Hothotレビュー
4K液晶や顔認証対応で10万円台前半のマウス製13.3型高コスパノート
2018年12月20日 11:00
マウスコンピューターのオリジナルノートPCのなかで、モバイルクラスとして位置づけられている「m-Book J」シリーズ。比較的安価でコストパフォーマンスに優れる点が特徴のシリーズだが、新モデルとして登場した「m-Book J371SN-M2S2」は、4K表示対応の13.3型液晶や、Windows Hello対応の顔認証機能を標準搭載するなど、仕様面でもかなり特徴のある製品に仕上がっている。すでに発売中で、税別直販価格は129,800円から。
モバイルでの利用もカバーできるスタンダードノートPC
マウスコンピューターのオリジナルノートPC「m-Book J371SN-M2S2」は、モバイルクラスの製品として位置づけられているm-Book Jシリーズの新モデルだ。ただ、ピュアモバイルPCとして仕様を突き詰めた製品というよりは、どちらかというとメインPCとして活用しつつモバイル用途へも問題なく対応できる製品、と言ったほうがいいだろう。
サイズは、324×234×22.5mm(幅×奥行き×高さ、突起部含まず)となっている。ディスプレイのベゼル幅が比較的広めに取られていることもあって、13.3型液晶搭載のモバイルPCとして見るとやや大きい印象だ。とくに最近は、ディスプレイのベゼル幅を極限までせばめることでコンパクトさを追求したモバイルノートPCが増えていることもあって、余計に大きく感じる。
また、重量は公称で約1.4kg、実測で1335.5gだった。ここ数年、13.3型モバイルノートPCでは1kg切りの製品も多く登場しており、この数字だけを見ると重く感じてしまう。
筐体の小型化や軽量化を突き詰めるためには、どうしてもコストがかかってしまう。コストパフォーマンス重視の製品ということを考えると、サイズや重量に関してはある程度妥協も必要だろう。
とはいえ、モバイルにも余裕で対応できるメインノートPCというジャンルとして見ると、普段は自宅やオフィスのデスクで利用しつつ、必要なときに軽快に持ち出せるという点は、15型クラスのメインノートにはない魅力となるはずだ。
デザインは、マウスコンピューターのオリジナルノートPCとして標準的だ。筐体カラーは底面はブラック、天板やキーボード面はホワイトを採用し全体的にフラットなデザインで、かなりシンプルな印象を受ける。筐体は樹脂製で、質感はあまり高級な印象は受けないが、天板にはヘアライン処理が施されていることもあって、いかにも低価格製品といったチープさはない。これなら、書斎やオフィスでもしっくりくるだろう。
4K表示対応の13.3型液晶を標準搭載
ディスプレイには、3,840×2,160ドット(4K)表示対応の13.3型液晶を標準搭載する。パネルの仕様は非公開ではあるが、視点を上下左右に大きく移動させても明るさや色合いの変化が少なく、VAまたはIPSパネル相当の広視野角が確保されている。
パネル表面は光沢処理となっているため、外光の映り込みはやや激しいものの、発色はかなり鮮やかで、写真や動画も本来の品質を損なうことなく表示できる。10万円台前半という価格帯を考えると、この表示品質を備える4K液晶を搭載できているという点は、かなり驚きだ。
13.3型というサイズで4K表示対応ということで、等倍表示時には表示文字のサイズがかなり小さくなり、文字の視認性はかなり低下してしまう。実際に等倍表示時のデスクトップアイコンの文字サイズは1mmを大きく下回っており、かなり見にくくなってしまう。
ただ、スケーリングを調整することで、情報量と文字サイズをユーザーが自由に調整できるという点は、高解像度パネルの大きな利点。合わせて、スケーリングによって文字などを拡大表示する場合でも、写真や映像はネイティブ表示となるため、デジカメ写真や4K動画も品質が損なわれることはない。そういった意味で、4Kパネルの搭載はメリットのほうが多く、競合製品に対する大きな優位点となるだろう。
キーボードは、Enter付近の一部キーがやや気になる
キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプのものを搭載している。主要キーのキーピッチは約18.75mmと、フルピッチにはわずかに届いていないものの、ほぼフルサイズキーボード同等の感覚でタイピングできる。
ストロークは約1.5mmと申し分ない深さが確保され、しっかりとしたクリック感もある。タッチはやや硬めの印象だが、全体的な打鍵感は良好だ。
キー配列は、日本語キーボードとして標準的だ。ただ、Enterキー付近の一部キーの横幅が不自然に大きくなっている点と、カーソルキーが1段下がった位置に配置されていない点は少々気になる。
とくに、横幅の長くなったキーの影響で、Enterキーを押そうとしても手前のキーを押してしまうことが何度かあった。慣れればどうにかなるにしても、この配置に慣れてしまうと、逆に一般的なキーボードで誤操作を引き起こす可能性もある。そのため、この部分もほかのキーと同じピッチにしてもらいたかった。
ポインティングデバイスは、クリックボタン独立型のタッチパッドを搭載。クリックボタンが独立していることで、確実なクリック操作が行なえる。タッチパッド部分はジェスチャー操作にも対応しているので、クリックボタンと合わせて軽快な操作が可能だ。
顔認証機能を標準搭載するなどスペックも充実
J371SN-M2S2は、コストパフォーマンスに優れる製品ではあるが、仕様面はかなり充実している。先述のように、ディスプレイには4K表示対応液晶を採用しているし、搭載CPUはCore i7-8550U、メモリも標準で8GBと十分な容量を搭載。内蔵ストレージはSATA仕様の256GB SSDと、こちらも必要十分。このあたりの仕様は、ハイエンド製品に負けていない。
もちろん、そのほかのマウスコンピューターの製品同様、購入時にメモリや内蔵ストレージ容量は自由にカスタマイズ可能。メモリは最大32GBまで搭載でき、内蔵ストレージも最大2TBのSSDに強化したり、SSDとHDDの同時搭載にも対応。コストや用途に合わせてスペックを細かく指定できる点は、一般的な市販モデルにはない魅力だ。
無線機能は、IEEE 802.11ac準拠無線LANとBluetooth 4.2を搭載。また、生体認証機能として、標準でWindows Hello対応の顔認証機能を搭載する点も特徴の1つ。指紋認証に比べて高いセキュリティ性を備える顔認証機能は、ビジネスシーンで利用することを考えても、かなり大きなポイントとなるだろう。コスパ重視の製品ながら、スペックや機能面にこだわっている点は、おおいに歓迎できる。
側面ポートは、左側面にGigabit Ethernet、HDMI、SDカードスロット、USB 3.0を、右側面にヘッドフォンジャック、マイクジャック、USB 3.0×2、ミニD-Sub15ピン出力、電源コネクタをそれぞれ配置。飛び抜けた部分はないものの、必要十分なポートがそろっており、不満はない。周辺機器の利用も大きな問題はないはずだ。
付属ACアダプタは、かなり小型のものとなっている。重量も付属電源ケーブル込みで実測212.5gとなかなかの軽さで、本体との同時携帯も大きな苦とはならないだろう。
性能重視ならメモリはデュアルチャネル仕様がおすすめ
では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。
今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 vv1.1.1739」、「PCMark 8 v2.8.704」、「3DMark Professional Edition v2.6.6238」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の5種類。比較用として、LGの「gram 13Z980-NA77J」の結果も加えてある。
m-Book J371SN-M2S2 | LG gram 13Z980-NA77J | |
---|---|---|
CPU | Core i7-8550U(1.8~4GHz) | |
チップセット | - | |
ビデオチップ | Intel UHD Graphics 620 | |
メモリ | DDR4-2400 SDRAM 8GB | DDR4-2400 SDRAM 16GB |
ストレージ | 256GB SSD(SATA) | 512GB SSD(SATA) |
OS | Windows 10 Home 64bit |
m-Book J371SN-M2S2 | LG gram 13Z980-NA77J | |
---|---|---|
PCMark 10 | v1.1.1739 | v1.1.1722 |
PCMark 10 Score | 3,114 | 3,568 |
Essentials | 6,037 | 7,552 |
App Start-up Score | 6,489 | 8,546 |
Video Conferencing Score | 5,974 | 6,932 |
Web Browsing Score | 5,678 | 7,271 |
Productivity | 5,173 | 5,867 |
Spreadsheets Score | 6,496 | 7,208 |
Writing Score | 4,121 | 4,777 |
Digital Content Creation | 2,625 | 2,783 |
Photo Editing Score | 3,274 | 3,418 |
Rendering and Visualization Score | 1,705 | 1,726 |
Video Editting Score | 3,242 | 3,655 |
PCMark 8 | v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 2,640 | 3,327 |
Creative accelarated 3.0 | 3,139 | 3,458 |
Work accelarated 2.0 | 3,799 | 4,762 |
Storage | 4,813 | 4,943 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL (fps) | 34.95 | 53.84 |
CPU | 532 | 560 |
CPU (Single Core) | 158 | 166 |
3DMark Professional Edition | v2.6.6238 | v2.5.5029 |
Cloud Gate | 7,249 | 8,013 |
Graphics Score | 7,892 | 9,222 |
Physics Score | 5,643 | 5,493 |
Sky Diver | 3,700 | 4,266 |
Graphics Score | 3,460 | 4,098 |
Physics Score | 6,264 | 5,935 |
Combined score | 3,384 | 3,833 |
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク | ||
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 2,926 | 4,270 |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC) | 1,604 | 2,548 |
結果を見ると、同じCPUを搭載するgram 13Z980-NA77Jに対して、多くのスコアが下回っていることがわかる。この点については改善できる可能性が高い。じつはJ371SN-M2S2にはメインメモリ用のSO-DIMMスロットが2スロット用意されているが、標準仕様では容量8GBのDIMMが1枚のみ装着で、メモリがシングルチャネル動作となっている。つまり、CPUや内蔵グラフィックス機能の性能を最大限引き出せておらず、ベンチマークのスコアが思ったほど伸びなかったのだろう。
購入時にメモリを増強してデュアルチャネル構成とすれば、本来の性能が発揮されるようになると思われる。そのため、性能も重視したいなら、購入時にメモリを増量し、デュアルチャネル構成にすることをおすすめする。
高負荷時のCPUクーラーの動作音だが、シャーという風切り音が耳に届くものの、それほどうるさいとは感じない。比較的大型の空冷ファンを採用していることも、それほど動作音が大きくない要因だろう。また、低負荷時には動作音がほぼ聞こえなくなり、非常に静かだ。高負荷時の動作音を考慮したとしても、静かな場所での利用に不安はないだろう。
続いてバッテリ駆動時間だ。J371SN-M2S2の公称の駆動時間は約6.1時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver2.0での数字)とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「(バッテリー)より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約5時間24分だった。
公称の駆動時間を考えるとまずまずの結果ではあるが、モバイルノートPCとして考えると心許ない駆動時間だ。ただ、J371SN-M2S2ではバッテリを交換できる仕様となっているため、もし外出先で長時間利用したいという場合には、予備バッテリを用意することで対処できるため、外出時の駆動時間を重視したい場合でも比較的安心だろう。
メインノートPCとして使いつつ、たまに持ち出す機会があるなら魅力
ここまで見てきたようにJ371SN-M2S2は、比較的低価格の製品ながら、上位クラスの製品同等のスペックを搭載するとともに、標準で4K表示対応の液晶を採用したり、Windows Hello対応の顔認証機能を搭載するなど、コストパフォーマンスはかなり優れていると感じる。そういった意味で、魅力はかなり高い製品に仕上がっている。
ただ、モバイル用途での利用を考えると、やや厳しいと感じるのも事実。13.3型液晶搭載モバイルノートPCとしてはややサイズが大きく、重量も重いため、どうしても競合製品に見劣りしてしまう。
しかし、メインノートPCとしてデスク上に設置して利用するなら、サイズや重量も気にならない。その上で、たまにノートPCを外出先に持ち運ぶ必要があるという場合でも、15型クラスのメインノートPCより小型かつ軽量なので、それほど苦にならず持ち出せる。そのため、普段ノートPCを外に持ち出す機会はそれほど多くないが、たまに外に持ち出す必要があるという人にとっては、魅力的な製品となりそうだ。