山田祥平のRe:config.sys

カバンの中の寝た子を起こす




 パナソニックから、第4世代となる新しいLet'snoteとして、SX/NXが発表された。軽量、長時間、頑丈、高性能というキーワードはそのままに、本体の厚みを2/3までダイエットということで、発表会場で実機を見たあとは、カバンの中のLet'snoteがやけに厚ぼったく感じられてしまうほどに魅力的だ。実機のインプレッションについては後日また詳しく書きたいが、今回は、新Let'snoteのスマートフォン連携について取り上げたい。

●スマホを使ってPCを起こす

 新Let'snoteとしてデビューするSX/NXでは、スマートフォンと連携する各種の機能が披露された。簡単にいうと、スリープ中のLet'snoteをスマートフォンのアプリを使って起こし、アプリを使ってファイルを参照したり、リモートデスクトップクライアントで実際に操作したりできるというものだ。

 展示会場で説明を聞いてみたところ、スリープ解除にはBluetoothを使い、ファイル参照やリモートデスクトップは、IntelのMy Wi-Fiを使ってアドホック接続した上でのセッションとなるそうだ。

 対応は、後日発表されるパナソニック製のスマートフォンからだそうだが、手元の環境でも、似たようなことができるかもしれないと思い、ありあわせの装備で実際に環境を作ってみた。

 まず、スリープ中のPCを起こすというと、すぐに思いつくのがWake On LANだが、それをWi-Fi経由でとなると、ちょっと話がややこしくなる。でも、Bluetoothなら簡単だ。BluetoothマウスのようなHIDは、電源が入ると接続先PCのスリープを解除することができるからだ。ただ、ぼくが普段持ち歩いているLet'snoteには、ロジクールのUnifyingレシーバを装着しっぱなしなので、今回は、インスタントにそちらを使うことにした。設定は、デバイスマネージャで、接続しているマウスのプロパティを開き、「電源の管理」タブで、「このデバイスで、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」にチェックをつけておくだけだ。Bluetoothマウスの場合は、Bluetoothの設定ユーティリティで行なうこともできる。

 カバンの中にはいつも、とりあえずマウスを入れてある。出先でちょっとややこしいことをやりたい場合などに、マウスがあるとやっぱり便利だからだ。Bluetoothにしても、ロジクールのUnifyingにしても、マウスとPCを好きなようにペアリングできるので、カバンが変わって持ち出すマウスが変わっても、あるいは、その日の用事によって持ち出すPCが変わっても、使いたいマウスを使いたいときに再ペアリングすればいいので便利だ。

●目覚めればWiMAXルーター

 これで、マウスの電源を入れると、自動的にカバンの中のPCが目覚めるようにできた。PCのリモコンとしては、ちょっとカッコ悪いが、とりあえず、実験だ。常用するなら、もう少し小さなデバイスを探すことにしよう。

 さて、ぼくのLet'snoteは、WiMAXを内蔵している。つまり、スリープから目覚めるとWiMAXに自動的に接続され、インターネットにつながった状態になる。これで、スマートフォンからは、少なくともクラウド経由でアクセスができるはずだ。

 残念ながら、IntelのモジュールはWiMAXとWi-Fiが排他なので、Wi-Fi経由でのアクセスは無理だ。でも、それでは不便なので、極小サイズのUSB Wi-Fiアダプタを用意し、2個目の無線LANを増設した。これで、WiMAXとWi-Fiが共存できる。自宅に戻ってLANに接続する際も、いちいちユーティリティで切り替えなくても勝手につながってくれるのは便利だ。

 そして、「Connectify」を使い、WiMAXを無線LAN側から共有し、Let'snoteがルーターとして機能するように設定しておく。スリープさせても、復帰時にはルーターが再スタートする。

 つまり、こうしておけば、マウスの電源を入れて、PCの電源をオンにすると、カバンの中のLet'snoteはWiMAXルーターになるわけだ。たとえばタブレットなどを別に持っていて、それが3G等の通信機能を持っていなかったとしても、Let'snote経由でWiMAXを利用して、各種のインターネットサービスを使えるようになるというわけだ。

 スリープから目覚めたLet'snoteは、設定にしたがって、一定時間アイドルが続くと再びスリープに落ちる。ぼくは、この設定を2時間にしているのだが、無駄にバッテリを消費しないために、何らかの方法で強制的にスリープさせられるのが望ましい。

 そういうことができるアプリはないかと探してみたら、「PcRemote」というアプリが見つかった。このBasic版に加えて、「Advance版」もあった。それを使うと、Basicバージョンの全機能に加えて、Windows 7のセンサーAPI経由でスマートフォンの各種センサーを使えるようになったり、Wake On LANに対応できるといった機能が拡張される。Bluetooth通信もできるようなのだが、手元のLet'snoteで使われているスタックではうまく動作しないようで、今回は断念した。

 なお、このアプリを使うためには、コントロールされる側のPCで、サーバーソフトを実行しておく必要がある。

●カバンの中で目覚めたPCに何をさせるか

 さて、このPcRemote、それなりに奥深いアプリで、Wi-FiやBluetooth経由で、オーディオ/ビデオコントロール、プレゼンテーションコントロール、キーボード、タッチパッドなどとしてスマートフォンを使えるようになる。

 そして、その機能の1つに、システムパワーコントロールというものがあり、それを使うことで、接続先のPCを強制的にスリープさせることができる。

 これで、カバンの中のマウスのスイッチを入れるだけで、Let'snoteが眠りから覚め、WiMAXルーターとして機能し始め、それを見つけたスマートフォンやタブレットのWi-Fiがそこに自動接続し、3Gを使わずにWiMAXの高速インターネットが使えるようになる。用事が終わったら、このアプリを起動して、Let'snoteをスリープさせればいいわけだ。ファイアウォールなどの問題を解決すれば、各種のアプリを使ってLet'snoteをリモートデスクトップで使ったり、SMBクライアントなどを使ってファイルを参照したりといったこともできるだろう。DLNAなどを使ってメディアストリーミングを楽しむのもいいかもしれない。

 ここでは、ありあわせの要素を寄せ集めてテスト的に実現してみたが、新しいLet'snoteでは、こうした機能が洗練された専用のアプリとして提供される。スリープ解除用にマウスを使うなんてこともしなくていい。

 カバンの中のPCは、眠りから覚めれば、スマートフォンとは比較にならないほど強力な処理能力を持つデバイスとして、いろいろな作業をこなしてくれる。スマートフォンを使うようになって、移動中にカバンからPCを取り出すことが、極端に少なくなったのだが、ポケットの中のスマートフォンでPCを起こすという発想をするだけで、新たなユセージモデルがいろいろと見えてくる。

 クラウドを活用すれば、何もそんな面倒くさいことをしなくても……、といった声も聞こえてきそうだが、個人的にはこの機能、これからのモバイルPCのあり方を探るための、とてもいいケーススタディになるんじゃないかと思っている。