大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

NEC PC、40時間駆動ノートでモノづくりを“再起動”

レノボ・ジャパンおよびNECパーソナルコンピュータの檜山太郎社長

 レノボNECグループ(レノボ・ジャパンおよびNECパーソナルコンピュータ)は、「エンドトゥエンドのソリューションプロバイダー」を目指している。PCやタブレット、サーバーといったハードウェアによる事業拡大だけでなく、サービス/ソリューションによる事業拡大を加速することで事業成長を図る考えだ。

 その一方で、PC事業への投資にも余念がない。特に、法人向けPCの販売事業をNEC本体から移管したことで、レノボNECグループのPC事業は新たなフェーズへと入り、事業拡大に向けて、よりアクセルを踏み込める体制が整ったともいえる。

 2022年10月1日に社長に就任してから、4年目に入ったレノボ・ジャパンおよびNECパーソナルコンピュータ(以下NEC PC)の檜山太郎社長(以下敬称略)に、これまでの取り組みと、今後の方向性について聞いた。

過去3年のレノボNECグループの変化を振り返る

――社長就任から3年が経過し、4年目に突入しました。レノボNECグループにはどんな変化がありましたか。

檜山 振り返ると、レノボNECグループとして、しっかりと成長を遂げることができた3年間だったといえます。それぞれの製品を担当する組織がそれぞれに成長するとともに、お互いに伸ばし合うことが成果につながっています。役員会でも、伸ばすことができた要因をお互いに共有し、それを実践するといった動きが出ています。

 また、レノボNECグループが持つ幅広いポートフォリオを生かして、お互いに協力するといった取り組みも増えました。One Lenovoならではの組織力を使い、売上を高め、収益性を強化できています。

 もともとは、それぞれの製品を売る縦割りの専門集団であり、競合に対してどれだけ強いかということを訴求しがちでした。しかし、総合力で売るときには、1つ1つの製品の強みを訴求するのではなく、「お客様の課題はなにか」ということを起点にしなくてはなりませんから、これまでとはまったく異なるスキルが求められます。

 この3年間に渡って、顧客起点で提案するというスタイルに移行するための準備を行ない、そこに取り組んできました。たとえば、それぞれの顧客管理は、それぞれの組織ごとに行なっていたのですが、これを1つのテーブルの上に乗せて、レノボNECグループとしての総合力を生かすことで、どのお客様に対して、どんな提案ができ、どんなサービスを提供し、どんなお手伝いができるのかといった分析を初めて行ないました。One Lenovoという体制において、お客様起点での議論を行なうようになったわけです。

 また、営業担当者も、お客様に製品の説明をしっかりと行ない、売ることはできても、お客様のニーズを黙って聞くということが苦手でしたから(笑)、そこに関しても、かなりトレーニングを行ないました。課題を聞き、それを分析し、さまざまな製品やソリューションの組み合わせによって、解決策を提案することができるようになったことが、この3年間の大きな変化です。製品を活用したソリューションやサービスを提案し、それがお客様の成長に結びつくといった事例が出てきました。One Lenovoとしての提案事例は、グローバルでも日本が一番多くなっています。

――具体的にはどんな事例がありますか。

檜山 日揮ホールディングスでは、デジタルワークプレイスソリューションとDaaSの採用によって、国内拠点の約6,000台のPCを、わずか5カ月で刷新しました。また、島根銀行では、ThinkPadシリーズの導入によって働き方改革を進めるとともに、Lenovo TruScale IaaSを採用して、所有しないインフラ運用モデルへと移行し、資産管理の煩雑さから解放されるというメリットが享受できています。さらに新東京病院では、従来2拠点で運用していたサーバー環境をリプレースする際に、Lenovo TruScale IaaSを採用して、コストを抑えながら、HCIを導入しました。

 これらは、単にPCやサーバーを販売するというだけでなく、サービスを組み合わせて提案し、導入からサポートまでを一気通貫で支援しているものばかりです。このほかにも、One Lenovoによって、自動車業界や電機業界でも大規模な商談を獲得しています。

 こうした実績の積み重ねは、レノボNECグループの社内の雰囲気を大きく変えることにもつながっています。最初は、新たな形で商談を獲得したり、大型商談を獲得できたりすることが喜びだったのですが、今は、その責任の重さや緊張感がやりがいにつながっています。

 One Lenovoによって導入したシステムの多くは、金融、医療、製造分野などにおける、止めてはいけないミッションクリティカルなシステムばかりで、インフラを担う領域で使われています。導入したあとも、しっかりと伴走ができるかどうかが重要になっており、これまでのビジネスとの大きな違いはここにあります。

 レノボNECグループは、会社の文化、管理方法や運営方法、そして、営業スキルを変え、ソリューションプロバイダーとしての歩みを着実に踏み出しています。役員会も、お客様の課題解決会議のようになっていますよ(笑)。レノボNECグループが目指している姿は、PCメーカーではなく、「エンドトゥエンドのソリューションプロバイダー」であり、その実現に向けて、一歩一歩着実に歩みを進めています。その成果が生まれ始めた3年間だといえます。

――実際、PC以外のビジネス比率が上昇していますね。

檜山 グローバル全体で見ると、PC以外の売上比率が47%にまで拡大しています。日本でも非PC事業領域が、この3年間で大きく拡大しました。サービス事業を行なうSSG(Services and Solutions Group)が確実に成長し、収益性も高まり、デバイスだけの会社ではないという地盤が出来上がりつつあります。この体制を、3年間で作り上げたといえますが、むしろ3年もかかってしまったという意識のほうが強いですね。もっと早く土台を作り上げて、次のステップに進まなくてはならなかったという反省もあります。

 世界的なインフレや、不安定な国際情勢など、先行きの不透明感が広がるなか、事業の安定化を図るには、市場変化の影響を大きく受けるハードウェアのビジネスだけでなく、ストック型ビジネスを蓄積していく必要があります。

 また、ハードウェアビジネスについても考え方を変化させました。国内PC市場は、コマーシャル市場で年間800万台、コンシューマ市場で400万台の合計1,200万台の需要をベースにしながらも、そこに、WindowsのEOSや、GIGAスクールなどの特需が加わったり、その反動が生まれたりします。

 この3年間で変えたのは、ベースとなる部分はストック型ビジネスを含めて、しっかりとやりながら、特需は特需として対応する体制を敷いた点です。数量を追いかけるところと、利益を確保するところを切り分けてビジネスを捉える形に変えました。

――本社との関係性に変化はありますか。

檜山 従来は、それぞれの製品事業部ごとに本社とつながり、日本法人の社長はそれをサポートするという形でした。というのも、お客様との関係は、主に製品を売るという売買契約に基づくものでしたから、製品を中心としたつながりがあればよかったわけです。

 しかし、DaaSやLenovo TruScaleの提案では、お客様との関係が変化していますし、インフラを担うようなシステムでは、本社の技術的なサポートが必要になる場合もあります。その点では、本社との関係はより強固なものになったといえます。

 もっとも、これはハードウェアのつながりが弱くなったということではありません。PCなどのハードウェアは、重要な製品であることには変わりはありません。製品の性能そのものの議論ではなく、PCを使ってなにができるのかといった点での連携が増えています。

――この3年間で、PCのモノづくりには、なにか変化がありましたか。

檜山 レノボブランドのPCと、NECブランドのPCの部品の共通化がかなり進みました。以前は、部品購買システムがバラバラで、同じネジを使っていても、管理番号が異なっていたのですが、これを共通化し、効率化とコスト削減が進みました。今後は、基板や回路といったところも共通化していきたいと考えています。

 ただ、PCそのものの共通化は行ないません。レノボが作るPCと、NEC PCが作るPCは、コンセプトが大きく異なるというモノづくりの姿勢は堅持します。

 レノボのモノづくりは、グローバルからの声を聞き、最新の技術動向を捉えながら、モノづくりをしています。NEC PCは日本の市場ニーズを捉えたモノづくりをします。異なるコンセプトのPCを持つことで、お客様の課題やニーズにあわせて選択することができるようにしています。これは、レノボNECグループが、「エンドトゥエンドのソリューションプロバイダー」になるためには重要な要素となります。競争力を持ったハードウェアがあり、しかも、そこに選択肢があるということは、レノボNECグループの大きな強みです。

NECからNEC PCへの法人PC業務移管の影響は

――2025年4月から、NECブランドの法人PCの販売機能が、NECからNEC PCに移管しました。これによって、開発、生産、販売のすべてが、レノボ傘下に集約したわけですが、どんな変化が起きていますか。

檜山 外からは、販売機能が加わっただけというように見えるかもしれませんが、これは、調達、開発、生産、販売、マーケティング、サービスまでのすべてを変える出来事になります。従来の法人向けPCを、NECの法人部門が販売する仕組みでは、NECの要望に応じてモノづくりをすることが前提となっていました。つまり、NEC PCの開発部門の意思はあまり反映することができていませんでした。

――発注元の意向にあわせて納品するODMのような立場ですね(笑)。

檜山 調達、設計、生産、品質といったそれぞれの部門が、NECの要望にあわせて動くわけですから、NEC PCの強みがなかなか発揮できない状況にあったのは事実です。市場のニーズは常に変化します。しかし、それを直接、お客様から聞くことができませんでしたから、どうしても後手に回ってしまう。

 新たな体制では、NEC PCの営業が、お客様と直接話をした内容や、市場動向の変化を捉えながら、モノづくりに反映できるようになりましたし、開発部門が考えている将来のロードマップもお客様にお伝えすることができます。つまり、販売部門を移管したことで、開発体制にも大きな変化が生まれているのです。半年間動かしてみて、スピードが速くなったこと、モノづくりが変わったことに、大きな手応えを感じています。

――生産現場ではどんな変化がありますか。

檜山 現在、NEC PCの法人向けPCは、山形県米沢市の米沢事業場で生産しているのですが、あるとき、「あれっ」と思ったことがありました。

 生産ラインでトラブルが起きたとき、生産部門のトップが来て、解決策を検討していたのですが、そこに設計部門の社員の姿がなかったのです。同じ建屋の中に、設計部門がいるのだから、駆け付けて、一緒に解決を図るのが本来の姿であるのに、それができていない。そこで、「なぜ、設計部門がやってこないのか」と指摘したのです。すると、設計部門からは、かつては駆け付けていたのに、いつの間にかそれをしなくなっていたという声が挙がりました。

 私自身、東芝でPC事業に携わっていた経験がありますから、モノづくり現場の仕組みをよく理解しています。東芝も、かつては、設計部門と生産部門が同じ拠点の中にあり、生産現場でトラブルがあると、すぐに設計部門が駆け付けて解決を図っていたものです。それがNEC PCでは来なかったわけです。

 NEC PCの法人向けPCは、言われたものを作っているため、改良の意思が希薄になり、設計部門が現場に行き、話し合う必要がないという姿勢が自然と広がっていったことが、背景として推察されました。

 また、効率化を追求するあまり、分業化が進みすぎたという点も見逃せません。自分たちで意思を持って、法人向けPCを作るということは、設計部門と生産部門が、もっと情報共有をして、一緒に解決を図る必要があるということを、こうした出来事をきっかけに改めて徹底されました。販売機能が移管したことで、生産現場も変わろうとしています。

バッテリ駆動40時間を達成したVersaPro UltraLite タイプVY

VersaPro UltraLite タイプVY

――2025年7月に、法人向けPCとして、「VersaPro UltraLite タイプVY」を発表しました。重量は1kg未満で、アイドル時には世界最長となる約40.2時間のバッテリ駆動時間を実現しています。久しぶりに尖った法人向けPCが出てきましたね。

檜山 「VersaPro UltraLite タイプVY」は、NEC PCの新たな法人向けPCのモノづくりの実現に向けて、スタートボタンを押した製品だといえます。そして、NEC PCが目指すのは、「こっちの方向だ」ということも明確に示すことができました。

 先ほど、お話したように、販売機能の移管によって、私たちは、法人のお客様の声を直接聞くことができるようになりました。では、その声をもとに開発部門は何を考え、何を作らなくてはならないのか――。その回答を出すのは、開発部門だけでなく、商品企画、調達、生産、品質、営業、マーケティングが一緒になって考える必要があります。その体制になって初めて作り上げた法人向けPCが「VersaPro UltraLite タイプVY」です。

 10年以上前には、すべての部門が一緒になってモノづくりをしていました。かつてのモノづくり体制に戻ることができ、それによる成果と位置づけられる製品です。

――「VersaPro UltraLite タイプVY」では、「1日持たなければ、返品OKキャンペーン」を実施しています。これもバッテリ駆動時間に対する自信の表れですね。

檜山 もちろん自信があるからこそ、実現できたものです。PCの差異化は難しいと言われています。その厳しい市場において、NEC PCが勝ち続けられるためにはなにが必要なのか、そして、強みはなにか、という話を、社内でしたことがありました。社内から返ってきた答えは、「品質の高さ」「先進技術の採用」「受注から3日間で出荷できる」などでした。

 しかし、この強みがお客様に届いているのかというと、そうではない。つまり、強みが強みになっていないのです。これも、法人向けPCに関する発信がNECに集中し、私たち自身からの発信ができていなかったことが挙げられます。

 また、強みを生かした提案もできていませんでした。受注から3日間で出荷できるのであれば、販売代理店に対して、在庫量を減らす提案ができます。このように、自らの強みを改めて見直し、それを自ら発信し、提案していく活動を開始し、その延長線上で生まれたのが、今回の「1日持たなければ、返品OKキャンペーン」です。長時間のバッテリ駆動が強みであるならば、徹底的に訴求しようと。そして、持たなかったら、返品しても大丈夫というぐらいの意思でやろうという話になったのです。

 営業およびマーケティングが、このキャンペーンのプランを作ったわけですが、この中には、「1日持つ」と言い切った商品企画や設計部門も入り、キャンペーンを立案し、実施につなげました。自分たちが意思を持って、作っているからこそ、実現できるキャンペーンです。

――NECに販売機能が残ったままでは、実現しなかったキャンペーンですね。

檜山 もう1つ大切なのは、私がやってはどうかと提案したのではなく、社員から自発的に出てきた企画だということです。それも、これまでのNECブランドの法人向けPCにはなかった大きな変化だといえます。

レノボと積極的な連携も

――国内法人向けPC市場において、シェアを高めることを宣言しました。対外的にこうした姿勢を示したのも久しぶりですね。

檜山 NECの法人部門が重視していたのは収益性であり、過去10年以上、台数よりも、収益性が優先されるモノづくりとなっていました。結果として、国内法人向けPC市場におけるNECのシェアは減少傾向にありました。ただ、シェアが落ちると、当然、収益性が悪化します。これまでは「守り」でしたが、「攻め」に転じることを示す上で、シェアを獲得することは重要な指標であり、そこで、今回はシェア拡大に挑むことに言及しました。国内法人向けPC市場におけるNECブランドPCのシェアは、15%にまで引き上げていきます。

――NECブランドの個人向けPCについては、どんな一手を打ちますか。

檜山 これまで同様に、市場ニーズを聞きながら、調達、設計、生産、営業、品質、マーケティングといったそれぞれの部門が強く連携しながら、製品を開発し、投入していく姿勢に変わりはありません。大きな変化は、法人向けPCと個人向けPCの開発を同じ組織で推進する体制を敷いたことです。2025年4月から、この体制をスタートしています。一緒になることで、どんな強みを出せるのか――。その成果が発揮されるのは、2026年春モデル以降になりますので、それをぜひ楽しみにしていてください。

 一方で、NECブランドの個人向けPCでも、さまざまな挑戦を始めています。たとえば、レノボの技術をベースに開発したPCに、NECのブランドをつけて販売するといったことも開始しています。社内では、「コンバージェンス(統合)」と呼ぶモデルであり、価格面から訴求できるラインアップに位置づけています。

 さらに、ThinkPadの技術を、NECブランドのPCに活用するといった動きも始めています。また、Z世代向けに「LAVIE SOL」を発売しましたが、今年3月、4月のPC販売においては、これが最も売れたPCとなりました。こうした新たな市場の開拓や、SNSを活用した新たなマーケティングなどにも積極的に取り組んでいきます。

――レノボブランドのPCでは、どんな点に注力していきますか。

檜山 グローバルブランドの強みを生かしながら、日本のお客様のニーズに応えた提案を進めていきます。実は、ここでもレノボとNEC PCの連携が始まっています。たとえば、「VersaPro UltraLite タイプVY」で採用した長時間バッテリ駆動技術に対して、レノボ本社は強い関心を寄せています。

――Versa Proの長時間バッテリ駆動技術が、ThinkPadにも搭載されることになると?(笑)

檜山 それは分かりませんが(笑)、海外でも長時間バッテリ駆動に対する強いニーズがあるのならば、レノボは積極的に採用したいという意向を持っています。まだ、技術陣同士が話し合いを始めたところであり、具体的なモノづくりの話には至っていませんので、あまり先走らないでください(笑)。ただ、こうしたレノボとNEC PCの技術連携は、これからますます増えることになります。

――レノボNECグループの2025年下期となる、2025年度10月からは、どんなことに力を注ぎますか。

檜山 2025年10月14日に、Windows 10のEOSを迎えましたが、中小企業の一部では移行に遅れが見られているほか、個人においても、まだWindows 10を利用しているユーザーが一定数います。それぞれの市場に向けて、提案方法を変えながら、新たな環境への移行を促進したいと考えています。中小企業が購入しやすいPCの提案や、新たなPCに移行するメリットの訴求、乗り換えキャンペーンなども継続的に展開していきます。

 また、GIGAスクール構想第二期については、2026年度も続きますので、それに向けて積極的に活動をしていきます。第一期では、約20%のシェアを獲得し、トップシェアとなりましたが、第二期では、それを上回る25%以上のシェア獲得を目指しています。現時点では約3割のシェアを獲得していますから、この勢いを最後まで維持したいですね。

 一方、AIの広がりに伴い、市場が変化し、モノづくりも変化していきます。特に、AIエージェント同士がコミュニケーションすることにより、働き方は大きく変化します。それに伴い、膨大なデータが動き始め、そのための受け皿となる製品が必要になります。

 これは、1980年代から1990年代のメインフレームが中心となっていた時代に、データを活用する受け皿が必要となり、ダウンサイジングが進展し、PCが広がっていったのと同じような状況が生まれています。しかも、かつてはPCしか受け皿がなかったものが、いまはPCやスマホ、タブレット、ローカルサーバー、IoTデバイスなど多岐に渡ります。

 ただ、これらのすべての製品を、レノボグループは持っています。ポケットからクラウドまでをカバーしている強みをどう発揮するか――。ここに、PCの特需が終わったあとのレノボNECグループの成長戦略のポイントがあります。PCそのものの需要は元に戻りますが、特需がなくなった部分を、PC以外の製品や、サービス/ソリューションビジネスの成長でカバーしていくことになります。

レノボのこれから

――レノボグループでは、「Hybrid AI」を打ち出していますね。これはどんな考え方ですか。

檜山 AIは、あらゆる領域に溶け込んでいます。AIは、Personal AI、Enterprise AI、Public AIの3つに分類できますが、レノボでは、これらの3つのAIを、自由に行き来しながら、セキュアに利用できる環境を実現しており、これを「Hybrid AI」と呼んでいます。レノボのAIソリューションは、すべてHybrid AIをベースに展開しており、お客様のニーズに柔軟性を持って対応することができます。

 そして、レノボの最大の特徴はHybrid AIを実現する上で、必要とされるスマホからPC、サーバー、ワークステーション、ストレージ、データセンター、クラウドまでをカバーしている企業であるという点です。実際、AI PCなど、80以上の製品プラットフォームで、AI対応を図ることができています。

 レノボでは、さまざまなAIサービスを提供しており、企業のAI戦略をサポートしています。企業は、自らのニーズに最適化した環境を、迅速に構築でき、アジャイルな企業として動くことができるようになります。これがレノボのHybrid AI戦略であり、他社と大きく異なる点だといえます。

――サーバーでは、レノボ独自の液体冷却テクノロジー「Neptune」が第6世代へと進化し、これによって、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズのビジネスが大きく変わりそうな予感がします。海外では、すでに第6世代「Neptune」が業績に貢献していますね。

檜山 AIの活用が広がるとともに、データセンターの熱や電力消費が大きな課題となっています。それにあわせて、水冷技術への注目が集まっています。レノボが開発した第6世代の「Neptune」は、水道水(真水)を利用できるだけでなく、風呂のお湯と同じ40℃でも冷却が可能であるため、チラーは不要で、これまでの常識を大きく覆すことができます。

 また、CPUやGPUの冷却だけでなく、メモリやボード、電源周りの冷却も可能であり、冷却ファンは不要です。最大で40%の消費電力の削減が可能であり、レノボの優位性を発揮できる技術となります。「Neptune」が第6世代になったことで、日本の多くのお客様から関心を寄せていただいているところです。

――レノボNECグループは、中長期的にどんな姿に変わっていきますか。

檜山 いま訪れているAIの世界において、ユーザーがなにを求めているのかを的確に捉えていく必要があります。これまでは、ベンダー側から使い方を提案していましたが、AIによって、お客様の使い方が広がりますから、お客様がどんな使い方をするのかといったことを捉え、それに合わせた提案をしていかなくてはなりません。

 近い将来には、AIの普及によって、求められるコンピューティングの姿が変わり、PCの形状も変わっていく可能性があります。もしかしたら、AIが普及すると、PCのキーボードは不要になるかもしれません。カメラとマイク、あるいはメガネがあれば済んでしまうかもしれません。ただ、レノボグループは、こうした将来の変化にも柔軟に対応できる製品群がありますし、技術に対して積極的な投資も進めています。

 この強みを生かしながら、日本の市場に対して、何ができるのか、どんな貢献ができるのかを考えていく必要があります。今優先しているのは、お客様の戦略や将来像を理解しながら、サービス/ソリューションを提供していくことです。お客様とパートナーシップをより強固にしていくことが重要であり、まずは、そこに力を注いでいきます。