMカードを装着する
前面の右側に電源やディスクアクセス、ワイヤレス接続の状況を知らせるLEDインジケータが用意されているVAIO Pでデバイスマネージャーを開いたところ。WiMAXモジュールはIntel WiMAX Link 5150である

●バッテリ駆動時間が1.5倍に向上

 VAIO PのようなモバイルPCでは、バッテリ駆動時間も非常に重要だが、新VAIO Pでは、バッテリ駆動時間も旧VAIO Pに比べて大幅に延びている。本体のサイズと重量をキープしつつ、バッテリ駆動時間が延びたことは高く評価できる。

 まず、基板の奥行きを削ることで、バッテリの奥行きを長くし、より大容量のバッテリを搭載した。旧VAIO Pの標準バッテリ(Sバッテリ)は7.4V/2,100mAhだが、新VAIO Pでは7.4V/2,500mAhになり、容量が2割近くアップしている。さらに、電源回路の見直しや各デバイスの省電力化など、細かい技術の集大成によって、従来のVAIO type P(SSD搭載モデル)が最大4時間駆動だったのに対し、新VAIO Pでは最大6時間の駆動が可能になった(店頭モデルは約5.5時間)。2倍の容量を持つLバッテリでは、従来が最大8時間だったのに対し、最大12時間もの長時間駆動を実現。従来のVAIO Pは、Sバッテリ1本で1日使うのは心許なかったが、新VAIO Pなら、特にヘビーに使う人以外なら、Sバッテリでほぼ1日の利用時間をカバーできるだろう。

 実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、4時間17分の駆動が可能であった(電源設定は「バランス」に設定、バックライト輝度は中、自動輝度調整はオフ)。無線LANを常時オンにした状態でこれだけ持てば、合格といえるだろう。外でヘビーに使う人でも、Lバッテリを装着すれば安心だ。ACアダプタは従来と同じだが、非常にコンパクトで軽く、携帯性は良好である。

VAIO Pの標準バッテリであるSバッテリ。7.4V/2,500mAhという仕様で、旧モデルの7.4V/2,100mAhに比べて、容量が2割近く増加しているCDケース(左)とSバッテリのサイズ比較
VAIO PのACアダプタ。非常にコンパクトで軽いCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較ACアダプタの重量(ACケーブル込み)は実測で155gと軽い

●店頭モデルでもパフォーマンスは実用的

 参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用にソニー「VAIO type P」(Windows Vista Home搭載のVAIOオーナーメードモデル)、ソニー「VAIO X」、NEC「LaVie M」の値も掲載した。

 まず、VAIO type Pとの比較だが、このVAIO type PはVAIOオーナーメードモデルであり、CPUに今回の試用機よりも上位のAtom Z540と高速な128GB SSD(SATA仕様)を搭載しているため、PCMark05のCPU ScoreやHDD Scoreは劣っている。特にHDD Scoreが大きく下回っているが、新VAIO Pに搭載されているSanDisk製の64GB SSD(PATA仕様)のランダムライト性能が低いためだ。PCMark05のHDD ScoreやCrystalDiskMarkの結果は、同じSSDを搭載するVAIO Xでも似た傾向になっている。

 新VAIO Pの店頭モデルは、1.6GHzのAtom Z530搭載ということで、画面の書き換えなどにやや時間がかかるが、イライラするほど遅いというわけではない。本製品の性格を考えると、十分実用的なパフォーマンスであろう。ちなみに、Windowsエクスペリエンスインデックスを計測したところ、下の画面のようになった。やはり、プロセッサとグラフィックスが足を引っ張っている。

 VAIOオーナーメードモデルなら、Atom Z560とUS15X、高速な256GBあるいは128GBのSSDを選択できるので、パフォーマンスにこだわる人は、VAIOオーナーメードモデルをお勧めする。Atom Z560+US15X+256GB SSDの組み合わせなら、格段に快適に動作すると思われる。機会があったら、VAIOオーナーメードモデルでのパフォーマンスや使用感を検証してみたい。

□VAIO Pのベンチマーク結果
 VAIO PVAIO type PVAIO XLaVie M
CPUAtom Z530 (1.6GHz)Atom Z540 (1.83GHz)Atom Z540 (1.83GHz)Celeron SU2300 (1.2GHz)
ビデオチップUS15W内蔵コアUS15W内蔵コアUS15W内蔵コアIntel GS45内蔵コア
PCMark05
PCMarks1054147612482826
CPU Score1369165915832966
Memory Score2215243824213066
Graphics Score2242622451397
HDD Score33111127135264948
3DMark03
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)3554273652048
CPU Score202156207495
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH4043634361995
LOW6727187661367
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP30.53未計測36.1776.43
HP73.37未計測85.599.97
SP/LP99.97未計測10099.97
LLP99.97未計測10099.97
DP(CPU負荷)84未計測7868
HP(CPU負荷)85未計測7842
SP/LP(CPU負荷)55未計測5928
LLP(CPU負荷)56未計測3922
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード61.05MB/s未計測65.90MB/s60.31MB/s
シーケンシャルライト39.21MB/s未計測38.42MB/s66.25MB/s
512Kランダムリード58.53MB/s未計測63.23MB/s27.50MB/s
512Kランダムライト1.606MB/s未計測3.108MB/s31.19MB/s
4Kランダムリード4.485MB/s未計測4.135MB/s0.369MB/s
4Kランダムライト1.731MB/s未計測1.523MB/s0.984MB/s
BBench
Sバッテリ(標準)4時間17分未計測2時間57分3時間39分
Lバッテリ未計測未計測6時間2分7時間26分
Xバッテリなし未計測12時間56分なし

Windowsエクスペリエンスインデックスの計測結果。プロセッサが1.8とかなり低いほか、ゲーム用グラフィックスも2.2と低めだ

●正統進化を遂げた新VAIO Pは満足できる仕上がり

 2009年1月のVAIO type Pの登場には本当に驚かされたものだが、今回登場した新VAIO Pは、VAIO type Pが切り拓いたポケットスタイルPCというコンセプトからぶれることなく、正統進化を遂げた製品であり、その仕上がりには満足できる。特に、本体のサイズや重量をそのままに、各種センサー搭載によるインテリジェントな動作とパフォーマンスやバッテリ駆動時間の向上を果たしたことは、高く評価できる。また、店頭モデルでもWiMAXが標準搭載となり、モバイルでの利便性も大きく向上している。初代VAIO type Pからの乗り換えはもちろん、携帯性は重視するが、両手でのタッチタイプが可能なキーボードも必須という人に、お勧めしたい製品だ。

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(2010年 5月 10日)

[Text by 石井 英男]