Hothotレビュー

性能と価格のバランスが魅力。小型/着脱式2in1の「IdeaPad Duet 370 Chromebook」

IdeaPad Duet 370 Chromebook

 「IdeaPad Duet 370 Chromebook(以下Duet 370)」は、レノボ・ジャパン合同会社が7月に発売した着脱式2in1のChromebook。価格は6万2,480円となっている。

 10型クラスで小型かつ低価格と人気な「IdeaPad Duet Chromebook」のサイズ感や着脱式2in1といった特徴はそのままに、プロセッサ性能の向上やUSBポート数の増加など基本的なスペックを強化。さらに前モデルでは別売だったペンが同梱となるなど、使い勝手の面も改善している。

 10型クラスの着脱式2in1は、キーボード装着時はPC感覚で利用でき、キーボードを外すとAndroidタブレットのように利用できるという使い方の幅広さで、Chromebookの中でも人気のジャンルだ。前述のIdeaPad Duet Chromebook、ASUSの「Chromebook Detachable CM3」といった3~4万円台の低価格モデルのほか、LTEや指紋認証といった機能を備えた日本HPの「Chromebook x2 11」など、競合と言えるスペックの製品がいくつも存在する。

 人気モデルのDuetと同じブランドを冠した新モデルであるDuet 370は、人気の小型2in1というジャンルでどれだけ存在感を示せるのか。前述の競合モデルとも比較しながらDuet 370の使用感をレビューする。

前モデルと比較してプロセッサ性能が向上。USBポートも2ポートに

 Duet 370のプロセッサはSnapdragon 7c Gen 2、メモリは4GB、ストレージは128GBのeMMCで、外部ストレージには対応していない。ディスプレイは解像度が2,000×1,200ドット、サイズは10.95型のIPS液晶を搭載する。

前面

 接続インターフェイスはUSB 3.0 Type-C×2で、両ポートともDisplayPortとPower Deliveryに対応。本体の左右に1ポートずつ搭載されているので接続するケーブルを取り回しやすい。オーディオジャックは非搭載で、有線イヤフォンやヘッドフォンの接続用にUSB Type-C to 3.5mmオーディオジャック変換ケーブルが付属する。

 前モデルのDuetでは電源ボタンと音量ボタンが左側面にまとめられていたが、Duet 370では電源ボタンが左側面、音量ボタンが上部と別々に配された。細かな違いではあるが、手に取ってさっと電源を入れたいという時にどのボタンを押すか迷わなくてすむようになり、地味ながらうれしい変更だ。

左側面上部に電源ボタン、下部にUSB 3.0 Type-Cポート
右側面下部にUSB 3.0 Type-Cポート
本体上部左側に音量ボタン
本体底面はキーボード接続用の端子

 カメラはアウトカメラが800万画素、インカメラが500万画素で、アウトカメラはオートフォーカスに対応する。

本体前面上部に500万画素のインカメラ
背面の右上に800万画素のオートフォーカス対応アウトカメラ

 通信面はWi-Fi 5、Bluetooth 5.1を搭載。センサーはジャイロと加速度を搭載し、GPSは非対応となる。また、指紋認証にも対応していない。

 サイズと重量は、本体のみが約258.04×164.55×7.9mm/約516.5gで、付属のキーボードとスタンドカバー装着時が約258.06×172.51×17.54mm/約945.8gと1kgを切る重量。前モデルの約920gと比べると若干の重量アップだが、手にとったときの感覚は数字ほどの差はなく、軽く取り回しやすい。

付属のキーボードとスタンドカバーを装着して手に持ったところ
同梱のUSB Type-CアダプタとUSB Type-Cケーブル、USB Type-C to 3.5mmオーディオジャック変換ケーブル。USB Type-Cアダプタの出力は最大30W

スタンドカバーはペンホルダーに対応。付属ペンをまとめて持ち歩ける

 スタンドカバーとキーボードの基本的な形状は前モデルとほぼ同様で、背面のカバー下部がスタンドとして開閉する機構になっているが、Duet 370では新たに付属のペンを収納できるペンホルダーが取り入れられた。スタンドカバー上部に横長の穴が空いており、ここに同梱のペンホルダーを装着することでペンを持ち歩ける。

付属のスタンドカバーとキーボード
スタンドカバーとキーボードを装着した背面
付属のペンとペンホルダー

 ペンホルダーの装着感は高く、持ち歩きの際にペンを紛失することはなさそうな安定感がある。一方でペンの部分が出っ張ってしまうため、鞄に収容するときにはやや邪魔になる。移動の際はペンホルダーを別で保管しておき、鞄から取り出して使うときにスタンドカバーへ装着する、という使い方がいいかもしれない。

ペンホルダーとペンを装着したところ

 キーボードの接続も前モデルと比べて改善。前モデルではキーボード装着時に本体とキーボードがずれてしまうことがあったが、Duet 370では本体を閉じたときにマグネットがぴったりとくっつくようになり、手に持ったときのずれもほとんどなくなった。

 キーボードのレイアウトも前モデルとほぼ同じ。本体幅は前モデルより約18mmほど大きくなっているのだが、キーボードより外側の面積も前モデルより大きくなっていることもあり、主要キーの幅のサイズ感はほとんど変わっていない。キーピッチは公開されていないが、実測したところ主要キーは約18mmで前モデルとほぼ同等だった。

 一方で前モデルと比べてスペースキーの面積が小さくなり、その分、同じ列の他キーの面積がわずかながら大きくなった。また、Enterキーは縦方向に長くなるなどの変更も行なわれており、全体的なタイピング操作感は向上している。

キーボードの配列
主要キーのキーピッチ
記号キーのキーピッチは15mm程度

Snapdragon 7c Gen 2搭載で快適な操作感。バッテリも12時間駆動

 ベンチマークはGoogle Octane 2.0とGeekBench 5で測定。Google Octane 2.0は2万超え、GeekBench 5もマルチコアで1,700超えという結果になった。前モデルのDuetがOctaneで1万弱というスコアだったため、Octane比較では2倍の性能向上ということになる。

【表】ベンチマーク結果
測定方法スコア
Google Octane 2.021,003
GeekBench 5(Single-Core)612
GeekBench 5(Multi-Core)1,739
Octaneの測定結果
GeekBench 5(Androidアプリ)の測定結果

 実際の操作感も良好。ChromebookはPCに比べて低スペックのプロセッサでも快適に動作することもあり、Chrome Webブラウザでタブを数十ほど開いても問題なく利用できた。Web会議など処理の重いアプリケーションも、Chrome Webブラウザのタブ数枚程度と同時であれば十分に実用的だ。

 同梱のLenovo USIペンは4,096筆圧感知に対応。ペン操作からほんのわずか遅れて手書き内容が反映されるが、メモ書き程度であれば十分な操作感。一般的なペンと同じサイズ感のため、文字やイラストを書くのも快適だ。

手書きのサンプル

 付属のペンホルダーは本体背面に装着する形状のため、ディスプレイを見ながら手探りで取り出すことになり、手早く取り出すのには慣れが必要そうだ。ただし、本体収納型のペンに比べると書きやすいサイズであり、マグネット装着型のペンと比べると紛失の不安が少ないという点ではメリットのある仕様と感じた。

背面のペンホルダー

 バッテリは輝度を半分にした状態でWi-Fiに接続、YouTube動画をフルスクリーンで連続再生したところ、約12時間で残り10%程度になった。公称12時間の駆動時間からするとスペック以上の性能だ。使わないときはスリープにして持ち歩くことを考えるとバッテリの不満はないだろう。

 バッテリの減りが少ないのも本機の特徴だ。スリープ状態で保管しておいてもほとんど減らない。筆者は同サイズの「HP Chromebook X2 11」(X2 11)を愛用しているのだが、スリープ状態で放置すると4日ほどでバッテリが50%近くまで減ってしまう。Duet 370は試用期間の関係で長期のテストはできなかったが、24時間経ってバッテリが2%しか減らなかったのに対し、X2 11は9%も減っていた。X2 11のバッテリ消費が激しすぎる気もするものの、使わないときでもバッテリが減らないというのはありがたい。

 カメラ性能は前面カメラ、背面カメラともに10型サイズのタブレットクラスとしては十分なスペック。シャッターボタンを押してから実際に撮影するまでにやや時間がかかるが、写真自体は十分な画質。Web会議で使うのにも困らないだろう。

作例(前面カメラ)
作例(背面カメラ)

 ディスプレイ表示はデフォルト設定で1,250×750ドットに設定されており、せっかくの高解像度なのにやや画面が狭く感じる。一方で2,000×1,200ドットに設定すると今度はタッチ操作が難しくなるため、解像度を上げつつタッチ操作しやすい好みの解像度に設定を変更すると使いやすくなる。

ディスプレイはデフォルトで1,250×750ドットに設定
1,250×750ドットでPC Watchを表示
1,677×1,000ドットでPC Watchを表示

 画質は美しく高解像度の動画も楽しめる。一方のスピーカーは映画や音楽を楽しむのにはやや物足りないが、Web会議程度の使い方であれば十分だ。音質にこだわる場合は別途Bluetoothのヘッドフォンやイヤフォンで臨場感を高めるといいだろう。

性能と価格のバランスに優れた着脱式2in1

 最後に同等のスペックを持った競合モデルと比較する。冒頭でも紹介した通り、プロセッサにSnapdragon 7cを採用した11型クラスの着脱式2in1という点では、日本HPの「HP Chromebook x2 11」が非常に近いスペックだ。また、前モデルのDuetもいまだ販売を継続しており、スペックは落ちるもののコスト面ではこちらも検討の余地があるだろう。

【表】主な11型クラスの着脱式2in1との比較
HP Chromebook x2 11(LTEモデル)IdeaPad Duet 370 ChromebookIdeaPad Duet Chromebook
価格7万9,800円6万2,480円3万4,980円
プロセッサQualcomm Snapdragon 7cQualcomm Snapdragon 7c Gen2MediaTek Helio P60T
メモリ8GB4GB4GB
ストレージ128GB128GB64GB/128GB
ディスプレイ11型IPS液晶10.95型IPS液晶10.1型IPS
解像度2,160×1,440ドット2,000×1,200ドットWUXGA(1,920×1,200ドット)
無線LANWi-Fi 5Wi-Fi 5Wi-Fi 5
Bluetooth5.05.14.2
LTESnapdragon X15 4G LTEモデム--
背面カメラ約800万画素800万画素(オートフォーカス)800万画素(オートフォーカス)
前面カメラ約500万画素約500万画素200万画素
USBUSB 3.0 Type-C×2(充電&ディスプレイ出力)USB 3.0 Type-C×2(充電&ディスプレイ出力)USB 2.0 Type-C(充電&ディスプレイ出力)
指紋認証--
外部ストレージmicroSDカードスロット--
オーディオジャック-なし(USB Type-C to 3.5mmオーディオジャック変換ケーブルが付属)なし(USB Type-C to 3.5mmオーディオジャック変換ケーブルが付属)
バッテリ最大11時間約12.0時間約10時間
ペン別売(4,096筆圧検知)付属(4,096筆圧検知)別売(4,096筆圧検知)
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)約252.5×176.6×7.55mm約258.04×164.55×7.9mm約239.8×159.8×7.35mm
本体重量約560g約516.5g約450g
キーボード装着時重量約1,030g約945.8g約920g

 主なスペックで比較するとDuet 370のコストパフォーマンスの高さが光る。スペックだけで見るとX2 11のほうがメモリ容量、LTE、指紋外部ストレージといった面で優れるが、その分価格は8万円に近い。一方、前モデルのDuetは3万円台と安価なものの、プロセッサやUSBポート数、ペンが別売といった点でDuet 370に優位性がある。

 実売価格でみると6万円を切っており、11型クラスと小型ながら快適なスペックでペンも付属するといった、コストパフォーマンスの高さがDuet 370の魅力。モバイルでもある程度のスペックを欲しいというユーザーに最適な端末だろう。