いま、ここにあるエッジAI

マスク装着のままでも顔認証ができるサイバーリンクのFaceMe技術

サイバーリンクのFaceMe。さまざまなアプリケーションにマシンラーニングベースのAIを利用した顔認証エンジンを提供するSDK(写真提供:サイバーリンク)

 連載第2回目は、さまざまなアプリケーションにマシンラーニングベースのAIを利用した顔認証エンジンを提供するサイバーリンクのSDK「FaceMe」を紹介する。

顔認証+プラスαの機能を簡単にWindowsやAndroidなどに実装できる「FaceMe」

顔認証+αの機能を提供するFaceMe

 サイバーリンクが販売している「FaceMe」は、一言で言えばディープラーニングを利用した画像認識エンジンのSDK(ソフトウェア開発キット)だ。同社の「PowerDVD」のような一般消費者向けのソフトウェアが、パッケージとして提供されているのに対して、FaceMeは組み込み向けSDKとして、PCや家電などに顔認証機能を組み込みたい企業向けに提供されている。

 サイバーリンク株式会社ビジネスマネジメントグループディレクターの馬場規隆氏によれば「FaceMeでは特徴点を抽出しての顔検出や属性情報検出などのAIモデルを持っており、それをお客様に提供しています。それにより、お客様のシステムに顔認証を利用したカメラセキュリティ監視、勤怠管理、サイネージ、スマートロック、アクセスコントロール、Webログインなどのアプリケーションを実現することが可能になる」とのとおりで、顔認証を利用して幅広い用途を実現することが特徴となっている。

 馬場氏によればFaceMeを利用するメリットは、Windowsのログオンなどの単機能だけでなく、複数の機能を取り込めることにあるという。

 「カメラを意識しない歩行中での顔認証や、深度情報・人間らしさを判定する生体認証にも対応。また昨今のCOVID-19状況によって急増した、マスクの検出、マスクをした状態での顔認証、サーマルカメラと連携した顔認証+マスク検出+体温計測機能なども提供している」とのことで、検温と顔認証を組み合わせ、体温が既定より高い人を特定したりという使い方もFaceMeを利用すると実現できるという。

スマートフォンやPCの顔認証ではマスクありだと認証できないほうが多いなか、FaceMeを利用すると、マスクありでも顔認証できる

 なお、FaceMeは、Windows、Linux、Android、iOSに対応している。

OpenVINOを利用し、CPUとVPU、CPU+VPUに最適化を行なっているFaceMe

 FaceMeのようなSDKを利用しない場合には、Googleが提供するTensorFlowなどのディープラーニングのフレームワークを利用、AIのモデルを構築、学習データを用意して学習させ、その上で、Intelが提供する「OpenVINO toolkit」(以下OpenVINO)のようなツールキットを利用して、ハードウェアの最適化を行なう必要があり、開発工数がかかる。

 サイバーリンクのFaceMeではそうした手間がかからないように、それら全てをパッケージにして提供する。このため、ソフトウェア開発者はユーザーインターフェイスなど独自部分を作れば、あとはFaceMeのエンジンを利用して顔認証を行なうことができる。このため、ハードウェアへの最適化はサイバーリンク側で行なった状態で顧客に提供される。Intel CPUや、VPU(Vision Processing Unit)を利用している場合の最適化にはOpenVINOが利用されている。

 IntelがMovidiusを買収して得たVPUは1W以下という非常に低消費電力で、高い画像認識機能を実現するプロセッサとして組み込み向けの環境などで利用されている。最新VPUとなるMyriad Xは専用のNeural Compute Engineと16個の高性能SHAVEコアを持ち、画像認識などの処理を高効率に行なうことが可能になっている。

AIを利用することで赤外線カメラを利用していなくても画像によるなりすましなども検出することができる

 サイバーリンク馬場氏によれば、VPUへの最適化にはOpenVINOを利用しており、顔検出、顔認識などで使用する画像検出などのAI推論をVPU側で処理を行ない、画像処理やデータベースのマッチングはCPUで行なっている。顔認証の場合は同時に複数検出を行なう事が多いため、マルチスレッド化で複数のVPUをパラレルで使用する事も可能になっていという。

 VPUがなくCPUだけしかない環境でもOpenVINOを利用した最適化が行なわれ、TensorFlowベースのCNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)を、Intel DLAS(Deep Learning Acceleration Suite)を活用して最適化し、CPUでの処理を高速化している。

 このように、さまざまな最適化を行なうことで、「世界最高水準の顔認証エンジン」(馬場氏)という顔認証エンジンとしては、業界で高い評価を受けるAI顔認証エンジンに仕上がっているのだ。

[制作協力:インテル]