eスポーツチーム代表者に聞く
「競技の頂点と産業の成長、その両輪を回す」FENNEL代表高島氏インタビュー
2025年11月26日 06:36
VALORANTでの2度の国内優勝、Pokémon UNITE世界一など、日本のeスポーツシーンで際立つ存在、FENNEL。また、競技チームの枠を超え、大会/イベント運営事業やアパレル、イベント運営、学生支援「Univers」など多層的な事業を展開する。その中核を担う、株式会社Fennel代表取締役社長/CEOの高島稜氏(以下、敬称略)に話を伺ってきた。
--:FENNELの発足の経緯を教えてください。
高島:FENNELは、不動産投資業をしていた遠藤と、インフルエンサーとして活動していた仏(堀田マキシム)の2人が設立しました。私は、仏が配信でゲームのコーチング企画をやっているのを見てDMを送ったのが、彼らと知り合ったきっかけです。当時、私はまだ学生でしたが、コーチングサービスを手伝うことになりました。その後、FENNELが発足される時、2人から事業を手伝ってくれないかと打診され、参加することになりました。
私はFENNELの代表になるまで、このチームに6年間従事していました。チームとして最初の2年間はビジネスらしいことをほとんどしていなかったんですが、遠藤から2年ほどたったところで「事業として展開していこう」という話が出ました。このタイミングでCOOに就任しました。同時に遠藤、仏からFENNELのさまざまな権限を委譲され、その頃から実質的には私が運営を任されていました。ファイナンス系以外は全部見ていたと思います。
最初の2年間は事業というよりコミュニティに近いものでした。ただ、遠藤から“チームを事業化する”という提案が出て、そこから体制を整えていきました。
2023年にFENNELがグローバル展開も視野に入れ始め、しっかりとした組織作りをすることになったんです。実権はすでに私が持っていたのですが、役職だけがついてきていないアンバランスな状態だったので、このタイミングで代表に就任することになりました。
それまで代表を務めていた仏と遠藤はそれでFENNELから脱退や独立をしたわけではなく、チームに残っています。いなくなるどころか仏は今もFENNELに完全コミットしています。基本的にFENNELのオフィスに毎日いますし、FENNELへのコミット量は増えているくらいです。私と仏、遠藤がそれぞれの得意不得意を見極め、適材適所で役割を担っている形です。
代表になる前に遠藤と仏という2人のリーダーのそばにいられたことは、私にとってすごく有意義なことでした。今の自分があるのは、遠藤、仏はもちろん、多くのスタートアップの偉大な先輩に恵まれた結果ですね。基本的にすべてを任されつつも、困った時には相談に乗ってもらえました。
--:FENNELが事業として活動するにあたり、チームの運営方針になにか変化はありましたか?
高島:チーム作りのみにフォーカスしたとき、その目的は一貫して"勝利"を目指すことです。eスポーツなので、勝つことは存在理由そのものだと思っています。実際に勝利に対して貪欲で、選手やコーチの獲得に関しても積極的に動いています。勝てる人材をそろえることに妥協はありません。
重要なのは選手同士の相性、チームとして形成されるカルチャー、それを同コーチがけん引していくのかを見極めることです。さらに、それは単年で成果を終わらせるのか、複数年を視野に入れて積み上げるのか。その時間軸の設計も含めて考えています。選手やコーチの獲得は、縁とタイミングの両方が噛み合ったときに初めて機能するものです。
チーム全体としては、部門を拡大していきたいと思っています。ようやく、それを実現できるだけの体力がついてきました。
一方で、競技を支える裏側の体勢はまだまだ十分ではありません。目標や基準を高くし、選手やコーチにとって最適な環境を整え、戦略的に勝てる状態を設計できているか。そこが常に問われています。その意味では、選手以上に重要なのはコーチやマネージャーだと考えています。
チームが有機的に機能するためには、現場を支える人材が戦略と現場を結び、全体を統率する必要があります。FENNELにおいて、勝利とは才能の集積ではなく、構造と環境を最適化し続けることによって生まれる結果なのです。
eスポーツチームの多くは、ストリーマーによる発信力や収益が組織の支えになっている現状があります。それ自体はチームの価値を広げる重要な要素だと思っています。ただ、FENNELとしては"ストリーマー頼みの構造"に偏らないようにしたいと考えています。チームが競技成果で評価され、ストリーマーがその環境を通じてさらにステップアップしていく。そうした相互に価値を高め合う関係を目指しています。
--:FENNELは競技の枠を越えて、アパレルや音楽などカルチャー領域にも踏み込んでいます。こうした多面的な展開には、どんな狙いがあるのでしょうか。
高島:FENNELを単なるeスポーツチームではなく、カルチャーブランドとして確立したいという思いがあります。アパレルや音楽はその象徴ですね。事務所には音楽スタジオもあり、ゲーマーだけでなくアーティストやクリエイターも活動しています。異なる表現領域の人たちが交わることで、チームとしての世界観が広がっていく。そうした"文化の交差点"のような存在を目指しています。
アパレルに関しては、自分たちにしかできないものを出したいと思っています。単にグッズを作るのではなく、ストリートやファッションの文脈で見ても格好いいと評価されるラインを提示することを意識しています。選手たちにも、FENNELというブランドが常に上質で挑戦的であるという意識を持ってもらいたいですね。
そして、ブランドを成長させるうえで大事なのは、「成し遂げること」よりも「変化し続けられること」だと思っています。新しい表現に挑み、最初は違和感を持たれるようなことでも、やがてそれが"FENNELらしさ"として浸透していく。ただ、その挑戦が評価される頃には、もう次の方向へ進んでいる。常に変化を先取りし、進化を止めない組織でありたいんです。
FENNELの強みは、そうした変化を実行できるだけの熱量と組織力にあります。メンバー全員が同じ目標に向かい、一枚岩で動ける。その推進力こそがブランドを支えています。カルチャーと競技の両輪を動かすチームとして、FENNELはまだ進化の途中にあると思っています。
--:ここまで順調に成長してきたように見えますが、チームが現在の形に至るまでに直面した課題もあったのではないでしょうか。
高島:もちろん、課題は多くありました。FENNELはモバイルタイトルの荒野行動からスタートしたチームで、当時のeスポーツ界の主流だったPCタイトルとは異なる文脈からの出発でした。
競技シーンの構造や各タイトルの文化を理解するところから始めました。今振り返れば、そうした"異質なスタート"がFENNELらしさの原点だったと思います。
既存の文脈をそのまま踏襲するのではなく、自分たちで仕組みを作り、組織を拡張していく。このプロセスを通じて「チームを運営する」という行為を自分たちなりに再定義できました。知らなかったことが強みになったという感覚に近いですね。
ほかだと、人材面の課題は今も続いています。チームを支えるマネージャーやクリエイターなど、競技以外の領域で優秀な人材をどう増やしていくか。そこはFENNELとして常に意識しているテーマです。
--:今後の展望について教えてください。
高島:まず競技面では、引き続き複数タイトルへの挑戦を続けていきます。「League of Legends」や「Apex Legends」など、これまでに培ってきたノウハウを生かせるタイトルへの再参入も検討しています。特定のマーケットやファン層の規模ではなく、世界の舞台でトロフィーを掲げられるかどうかを基準に判断していきたいと考えています。目指すのは、どのタイトルでも「日本から世界一を狙えるチーム」であることです。
人材については"縁とタイミング"がすべてだと思っています。FENNELでは、タイトルごとに最適な選手、コーチ、マネージャーがそろった時に初めて参入を決断します。短期的な拡大よりも、勝つための条件を満たしてから動くという考え方を徹底しています。
もう1つの軸は、産業全体の成長をどう後押しするかです。FENNELはチーム単体の利益追求にとどまらず、eスポーツ市場全体の発展をリードする存在でありたいと思っています。
たとえば、現在Apex Legends部門は保有していませんが、北海道で開催されるALGSなど、自チームが参加しない⼤会であっても運営⾯で関与し、少しでも業界全体の価値を高める貢献ができないかを常に考えています。
eスポーツを産業として捉えると、最大の課題は財務面にあります。初期投資の大きさが参入のハードルとなっており、スタートアップが生まれにくいです。その課題を解決する1つの方向性として、代理店事業や投資ファンドのような仕組みを整える選択肢も考えられます。業界全体の資金循環を促し、挑戦を生み出すエコシステムを作るることが、長期的にはeスポーツの発展につながると考えています。
市場の流動性を高め、挑戦が循環する仕組みをつくることで、日本のeスポーツ市場を1兆円規模へと押し上げたいと考えています。
そして、最終的な目標は、FENNELを世界一のeスポーツブランドにすることです。そのために、競技・経営・文化のすべてを結びつけ、国内外のeスポーツの成長に対して責任を持つチームでありたいと思っています。「勝つこと」と「産業を前に進めること」。この2つを両立させることが、私たちの次の挑戦です。
--:ありがとうございました。















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