Hothotレビュー
ドンキの“第3世代激安ノート”は2万円で実現できる最高スペックのパソコンだ
2020年9月11日 09:50
ドン・キホーテを展開する株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、2万円切りを実現した14.1型ノートパソコンの最新モデル「MUGAストイックPC3」を8月25日に発表、8月28日より販売を開始した。税別価格は19,800円。
3世代目の本モデルはCPUを「Atom x5-Z8350」から「Celeron N3350」にアップグレード。そしてメモリは4GBで据え置きしつつも、ストレージを32GB eMMCから64GB eMMCへ倍増している。32GBではWindowsの大型アップデートもままならないので、スペック的には実用的に利用できるレベルに達したと言える。
そこで今回はCPUの変更によりどのくらい性能が向上したのか、そしてほかのハードウェア的な細かな改善点にスポットを当ててレビューしていこう。
19,800円という価格を絶対条件に細かく改善を実施
MUGAストイックPC3は、OSに「Windows 10 Home in S mode」、CPUに「Celeron N3350」(2コア2スレッド、1.1~2.4GHz)を採用。メモリは4GB(LPDDR4 SDRAM)、ストレージは64GB eMMCを搭載している。初心者が利用するさいのセキュリティ性を重視し、SモードのWindows 10をプリインストールしたわけだ。
主要スペックにおける大きな変化はCPUとストレージ容量。しかし、ストレージ容量についてはメリットがわかりやすいが、CPUは4コア4スレッド、1.44~1.92GHz 動作の「Atom x5-Z8350」から2コア2スレッド、1.1~2.4GHz 動作の「Celeron N3350」に変更されたと言っても、どのくらい性能が向上しているのかわかりにくい。この点については最後のベンチマークの章で検証しよう。
ディスプレイは、14.1型フルHD IPS液晶(1,920×1,080ドット、156ppi、輝度非公表、色域非公表、非光沢、タッチ非対応、スタイラス非対応)とスペック的には第2世代から変更なし。Webカメラも30万画素で解像度は同じだ。
一方、通信機能は、第2世代がIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0だったところ、MUGAストイックPC3はIEEE 802.11ac、Bluetooth 4.2とスペックアップしている。5GHz帯のWi-Fiに接続できるようになったので、スピードアップはもとより、電波の干渉を受けにくくなっているはずだ。
バッテリは第2世代の9,800mAhから5,000mAhと容量は減っているが、バッテリ駆動時間は約7時間から約9時間へと長くなっている。実際のバッテリ駆動時間についても、ベンチマークの章でチェックしてみたい。
インターフェイスについては詳しくは後述するが、第2世代のUSB 3.0とUSB 2.0の1基ずつから、USB 3.0×2という構成に変わった。ほかの端子に変更はないが、周辺機器接続のさいの自由度は高くなったと言える。
スペックについて総括すると、19,800円という価格を絶対条件としつつ、そのなかで細かく改善が施されたというのが素直な感想。ネットブックが登場してからノートパソコンの低価格化が一気に進み、「5万円パソコン」、「3万円パソコン」というキャッチに驚かされたてきたが、「2万円パソコン」というのは現時点でもそれらを超えるインパクトがあると思う。
MUGAストイックPC3 | MUGAストイックPC2 | MUGAストイックPC | |
---|---|---|---|
CPU | Celeron N3350(2コア2スレッド、1.1~2.4GHz) | Atom x5-Z8350(4コア4スレッド、1.44~1.92GHz) | |
GPU | Intel HD Graphics 500(200~650MHz) | Intel HD Graphics(200~500MHz) | |
メモリ | LPDDR4 SDRAM 4GB | LPDDR3 SDRAM 4GB | DDR3L-RS SDRAM 2GB |
ストレ-ジ | 64GB eMMC | 32GB eMMC | |
ディスプレイ | 14.1型、1,920×1,080ドット(156ppi) | ||
TDP | 6W | - | |
SDP | 4W | 2W | |
OS | Windows 10 Home in S mode バージョン1909 | Windows 10 Home 64bit | |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 333×224×22mm | 329×219×20mm | |
重量 | 約1,350g | 約1,200g |
製品名 | MUGAストイックPC3 |
---|---|
型番 | KNW14FHD3-SR |
OS | Windows 10 Home in S mode バージョン1909 |
CPU | Celeron N3350(2コア2スレッド、1.1~2.4GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 500(200~650MHz) |
メモリ | LPDDR4 SDRAM 4GB |
ストレージ | 64GB eMMC |
ディスプレイ | 14.1型フルHD IPS液晶(1,920×1,080ドット、156ppi、輝度非公表、色域非公表、非光沢、タッチ非対応、スタイラス非対応) |
通信 | IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.2 |
WWAN | - |
インターフェイス | USB 3.0×2、Mini HDMI、microSDカードスロット(最大128GB)、ヘッドセット端子 |
カメラ | 30万画素 |
バッテリ容量 | 5,000mAh |
バッテリ駆動時間 | 約9時間 |
バッテリ充電時間 | 非公表 |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 333×224×22mm |
重量 | 約1,350g |
セキュリティ | - |
ビジネス統合アプリ | Kingsoft WPS Office |
同梱品 | ACアダプタ(コード長約1.2m)、Mini HDMI変換ケーブル(コード長約22cm)、取り扱い説明書、保証書、WPS Officeライセンスカード |
カラー | シルバー |
税別価格 | 19,800円 |
19,800円という据え置き価格でJIS配列のキーボードを搭載
MUGAストイックPC3の本体サイズは333×224×22mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1,350g。第2世代が本体サイズは329×219×20mm(同)、重量は約1,200gだったので、わずかに筐体は大きくなり、そして重量は150g増えたことになる。
シャーシはプラスチック製で、色はシルバーのみ。いかにもプラスチックっぽい筐体は決して質感が高いとは言えないが、2万円切りという価格なら個人的には納得できる。
ちょっと気になったのが底面のネジが見えるだけでも14本とかなり多いこと(ゴム足の下にさらに隠されている可能性もある)。とくにディスプレイヒンジ側が7本のネジで留められている。今回はドン・キホーテからの貸出機なので分解はしないが、シャーシ内部の梁や仕切りではなく、ネジの数を多くすることで強度を確保しているのだと思われる。
インターフェイスは、USB 3.0×2、Mini HDMI、microSDカードスロット(最大128GB)、ヘッドセット端子が用意されている。映像端子はMini HDMIだが「Mini HDMI変換ケーブル」が同梱されているので、ケーブルやアダプタを別途用意する必要はない。USB Type-C端子の搭載、USB Power Deliveryへの対応は次期モデルに期待しよう。
外観でもっとも大きな変化はキーボード。第2世代には英語キーボードのキー配置を変えずに無理矢理文字、機能を割り当てた、いわゆる「変態配列」のキーボードが搭載されていたが、MUGAストイックPC3にはJIS配列のキーボードが採用されている。
ドン・キホーテによれば、JIS配列は海外生産時の標準配列ではないが、開発コスト・時間を最小限に抑えられるベースモデルを採用することで、19,800円という据え置き価格でJIS配列のキーボードを搭載できたとのこと。個人的には、JIS配列のキーボードを採用したことは、CPU以上にユーザーが恩恵を受けられる改善ポイントだと思う。
キーボードの打鍵感は良好、それ以上に操作しやすいタッチパッド
JIS配列を採用したMUGAストイックPC3のキーボードは、キーピッチは実測19.1~19.2mm前後、キーストロークは実測1.7mm前後が確保されている。打鍵感は“意外”と言うのも失礼だが悪くない。強くキーを叩くと、キーボード面は多少たわみ、また「ペンペン」と打鍵音も大きいが、押圧力はちょうどいい。スペースキーと記号キーはやや幅が狭いが、少し慣れればフルスピードで入力できるキーボードだと思う。
Fキー | Enterキー | Spaceキー | |
---|---|---|---|
MUGAストイックPC3 | 0.51N | 0.46N | 0.47N |
DAIV 4N | 0.55N | 0.55N | 0.58N |
LG gram 2-in-1 | 0.6N | 0.6N | 0.6N |
16インチMacBook Pro | 0.55N | 0.55N | 0.55N |
ZenBook Duo | 0.56N | 0.54N | 0.55N |
キーボード以上に気に入ったのがタッチパッド。全体が沈み込むダイビングボード構造のタッチパッドが採用されているが、ストロークが浅めで、かつ小気味いいクリック感が与えられている。
はっきり言って、本製品より使いにくいタッチパッドを搭載した5万円オーバーのノートパソコンはいくらでも存在する。タッチパッドのフィーリングに悩まされているメーカー様は、ぜひMUGAストイックPC3を分解して、同じ部品を使ってほしいと思う。
一方、30万画素のWebカメラは正直オマケレベル。十分な光量があってもダイナミックレンジが狭く、露出もなかなかうまく合わない。とは言え2万円切りのノートパソコンのWebカメラに高画質を求めるというのは酷というものだろう。
最後に1つ注意喚起しておくが、じつはMUGAストイックPC3にはカメラインジケータが存在しない。つまりビデオ会議でカメラがオンになっていても気づきにくい。また、悪意あるプログラムにカメラを乗っ取られても、それを知る術がないわけだ。生活空間で利用するさいにはシールなどでカメラをふさぐことをおすすめする。
ディスプレイの色域は狭いが、発色に大きな不自然さはない
前述のとおり、MUGAストイックPC3には、14.1型フルHD IPS液晶(1,920×1,080ドット、156ppi、輝度非公表、色域非公表、非光沢、タッチ非対応、スタイラス非対応)ディスプレイが搭載されている。
そこでカラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で色域を計測したところ、sRGBカバー率65.9%、sRGB比66.2%、Adobe RGBカバー率49.1%、Adobe RGB比49.1%、DCI-P3カバー率48.8%、DCI-P3比48.8%という値が出た。
筆者はPC Watchでひと月に1~2台のノートパソコンを試用しているが、ここ3年ぐらいでsRGBカバー率が90%を切ったのは2~3台ぐらい。色域はかなり狭いことになる。
しかし見た目の発色に大きな不自然さはない。また視野角は80度ぐらいで画面になにが映っているのかわかるほど十分広さだ。写真の現像用途などには使えないとしても、普通に写真や動画を観ていてストレスを感じることはないと思う。
一方サウンドについては、これまた失礼だが“意外”に健闘している。YouTubeのミュージックビデオなどを視聴していてもそれほど不満を感じなかった。もちろんサウンド性能を売りにしている製品とは大きな差がある。しかし、「2万円切り」から想像するよりも真っ当なサウンドを聴かせてくれるというのが偽りない感想だ。
PCMark 10で前モデルの約1.43倍に相当する総合スコアを記録
最後に性能をチェックしよう。今回は下記のベンチマークを実施している。
- 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2165」
- バッテリベンチマーク「PCMark 10 Modern Office Battery Life」
- 3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.11.6866」
- CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」
- CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」
- 3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク」
- ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」
なお比較対象用として、西川和久氏のレビュー記事から、第2世代「MUGAストイックPC2」のベンチマークスコアを流用している。
下記が検証機の仕様とその結果だ。
MUGAストイックPC3 | MUGAストイックPC2 | |
---|---|---|
CPU | Celeron N3350(2コア2スレッド、1.1~2.4GHz) | Atom x5-Z8350(4コア4スレッド、1.44~1.92GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 500(200~650MHz) | Intel HD Graphics(200~500MHz) |
メモリ | LPDDR4 SDRAM 4GB | LPDDR3 SDRAM 4GB |
ストレ-ジ | 64GB eMMC | 32GB eMMC |
ディスプレイ | 14.1型、1,920×1,080ドット(156ppi) | |
TDP | 6W | - |
SDP | 4W | 2W |
OS | Windows 10 Home 64bit(※S modeを解除済み) | Windows 10 Home 64bit |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 333×224×22mm | 329×219×20mm |
重量 | 約1,350g | 約1,200g |
MUGAストイックPC3 | MUGAストイックPC2 | |
---|---|---|
PCMark 10 v2.0.2165 | ||
PCMark 10 Score | 1,185 | 827 |
Essentials | 3,083 | 2,407 |
App Start-up Score | 3,030 | 1,962 |
Video Conferencing Score | 3,411 | 3,108 |
Web Browsing Score | 2,837 | 2,289 |
Productivity | 1,962 | 1,111 |
Spreadsheets Score | 2,084 | 996 |
Writing Score | 1,848 | 1,241 |
Digital Content Creation | 748 | 575 |
Photo Editing Score | 721 | 720 |
Rendering and Visualization Score | 470 | 330 |
Video Editting Score | 1,237 | 801 |
PCMark 10 Modern Office Battery Life | 10時間39分 | - |
3DMark v2.11.6866 | ||
Fire Strike | 365 | 142 |
Sky Diver | 1,262 | 703 |
Cloud Gate | - | 1,335 |
Ice Storm Extreme | - | 10,673 |
Ice Storm | - | 15,506 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL | 13.40 fps | 8.95 fps |
CPU | 86cb | 93 cb |
CPU(Single Core) | 46 cb | 28 cb |
CINEBENCH R20.060 | ||
CPU | 197 pts | - |
CPU(Single Core) | 104 pts | - |
ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク | ||
1,280×720ドット 標準品質(ノ-トPC) | 1112(設定変更が必要) | - |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC) | 533(動作困難) | - |
SSDをCrystalDiskMark 7.0.0で計測 | ||
1M Q8T1 シーケンシャルリード | 309.517 MB/s | - |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 238.636 MB/s | - |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 285.447 MB/s | - |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 221.473 MB/s | - |
4K Q32T16 ランダムリ-ド | 66.834 MB/s | - |
4K Q32T16 ランダムライト | 67.354 MB/s | - |
4K Q1T1 ランダムリ-ド | 8.575 MB/s | - |
4K Q1T1 ランダムライト | 20.614 MB/s | - |
SSDをCrystalDiskMark 6.0.0で計測 | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | - | 124.9966 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | - | 66.053 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | - | 20.724 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | - | 11.907 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | - | 23.992 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | - | 13.055 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | - | 13.028 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | - | 9.840 MB/s |
まずCPU性能だが、CINEBENCH R15.0のCPUでMUGAストイックPC3が第2世代を下回る結果となった。念のためCINEBENCH R15.0とCINEBENCH R20.060のCPUは複数回計測を実施したが、スコアが大きく伸びることはなかった。第2世代は4コアCPUであるのに対し、第3世代は2コアCPUである点が影響していると見ていい。ただSingle Coreの結果を見ればわかるとおり、1コアあたりの性能は向上している。
一方で総合ベンチマークのPCMark 10では、MUGAストイックPC3は第2世代の約1.43倍に相当する1,185という総合スコアを記録した。これが両者の実際の実力差を反映していると思われる。
しかし、性能は向上していても3Dゲームはやはり荷が重い。ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-クは、「1,280×720ドット 標準品質(ノ-トPC)」で「1112(設定変更が必要)」、「1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC)」で「533(動作困難)」というスコアとなった。ゲームをプレイするなら軽めの2Dゲームが無難だ。
ストレージ速度はシーケンシャルリードで309.517 MB/s、シーケンシャルライトで238.636 MB/sという結果だ。次期モデルではSATA接続のSSDが搭載されることに期待したい。
バッテリ駆動時間はディスプレイ輝度50%という条件で、10時間39分と大台を超えた。これだけ動作すればモバイル用途にも十二分に活躍してくれる。
本体の発熱は、キーボード面が最大41.5℃、底面が最大41.1℃と低めにとどまっている(室温26.8℃で測定)。おもしろいのが発熱している箇所が上から見て左奥に集中していること。今回はドン・キホーテから許可を得ていないので分解していないが、サーモグラフィーカメラの底面画像を見るとメインボードのかたちがはっきりとわかる。UMPCにもそのまま搭載できるようなサイズ、形状のメインボードが使われているわけだ。
MUGAストイックPC3に競合は存在しない
念のために注意喚起しておきたいが、MUGAストイックPC3の性能は決して高くない。というか相対的には低い。CINEBENCH R15.0のCPUスコアは、最新プロセッサの1コアの2分の1相当。実用的な速度で動作するアプリは限定される。
しかし、WebブラウザをChromiumベースの新しい「Microsoft Edge」に移行すれば、多少待たされ感はあるものの実用的な速度でWebサイトを閲覧可能だ。YouTubeもサムネイルの表示や、画面モードの切り替えに間があるが、再生がはじまればコマ落ちなく鑑賞できる。
税別2万切りという条件では、少なくとも新品で14型以上のCeleron搭載機は存在しない。競合が存在しないということは、MUGAストイックPC3は2万円切りで実現できる最高スペックのPCと言えるだろう。