平澤寿康の周辺機器レビュー
超堅牢で高セキュリティ性を実現したポータブルSSD「G-DRIVE ArmorLock SSD」
2021年11月12日 06:45
ウエスタンデジタルから、映像制作者などプロフェッショナル向けとして位置付けられているストレージ製品新ブランド「サンディスクプロフェッショナル」が登場した。外付けストレージやRAIDボックス、高性能カードリーダーなどをラインナップしているが、今回その中から、ポータブルSSD製品となる「G-DRIVE ArmorLock SSD」を試用する機会を得たので、製品の特徴や性能などを紹介する。家電量販店での受注生産となり、想定価格は1TBモデルが3万8,280円、2TBモデルが7万4,800円、4TBモデルが11万8,800円。
高さ3mからの落下や450kg超の圧力に耐える優れた堅牢性を確保
ではまず、「G-DRIVE ArmorLock SSD」の外観から見ていこう。
G-DRIVE ArmorLock SSDは、近頃のポータブルSSDとしてはかなりボディが大きい。サイズは82×134×19mm(幅×奥行き×高さ)と、ポータブルSSDの中でも飛び抜けて大きいという印象だ。また重量も公称200g、実測でも193.8gとかなり重い。
このように筐体が大きく重いのは、優れた堅牢性を確保するためだ。まず、3mの高さからの落下に耐えられる耐衝撃性能と、1,000ポンド(約453kg)の外圧に耐えられる耐圧性能を備えている。合わせて、IP67準拠の防水防塵性能も備えている。これら堅牢性仕様は、ポータブルSSDの中でも飛び抜けたものとなっており、これなら過酷な環境での利用にも余裕で耐えられるはずだ。
合わせて、最新のポータブルSSDとして性能面も申し分ないものとなっている。インターフェイスはUSB 3.2 Gen2準拠USB Tpe-Cを採用しており、アクセス速度はシーケンシャルリード、ライトとも最大1,000MS/s。速度的には、ポータブルSSDとしてほぼトップクラスの速度を誇っている。動画データなどの大容量データを扱う場合でも、スピーディな転送が可能だ。
製品パッケージには、G-DRIVE ArmorLock SSD本体とともに、USB Type-CケーブルとUSB Type-C Type-Aケーブルが同梱される。今回使用したのは容量1TBモデルだったが、容量はこのほか2TBと4TBを用意。保証期間は5年間となる。
容量 | 1TB/2TB/4TB |
---|---|
インターフェイス | USB 3.2 Gen2 USB Type-C |
シーケンシャルリード | 1,000MB/Sec |
シーケンシャルライト | 1,000MB/Sec |
堅牢性 | 高さ3mからの落下に耐える耐衝撃性 1,000ポンド(約453kg)の耐圧性 |
防水防塵性能 | IP67準拠 |
対応OS | Windows 10以降、macOS 10.14以降 |
専用アプリ互換性 | macOS 10.14以降、iOS 13.2以降、Android 9以降 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 82×134×19mm |
重量 | 200g |
保証期間 | 5年 |
スマホが鍵となるセキュリティ機能を搭載
G-DRIVE ArmorLock SSDの最大の特徴となるのが、優れたセキュリティ機能を搭載しているという点だ。
G-DRIVE ArmorLock SSDには、256bit AES-XTS準拠のハードウェア暗号化機能を搭載するとともに、データを複合化するための鍵の管理にNIST P-256楕円曲線暗号技術を活用した、非常に優れたセキュリティ機能を標準搭載している。しかも出荷時から標準で暗号化機能が有効となっており、初めて利用する場合でも専用アプリで利用登録を行なって暗号化を解除しない限りアクセスできないようになっている。合わせて、G-DRIVE ArmorLock SSDをPCなどから外すと、その瞬間に暗号化が有効となり、次利用する場合にはまた暗号化の解除が必要となる。
ここまでは特に珍しいものではないと感じるかもしれない。ただ、G-DRIVE ArmorLock SSDにはほかにはない非常に特徴的な機能が備わっている。それは、G-DRIVE ArmorLock SSDはBluetoothを内蔵しており、専用アプリをインストールしたスマートフォンとBluetoothで接続して認証が行なえる、という点だ。
G-DRIVE ArmorLock SSDの専用アプリは、Android/iOS用のスマートフォンアプリとmacOS用のPCアプリを用意しており、このうちスマートフォンアプリを利用する場合には、専用アプリをインストールし登録を行ったスマートフォンとG-DRIVE ArmorLock SSDをBluetoothで接続したうえで認証を行なうことで暗号化が解除される。つまり、スマートフォンが暗号化を解除する鍵として動作するわけだ。
加えて、専用アプリにG-DRIVE ArmorLock SSDを登録する場合には、スマートフォンのGPS機能を活用した位置情報へのアクセス許可が必須となっている(位置情報へのアクセスを拒否すると登録できない)。これにより、登録したG-DRIVE ArmorLock SSDの最後に利用された場所を表示可能となっており、この点でもセキュリティ性が高められている。
G-DRIVE ArmorLock SSD背面にQRコードが印刷されており、そのQRコードをスマートフォンで読み取るとG-DRIVE ArmorLock SSDのホームページが開き、専用アプリのインストールが行なえる。
専用アプリをインストールするとG-DRIVE ArmorLock SSDを登録することになるが、その場合もこのQRコードを読み取ることで簡単に行なえる。途中で位置情報へのアクセス許可やユーザー名の入力が求められるものの、特に面倒な作業はない。
暗号化の解除は、通常はスマートフォンとBluetooth接続を行った上で専用アプリから暗号化解除の操作を行なうことになる。また、スマートフォンに搭載されている指紋認証や顔認証などの生体認証機能を利用したユーザー認証を追加することも可能で、さらに安全性を高めることも可能。
ただ、いちいち専用アプリを起動して操作するのが面倒と感じる場面もあるだろう。そういった要求に対応できるよう、自動で暗号化を解除する機能も用意している。この場合、G-DRIVE ArmorLock SSDがBluetooth接続されると専用アプリが認識して自動的に暗号化を解除するため、安全性はやや下がることになる。とはいえ、Bluetoothの届く範囲に鍵となるスマートフォンがなければ暗号化は解除されないため、安全性が大きく損なわれることはないだろう。
ただし、こういった仕様となっているため、G-DRIVE ArmorLock SSDをPCなどに接続して、実際にデータにアクセスできるようになるまでにはある程度の時間が必要となる。今回、Windows 10をインストールした富士通製のノートPC「LIFEBOOK WU2/E3」と、Androidスマートフォン「Xperia 1 III」を利用し、自動暗号化解除の設定て試したところ、PCへの接続からアクセス可能となるまでに20~22秒ほどの時間がかかった。これを長いと考えるか短いと考えるかは、セキュリティへの考え方によって大きく変わりそうだが、筆者の個人的な印象では、もう少しスピーディに認証が行なえてほしいと感じる。
ところで、鍵として登録できるスマートフォンは、G-DRIVE ArmorLock SSD 1台に対して1台だけではない。専用アプリには、動作モードとして管理者権限のある「マネージャー」と一般利用者の「ユーザー」の2種類が用意され、マネージャーとして設定した専用アプリでは、他のスマートフォンの登録を許可する機能が利用できるようになっている。この機能を利用して他のスマートフォンを許可することで、1台のG-DRIVE ArmorLock SSDに対して複数台のスマートフォンを鍵として利用できるようになる。
例えば、複数人のチームで1台のG-DRIVE ArmorLock SSDを共有する場合、管理者ユーザーのスマートフォンにインストールした専用アプリをマネージャーに設定し、その他のメンバーのスマートフォンにインストールした専用アプリに対して許可を与えることで、全員のスマートフォンがG-DRIVE ArmorLock SSDの鍵となって暗号化を解除できるようになる。
この場合、マネージャーアプリで追加するスマートフォンに表示される登録用QRコードを読み取る必要があるが、この登録用QRコードはメールなどで送信できるようになっている。そのため、そのユーザーが遠隔地にいる場合でも問題なくアクセス許可が与えられる。同様に、アクセス許可の取り消しもマネージャー側で簡単に行なえ、リアルタイムで反映されるため、G-DRIVE ArmorLock SSDが遠隔地にある場合でも自在にアクセスコントロールが可能。
このほか、G-DRIVE ArmorLock SSDを読み取り専用に設定することも可能。こういった機能によって、例えば外部企業にデータを納品するためにG-DRIVE ArmorLock SSDにデータを保存して郵送する場合でも、優れた安全性が確保できる。
シーケンシャルリード、ライトとも1,000MB/s超を確認
では、簡単にベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回は、CrystalDiskMark 8.0.4」を利用してアクセス速度を計測した。テスト環境は以下にまとめたとおりで、マザーボード後方I/OパネルのUSB 3.2 Gen2準拠USB Type-Cポートに接続して接続しテストを行なった。
・テスト環境
マザーボード:ASRock Z590 Steel Legend WiFi 6E
CPU:Core i5-11400
メモリ:DDR4-3200 32GB
システム用ストレージ:Samsung SSD 950 PRO 256GB
OS:Windows 10 Pro
結果を見ると、シーケンシャルリードは公称の1,000MB/sを上回っている。シーケンシャルライトはわずかに公称を下回ったが、ほぼ誤差の範囲内で、こちらもほぼ1,000MB/sの速度が発揮されていると考えていいだろう。
G-DRIVE ArmorLock SSDは暗号化が常に有効となっているが、暗号化処理がハードウェアで行なわれることもあり、アクセス速度には全く影響がないことがこの結果からもよくわかる。これなら、暗号化が常に有効となっていることを全く気にせず利用できるはずだ。
ところで、ベンチマークテスト中に本体の温度をチェックしてみたが、手で触ってもほんのり温かいと感じる程度で、高速ポータブルSSDでよくある熱さは感じなかった。このあたりは、本体の大きさもあって内蔵SSDの熱が効率良く発散できている証拠だろう。
セキュリティ重視のポータブルSSDとして魅力あり
今回見てきたようにG-DRIVE ArmorLock SSDは、スマートフォンを鍵として利用する独特なセキュリティ機能を備えることで、優れたセキュリティ性を実現しつつ利便性も高められている。また、多少雑に扱ってもびくともしない優れた堅牢性や防水防塵性能も合わせ持つため、物理的な意味での安全性も優れている。加えて、性能面もトップクラスのアクセス速度を実現している点も、大きな魅力だ。
個人が利用するポータブルSSDとしては、セキュリティ性や堅牢性がややオーバースペックで、価格も高いという印象だ。ただ、流出しては困る大容量データを外部とやりとりする機会の多い企業やプロフェッショナルユーザーにとっては、非常に心強い仕様となるはずだ。そのため、なによりもセキュリティ性や安全性を重視したポータブルストレージを探している法人ユーザーやプロフェッショナルユーザーにお勧めしたい。