平澤寿康の周辺機器レビュー

Thunderbolt 5対応のSSDを試してみたら、“PCIe 4.0内蔵級”の性能だった

今回用意したThunderbolt 5対応機器

 高速データ伝送技術「Thunderbolt」の最新規格「Thunderbolt 5」が登場して約2年。2024年以降、Thunderbolt 5搭載PCも数モデルが登場しているが、現時点でもまだハイエンドゲーミングPCやMacBook Proなどでの採用が中心で、広く普及するにはまだ時間がかかりそうだ。

 そういった中、Thunderbolt 5周辺機器も少しずつ製品が登場してきている。今回は、Thunderbolt 5の外付けSSDやドックなどを用意して、主にThunderbolt 5対応の外付けSSDがどの程度の性能を発揮するのか見ていきたい。

検証機材

 今回用意したThunderbolt 5対応外付けSSDは、Other World Computingの「Envoy Ultra Thunderbolt 5 Ultra-Portable SSD」の容量4TBモデル。データ転送速度は、読み出し時で最大6,000MB/sと、外付けSSDながらPCIe 4.0対応の内蔵SSDに近い速度を実現している。

 この速度を実現する要因は、接続インターフェイスに最大80Gbpsの高速通信が可能なThunderbolt 5を採用している点だ。Thunderbolt 4やUSB4は転送速度が最大40Gbpsなので、転送速度6,000MB/sの実現にはThunderbolt 5対応が不可欠だったわけだ。

 最大限の速度を引き出すにはThunderbolt 5で接続する必要があるが、Thunderbolt 4/3やUSB4で接続して利用することも可能。その場合には、接続インターフェイスに合わせてデータ転送速度が低下することになる。

 Envoy Ultra Thunderbolt 5 Ultra-Portable SSD本体はかなり大きく、130×75×20mm。重量も327gと結構重い。筐体はアルミ合金製で、側面や底面には多くの溝が掘られている。高速SSDは発熱が大きくなるため、本体をヒートシンク的に利用して効率良く熱を逃がすためと考えられる。

Other World ComputingのThunderbolt 5対応外付けSSD「Envoy Ultra Thunderbolt 5 Ultra-Portable SSD」。今回は容量4TBモデルを試用した
本体は比較的サイズが大きい。ボディはアルミ合金製で、底面や側面には溝が掘られヒートシンク的な役割も果たす
Thunderbolt 5ケーブルはSSDに直結

 このほかにも、いくつかThunderbolt 5対応機器を用意した。

 CalDigitの「Element5 Hub」は、Thunderbolt 5対応のドックだ。PC接続用1基、周辺機器接続用のThunderbolt 5ポート3基に加えて、USB 3.2 Gen 2 Type-C 2基、USB 3.2 Gen 2も3基備える。製品には180WのACアダプタが付属しており、PC接続用Thunderbolt 5から90W、周辺機器接続用のThunderbolt 5からそれぞれ15W、USB Type-CとUSB Type-Aからそれぞれ7.5Wの電力を供給できる。今回は、Envoy Ultra Thunderbolt 5 Ultra-Portable SSDをPCのThunderbolt 5ポートに直結した時と、このドック経由時で速度をチェックした。

 このほか、ベルキンのThunderbolt 5ケーブル「Connect Thunderbolt 5 Cable」と、UGREENの8K出力対応USB Type-C-HDMI変換ケーブル「USB-C to HDMI 8K Cable」も用意したので、接続ケーブルの違いや、ドックから映像を同時出力している場合の速度もチェックした。

CalDigitのThunderbolt 5対応ドック「Element5 Hub」
ドック本体に加えて、PC接続用のThunderbolt 5ケーブル、出力180WのACアダプタが付属
PC接続用のThunderbolt 5ポート。90Wの電力供給も可能
周辺機器接続用Thunderbolt 5ポートは3ポート用意。いずれも15Wの電力供給が可能
Thunderbolt 5ポート以外に、USB 3.2 Gen 2 Type-C 2基、USB 3.2 Gen 2 3基を用意。これらポートからは7.5Wの電力を供給できる
ベルキンのThunderbolt 5ケーブル「Connect Thunderbolt 5 Cable」。ケーブル長は1m
UGREENの8K出力対応USB Type-C-HDMI変換ケーブル「USB-C to HDMI 8K Cable」

PC直結ならリードで6,000MB/s超を確認

 では、実際の速度をチェックしていこう。なお、今回Thunderbolt 5搭載PCとして用意したのは、MSIのゲーミングノートPC「Titan 18 HX AI A2XWJ」だ。搭載プロセッサがCore Ultra 9 285HX、ディスクリートGPUがGeForce RTX 5090 Laptopという構成のハイエンドゲーミングPCである。

 Thunderbolt 5ポートは、右側面に2ポート備えている。速度の検証には、「CrystalDiskMark 9.0.1」を利用。外付けSSDということで、テスト設定は「デフォルト」にしてある。

検証に利用した、MSIのThunderbolt 5対応ゲーミングノートPC「Titan 18 HX AI A2XWJ」。Core Ultra 9 285HX、GeForce RTX 5090 Laptop搭載のハイエンド仕様だ
右側面にThunderbolt 5ポートを2ポート備える

 まずは、Envoy Ultra Thunderbolt 5 Ultra-Portable SSDをPCのThunderbolt 5ポートに直結した場合の速度だ。以下がその結果だが、シーケンシャルリードは約6,061MB/sと、公称通りの速度が確認できた。対するシーケンシャルライトは約4,234MB/sとリードよりやや遅かった。とはいえ、まさにPCIe 4.0内蔵SSD相当の速度で、外付けSSDとしては圧倒的な速度と言える。

 それに対し、ランダムアクセス速度はそれほど高速ではなく、Q32T1時でリード約456MB/s、ライト約312MB/s、Q1T1ではリード約53MB/s、ライト約23MB/sだった。とはいえ、外付けSSDはデータ保存用としての利用が中心なので、大きな影響はないはずだ。

PCのThunderbolt 5ポート直結時の結果

 続いて、ドック経由で接続した場合だ。結果は下の通りで、シーケンシャルリードが約5,549MB/sとやや低下している。ただ、それ以外の部分はほぼ誤差の範囲内と言える結果となった。

 テスト前には、ドック経由でも速度に影響はないと考えていたため、この結果にはちょっと驚いたが、とはいえ1割未満の違いのため、体感ではほとんど影響はないと言える。それでも最大限の速度を引き出したいのであれば、PC直結で利用したほうがいいかもしれない。

ドック経由時の結果

 次は、PCとドックの接続に、ドック付属のThunderbolt 5ケーブルではなく、BELKINのConnect Thunderbolt 5 Cableを利用した場合の速度だ。結果は以下の通りで、ドック付属のThunderbolt 5ケーブル利用時と同等の速度が確認できた。どちらもThunderbolt 5認証を受けているケーブルなので、これは当然の結果だろう。

PCとドックをBELKINのConnect Thunderbolt 5 Cableで接続した場合の結果

 続いて、ドックにSSDと同時にUSB-C to HDMI 8K Cableを利用して4K/8bit/60Hzモニターを接続した場合だ。4K/8bit/60Hzの帯域幅は約8Gbps。そのため、SSDとの同時利用でもThunderbolt 5の帯域である80Gbpsに収まる計算で、SSDの速度には一切影響がないはずだ。実際にテストの結果は以下の通りで、やはり速度に影響は見られなかった。

 もちろん、接続するのがより高解像度な8Kモニターだったり、より多くのモニターを同時接続する場合には帯域不足となり、SSDの速度が低下する可能性がある。ただ、そういった場合にはSSDはPCのThunderbolt 5に直結すればよく、特に大きな問題とはならないだろう。

筆者はPC用4Kモニターを持っていないので、4K TVに接続して代用した
ドックにSSDと4Kモニターを同時接続した場合の結果

 ちなみに、筆者が普段利用しているPCにはThunderbolt 4ポートが備わっているので、念のためそちらに接続した状態でも速度をチェックしてみた。結果は以下の通りで、シーケンシャルリードが約3,941MB/s、ライトが約2,949MB/sだった。

 リードはほぼThunderbolt 4の上限に近い速度のため納得だが、ライトはThunderbolt 5接続時よりも大きく速度が低下した。Thunderbolt 5接続時にはライトは約4,234MB/sだったことを考えると、Thunderbolt 4接続時でも4,000MB/sに近い速度が発揮されても良さそうで、ここは少々残念な気がする。

Thunderbolt 4ポート接続時の結果

ファイル転送の実測時間

 最後に、実ファイルを転送する時間を計測してみた。動画ファイル6個、合計約30.6GBを保存したフォルダを、フォルダごとPC内SSDから転送し、ストップウォッチで時間を手動計測した。PCのThunderbolt 5ポートに直結した場合と、ドック経由で接続した場合の双方で計測を行なった。いずれも3回計測して平均を出している。

 結果を見ると、直結時が約25.24秒、ドック経由時が25.48秒と、ほぼ同じだった。このことから、直結、ドック経由いずれも、実利用時の速度はほぼ同じと考えていいだろう。

 とはいえ、いずれも転送速度は1.2GB/sと、ベンチマークテストの結果から考えると思ったほどの速度が出ていない。

 なお、より大容量のデータを一括で転送する場合、45GB程度の容量を過ぎるとSSDのライトキャッシュが尽きるようで、速度が400MB/s付近まで一気に低下する。これは、SSDの特性上どうしようもないところなので、45GBを超える大容量データを転送する場合に速度低下が発生することは想定しておく必要がある。

総容量約30.6GBの動画ファイルを保存したフォルダを一括転送する時間を計測した
【表】トータル30GBの動画ファイル転送
条件1回目2回目3回目平均
直結時25.5925.2124.9325.24
ドック経由時25.1225.6825.6425.48
容量約45GBを超える大容量データを転送する場合には、SSDのキャッシュが尽きて速度が400MB/s前後に低下する

Thunderbolt 5搭載PC利用者なら選択肢として魅力あり

 ここまで見てきたように、Envoy Ultra Thunderbolt 5 Ultra-Portable SSDは接続インターフェイスにThunderbolt 5を採用することで、従来の外付けSSDを大きく凌駕する転送速度が実現されていることを確認できた。これは、とにかく高速な外付けSSDが必要というユーザーにとって、選択肢として大きな魅力となるはずだ。

 Thunderbolt 5は、対応PCが登場してまだ1年弱ほど。対応周辺機器もまだ数が少ない。とはいえこれは、Thunderbolt 4も登場当時はそうだった。現在は、PCがThunderbolt 5に対応するにはディスクリートコントローラが必要だが、Thunderbolt 4のようにプロセッサに内蔵されディスクリートコントローラ不要で利用できるようになれば、対応PCが一気に増え、製品も拡充するはず。

 それにはもう少し時間がかかりそうだが、Thunderbolt 5が気軽に利用できるようになればユーザーの利便性も大きく向上するので、なるべく早い時期にそういった状況になることを期待したい。