Hothotレビュー

GoogleのPixel Buds Pro 2は、常時つけていたくなる高性能イヤフォンだ

Google「Pixel Buds Pro 2」

 Google製完全ワイヤレスイヤフォン「Pixel Buds Pro 2」が本日発売された。価格は3万6,800円。発売に先立ち製品を試用する機会を得たのでレビューをお届けする。

スマホ以外で「Tensor」ブランドチップを初搭載

 完全ワイヤレスイヤフォンを選ぶ際に気になるのは、バッテリ駆動時間や音質が主な点だろう。それと無関係ではないが、Pixel Buds Pro 2では、Google独自のTensor A1チップが搭載されていることが大きな特徴の1つだ。

 TensorはGoogleが同社製スマホ「Pixel」シリーズ向けに開発したチップ。Tensor A1は、アーキテクチャとしてはスマホ向けのTensorとは別物とのことだが、Pixel Buds Pro 2が提供可能な機能性や性能を踏まえてTensorというブランドを付与したという。

Tensor A1チップを搭載

 昨今のイヤフォンはアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能に注力したものが多い。イヤフォンのANCは、外部から聞こえる音を内蔵マイクで捉え、それと逆の位相の音波をドライバユニットから発生させることで、ノイズを打ち消す仕組みとなっている。当然この処理はリアルタイムでこなす必要がある。Pixel Buds Pro 2では、Tensor A1を採用したことで、秒間300万回の処理を行ない、前世代製品と比べてANC性能が2倍になったという。

 実際に試してみるとエアコンやPCのファンノイズなどはきれいに消え去る。あらゆる種類の音が聞こえなくなるわけではないが、室内だとしーんと静まりかえり、外界から遮断されたような感じさえする。屋外では車の走行音などは聞こえてくるが、だいぶ抑え込まれている。音楽や動画などのコンテンツを楽しむ時にも有効だが、仕事で集中して作業したい時にデジタル耳栓としても活躍するだろう。

 また、新たにマルチパス処理を実装することで、ANC処理と音楽再生は別パスで実行され、音楽がANCに影響されないため、ANC有効時の音質も向上しているとしている。音質については定量的評価が難しく個人的な好みもある部分なのだが、日常的に数万円クラスのイヤフォンを使っている筆者としては、価格に見合うだけの音質を実現していると感じる。EQ機能もあるので、自分好みの音質に設定することも可能だ。

 また、時間の都合で検証はできていないのだが、通話の際に、通話相手の方で発生している環境ノイズも削減し、聞きやすくできるという。

 通信方式はBluetooth 5.4で、LE Audioとスーパーワイドバンドに対応する。

外部音取り込みモードが優秀

外部音を取り込むモードも利用できる

 ANCについては、アプリかイヤフォンの長押しでオン/オフできるのだが、単にオフにするだけでなく、外部音を取り込むモードを使うこともできる。これを使うと、イヤフォン内蔵マイクで集音された音が、そのままイヤフォンを通じて聞こえるようになる。つまり、音がイヤフォンを素通りする。本製品のANCに関連した機能で、個人的に一番気に入ったのはこの外部音取り込みモードかもしれない。

 この機能は前世代のPixel Ear Budsにもあったのだが、マイクの質や音量バランスが悪いのか、外部音の中でも特に空調系の音が必要以上に強調され、「ゴォー」という音が目立って聞こえる形になっていた。

 これが新モデルでは、普段耳に聞こえてくるのとほぼ同じ音がイヤフォンから聞こえてくるのだ。製品のフィット感がよく、重量も軽いことから、外部音取り込みモードをオンにしていると、イヤフォンを装着しているのを忘れるほどで感動を覚える。

 また、外部音取り込みモードについては、「会話検知機能」を有効にすると、自動的にオン/オフされる。たとえば、普段はANCをオンにしておいて、コンビニなどで店員さんに話しかけた時や、会社で誰かに話しかけられた時に声を出すと、それを検知して外部音取り込みモードが自動的にオンになるので、イヤフォンをいちいち外したり付けたりする必要がないというわけだ。

 マルチポイント接続にも対応している。これにより、普段はノートPCから鳴る音楽を聴きつつ、スマホに着信があったら、接続が自動的にスマホへと切り替わる。あるいは、スマホで再生していた音楽を停止し、PCでビデオ会議を始めると、PCのイヤフォン兼マイクとして機能するといった使い方もできる。

小さく軽くなり、装着しやすさも向上

一番下の写真の左側に見えるのが固定用アーチ

 もう1つGoogleがPixel Ear Buds Pro 2の進化点として挙げているのが、デザインの見直しだ。同社によると、多数の耳の形のスキャンを行ない、そこから得られた4,500万のデータポイントに基づく設計とすることで、フィット感を向上させたという。また、サイズと重量も、前世代の22.33×22.03×23.72mm/6.2gから、22.74×23.08×17.03mm/4.7gへと小型軽量化されている。

 また、「固定用アーチ」と呼ばれる、半円型の突起が付けられた。イヤフォンを普通にはめだけでも問題なく使えるが、そこから後ろ方向へと少し本体を回転させると、固定用アーチが耳内部の突起に引っかかるようになる。これにより、スポーツなど激しい動きをしても、前世代製品より3倍外れにくくなる。と言っても、固定用アーチを回しても、それによって圧迫感が強くなると言うこともなく、筆者はいつもしっかり目に装着している。

 小型軽量化しながらも、駆動時間はANCオンで8時間、オフで12時間と、それぞれ前世代から1時間ずつ延びているのもポイントだ。また、付属の充電ケースを使った時の最大駆動時間は、ANCオンで30時間、オフで48時間と、それぞれ前世代から10時間、17時間も延長されている。充電ケースは前世代同様、USB Type-Cに加え、Qi準拠のワイヤレス充電にも対応。充電ケースに入れて5分充電すると、最大1.5時間の音楽再生が可能だ。

 防滴防水性能についても、前世代はイヤフォンがIPX4の防水のみだったのが、新製品はIP54で防塵性能も持つ。充電ケースもIPX2からIPX4へと防水性能が向上している。

充電ケース
充電はUSB Type-CとQiに対応。USBの上にあるのはペアリング用のボタン。右下にあるのはスピーカー用の穴と思われる

 前世代製品も、Googleアシスタントと連動して、音声操作で天気予報を聞いたり、SMSを送信したり、LINEなどの直近のメッセージを読み上げたりといったことができた。

 新モデルでは標準のAIアシスタントがGoogleからGeminiへと変わった。これにより、さらに機能面での洗練が期待されるが、より口語的な会話でもきちんと認識して反応してくれるGemini Liveはまだ英語のみ対応であり、これからといったところだ。

 前機種同様、ジェスチャー操作に対応し、左右とも1~3回までのタップ操作、長押し、前方向と後ろ方向へのスワイプ操作ができるので、スマホを取り出さないでも、音楽の再生/停止や頭出し、ANCのオン/オフなどができる。ヘッドトラッキングに対応する空間オーディオへの対応も前機種から引き継いでいるほか、「デバイスを探す」にも対応している。

スワイプやタッチによるジェスチャー操作に対応
GeminiによるAIアシスタント機能も利用可能だが、日本語でGeminiらしさを発揮できるのはもう少し先か
空間オーディオとヘッドトラッキングに対応
前述の通り、会話検知機能やEQも利用できる

常につけていたくなるイヤフォン

 こういった機能性やデザインの改良などから、Pixel Ear Buds Pro 2は、常に装着しっぱなしにしていられるというのが強みだ。ずっとつけていたいとすら感じる。外部音取り込みは、機能的には前世代でもできていたが、取り込みの音質が悪かったので、そのモードでずっと使うのはあまり現実的ではなかった。それに対し、新製品では、自分の声は多少こもって聞こえてしまうが、外部の音はイヤフォンをしていないのと変わりなく聴くことができる。

 そして、必要に応じてANCをオンにしてデジタル耳栓として使ったり、あるいはマルチポイント接続で、PCとスマホ両方に接続したり、今後さらに発展するであろうAIアシスタントの機能も考えると、スマートウォッチがそうであるように、単なるイヤフォンを超えたスマートウェアラブルデバイスとしての磨きがかかったと言える。

 もっとも、バッテリ駆動時間はANCオンで8時間なので、スマートウォッチよりはバッテリ駆動時間が短いのだが、ほぼ丸1日続けて使えそうだ。

 なお、外部音取り込みモードを使うとイヤフォンをしていないのと同じように外部音が聞こえるからといって、自動車や自転車の運転中にイヤフォンを装着していると、道路交通法や各都道府県の条例に違反する可能性があることは覚えておこう。