山田祥平のRe:config.sys

Webと話せるコンパクトカメラ

 日常的に身につけて持ち歩いているコンパクトカメラを買い替えた。スマートフォンのカメラ機能が充実したことで、コンパクトカメラの市場は不調のようだが、やはり取材時のことなどを考えると、ある程度の機能を持ったカメラ専用機が必要だと思っている。

画素数を落として暗所に強く

 新しく購入したのはパナソニックの「LUMIX TZ70」だ。画素数は1,210万で最新のスマートフォンカメラにも及ばない。ただ、光学30倍ズームで、35mm換算で24~720mmと必要以上にズーム倍率が高い。

 ただ、レンズの明るさはF3.3-6.4とそれほどでもない。それでもこのカメラの強みは暗所撮影だ。従来機の1/2.3型MOSセンサーの実力は、1,890万画素だったが、1画素を1.5倍に拡大して暗所性能を確保したという。その結果、画素数は1,210万に減少したが、そのことが高感度と高速画像処理に貢献しているそうだ。取材に使うカメラとしては1,000万画素あれば十分すぎるほどなので、これでちっとも不便はない。それよりも、画素数を落とす判断をした商品企画の英断に敬意を表したい。

 最高ISO感度は6400で、それが非常用としてではなくISO AUTOの常用範囲に設定できる。例えばぼくは、最低シャッター速度を1/60秒に設定し、絞りを最大に開いても、シャッター速度がそれ以下に長くなるようならISOを上げていく設定にしてある。それによって、比較的暗いところでも被写体ブレをすることが少なくなった。静物を撮るのでもない限り、1/30秒では人物等が止まらないので写真にならないことを考えると、画質は多少犠牲になっても、ちゃんと写っていた方がいいという判断だ。実際の現場では、ISO 6400での撮影が乱発されているが、それでも絵に破綻はないと評価している。どんなに画質がよくても使えない写真は写っていないのと同じだからだ。

 それまで使っていたカメラは、ISOこそ6400まで対応していたが、非常用の扱いで、ISO AUTOでは1600までしか設定できず、それ以上の高いISOでの撮影は手動で高ISOを設定する必要があった。また、シャッター速度の下限を決めることができなかったので、撮影のたびにメニューで設定するのが面倒で、そのままオートで撮影してしまい、被写体ブレを連発していた。

 1600と6400では2段分だ。絞りが同じなら、ISO 1600時に1/8秒のとき、6400なら1/30秒でシャッターが切れる。これは大きい。おかげで何も考えずにオートに任せてレリーズするだけでよくなった。それでもアンダーになるなら後で補正する。それでも被写体ブレをするよりはましだと思う。

 装備としてはEVFがついているのも重宝している。しかも視度調整つきでメガネをかけて覗くのにも不便はない。画質は覗くと萎える程度のもので、サイズといいお世辞にもよいとは言えないものだが、これまた炎天下などで、背面の液晶やスマートフォンの画面では手も足もでないほどまぶしい現場でのフレーミングも、EVFを覗けばしっかり確認できる。ここには各種の機能設定情報も表示されるし、メニューによる設定画面なども背面の液晶とまったく同じものが表示され、覗いたままで操作ができるので、間違いようがない。

秀逸なWi-Fi関連機能

 以前、今後は、GPSの付いていないカメラは買わないという宣言をしたのだが、残念ながらこのカメラにはGPSは装備されていない。Wi-Fiでスマートフォン用の専用アプリと接続し、アプリが記録していた位置情報と、タイムスタンプを照合しながら撮影済みの写真に位置情報を埋め込むことはできるが、内蔵GPSが自動的に位置情報を埋め込むののに比べて、操作があまりにも煩雑だ。最後の最後までGPSがないことで購入を迷ったが、この機能があるからと多少は期待したものの、実際に試してみてちょっとガッカリしているところだ。

 その一方で、Wi-Fiの機能はかなり気に入っている。Wi-Fi接続機能を持つカメラは少なくないが、モバイルルータ経由で同LAN内にいるPCに接続し、Windowsのファイル共有機能を使って、指定した共有フォルダに直接書き込む機能があるのはうれしい。これなら、PCを稼働させながら、カメラをレリーズするたびに、写真がPCに転送されていく。しかも、転送時に写真を自動的にリサイズする機能もあるので、Twitterなどに書き込むにはうってつけだ。

 さらに、カメラに無償で利用できるパナソニックの専用サイトLUMIX CLUB PicMateのIDを登録しておけば、そのアルバムに写真を自動アップロードしたり、さらにサイト側でGoogle+の連携認証をしておけば、そちらに自動アップロードなど、Webサービスと連携することもできる。カメラがサービスに接続できるということで、こんなに可用性が高まるというのはうれしい。せっかくの好機能なのだから、もっとアピールしてもいいし、OneDriveなど、ほかのサービスもどんどん追加してほしいものだ。

 あまり期待をしていなかったのだが、実際に使ってみるとかなりいい。スマートフォン並みにWebサービスと繋がることができるカメラを入手できたのはうれしい。このあたり、Webを見ても、取扱説明書を読んでも、店頭で触ってみても、なかなか使い勝手が分からなかっただけに、これまたうれしい誤算だ。この機能はもっと具体的にきちんとアピールしてもいいと思う。パナソニックと言えば、CM1ばかりが話題になっているが、個人的にはこれはこれでありだと思う。

 コンパクトカメラのWi-Fi機能はルーターやスマートフォンのテザリングアクセスポイントを経由できず、カメラ自身がアクセスポイントになって、そこにクライアントを直結しなければならないものがほとんどだった。当然、その場合、クライアントは既存のインターネット接続を切断しなければならず、何かと不便だ。

 だが、このカメラはインターネットに直接繋がることができる。ただ、モバイル回線などでの接続の場合、カメラからインターネット経由でWebサービスへ、それを参照するためにWebサービスからPCへ、それをSNS投稿するためにOCからSNSへと、同じ画像が何度も行ったり来たりすることになる。接続回線のデータ転送容量や速度に余裕があればいいが、そうでない場合は、PCへの直接保存とうまく使い分けた方がよさそうだ。

 接続にはある程度の時間とメニュー操作が必要で、それを電源を入れるたびに再設定する必要がある。お気に入り設定機能によってゼロからの設定は必要ないが、ワンタッチとはいかない。だから、この不便を回避するには、カメラの電源を入れっぱなしで、ずっと接続したままにしておくことになってしまい、当然、バッテリに与えるインパクトは大きい。カメラ電源の再投入時に、自動的にこの機能をオンにするようなオプションがあれば、もっと利便性は高まったのではないかと思う。

汎用性は今ひとつ

 カメラの持ち歩きは、ベルトにつけたウェストポーチに入れているのだが、これまでのカメラの多くは、ポーチの中で外部からの圧力などで不用意にボタンが押されて、勝手に電源が入ってしまい、省電力機能でも電源が落ちていない状態が続いたりして、撮影に使おうと思ったらバッテリが空になっているということが少なくなかった。直近まで使っていたニコンの「COOLPIX S9700」は特にそういうことが多かったのだが、このカメラではそういうことがまだ一度もない。また、モード切替ダイヤルが知らない間に回転してしまっていることも経験していない。きっと、ダイヤルやボタンの出っ張りと位置、そしてポーチとの相性の問題もあるのだろうけれど、これもうれしい誤算だ。

 不便な点もある。USBによる接続と充電のためにケーブルが添付されているが、端子が標準的なMicro USBではない。AV OUTと兼用するためにこうなっているようなのだが、充電には必ずこのケーブルが必要だ。やはり百均でも入手できるような汎用的なケーブルが使えるのが望ましい。それに、他のデバイスとも共用できる。

 数本の予備ケーブルを購入しようかどうか迷ったが、結局、予備のバッテリと充電器を別途入手した。撮影時にバッテリが空になって、予備のバッテリに交換した場合も、宿に戻ったところでカメラと充電器で2つのバッテリを同時に充電しながら就寝できる。もし、本体だけでしか充電できない場合は、満充電になったころを見計らって起き出し、バッテリを交換しなければならない。これは苦痛だ。

 そうは言っても、うまく使えば、バッテリの保ちはかなり優秀で、満充電で出かければ、出先で予備バッテリが必要になったことは今のところ一度もない。そんなこともあり、ケーブルをいっしょに持ち歩くことはやめてしまった。ただ、Wi-Fi機能をフル活用し始めたらどうかというのは、もう少し使ってみないと分からない。

 さらに、ズームが思ったところでピタッと止まらないのも困ったものだ。例えば、セミナーなどでステージに投影されるスライドを写したいような場合、スライドがフレーム一杯になるようにズーミングするのだが、必ず行き過ぎて、元に戻さなければならない。人物を撮影する際も同様にフレーミングに時間がかかってしまう。高倍率ズームの悩みどころなんだろう。また、起動と終了にかかる時間も、もう少し短いとよかった。

 かなり結果オーライの買い物だったとは思うが、それでも今のところは満足している。さて、次は腕を磨く番だ。

(山田 祥平)