Hothotレビュー

これがLunar Lakeの実力!軽量モバイルノートの性能は次のステージへ

 Intelの新世代モバイル向けSoC「Core Ultra シリーズ2」を搭載したPCが9月24日より順次発売される。

 今回、Core Ultra シリーズ2の上位モデル「Core Ultra 7 258V」を搭載するノートPCをテストする機会が得られたので、Intelの新世代モバイル向けSoCのパフォーマンスをベンチマークテストで確かめてみた。

8コアCPUを搭載するCore Ultra 7 258V

 IntelのLunar LakeことCore Ultra シリーズ2は、新設計のCPU、GPU、NPUを統合したモバイル向けSoC。Meteor LakeことCore Ultra シリーズ1で導入したタイルアーキテクチャを踏襲しており、CPUなどのプロセッサを統合した「コンピュートタイル」をTSMC N3Bプロセス、I/O機能などを統合したプラットフォームコントロールタイルをTSMC N6プロセスで製造している。

 現在までに発表されているCore Ultra シリーズ2製品は、いずれもPコアとEコア(低消費電力Eコア)を4基ずつ備えた8コア/8スレッドCPUで、PコアにLion Cove、EコアにSkymontという新設計のアーキテクチャを採用。また、GPUアーキテクチャは「Xe2」、NPUも第4世代(NPU4)に設計を刷新したほか、CPUパッケージ上にメインメモリ用として16GBまたは32GBのDRAMを実装する新機軸を取り入れた。

 今回テストするCore Ultra 7 258Vは、Core Ultra シリーズ2の上位モデルに位置する製品で、8コア/8スレッドCPU、8コアGPUの「Arc Graphics 140V」、ピーク性能47TOPSの第4世代NPUを搭載。また、32GBのLPDDR5X-8533メモリをオンパッケージで搭載している。PBPは17W(最小保証8W)で、MTPは37W。

【表1】Core Ultra 7 258Vの主な仕様
モデルナンバーCore Ultra 7 258VCore Ultra 7 155H
開発コードネームLunar LakeMeteor Lake
CPUアーキテクチャLion Cove + SkymontRedwood Cove + Crestmont
製造プロセス(CPU)TSMC N3BIntel 4
Pコア数46
Eコア数08
LP-Eコア数42
CPUスレッド数822
L3キャッシュ12MB24MB
ベースクロック (Pコア/Eコア/LP-Eコア)2.2GHz/─/2.2GHz1.4GHz/0.9GHz/0.7GHz
最大ブーストクロック (Pコア/Eコア/LP-Eコア)4.8GHz/─/3.7GHz4.8GHz/3.8GHz/2.5GHz
CPU内蔵GPU (iGPU)Arc Graphics 140VArc Graphics
iGPUアーキテクチャXe2Xe-LPG
iGPUコア数Xeコア=8基Xeコア=8基
iGPUクロック1.95GHz2.25GHz
NPUIntel AI Boost (NPU4)Intel AI Boost (NPU3)
NPUピーク性能47 TOPS非公開
対応メモリスピードLPDDR5X-8533LPDDR5X-7467、DDR5-5600
最大メモリ容量32GB96GB
PCI ExpressPCIe 5.0 x4 + PCIe 4.0 x4PCIe 5.0 x8 + PCIe 4.0 x20
PBP17W28W
MTP37W115W
最小保証電力8W20W
TjMax100℃110℃
対応ソケットFCBGA2833FCBGA2049

Core Ultra 7 258Vを搭載する14型ノート「ASUS Zenbook S 14」

 今回、Core Ultra 7 258Vのテストに用いるのはASUSの14型ノートPC「Zenbook S 14」。最薄部11.9mmで重量約1.2kgという薄型軽量なノートPCで、Copilot+ PCへの対応を予定しているAIノートPCでもある。

 今回借用したのは英語キーボードを搭載した海外仕様で、Core Ultra 7 258Vと512GB SSD(PCIe 4.0 x4)のほか、ディスプレイに120Hz駆動かつタッチパネルに対応した3K(2,880×1,800ドット)の有機ELパネルを搭載している。

 Zenbook S 14は日本語キーボードを搭載した日本向けモデルも発売予定で、搭載するSoCやSSDの違いにより複数のバリエーションモデルが用意される。日本語版の価格は税込み21万9,800~29万9,800円。今回のテスト機と同じスペックの日本向けモデルは用意されていないが、スペック的には最上位モデル(29万9,800円)のSSD容量を1TBから512GBにダウングレードしたものなので、おおよそ20万円台後半のPCであると考えて良さそうだ。

Core Ultra 7 258Vを搭載する14型ノート「ASUS Zenbook S 14」
天板には独自素材の「セラルミナム」を使用。今回のテスト機のカラーは「スマイアグレー」
ディスプレイは14型の有機EL(OLED)パネルを採用。2,880×1,800ドットで120Hz駆動とタッチパネルに対応している
英語キーボードとボタン一体型の大型タッチパッドを装備。日本語キーボード搭載モデルも発売予定だ
本体サイズは310.3mm×214.7mm×11.9~12.9mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.2kg
65Wに対応したACアダプタが付属。PC側のコネクタ形状はUSB Type-C
【表2】ASUS Zenbook S 14(テスト機)の主な仕様
OSWindows 11 Home
CPUCore Ultra 7 258V (4P+4LP-E/8T)
GPUArc Graphics 140V
メモリ32GB LPDDR5X-8533
ストレージ512GB NVMe SSD (PCIe 4.0 x4)
ディスプレイ14型有機ELパネル (2,880×1,800ドット、120Hz、タッチパネル対応)
有線LAN非搭載
無線機能Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4
USBThunderbolt 4(2基)、USB 3.2 Gen 2 Type-A
そのほかのインターフェイスヘッドセットジャック、HDMI
ACアダプタ65W (USB PD)
本体サイズ310.3mm×214.7mm×11.9~12.9mm (幅×奥行き×高さ)
本体重量約1.2kg

テスト環境。比較用にCore Ultra 7 155HとRyzen AI 9 HX 370を用意

 今回、Core Ultra 7 258Vのパフォーマンスを計測するにあたって、比較用にMeteor LakeことCore Ultra シリーズ1の「Core Ultra 7 155H」と、AMDの最新APU「Ryzen AI 9 HX 370」を搭載したノートPCを用意した。

 Core Ultra 7 155Hを搭載するのはASUSの14型ノート「Zenbook 14 OLED」で、Ryzen AI 9 HX 370を搭載するのはASUSの16型ノート「Zenbook S 16」。いずれもASUSのZenbookシリーズ製品なので、設計思想が近い薄型軽量ノートPC同士で比較することができる。

Core Ultra 7 155Hを搭載する「ASUS Zenbook 14 OLED」
Ryzen AI 9 HX 370を搭載する「ASUS Zenbook S 16」

 各ノートPCのテスト環境は以下の通り。テストはACアダプタに接続した状態で行うほか、最大の冷却性能を発揮できるようにファンスピードモードは各PCの最大モードに設定している。

 なお、IntelよりWindows 11 24H2向けの更新プログラム「KB5043080」がインストールされていると性能が低下することが確認されたと連絡があったため、Windows 11 24H2がインストールされているCore Ultra 7 258V環境とRyzen AI 9 HX 370環境では当該更新プログラムを除去して検証を行なった。この問題は既にMicrosoftと共同で解決に向け取り組んでいるとのこと。

【表3】テスト環境
CPUCore Ultra 7 258VCore Ultra 7 155HRyzen AI 9 HX 370
コア数/スレッド数4P+4LP-E/8T6P+8E+2LP-E/22T4C+8c/24T
L3キャッシュ12MB24MB24MB
iGPUArc Graphics 140VArc GraphicsRadeon 890M
iGPUコア数8基 (Xe2)8基 (Xe-LPG)16基 (RDNA 3.5)
iGPUドライバ32.0.101.573032.0.101.5972Adrenaline 24.10.18.08 (32.0.11018.8007)
NPUIntel AI Boost (NPU4)Intel AI Boost (NPU3)Ryzen AI (XDNA 2)
ノートPCASUS Zenbook S 14ASUS Zenbook 14 OLEDASUS Zenbook S 16
BIOSUX5406SA.300UX3405MA.308UM5606WA.309
CPU電力リミットPL1=33W、PL2=37W、Tau=28秒PL1=44W、PL2=64W、Tau=28秒STAPM=28W、PPT Slow=33W、PPT Fast=35W
CPU温度リミット100℃110℃95℃
ファン動作モードフルスピードモードパフォーマンスモードフルスピードモード
メモリ32GB LPDDR5X-853316GB LPDDR5X-746732GB LPDDR5X-7500
システム用SSD512GB NVMe SSD (PCIe 4.0 x4)1TB NVMe SSD (PCIe 4.0 x4)1TB NVMe SSD (PCIe 4.0 x4)
電源65W (USB PD)65W (USB PD)65W (USB PD)
OSWindows 11 Home 24H2 (build 26100.1301、VBS有効)Windows 11 Home 23H2 (build 22631.4169、VBS有効)Windows 11 Home 24H2 (build 26100.1301、VBS有効)
電源プランバランス
計測HWiNFO64 Pro v8.10
室温約26℃
CPU電流リミットTDC=54A、EDC=105A

ベンチマーク結果

 今回実施したベンチマークテストは以下の通り。

  • Cinebench 2024
  • Cinebench R23
  • 3DMark
  • PCMark 10
  • UL Procyon
  • やねうら王
  • Adobe Camera Raw
  • DaVinci Resolve 19
  • HandBrake
  • TMPGEnc Video Mastering Works 7
  • AIDA64 Cache & Memory Benchmark
  • ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク
  • モンスターハンターライズ : サンブレイク
  • エルデンリング
  • フォートナイト
  • STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール

Cinebench 2024

 Cinebench 2024では、CPUのマルチスレッド性能を計測する「CPU (Multi Core)」と、シングルスレッド性能を計測する「CPU (Single Core)」を実行した。テストの最低実行時間は「10分」。

 「CPU (Multi Core)」でCore Ultra 7 258Vが記録したスコアは「611」で、これは「641」を記録したCore Ultra 7 155Hを約5%、「955」のRyzen AI 9 HX 370を約36%下回った。

 8コア/8スレッドCPUのCore Ultra 7 258Vが、16コア/22スレッドCPUのCore Ultra 7 155Hにマルチスレッド性能で肉薄しているのは上々の結果なのだが、同等以下の電力リミット設定で1.5倍以上のスコアを叩き出して見せたRyzen AI 9 HX 370のパフォーマンスが際立っている。

Cinebench 2024「CPU (Multi Core)」

 「CPU (Single Core)」でのCore Ultra 7 258Vは全体ベストとなる「122」を記録。Core Ultra 7 155Hを約18%、Ryzen AI 9 HX 370を約8%上回った。

 Lunar Lakeで導入された新設計のPコア「Lion Cove」は、ハイパースレッディングの非対応化をはじめとする設計の見直しによってシングルスレッド性能を向上させたとしており、Core Ultra 7 155HとRyzen AI 9 HX 370を退けたCore Ultra 7 258Vのパフォーマンスはそれを裏付けるものとなっている。

Cinebench 2024「CPU (Single Core)」

Cinebench R23

 Cinebench R23では、CPUのマルチスレッド性能を計測する「CPU (Multi Core)」と、シングルスレッド性能を計測する「CPU (Single Core)」を実行した。テストの最低実行時間は「10分」

 「CPU (Multi Core)」において、Core Ultra 7 258Vは「10,248」を記録。これは比較製品の中でもっとも低いスコアで、Core Ultra 7 155Hを約6%、Ryzen AI 9 HX 370を約38%下回った。

Cinebench R23「CPU (Multi Core)」

 「CPU (Single Core)」でCore Ultra 7 258Vが記録したスコアは「1,892」で、全体ベストのRyzen AI 9 HX 370を約2%下回り、Core Ultra 7 155Hを約12%上回った。Cinebench 2024のSingle CoreではRyzen AI 9 HX 370を凌駕したCore Ultra 7 258Vだったが、実行する処理によっては優劣が入れ替わることもあるようだ。

Cinebench R23「CPU (Single Core)」

3DMark「CPU Profile」

 CPU性能をスレッド数ごとに計測する3DMarkの「CPU Profile」では、それぞれのCPUが記録したスコアをまとめたグラフと、Core Ultra 7 155Hを基準に指数化したグラフを用意した。

 Core Ultra 7 258Vは、すべてのCPUコアを使用する最大スレッドでCore Ultra 7 155H比で90.3%のスコアで最下位に沈んでいるものの、16スレッドの時点でCore Ultra 7 155Hを約11.5%上回り、8スレッド以下では18.7~42.6%上回った。また、8スレッド以下ではRyzen AI 9 HX 370をわずかに上回って全体ベストとなっており、コアあたりの性能としては比較製品の中でも最上級であることが分かる。

3DMark「CPU Profile」
3DMark「CPU Profile」 (Core Ultra 7 155H比)

PCMark 10 Extended

 PCMark 10標準のテストの中でもっとも詳細な「PCMark 10 Extended」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 7 258Vの総合スコアは「6,832」で、全体ベストのRyzen AI 9 HX 370を約8%下回り、Core Ultra 7 155Hを約4%上回った。

PCMark 10 Extended

PCMark 10 Application

 Microsoft OfficeやWebブラウザのEdgeを使ってパフォーマンスの計測を行う「PCMark 10 Application」の実行結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 7 258Vの総合スコアは全体ベストの「14,691」で、Core Ultra 7 155Hを約8%、Ryzen AI 9 HX 370を約3%上回った。また、Core Ultra 7 258Vはアプリケーション毎のスコアでもPowerPoint以外で全体ベストを獲得している。

PCMark 10 Application

UL Procyon「Office Productivity Benchmark」

 Microsoft Officeを使ってパフォーマンスの計測を行うUL Procyon「Office Productivity Benchmark」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 7 258Vの総合スコアは「6,505」で、全体ベストのRyzen AI 9 HX 370を約1%だけ下回り、Core Ultra 7 155Hを約11%上回った。総合スコアでベストを逃したCore Ultra 7 258Vだが、PowerPoint以外のアプリケーションでは全体ベストを獲得しており、Microsoft Officeへの適性の高さを示している。

UL Procyon「Office Productivity Benchmark」

UL Procyon「Photo Editing Benchmark」

 Adobeの画像編集系ソフト(Photoshop、Lightroom Classic)を使ってパフォーマンスの計測を行うUL Procyon「Photo Editing Benchmark」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 7 258Vの総合スコアは「6,092」で、全体ベストのRyzen AI 9 HX 370を約13%下回り、Core Ultra 7 155Hを約21%上回った。

UL Procyon「Photo Editing Benchmark」

UL Procyon「AI Computer Vision Benchmark」

 プロセッサのAI処理性能を計測するUL Procyon「AI Computer Vision Benchmark」では、Windows MLを利用した場合のスコアと、Intel製品向けのIntel OpenVINOを利用した場合のスコアを計測した。

 Windows ML(Float16)を利用した場合、Core Ultra 7 258VはCPUで全体2番手となるスコア「36」を記録し、GPUでは全体ベストの「407」を記録した。GPUではCore Ultra 7 155Hを約56%、Ryzen AI 9 HX 370を約15%も上回っており、Xe2アーキテクチャを採用したArc Graphics 140Vの性能の高さがうかがえる。

UL Procyon「AI Computer Vision Benchmark (Windows ML)」

 Intel製品向けのIntel OpenVINO(Float16)を利用した場合、Core Ultra 7 258VはCPUで「77」、GPUで「883」、NPUで「991」というスコアを記録。これらはいずれもCore Ultra 7 155Hを上回るスコアであり、GPUで約92%、NPUでは約251%も上回っている。NPU性能が前世代から飛躍的に向上していることが確認できる結果だ。

UL Procyon「AI Computer Vision Benchmark (Intel OpenVINO)」

やねうら王

 将棋ソフトの「やねうら王」では、ベンチマーク機能を利用してマルチスレッドテストとシングルスレッドテストを実行した。

 なお、KB5043080をインストールしていないCore Ultra 7 258V環境では、シングルスレッドテストを実行すると処理がEコアに割り振られてパフォーマンスが低下することが確認されたため、テスト時はPコアに処理が割り当てられるように調整している。

 マルチスレッドテストでCore Ultra 7 258Vが記録したスコアは「9,240kNPS」で、Core Ultra 7 155Hを約15%、Ryzen AI 9 HX 370を約44%下回り、比較製品の中で最下位に沈んでいる。

やねうら王「マルチスレッド」

 シングルスレッドテストでは、Core Ultra 7 258Vは全体2番手となる「1,655kNPS」を記録。全体ベストのRyzen AI 9 HX 370を約6%下回り、Core Ultra 7 155Hを約13%上回った。

やねうら王「シングルスレッド」

Adobe Camera Raw「RAW現像」

 Adobe Camera Rawで、デジタルカメラで撮影した2,400万画素のRAWファイル100枚をJPEGファイルに変換する「RAW現像」を実行し、1分間あたりの処理枚数(Frame per minutes)を比較した。

 Core Ultra 7 258Vの処理速度は「89.2fpm」で、これは全体ベストのRyzen AI 9 HX 370を約21%下回り、Core Ultra 7 155Hを約29%上回った。

Adobe Camera Raw「RAW現像」

Adobe Camera Raw「RAW現像」

 Adobe Camera Rawで、デジタルカメラで撮影した2,400万画素のRAWファイル5枚に対して「AIノイズ除去」を実行し、1分間あたりの処理枚数(Frame per minutes)を比較した。

 Core Ultra 7 258Vの処理速度は「1.10fpm」で、これは全体ベストのRyzen AI 9 HX 370を約35%下回り、Core Ultra 7 155Hを約109%上回った。

Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」

DaVinci Resolve 19

 DaVinci Resolve 19では、デジタルカメラで撮影した2160p60(4K60p)動画に字幕を追加したものを、YouTube向けプリセットでレンダリングした際の処理速度(fps)を比較した。

 Core Ultra 7 258Vの処理速度は比較製品の中で最速の「23.8fps」で、Core Ultra 7 155Hを約31%、Ryzen AI 9 HX 370を約7%上回った。

DaVinci Resolve 19「動画の書き出し」

HandBrake

 HandBrakeでは、約1分の4K動画(2160p60)を「Creatorプリセット」でエンコードしたさいの処理速度(fps)を比較した。

 Core Ultra 7 258Vの処理速度は比較製品の中でもっとも遅い「48.6fps」で、Core Ultra 7 155Hを約15%、Ryzen AI 9 HX 370を約38%下回った。

HandBrake「動画エンコード」

TMPGEnc Video Mastering Works 7

 TMPGEnc Video Mastering Works 7では、約1分の4K動画(2160p60)をCPUエンコーダである「x264」と「x265」でエンコードしたさいの処理速度(fps)を比較した。

 x264でのエンコードでCore Ultra 7 258Vが記録した処理速度は比較製品の中でもっとも遅い「11.6fps」で、Core Ultra 7 155Hを約15%、Ryzen AI 9 HX 370を約41%下回った。

 一方、x265でのエンコードでのCore Ultra 7 258Vは「5.3fps」を記録し、全体ベストのRyzen AI 9 HX 370を約35%下回ったものの、Core Ultra 7 155Hを約5%上回った。

TMPGEnc Video Mastering Works 7「動画エンコード」

AIDA64 Cache & Memory Benchmark「メインメモリ性能」

 AIDA64 Cache & Memory Benchmarkで、メインメモリの帯域幅とレイテンシを計測した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 7 258Vのメモリ帯域幅は88.8~115.2GB/sで、WriteやCopyでは比較製品の中で最速を記録している。レイテンシについても「96.7ナノ秒」となっており、比較製品の中ではもっとも優れた数値となっている。

AIDA64 Cache & Memory Benchmark「メインメモリの帯域幅」
AIDA64 Cache & Memory Benchmark「メインメモリのレイテンシ」

AIDA64 Cache & Memory Benchmark「キャッシュ性能」

 AIDA64 Cache & Memory Benchmarkで、CPUが備えるキャッシュメモリの帯域幅とレイテンシを計測した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 7 258Vは、L1キャッシュでCore Ultra 7 155Hを上回る帯域幅を記録する一方、L2とL3キャッシュではCore Ultra 7 155Hを下回った。キャッシュのレイテンシはCore Ultra 7 155Hと同等かより優れており、L3キャッシュのレイテンシはだいぶ低いものとなっている。

 ただ、テスト時点のAIDA64はLunar Lakeのキャッシュ速度計測に最適化されていないので、この結果は参考程度のものと考えてもらいたい。

AIDA64 Cache & Memory Benchmark「L1キャッシュの帯域幅」
AIDA64 Cache & Memory Benchmark「L2キャッシュの帯域幅」
AIDA64 Cache & Memory Benchmark「L3キャッシュの帯域幅」
AIDA64 Cache & Memory Benchmark「キャッシュのレイテンシ」

3DMark「Speed Way」

 3DMarkのDirectX 12 Ultimateテスト「Speed Way」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 7 258Vのスコアは全体ベストの「940」で、Core Ultra 7 155Hを約98%、Ryzen AI 9 HX 370を約71%も上回った。

3DMark「Speed Way」

3DMark「Steel Nomad」

 3DMarkの新しいDirectX 12テスト「Steel Nomad」と、その軽量版「Steel Nomad Light」を実行した結果が以下のグラフ。

 Steel NomadでのCore Ultra 7 258Vのスコアは全体ベストの「871」で、Core Ultra 7 155Hを約23%、Ryzen AI 9 HX 370を約52%上回った。

3DMark「Steel Nomad」

 軽量版のSteel Nomad LightでのCore Ultra 7 258Vのスコアは「3,254」で、全体ベストのRyzen AI 9 HX 370を約4%下回り、Core Ultra 7 155Hを約3%上回った。

3DMark「Steel Nomad Light」

3DMark「Port Royal」

 3DMarkのDirectX Raytracing(DXR)テスト「Port Royal」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 7 258Vのスコアは全体ベストの「2,038」で、Core Ultra 7 155Hを約42%、Ryzen AI 9 HX 370を約13%上回った。

3DMark「Port Royal」

3DMark「Solar Bay」

 Vulkan 1.1を用いる軽量なリアルタイムレイトレーシングテスト、3DMark「Solar Bay」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 7 258Vのスコアは「15,063」で、全体ベストのRyzen AI 9 HX 370を約2%下回り、Core Ultra 7 155Hを約21%上回った。

3DMark「Solar Bay」

3DMark「Wild Life」

 3DMarkのVulkanテスト「Wild Life」と、高負荷版である「Wild Life Extreme」を実行した結果が以下のグラフ。

 通常版のWild LifeでのCore Ultra 7 258Vのスコアは全体ベストの「25,297」で、Core Ultra 7 155Hを約40%、Ryzen AI 9 HX 370を約10%上回った。

 高負荷版のWild Life ExtremeでもCore Ultra 7 258Vのスコアは全体ベストの「7,519」で、Core Ultra 7 155Hを約35%、Ryzen AI 9 HX 370を約10%上回っている。

3DMark「Wild Life」

ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークでは、フルHD/1080p解像度で描画品質を「最高品質」と「標準品質(ノートPC)」に設定したさいのスコアと平均フレームレートを取得した。なお、DLSSやFSRは無効にしている。

 Core Ultra 7 258Vは、どちらの描画品質でも全体ベストのスコアを記録しており、Core Ultra 7 155Hを約15~23%、Ryzen AI 9 HX 370を約15~39%上回った。

ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク「スコア」
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク「平均フレームレート」

モンスターハンターライズ:サンブレイク

 モンスターハンターライズ:サンブレイクでは、フルHD/1080p解像度で3種類のグラフィックプリセットをテストし、平均フレームレートを計測した。

 Core Ultra 7 258Vは描画設定「高」で平均60.0fpsで全体ベストを記録している一方、描画設定「中」では平均110.9fpsでRyzen AI 9 HX 370に次ぐ2番手、描画設定「低」では平均126.9fpsでCore Ultra 7 155Hに逆転されて最下位となったうえ、Ryzen AI 9 HX 370を約38%も下回った。

モンスターハンターライズ:サンブレイク

エルデンリング

 エルデンリングでは、フルHD/1080p解像度で4種類のグラフィックプリセットをテストし、平均フレームレートを計測した。なお、自動描画調整機能とレイトレーシングについては無効にしている。

 Core Ultra 7 258Vは描画設定「最高」以外では全体ベストを記録しており、Core Ultra 7 155Hを約5~8%、Ryzen AI 9 HX 370を約2~20%上回った。逆に、描画設定「最高」では、Core Ultra 7 155Hを約5%、Ryzen AI 9 HX 370を約8%下回っている。

エルデンリング

フォートナイト

 フォートナイトでは、フルHD/1080p解像度で4種類のグラフィックプリセットをテストし、平均フレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIは「DirectX 12」。

 Core Ultra 7 258Vは描画設定「低」でRyzen AI 9 HX 370を約2%下回っているものの、描画設定「中」以上では逆に4~11%上回って全体ベストを獲得。Core Ultra 7 155Hを84~136%も上回った。

フォートナイト

STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール

 STREET FIGHTER 6 ベンチマークツールでは、フルHD/1080p解像度で3種類のグラフィックプリセットをテストし、メインコンテンツであるFIGHTING GROUNDの平均フレームレートを比較した。上限フレームレートは60fps。

 Core Ultra 7 258Vは描画設定「LOW」と「LOWEST」では上限フレームレートに張り付いており、平均フレームレートの低下が見られる「NORMAL」以上でRyzen AI 9 HX 370を5~8%上回って全体ベストを獲得している。なお、Core Ultra 7 155Hはエラーでテストを完走できなかったため「HIGHEST」のスコアがなしとなっている。

STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール「FIGHTING GROUND」

Cinebench 2024「CPU (Multi Core)」実行中のモニタリングデータ

 モニタリングソフトのHWiNFO64 Proで、CPUのマルチスレッド性能を計測するCinebench 2024「CPU (Multi Core)」実行中のモニタリングデータを計測した結果が以下の推移グラフ。

 ベンチマーク中のCore Ultra 7 258Vは、CPU温度が平均83.9℃(最大95.0℃)、CPU消費電力は平均28.6W(最大40.7W)となっており、平均CPUクロックはPコアが3,319MHz、Eコアは3,588MHzだった。温度リミットには達していないが、この環境では電力リミットのPL1が可変で序盤以降は28Wに制限されるため、電力リミットスロットリングによってPコアクロックが大きく低下している。

Core Ultra 7 258Vのモニタリングデータ│Cinebench 2024
Core Ultra 7 155Hのモニタリングデータ│Cinebench 2024
Ryzen AI 9 HX 370のモニタリングデータ│Cinebench 2024

ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク実行中のモニタリングデータ

 モニタリングソフトのHWiNFO64 Proで、ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークを「フルHD/1080p、最高品質」で実行中のモニタリングデータを計測した結果が以下の推移グラフ。

 ベンチマーク中のCore Ultra 7 258Vは、CPU温度が平均74.7℃(最大88.0℃)、GPU温度が平均72.7℃(最大78.0℃)、CPU消費電力は平均25.3W(最大33.0W)となっており、平均CPUクロックはPコアが3,521MHz、Eコアは2,700MHz、GPUクロックは1,949MHzだった。

 GPUクロックはスペック上の最大クロックである1,950MHzで推移しており、Arc Graphics 140VのGPUパワーを最大限に引き出せていることがうかがえる。

Core Ultra 7 258Vのモニタリングデータ│FF14ベンチマーク
Core Ultra 7 155Hのモニタリングデータ│FF14ベンチマーク
Ryzen AI 9 HX 370のモニタリングデータ│FF14ベンチマーク

コア当たりの性能が向上したCPUと、大きく進化したGPU/NPU。ビジネスノートやモバイルノートの新調に好適

 全てのモデルが8コア/8スレッドCPUとなっているLunar LakeことCore Ultra シリーズ2は、CPUのマルチスレッド性能に注目すると前世代からの進化が感じにくいが、シングルスレッド性能やコア当たりの性能は大きく向上しており、その点ではライバルのRyzen AI 9 HX 370を相手に十分な競争力を獲得している。

 また、Xe2世代となったGPUや第4世代NPUの性能は前世代から飛躍的に向上している。NPUは依然として活用する機会が少ないという問題が存在するが、GPU性能の向上についてはゲームのみならず、Adobeの画像編集ソフトやDaVinci Resolve 19などGPUを処理に活用する場面でパフォーマンスを引き上げていた。

 DRAMのオンパッケージ実装や合計8レーンしかないPCIeなど、かなり割り切った設計のCore Ultra シリーズ2だが、Copilot+ PC時代のビジネスノートやモバイルノートに好適な性能と機能を備えている。モバイルPCに携帯性やオフィスアプリなどでの軽快な動作を期待しているなら、Core Ultra シリーズ2搭載製品が有力な選択肢になるだろう。

【コードネームLunar Lake】Intel大復活の決め手となるか!?「Core Ultraシリーズ2」夜間解説SP

 注目のLunar LakeことCore Ultra 7 258Vについてライブ配信でお届けします。Lunar Lakeの技術を振り返りつつ、ASUSの搭載スリムノート「Zenbook S 14」で、気になるベンチマークテスト結果の解説、実動デモとさまざまな角度から評価。最新スリムノート時代の到来を一緒に見届けましょう。解説は劉デスク。MCはPADプロデューサーの佐々木です。