Hothotレビュー
筐体内部まで練られた設計のゲーミングPC、マウス「NEXTGEAR i680PA2-DL」
2018年9月12日 06:00
マウスコンピューターが2018年6月に筐体をリニューアルした、G-TuneのゲーミングPC「NEXTGEAR」。以前microATXモデルの「NEXTGEAR MICRO」をレビューしているが、デザインは違えどコンセプトは同じ。
ゲーマーから意見を集めて生まれた新筐体は、落ち着いたデザインで親しみやすく、優れた機能性で長期にわたって安心して使える製品に仕上がっている。
リニューアルされたG-tuneのゲーミングPC定番モデル
以前レビューしたmicroATX採用マイクロタワーモデルの「NEXTGEAR MICRO」がコンパクトかつほどよい拡張性であるのに対し、NEXTGEARはATXミドルタワーモデル。拡張性に優れるところが特徴だ。
マザーボードのオンボード機能が充実し、USB接続により幅広い拡張機器がサポートされ、ビデオカード以外にあまり拡張カードを追加することもなくなってきた。それゆえ、microATXモデルでも不自由しなくなってきているが、古くからPCに親しんできた方のなかには、旧PCから受け継ぐ資産を新たなPCでも活用したいといったニーズが根強い。それも3枚、4枚、冷却のために1スロット分間隔をあけて搭載したいといった場合には、NEXTGEARの拡張性の高さが選択のポイントとなる。
拡張カードだけでなく、ストレージの拡張性でも両者は異なる。NEXTGEAR MICROも、スリム光学ドライブベイに加えて3.5インチ×1、2.5インチ×2と、このサイズにしては高い拡張性を備えているが、NEXTGEARならスリム光学ドライブベイ、3.5インチ×2、2.5インチ×3と、さらに高い拡張性を備えている。
G-TuneのデスクトップPCとしては、さらにコンパクトなミニタワーの「LITTLEGEAR」、より拡張性が高いフルタワーのハイエンド「MASTERPIECE」もある。それらはとくに用途を絞り込んだシリーズであるので、NEXTGEAR/NEXTGEAR MICROは選びやすく、コスト性能にも優れた定番シリーズと位置付けられる。
さて、NEXTGEARシリーズには、Intel Z370チップセット搭載マザーボードのメインストリーム向けと、Intel X299チップセット搭載マザーボードのハイエンド向けがある。今回はIntel Z370チップセット搭載の「i680シリーズ」だ。
また、NEXTGEAR i680シリーズにはブロンズ~プラチナまで幅広いグレードがあり、今回はその中では最上位となるプラチナモデルの特別モデル「i680PA2-DL」を検証した。
各グレードはおもに価格が異なり、価格に応じて搭載するCPUやGPUが異なる。i680PA2-DLが搭載するCPUはCore i7-8700K、GPUはGeForce GTX 1080 Ti。価格が税別359,800円で、少し高く設定されている理由は、CPUとGPUともに水冷を用いていることと、本モデルのみ「強化ガラスサイドパネル」仕様でLEDイルミネーションも備えているためだ。
この辺りは好み次第だが、レビューするにあたっては、内部パーツチェックの点でも見栄えの点でも都合がよかった。
スッキリしたデザインとともに使い勝手を追求
G-Tuneのデスクトップ筐体は、現在どのシリーズも同社オリジナルデザインを採用している。もちろん、ベースとなるモデルは存在するものの、独自の外観に仕上げているため、自作PCとして購入できるものとは異なる、G-Tuneらしさのあるデザインとなっている。
NEXTGEARの新筐体も同様だ。前面パネルはフラットデザインで、昨今のトレンドを取り入れている。しかし、わずかに傾斜させ、サイドやトップには丸みを持たせ、単にフラットなだけではない特徴的な外観に仕上げている。上部角に設けた、さりげないヒートシンク風デザインも、ゲーミングPCらしさを与えているように思える。
ヒートシンク風デザインの下にはスリム光学ドライブベイがある。通常モデルではオプションで、i680PA2-DLでは標準でBDドライブが搭載される。
前面パネル中央のG-TuneロゴはNEXTGEAR MICRO同様。ただしNEXTGEARではLEDギミックを備えている。半透明またはスモークと思われる透かしを通してLEDが光るため、ギラギラ光るのではなくやんわり光る。
天板部には、前方右寄りに前面インターフェイスを備えている。USB 3.0×4、ヘッドフォン、マイク、そしてHDMI端子とSDメモリーカードスロットが用意されている。そのほかの部分は給排気口もない完全なフラットだ。HDMI端子はVRヘッドセットをつなぐさいに便利だ。
背面を見ると、電源は上部に置くレイアウトであることが分かる。その横に飛び出しているのは、天板部のHDMI端子から伸びている延長ケーブルだ。これを引き出して、ビデオカードのHDMI端子に挿して利用する。背面ファンは12cm角サイズだ。
右側面板には六角形を模したパターンの排気口とその横にG-Tuneロゴを置く。ここはNEXTGEAR MICROや上位のMASTERPIECEとも共通する、同社のアイデンティティだ。
左側面板は、本モデルのみ強化ガラスサイドパネルであるのは先のとおり。強化ガラスサイドパネルは上部の2つのプッシュピンをリリースすれば、下辺を軸に簡単に開くことができてメンテナンス性がよい。
通常モデルは窓なしのサイドパネルで、開き方は同じだが、ネジ2本で固定するためドライバーが必須となる。強化ガラスサイドパネルはスモーク仕様で、右下にG-Tuneロゴを置く。スモーク仕様であるため、LEDが多少減光されてマイルドな印象だ。
内部のLEDはG-Tuneのブランドカラーと言える赤色に発光する。発光部はファンのみ。マザーボードやメモリなども光るパーツの代表格だが、本モデルではブラックアウトされている。
内部レイアウトはもう1つの見どころ
強化ガラスサイドパネルを採用していることもあり、内部もスッキリときれいにまとめられている。ケーブルの露出を最小限に抑えているのは、昨今のBTOパソコンのトレンドだが、よりスッキリと見せているのは内部レイアウトにも秘密がある。
先ほど背面を見たとおり、電源は上部にあって、側面から見るとさらにカバーを設けていることが分かる。電源カバーはそのまま前方のシャドウベイまで延長されており、前面パネルまでほぼ一直線を描く。底面や前面パネル裏部分にシャドウベイはなく、マザーボードスペースは広い長方形である。
こうしたパーツレイアウトで、よりスッキリ、美しく見せている。特別モデルでは、こうした内部が強化ガラスサイドパネル越しに見え、優越感に浸ることができる。
シャドウベイは3.5インチ2基が電源スペースの前方、2.5インチベイは3基をマザーボード裏のスペースに設けている。これにマザーボード上のM.2スロットも利用できるため、一般的な用途であれば十分に余裕のあるストレージが構築可能だ。
特別モデルのCPUは Core i7-8700K、GPUはGeForce GTX 1080 Ti。そして、これらを冷却するのが簡易水冷システムだ。
特別モデルのW水冷システムはユニークで、厚型120サイズのラジエータ1基でCPUとGPU双方を冷却する。通常の自作PC用簡易水冷キットでは、CPU用とGPU用でラジエータを分けることになるが、こうした一体型のW水冷システムを組み込めるのはG-Tuneならではだ。
チューブはどうしても目立ってしまうが、配線全体としてはスッキリとさせられる。
そのほかのエアフローを見ていくと、底面には3基、右側面には2基、そして背面に1基と、12cm角ファンが搭載されている。多少、過剰とも言えるファンの数だが、その分冷却性能はかなりよい。
ここで、約15分間3DMarkのストレステストを実行したさいのCPU・GPU温度の結果を紹介しておこう。温度はHWiNFO64(CPUはCPU Packageの値、GPUはGPU Temperatureの値)で計測してみた。
CPU・GPU温度ともに10分後辺りでほぼ落ち着きを見せている。GPU温度側は最大58℃で安定し、CPU側は負荷変動に応じてスパイク状のグラフだが、最大で68℃、10分経過時点以降で平均すると60℃だった。CPU・GPUの動作温度としては、熱過ぎず冷え過ぎずどちらも問題ない。
ほか、マザーボードはIntel Z370チップセットを採用しており、ヒートシンクも若干大きめのもので、ハイエンドとエントリーの中間、メインストリームクラスに相当すると思われる。
メモリはCore i7-8700KがサポートするDDR4-2666ではなく、1つ下のDDR4-2400だが、16GB×4枚の容量64GBで、Intel Z370チップセットのサポートする最大容量を実現している。
ストレージは、M.2 SSDと3.5インチHDDの組み合わせだ。M.2側はCPUソケットとビデオカードの間のスペースにあるスロットに装着されている。評価機に搭載されていたのはWestern Digitalの「WD Black PCIe SSD」で容量512GBモデルだった。HDDはSeagateのBarracuda 3TBモデルの「ST3000DM008」。ストレージに関しては購入時期により別の製品が搭載される可能性もあるが、おおよその性能を計測しておこう。
CドライブのWD Black PCIe SSD側は、シーケンシャルリードがおよそ1.77GB/s、同ライトが734MB/s。現在のM.2製品の速度からすると、爆速というほどではないが、SATA 6Gbps接続のSSDを大きく上回る。
また、ランダム4K Q1T1のリードが45MB/s、ライトが126MB/sとこちらも速いため、ベンチマークのロードなどはかなり速く、エクスプローラーを開いた際も反応よく短時間でコピー処理を終えることができた。
DドライブのHDDは3.5インチHDDなりの速度だが、こちらは速度というよりも容量がポイント。3TBもあるので、今後数年にわたってゲームプログラムの保存領域として活躍してくれるだろう。
特別モデルは性能も特別
それでは、今回の評価機によるベンチマークスコアを見ていこう。まずは「PCMark 10」、「3DMark」、「VRMark」、「CINEBENCH R15」といったソフトで基本性能をチェックした。
NEXTGEAR i680PA2-DLの製品仕様 | |
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CPU | Core i7-8700K(3.7/4.7GHz) |
チップセット | Intel Z370 |
GPU | GeForce GTX 1080 Ti |
メモリ | DDR4-2400 SDRAM 64GB |
ストレージ | 512GB SSD(PCI Express 3.0 x4)+3TB HDD(SATA 6Gbps) |
OS | Windows 10 Home 64bit |
ベンチマーク結果1 | |
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PCMark 10 v1.1.1739 | |
Extended Score | 8,949 |
Essentials | 10,622 |
App Start-up Score | 15,451 |
Video Conferencing Score | 8,436 |
Web Browsing Score | 9,197 |
Productivity | 9,258 |
Spreadsheets Score | 11,673 |
Writing Score | 7,352 |
Digital Content Creation | 9,214 |
Photo Editing Score | 10,361 |
Rendering and Visualization Score | 13,054 |
Video Editing Score | 5,789 |
Gaming | 19,148 |
Fire Strike Graphics Score | 28,771 |
Fire Strike Physics Score | 19,274 |
Fire Strike Combined Score | 10,315 |
3DMark v2.5.5029 | |
TimeSpy Extreme | 4,327 |
TimeSpy Performance | 9,427 |
FireStrike Ultra | 6,916 |
FireStrike Extreme | 13,097 |
FireStrike Performance | 22,571 |
SkyDiver Performance | 49,820 |
CloudGate Performance | 44,674 |
IceStorm Unlimited | 204,789 |
IceStorm Extreme | 196,208 |
IceStorm Performance | 201,971 |
VRMark | |
Blue Room | 3,063 |
Cyan Room | 8,687 |
Orange Room | 10,657 |
CINEBENCH R15 | |
Rendering (Multiple CPU) | 1392.67cb |
Rendering (Single CPU) | 196.87cb |
PCMark 10のExtendedスコアは9,000ポイント前後と高い。Essentialsは10,000ポイントを超えており、家庭での普段使いにはあり余る性能であるほか、Productivityも10,000ポイント弱で、ビジネス用途も高性能だ。Digital Content Creationも10,000ポイント弱なので、クリエイティブ用途もカバーできる。
3DMarkの各スコアも十分に高い。執筆時点でのコンシューマ向けGPUの最上位のものを搭載しているだけあって、4K解像度で高~中画質は十分に望める。
VRMarkのスコアも高く、こちらも現在のVRタイトルであれば大丈夫だろう。
CINEBENCH R15のスコアも、とくにマルチスレッド時のスコアが高いので、3D映像製作はもちろん映像編集用途などにも心強い。シングルスレッド時のスコアも十分に高く、まだシングルスレッド性能も求められるゲーム用途や普段の作業で効いてくるだろう。
続いて、実際のゲームタイトルのビルトインベンチマークを試し、映像の感触を紹介しよう。利用したのは「Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands」、「Assassin's Creed Origins」、「Far Cry Primal」、World of Tanksのベンチマークである「World of Tanks enCore」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」。
ベンチマーク結果2 | |
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Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands | |
3,840×2,160ドット、「ウルトラ」画質 | 39.21fps |
3,840×2,160ドット、「非常に高い」画質 | 55.22fps |
3,840×2,160ドット、「高」画質 | 62.40fps |
3,840×2,160ドット、「中」画質 | 67.09fps |
3,840×2,160ドット、「低」画質 | 92.74fps |
1,920×1,080ドット、「ウルトラ」画質 | 73.99fps |
1,920×1,080ドット、「非常に高い」画質 | 112.96fps |
Assassin's Creed Origins | |
3,840×2,160ドット、「最高」画質 | 51fps |
3,840×2,160ドット、「超低」画質 | 84fps |
1,920×1,080ドット、「最高」画質 | 95fps |
Far Cry Primal | |
3,840×2,160ドット、「最高」画質 | 58fps |
3,840×2,160ドット、「低い」画質 | 84fps |
1,920×1,080ドット、「最高」画質 | 119fps |
World of Tanks enCore | |
超高品質(1,920×1,080ドット、TSSAA HQ) | 35,801 |
中品質(1,920×1,080ドット、AAなし) | 55,814 |
最低品質(1366×768ドット、AAなし) | 11,1197 |
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク | |
3,840×2,160ドット、高品質 | 4,750(やや快適) |
3,840×2,160ドット、標準品質 | 5,487(やや快適) |
3,840×2,160ドット、軽量品質 | 7,915(快適) |
1,920×1,080ドット、高品質 | 10,816(とても快適) |
1,920×1,080ドット、標準品質 | 14,286(非常に快適) |
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク | |
3,840×2,160ドット、最高品質 | 9127(非常に快適) |
3,840×2,160ドット、高品質(デスクトップPC) | 10,643(非常に快適) |
3,840×2,160ドット、標準品質(デスクトップPC) | 17,206(非常に快適) |
ゲーム性能は、重めのタイトルを4K(3,840×2,160ドット)ディスプレイで楽しむ場合でも、最高画質から少し落とせば、高画質レベルで十分楽しめる。フルHD(1,920×1,080ドット)に関しては、どんなタイトルでも最高画質に引き上げて構わないだろう。そこで、以下は4K環境を想定した画質設定について触れていく。
重めのタイトルの代表格であるTom Clancy's Ghost Recon Wildlandsは、4Kの場合、「ウルトラ」画質は30fpsをなんとかクリアできるが、実用的なところで、60fpsまで後一歩の「非常に高い」画質、現実的なところでは「高」画質以下となった。
Assassin's Creed Originsは、GPUの回路のどこに負荷がかかるかで、同じゲームエンジンでもTom Clancy's Ghost Recon Wildlandsとやや異なる結果で、こちらは4Kの「最高」画質でもまずまずプレイでき、完全に60fpsを超えるのは「中」画質辺りになった。
やや軽めのFar Cry Primalは、4K「最高」画質でもほぼ問題なし。1つ画質を落として「とても高い」に設定すれば60fpsを超えられた。フルHDの「最高」画質であれば120fps弱まで届くので、高リフレッシュレートの液晶ディスプレイをお持ちの方は、こちらの設定もオススメだ。
World of Tanks enCoreは3つのプリセットともなんら問題ない高フレームレートが得られている。プリセットの「超高品質」を超える解像度で、美麗なグラフィックスを楽しめる。
超重量級のFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークは、4K「高品質」では「やや快適」判定で30fpsを若干割り込む辺り。「快適」判定となるのは「軽量品質」だ。やはりフルHDでのプレイが現実的で、こちらは「高品質」で「とても快適」、「標準品質」なら60fpsを超える「非常に快適」判定となった。
1つ古いファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークについては、各プリセットとも4Kでなんら問題なく楽しめる。
日本のゲーミングPCはシンプルデザインがベスト
ここまで、G-Tune NEXTGEAR i680シリーズ プラチナモデルの特別モデルを見てきた。筐体デザインについては、各自の美的感覚もあるが、シンプルなデザインかつ黒/赤ベースのカラーリングは、普段から利用するPCとして落ち着きもあり、NEXTGEARらしさもある。万人受けするデザインではないだろうか。
その上で、筐体内部のレイアウトもかなりよく考えられた設計だ。特別モデルだけでなく、そのほかのモデルでもオプションとして強化ガラスサイドパネルが選択できるので、とくにLEDで光らせなくても、この内部レイアウトを眺めていたいという方は、これを選んで見てほしい。プッシュピン方式でメンテナンス性もよく、万が一のトラブルも、内部が見えることで解決が簡単になるからだ。
性能に関しては、特別モデルだけにCPU・GPUとも言うことなし。W水冷でその性能を最大まで引き出している。
実際に購入される方は予算に合わせて選ぶことになるが、価格=性能である。NEXTGEAR i680シリーズはブロンズモデルの最廉価がCore i5-8400+GeForce GTX 1050(2GB)で99,800円、特別モデルを除けばプラチナモデルがCore i7-8700K+GeForce GTX 1080 Tiで229,800円と幅広い。
フルHDで高画質プレイというトレンドを踏むならば、およそ17万円前後のゴールドモデルが狙い目といったところになるだろう。