Hothotレビュー
ワイヤレスでPCとスマホの画面を同時表示できるディスプレイ
~2系統Miracast対応のデル「U2417HWi」
2016年7月20日 06:00
デルは、クリエイティブ用途をターゲットとした液晶ディスプレイ「U2417HWi」を発売した。2016年1月に開催されたCES 2016に合わせて発表したもので、2系統のMiracast入力に対応するワイヤレスディスプレイとなる。CES 2016では2モデルが発表されたが、今回は23.8型パネル搭載の「U2417HWi」を取り上げる。直販価格は55,900円。仕様は下表の通り。
【表】U2417HWiのスペック | |
---|---|
液晶サイズ | 23.8型 |
パネル方式 | IPS方式 |
表示解像度 | 1,920×1,080ドット |
アスペクト比 | 16:9 |
画素ピッチ | 0.2745×0.2745mm |
表面処理 | 非光沢 |
タッチパネル | なし |
バックライト方式 | LED |
応答速度 | 8ms(GTG) |
コントラスト比 | 1,000:1(ダイナミックコントラスト機能有効時2,000,000:1) |
視野角 | 水平178度/垂直178度 |
輝度 | 250cd/平方m |
表示色 | 約1,670万色 |
走査周波数 | 水平:30~83kHz |
垂直 | 56~76Hz |
チルト角度 | 下5度、上21度 |
高さ調節 | 130mm |
スイーベル | 左45度、右45度 |
ピボット機能 | あり(左右両対応) |
無線機能 | 802.11a/b/g/n/ac、Wifi Direct対応、Bluetooth |
入力端子 | HDMI 1.4×1、USB 3.0アップストリームポート×1 |
出力端子 | USB 3.0×4、オーディオ出力 |
スピーカー | なし |
VESAマウント | 対応(100×100mm) |
電源 | 内蔵 |
消費電力 | 標準25W、最大60W |
付属品 | HDMIケーブル、USBケーブル、電源ケーブル、ドライバCD-ROM |
本体サイズ | 539.1×185×355.8~485.8mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 5.42kg |
狭額縁仕様でコンパクトさが魅力
「U2417HWi」の本体デザインは、デルのデジタルハイエンドシリーズに属するほかの製品と大きな違いはなく、デル製ディスプレイとして標準的なものとなっている。その中で目を引くのが、左右および上部の狭額縁仕様だ。そのベゼルはわずか数mm程度、表示部分から実測で6mmほどしかない。横に2台並べて使う場合など、このベゼルの狭さが大いに役立ってくれるはずだ。
本体サイズは、539.1×185×355.8~485.8mm(幅×奥行き×高さ)。下部ベゼルは、電源ボタンやOSD操作用ボタンが配置されていることもあって、やや幅が広くなっているものの、24型クラスの液晶ディスプレイとしては十分にコンパクトと言える。本体重量は5.42kgだ。
スタンドは、ほかのデジタルハイエンドシリーズにも広く採用されているものと同等。高さ調節が130mmの範囲で、チルト角度調節は下5度から上21度の範囲で調節できる。また、左右各45度ずつのスイベル機構と、縦画面でも利用できるピボット機構も備える。ピボット機構は、左右どちらにも回転できるため、縦画面で2台を並べて使う場合でも、ベゼル幅の狭い上部側面を合わせて設置し利用できる。また、これだけ稼働部が多くなっているものの、液晶面のぐらつきが小さく、安定して利用できる点も大きな魅力だ。
23.8型フルHDパネルを採用
液晶パネルには、1,920×1,080ドット表示対応の23.8型パネルを採用している。パネルの種類はIPSで、視野角は水平・垂直ともに178度と広く、多少視点を移動させても発色や色合いの変化はほとんど感じられない。パネル表面は非光沢処理となっており、外光の映り込みも少ない。タッチパネルは非搭載。
U2417HWiは、グラフィックス用途をターゲットとした広色域表示対応モデルというわけではないが、sRGBカバー率96%と十分な発色性能を備えている。また、コントラスト比は標準では1,000:1とIPSパネル採用液晶ディスプレイとして標準的だが、ダイナミックコントラスト機能有効時には200万:1に拡張される。デジタルカメラで撮影した写真を表示させても、細かな色のグラデーションや暗所の表現力も十分で、表示品質は十分満足できるレベルと感じる。
バックライトはLEDを採用し、輝度は250cd/平方m。輝度は十分な明るさを備えており、比較的明るいオフィスでも十分な視認性を確保できるだろう。応答速度は中間色で8msと、IPSパネル採用液晶ディスプレイとしてほぼ標準的。個人的な印象では、動画再生時やゲームプレイ時の残像が気になることはなく、まったく問題ないと感じたが、シビアな高速表示性能を求めるなら、気になる場面があるかもしれない。
2系統のMiracast入力に対応する反面、映像入力端子はHDMI 1系統のみ
U2417HWiの映像入力は、一般的な液晶ディスプレイと比べて大きく異なっており、かなり特殊な仕様となっている。
まず、U2417HWiの最大の特徴は、IEEE 802.11ac準拠の無線LAN機能を備え、Miracastによるワイヤレス映像入力に対応しているという点だ。ワイヤレス映像入力に対応するデバイスは、OSとしてWindows 7/8.x/10を採用するWindows PCと、OSとしてAndroid 5以上を採用するAndroidデバイスをサポート。MacやiOSデバイスは非対応となっている。U2417HWiとデバイスは、Wi-Fi Direct接続となる。
Miracast入力は、Windows PCが1系統とAndroidデバイス1系統の、2系統の同時入力をサポートする点も大きな特徴となっている。Windows PCをMiracast接続している状態でAndroidスマートフォンを接続すると、ピクチャインピクチャ形式でスマートフォンの画面がPCの画面上に表示される。
なお、Miracastによる2台のPCの同時接続、または2台のAndroidデバイスの同時接続には対応しない。また、HDMI入力の画面上へのMiracast入力のAndroidデバイスの画面を同時表示も行なえない。Miracastの2系統入力同時表示は、Windows PCとAndroidデバイスを同時にMiracast入力した場合に限られる。このほか、ソニー製のAndroidスマートフォンおよびタブレットに関しては、2系統同時入力は行なえないとされている。この点については、後ほど実際に検証する。
さらに、U2417HWiとWindows PCやAndroidデバイスをMiracast接続すると、同時にBluetooth接続も行なわれ、U2417HWiのUSB 3.0ポートに接続したUSBキーボードおよびUSBマウスによる操作が可能となる。加えて、ノートPCとAndroidデバイスを同時接続した場合には、ノートPCのキーボードとポインティングデバイスを利用してAndroidデバイスを操作可能にもなる。この点も、U2417HWiでMiracast接続を行なう場合の大きな特徴と言える。
U2417HWiはMiracast入力に対応する反面、映像入力端子はHDMI 1.4入力が1系統用意されるだけとなっている。ビジネスシーンで利用される液晶ディスプレイでは、1台に多数の機器を接続して切り替えながら使うというのは一般的ではないと思われる。また、デスクトップPCはHDMI入力、ノートPCはMiracast入力と使い分ければ、2台のPCを切り替えながら使うことも可能なので、こういった割り切った仕様でも大きな問題はないだろう。逆に、家庭でPCだけでなくゲーム機などの外部映像機器を接続して利用したいという用途には向いていない。
なお、Miracast入力を行なう場合の対応機器側の推奨要件は以下の通りとなっている。これは推奨要件ということで、必須要件ではないが、快適なMiracast入力を行ないたいなら、なるべくこの要件をクリアする機器を利用すべきだろう。
- 第4世代Core i5/i7以上
- デュアルバンドIEEE 802.11ac準拠無線LANモジュール搭載(無線LANモジュールはIntel製推奨、BroadcomおよびQualcom/Atheros製モジュールも対応)
- Windows 10、Windows 8.1、Android 5以上
Miracast利用時には専用アプリのインストールが必須
Miracastは、ワイヤレスで映像を転送できる反面、遅延や表示映像のカクつきなどが問題となる場合が多い。それに対しU2417HWiは、1月のCES 2016で展示された試作機で試した限りでも、Miracast入力時の遅延の少なさが話題となった。そこで、実際に製品を利用して、Miracastでの接続手順や、遅延や表示画面のカクつきなどを確認していきたいと思う。なお、Miracast接続の検証に利用したWindows PCやAndroidデバイスは、以下にまとめたとおりだ。
・検証に利用した機材
- Windows PC
NEC「LAVIE Hybrid Zero HZ750DAB」 - Androidデバイス
ソニー「Xperia Z5 SO-01H」
ASUS「ZenFone 2 ZE551ML」
ASUS「ZenFone 5 A500KL」
Miracast対応機器との接続には、Windows PC、Androidデバイスともに専用アプリ「Dell Wireless Monitor」のインストールが必須となる。Windows PCではデルのホームページから、またAndroidデバイスではGoogle Playストアからそれぞれダウンロードし、あらかじめインストールしておく。
次に、U2417HWiの電源ボタンを押して起動する。すると、U2417HWiはMiracast接続のスタンバイ状態となり、画面には接続を促す映像が表示される。このあたりは、一般的なディスプレイと大きく異なる部分だが、Miracast接続を行なわず3分ほど経過すると、スリープへと移行する。
続いて、U2417HWiとの接続方法。今回は、Windows 10搭載のノートPC「LAVIE Hybrid Zero HZ750DAB」を利用したため、Windows 10での接続手順を紹介する。まず、タスクトレイの通知アイコンをクリックしてアクションセンターを開き、下部の「接続」アイコンをクリック。すると、接続デバイスとしてU2417HWiのデバイス名が表示されるので、そのデバイス名をクリック。その後、U2417HWi側で下部ボタンをタッチして接続を許可すると、Miracastでの接続が完了し、PCの画面が表示される。
次に、Androidデバイス(キャプチャはXperia Z5)との接続方法。あらかじめインストールしておいたDell Wireless Monitorアプリを起動し、画面中央の「キャスト設定」ボタンをタップする。すると、Miracast接続メニューが表示され、接続デバイスとしてU2417HWiのデバイス名が表示されるので、そのデバイス名をタップ。その後、U2417HWi側で下部ボタンをタッチして接続を許可すると、Miracastでの接続が完了し、Androidデバイスの画面が表示される。
なお、接続の許可に関しては、初接続時のみに必要となり、2度目以降の接続時には不要。Windows PCとAndroidデバイスを同時にMiracast接続する場合には、上記の接続を連続で行なえばいい。そして、Windows PCの画面が全画面で表示され、Androidデバイスの画面はWindows PC画面上にウィンドウ形式で表示されることになる。
ただし、HDMI入力映像とMiracast入力の映像は、基本的に別系統の入力として扱われ、同時表示は不可能。HDMIにPCを接続し、そのPCの画面上にAndroidデバイスの画面をウィンドウ形式で表示するといった使い方はできなかった。また、念のためWindows PCを2台、およびAndroidデバイスを2台、それぞれ同時接続できるか試してみたところ、2台目を接続しようとするとエラーメッセージが表示され、接続できなかった。
また、Windows PCをMiracast接続している状態で、ソニー製スマートフォンのXperia Z5を接続しようとすると、Xperia Z5でエラーメッセージが表示され、接続できなかった。Xperia Z5単体での接続は問題ないが、エラーメッセージに表示されている内容を見る限り、Windows PCとの同時接続時にはHDCP非対応となる仕様が影響しているようだ。今回は、Xperia Z5のみでの検証だったが、公式で発表されている通り、ソニー製AndroidデバイスではWindows PCとの同時接続は行なえないと考えて良さそうだ。
0.1s程度の低遅延でワイヤレス接続が可能
続いて、表示遅延をチェックしてみた。今回は、接続デバイスでストップウォッチアプリを表示し、デバイス側の画面とU2417HWi側の画面でどの程度の差があるかを撮影してチェックすることにした。
検証に利用した4台の接続デバイスのうち、LAVIE HZ750/DABとXperia Z5、ZenFone 2の3台はIEEE 802.11ac 2×2に対応、ZenFone 5は2.4GHz帯域の802.11n 1×1対応となるが、全機種ともU2417HWiとMiracastで接続し、利用可能だった。そして、表示遅延をチェックしてみたところ、802.11ac対応の3機器、802.11n対応のZenFone 5ともに0.1s前後だった。
一般的に、Miracast接続は遅延が大きく、ディスプレイの表示を見ながらデバイスを操作するのがやや難しいと感じる場面が多い。しかし、U2417HWiでのMiracast表示であれば、違和感なく操作可能だった。さすがに、アクションゲームなどリアルタイムでの操作が要求されるアプリでは厳しい場面もあるが、WebアクセスやOfficeアプリなどの利用であれば、ほぼ不満なく利用できると感じた。
また、2.4GHz帯域IEEE 802.11n接続のZenFone 5でも十分スムーズに利用できた。筆者宅では、2.4GHz帯域の無線LANは非常に混雑しており、スムーズな表示が難しいのではと思っていたが、この点はいい意味で予想が裏切られた。
それに対し、動画再生時にはやや違和感を感じた。カメラが高速にパンする場面などで映像が乱れたり、全体的にフレームレートが低下してカクつくような再生映像となってしまう。これは、IEEE 802.11ac対応機器でも同様だった。Miracastによるワイヤレスディスプレイのざっくりとした仕組みは、デバイス側の画面をH.264形式の動画に変換してディスプレイに転送し表示するというものだが、U2417HWiでは遅延を少なくするためにビットレートやフレームレートを落とした仕様になっており、それが影響して動画再生時に映像の乱れやカクつきが感じられるものと考えられる。
ところで、U2417HWiには、Miracast接続設定に動画表示を優先したモードが用意されている。そこで、設定を変更して表示がどう変わるか試してみることにした。
U2417HWiのMiracastに関する各種設定は、U2417HWiのUSB 3.0ポートにマウスを接続することで行なえる。Miracastで機器を接続していない状態でU2417HWiマウスを接続すると、画面上にマウスカーソルが現れるので、画面右上の歯車アイコンをクリックし、設定メニューを開く。そして、「高度な設定」にある「動画モード」にチェックを入れると、表示モードが変更される。
動画モードに設定してデバイスを接続し、動画を再生してみると、まだ若干フレームレートの低下が感じられるものの、標準設定時と比べてカクつきが減り、フレームレートもかなり向上したと感じる。時たま映像の乱れが現れる場合もあるが、標準設定時に比べると、かなりスムーズな動画再生が可能だった。
ただし、動画モードに設定した場合には、遅延がかなり増え、各デバイスとも0.3s前後の遅延となった。この遅延だと、操作から表示までかなり待たされる印象となり、ゲームのプレイはもちろん、Webアクセスや文字入力などもかなり厳しいと感じる。
オフィスで利用するノートPCのサブディスプレイ用として魅力
U2417HWiは、Miracast接続に対応し、Windows PCやAndroidデバイスからワイヤレスで映像を転送し表示できるという、一般的な液晶ディスプレイにはない特徴を備えている。反面、映像入力端子はHDMIが1系統のみと割り切った仕様で、事実上Miracastに特化した液晶ディスプレイと言っていいかもしれない。特に、PCだけでなく、ゲーム機など複数の機器を接続して利用するといった用途には、かなり使いにくいだろう。
ただ、Miracast接続時の遅延の少なさや、IEEE 802.11ac接続で安定して利用できる点、Miracast接続時にU2417HWiに接続したUSBキーボード・マウスによる操作が可能になるなど、実際に使ってみるとその利便性の高さも十分に感じられた。
このような特徴から、U2417HWiはオフィスなどでノートPC用のサブディスプレイとして利用する場合などに、大きな威力を発揮してくれそうだ。いちいちケーブルを接続することなく、外部ディスプレイやキーボード、マウスが利用可能になるのはもちろん、打ち合わせや外出時にもすぐさまノートPCを持ち出せるため、利便性を大きく高めてくれる。用途と目的が合えばという条件は付くが、はまればこれ以上ない利便性を実現できる、魅力的な製品となるだろう。