大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

NECの新開発拠点、玉川ソリューションセンターを見る
~エコの見える化でワークスタイルを革新



 NECは、神奈川県川崎市の玉川事業場内に新設した玉川ソリューションセンターの様子を報道関係者に公開した。

 地上12階、棟屋2階の玉川ソリューションセンターは、2008年11月に着工。隣接するNEC玉川ルネッサンスシティのサウスタワー、ノースタワーに続き、3つ目のエコロジー機能を活用した最新鋭ビルとして、2010年5月に竣工した。

 もともとこの地は、1936年に無線および真空管の事業部門が移転して以来、NECの通信事業の一大拠点となっており、古くからの工場施設が残る「くすのきエリア」も現存。2000年に竣工した地上26階建てのサウスタワー、2005年に竣工した地上31階のノースタワー、そして今回の玉川ソリューションセンターによる近代的な建物とは対照的な雰囲気を持っている。


 今回、公開した玉川ソリューションセンターは、基本ソフトウェア開発やサービス基盤技術の研究開発部門などが入居。3,000人を収容できる。

 建築面積は約4,400平方m、延床面積は約48,500平方m。高さは54m、一部塔屋を含むと64.5mとなっている。

 総工費140億円をかけ、設計・建設・運用はもとより、100年後の解体を視野に入れたエコロジービルとなっているのが特徴だ。

NEC企業ソリューション事業本部主席事業主幹・松村光隆氏

 そして、同センターは開発拠点というだけでなく、同社の最新オフィス向けソリューションである「C&Cオフィス」の実践の場となっていることも見逃せない。これらのICT機器、ソリューションを活用することで、ペーパーレス化、遠隔会議、モビリティ&セキュリティを実現。従来オフィス比で約半減以下となる年間3,132トンのCO2排出量の削減、ペーパーレス化による作業用資料や会議用資料の印刷費削減で0.5億円、遠隔会議の導入により旅費交通費で2.5億円の削減、オフィス内の移動のしやすさや人事異動などに伴うレイアウト変更やネットワーク工事のしやすさで各種工事費が0.3億円、省エネICT機器の導入により、電力費で0.3億円の削減を見込んでおり、「これらにより年間3~4億円のコスト削減効果がある」(NEC企業ソリューション事業本部主席事業主幹・松村光隆氏)という。

 こうした実践ノウハウや成果は、顧客やパートナーにも展開していくことになるという。

 NEC玉川ソリューションセンターの様子を写真で紹介しよう。

NEC玉川ソリューションセンター隣接する玉川ルネッサンスシティ
NEC玉川ソリューションセンターの入口部打ち合わせができるスペースも用意されている隣接する玉川ルネッサンスシティと行き来する場合にもカードで入退出を管理
エレベータルームに入るにはセキュリティゲートを通行する必要がある今回の取材に際して、見学者用セキュリティパスが用意された
エネルギー消費の見える化はNEC玉川ソリューションセンターの大きな特徴。大型ディスプレイで表示するどのフロアがもっとも消費電力の効率が良いかを表示。これが社員の意識を高めることにつながるビル全体のCO2排出量や電力使用量といった基本数値は毎月累計値を表示し、達成率も表示する
各フロアでも、それぞれのフロアにおけるエコの「見える化」が行なわれているNEC独自のエコパルPCでは、PC上で消費電力の見える化ができる
オフィスエリアに入る際にもセキュリティ管理している1フロアは約2,800平方m。1フロアあたり約500人が勤務し、1人あたりのスペースは5.6平方m。ファイルキャビネットの数が少ないことから実使用面積が広いという。部門サーバーもオフィス内には設置されていない
オフィスではUNIVERGE Liveを利用。同社最新ソリューションの実践の場となっている必要ファイルは電子化されている。紙の資料は複合機を使って電子化される
ビル内部の廊下にも大きな窓により採光を随所に取り入れており、これにより昼間電力の使用量を減らす会議室にも大きな窓を設置。窓の外には東海道新幹線や武蔵小杉の再開発地域も見える
遠隔会議システムの導入例。国内外の拠点と結んだ会議ができる会議室には電源や各種ケーブルなどが用意されている
外気冷房システム。低温外気を室内に取り込み、室内発熱負荷を処理。夏場も夜間の外気を取り込むことで、朝の室温低下にも役立たせている自動制御ブラインド。太陽の角度に応じて角度が自動的に可変する断熱性能、遮熱性能を向上するLow-eガラスを採用しており、空調エネルギーの削減を図る
日射遮断PCリブ。東西面の日射の影響を軽減させることができる日射遮断PCリブをビルの内側からみたところ
壁面緑化にも取り組んでいる。竣工間もないことからまだ緑の量は少ない屋上のヘリポートの横でも屋上緑化が行なわれている
オフィス内は昼光センサーで管理。窓際に行くほど照明を暗くできるといった調光が行なわれている中央の丸いのが昼光センサー。1フロアあたり67個が設置されており、67ブロックに分けて制御している
電気器具は1台で2台分の明るさを確保できる高効率反射板照明を採用しているオフィス内は導入コストの観点から蛍光管を使用しているが、ロビーではLEDを利用している(写真はロビーで利用しているLED)
トイレでは節水型の衛生陶器を採用。雨水や排水を洗浄水に利用しているオール電化厨房。調理の段階からCO2排出量の削減に貢献できるという
CO2削減のためには「マインド変革」がキーワードとする。ワークスタイルの革新にも挑む社内ではデュアル携帯電話を採用。社内では内線、外では携帯電話として利用1人で2台のディスプレイを利用している。作業用の紙を用意することなく、ペーパーレス化を支援する
ビルのセキュリティおよびエネルギーは1カ所で管理する。写真は玉川ルネッサンスシティのものだが、同様のものが玉川ソリューションセンターにも設置されているこちらがビル管理システム。空調、照明、電力監視、防災設備などを兼ね備える
玉川事業場でのエコへの取り組みを紹介する「ecoたま」のショールームを玉川ルネッサンスシティに設置しているごみ処理施設。各階から回収したごみや社員食堂から発生した生ゴミなどを堆肥化する