山田祥平のRe:config.sys

クラウドのオンとオフ




 クラウドサービスの多くは、いつでもどこでもどんなデバイスでも、クラウドに対してオンラインであることが前提となっている。だからこそ、ぼくらは、あらゆる方法を駆使して常にオンラインであろうとしている。でも、それができないときもある。

●激減するオフラインタイム

 ぼくが出かけるときに、ほぼ常時持ち歩いているインターネットに接続可能なデバイスとしては、ノートPC 1台とスマートフォン2台といったところだろうか。それぞれのデバイスをインターネットに接続できない時間は短くなる一方で、今や飛行機の搭乗中と地下鉄トンネル間くらいだ。

 飛行機も、たとえばアメリカ国内線などでは、離着陸時を除きGogoのようなサービスが利用できるようになっている。何せ地上の基地局が1万m上空を飛行中の航空機と通信することで全米の国内線をほぼ網羅しているというから驚く。まさに雲をつかむような話だ。

 また、日本の地下鉄でも、今年はかなりの区間がトンネル内でも接続が可能になりそうでうれしい限りだ。こうした進展もあり、死角は激減だ。おそらく寝ている時間を含めて、24時間のうち95%くらいは、なんらかの形でインターネットにつながっているんじゃないだろうか。

 その環境に慣れるとオフラインがやけに不安になる。なにせ、インターネットにつながっていない限りは、Twitterでつぶやくことさえできない。大したつぶやきがあるわけではないが、@syoheiのすべてはオンラインであるときに書き込んだものだ。理想をいえば、適当なタイミングでつぶやけば、インターネットからオフラインであろうがキャッシュしておいてくれて、オンラインになった時点でタイムスタンプつきで勝手にポストしてくれるのがいいのだが、残念ながら常用しているアプリには、どれにもそんな気の利いた機能はない。

●SkyDriveをオフラインで使う

 Microsoftのクラウドサービス、Windows LiveのSkyDriveが飛躍的に使いやすくなったので、最近頻繁に利用するようになった。

 SkyDriveは、基本的にデータファイルをクラウド上に置き、それをクラウドにおいたままで読み書きするサービスだ。いわゆるOfficeドキュメントであれば、ブラウザやOfficeアプリを使って編集ができる。つまり、オンラインであることが前提になっているサービスではある。

 ただ、オフライン時にも、ファイルの一覧こそ見ることはできないが、一度でもローカルのOfficeアプリでそのファイルを開いたことがあれば、各アプリのファイルメニューにある「最近使用した××」で、そのファイルを見つけてキャッシュを読み込んで編集を加えることができる。そして、加えた編集をキャッシュに対して上書き保存しておけば、オンラインになった時点でクラウド上のオリジナルファイルに編集内容が反映される。

 Officeには、スターメニュー内のOfficeツールとして「アップロードセンター」と呼ばれるユーティリティが用意されていて、オフライン時に編集されたファイルのアップロードについて管理をすることができるし、ここから過去に開いて編集したことのあるファイルの一覧を確認して開くこともできる。

 「最近使用した××」と「アップロードセンター」をうまく使えば、オンラインであってもオフラインであっても多くの作業に支障はない。できないことは新規にOfficeドキュメントを作ることと、過去に開いたことのないファイルを開くことくらいだ。

●Live Meshを介してフォルダを同期

 ただ、それでは困ることもあるので、何か方法はないものかと考えてみた。ぼく自身のポリシーとして、情報の入力に際しては、とにかく、今、入れているそれが唯一のものである時間を限りなく短くすることを目指している。

 例えば、インタビューや記者会見、ミーティングなどの場では、ノートPCを開いてメモをとるのだが、当然、そのメモはあとで原稿にするなり、覚え書きとしてあとで参照することになる。ところが、メモをとるために使ったノートPCで、事後の作業をするとは限らない。ノートPCを抱えて自宅に戻り、机に向かってデスクトップPCで作業することも多い。出張中での作業でも、外出時に持ち歩くPCと、ホテルの部屋で作業するPCは異なる場合が多い。こうした環境では、とったメモが異なる環境から参照できないと困るわけだ。

 そこでうまく使いたいのがSkyDriveの同期フォルダだ。SkyDriveは合計25GBまでのファイルを無償で預かってくれるサービスだが、それとは別に5GBのストレージを調達してくれていて、それを各デバイス上の任意のフォルダと同期することができるのだ。同期には、Windows Liveサービスで提供されているWindows Live Meshを使う。

 25GBのSkyDrive上に置いたファイルは、クラウド上のファイルがメインで、ローカルでの編集はキャッシュに対するものだが、同期ストレージは、いわゆるクローンであり、同期を設定したそれぞれのデバイスにファイルの実体が存在する。

 Windowsから見た場合は、一般的なフォルダなので、新規にファイルを作ることもできるし、フォルダ内のファイルを削除もできるし、ファイルのコピーもできる。オンライン時はもちろん、オフライン時もだ。もしオフラインの場合には、オンラインになったときに、そのフォルダ内に加えられた変更がクラウド上の同期フォルダと同期され、他のデバイスに反映されることになる。

 これまでは、外出先でメモをとる場合、自宅PCのフォルダを、Windowsの機能を使ってオフラインファイルとして指定しておき、そのフォルダ内にファイルを作って書き込んでいた。だが、この方法だと、ファイルの内容が同期するのは、自宅に戻って同じLAN内に接続したときか、VPNなどを使ってLANへの接続をしたときのみとなる。

 だが、SkyDriveの同期フォルダなら、通常のインターネット接続があればいいので、ノートPCをインターネット接続したままで、インタビューやミーティング中に、テキストエディタを使ってメモをとり、途中、適当なタイミングで保存するだけで、その内容がクラウド側にも反映される。つまり、インタビューや打ち合わせが終わってノートPCを閉じたところで、ファイルの保存さえしてあれば、手元のノートPCとクラウド上との2カ所に、そのときのメモ内容が存在することになる。もし、自宅でデスクトップPCが稼働したままになっていれば、そちらにも変更内容が反映される。万が一、帰途に携行しているノートPCを紛失、あるいは破壊するようなことがあっても、メモの内容が失われることはない。

 通常のSkyDriveを使う場合も、OneNoteを使えば似たような環境は得られるし、OneNoteの場合は、データを保存するという概念がないので、保存し忘れているということも起こりえない。

 ただ、個人的にはメモは使い慣れたテキストエディタで書き込みたいので、ケースバイケースで使い分けている。現時点でのSkyDriveは、テキストファイルに対して、あまり使いやすい仕様であるとはいえないのが残念だ。Wordドキュメントをコンテナにして、その中にテキストファイルを埋め込むような荒技もあるのだが、あまりスマートとはいえない。そんなわけで、しばらくは、メモに関してはSkyDriveの同期フォルダのお世話になろうと思っている。データの種類を問わないという点でも同期フォルダは重宝している。

●オンでもオフでも自分のファイルを扱いたい

 クラウドがトレンドで、クラウドがなければ何もできないといってもいい時代ではあるが、PCでもスマートフォンでも、クラウドから切り離されたときに、自分のデータリソースにたどりつけないのでは不便きわまりない。ちなみにSkyDriveは、Android用のクライアントアプリはないので、スマートフォンからはブラウザ経由でアクセスするしかない。当然、オンライン時のみの利用となる。

 一方、iOS用のクライアントアプリやOneNoteはオフラインでも使えるのがうらやましい。iPadで使うSkyDriveは、ある意味でWindows上で使うよりも便利に感じることもある。でも、これらのアプリで便利に使えるのは、通常のSkyDriveのみであり、同期フォルダに関しては、AndroidからもiOSからも、ブラウザを使ってPC版サイトをのぞくしかない。まあ、検索もできないし、その中身を一括ダウンロードということもできないので、あくまでも同期媒介用の一時フォルダとして割り切って考えておいた方がよさそうだ。

 そんなフォルダでも、Windowsのフォルダと内容が同期し、ユーザー体験としては、あくまでもローカルフォルダ上のそれであるように見えているからこそ、すぐれた使い勝手が確保できているというわけだ。クラウドに置いてしまったら最後、クライアントアプリやローカルOSからはごく限られたことしかできないというのでは不便だ。

 こういうところを見ると、クラウドサービスとOSの連携の点で、Microsoftの強みを感じることができる。この手のサービスとしては、DropboxやEvernoteが有名で、スマートフォンでの使い勝手も優れているのだが、きっと、Windows 8では、もっと便利になるのだろうと期待している。願わくば、5GBといわず、必要なだけの容量を提供するサービスに成長していってほしいと思う。なお、Windows Live Meshでは、同期フォルダを介さずにピア・ツー・ピアで同期する方法も提供されている。これなら5GBにしばられず自由度も高くなる。用途に応じて使い分けたい。