山田祥平のRe:config.sys

「点」と「線」を2in1、重量798gな「LAVIE Hybrid ZERO」の正義

LAVIE Hybrid ZERO

 2016年初のCESで覆面デビューし、正月明けに発表、2月末に発売された11.6型2in1として世界最軽量を実現したNECパーソナルコンピュータの「LAVIE Hybrid ZERO」。暫く使う機会をいただいたので、今回は、そのインプレッションをお届けしよう。

合体時に不安のないデタッチャブル

 今回試用したのはSIMロックフリーのモデル「HZ330/DAS」だ。11.6型という液晶サイズは大きすぎず、小さすぎず、それでいてガッシリとドッキングできるタブレット部分とキーボード部分の機構は、着脱式2in1の弱点ともいえる合体時の不安定さも克服している。

 その重量は、タブレット部分が410g、キーボード部分が388gで、合体時の合計が798gとなる。タブレット部分とキーボード部分は双方にほぼ同容量のバッテリを実装し、合体時には、約10.3時間の駆動時間を実現している。

 実働時間がカタログスペックの半分だとしても、5時間程度は普通に使える。長時間駆動とは言えないが、実用という点ではまあ許せる範囲だ。

 合体のメカニズムは特に凝ったものではなく、固めのコネクタでの接続となる。スリットに差し込む要領の抜き差しは、コツさえ覚えれば容易だ。スリットの背部分が支えとなって、膝の上で使うような場合も脱落する不安が全くない。その代わりというわけではないが、キーボード部分の重量とのバランスで、液晶のチルト範囲が限られていて、大きく向こう側に倒すことができない。そうしておかなければ、パタンと向こう側に倒れてしまうからだ。

 穿った見方をすると、410gというタブレットの軽量さを実現するために、あえてキーボード部分にバッテリを分散したのかもしれない。

 厳しい見方をすれば、デタッチャブルにする意味があったのかどうか。分離のためのドッキング機構を省略できれば、あと50gは軽量化できたかもしれないが、それでは750gのタッチ対応ノートとなってしまい、センセーショナル感が抑制されてしまうのを敬遠したようにも感じられるのだ。個人的には体より実をとった方が良かったように思う。

 それに、タブレット部分だけでは駆動時間も半分になる。実使用において3時間持つかどうか、といったところだ。ただ、その駆動時間の短さは大きな問題ではない。タブレットとキーボードを分離して使いたくなるほど本体が重いわけではなく、さらに、16:9のアスペクト比は、縦方向でWindowsを使うには中途半端だから、余計にピュアタブレットとしての利用機会が少なくなってしまう。そういう意味では、2in1というよりも、1by1 PCという印象がある。

 液晶は非光沢で、照明等の映り込みが最小限に抑え込まれている。これは好印象だ。ネックは縦横比が16:9であることと、額縁部分と液晶が面一ではないため、左右端からのスライドイン/アウトに違和感があるといったところだろうか。また、消灯時に指紋が目立つのを気にする方も多いかもしれない。サッと拭える光沢液晶と違って、クリーンアップしにくいのだ。

 キーボードは、初代LAVIE Zからのフィーリングを踏襲しつつ、ミニサイズ化したものだ。ちょっとクセのあるレイアウトで、特にスペースキーを長くするために、変換キーの位置が少し右にシフトしている。これは初代の時から指摘してきたことだが、NECパーソナルコンピュータでは、変換キーの使用頻度を考慮した上で問題なしと判断しているという。

 キートップはちょっとしたツルツル感があって、指が滑る感じがある。こうした点をのぞけば、十分に及第点を与えられる仕上がりになっている。

 実際に使ったところ、タッチパッドのドライバに不具合があるようで、ホバーした時に非アクティブウィンドウをスクロールする振る舞いに、おかしなところがあるようだ。多分そのうち修正されるだろうが、そういう状態で出荷されてしまうことに問題も感じる。

「点」と「線」が2in1

 2in1としては、いろんな意味で隙のない製品に仕上がっている。11.6型ノートPCというサイズ感が気に入るのなら、極めて魅力的だ。出先で落ち着いて使う「点」のモバイルと、移動しながら使う「線」のモバイルを考えたときに、13.3型では「線」用デバイスとして大きすぎる、10.1型、あるいはそれ以下では、「点」用デバイスとして小さすぎるという判断をすれば、11.6型はそれこそ「点」と「線」の両モバイルを1つの液晶に集約した、オールラウンド2in1だといえるだろう。

 個人的には「点」用には24型液晶ディスプレイを持ち運んでみたりもしているが、「線」用デバイスとしては10.1型がベストバランスだと感じているので、この製品はちょっと大きい印象を持っている。電車の座席でちょっと使うという場合にも、両隣が気になったりもする。

 でも、コーヒーショップや会議室などの、テーブルがあるようなシチュエーションでは、「点」用デバイスとして魅力的だ。出先によって使い分けるのがベストだが、1台だけをオールラウンドで使うなら、11.6型はベストバランスだと判断する層は少なくないはずだ。Core m3-6Y30プロセッサにはさすがに非力さを感じるが、手帳のように使うデバイスとしては十分だともいえる。

 液晶サイズの選択だけでフォームファクタを決めるなら、ある程度の力量をもったベンダーであれば、どこでもできるかもしれない。だが、この製品には、NECパーソナルコンピューターが連綿と培ってきたモノづくりの系譜がしっかりと感じられる。ちょっとやそっとではキャッチアップできない高みだ。

 ある意味でこの製品は、合体時の不安定さ、重すぎるキーボード、光沢液晶の視認性といった、2in1が抱えていた問題点をことごとく潰しにかかったものといえそうだ。Type-C 1つを含む3つのUSB端子、フルサイズのHDMI出力、microSDカードスロットと、拡張性も確保されている。ただ、SDカードスロットは、標準サイズの方が良かったかもしれない。また、タブレット側、キーボード側の双方に充電用のDC-INがあるのも使い勝手が良い。

多様化するMVNOにも対応

 ちなみに今回はLTE対応機での評価だったので、実際にSIMを装着して使ってみた。スロットサイズはNano SIMで、SIMロックフリーだ。

 LTEの対応バンドはB1/B3/B19/B21となっている。日本、特にドコモ系のMVNOで使うには不便はなさそうだが、海外で現地SIMを使うとすると、イギリス/ヨーロッパにおけるB3/B7、米国におけるB4、台湾におけるB3/B8などの非対応がネックになりそうだ。

 装着して試したのはワイヤレスゲートのSIMで、新プランとしてスタートした「Fonプレミアムプラン」を使ってみた。このプランは月額1,680円で3Mbpsの無制限通信ができるというもので、月間上限に達して低速に落ちる心配がない。こうした魅力的なプランが出てきたり、そうでなくても、フルスピードの3GB程度を1,000円以下で使えるようになってきている今、LTE対応デバイスの使い勝手はずいぶん高まっている。これに慣れるとテザリングなどは煩わしくてやっていられない。

 もっとも、ワイヤレスゲートの無制限3Mbpsは、平日午前の早い時間や15時頃の測定でも、1Mbpsを超えることはなかった。サービスインしてから1カ月に満たないでこの速度というのはちょっといただけない。これではさすがに、ウェブページ1つ開くにも一仕事という印象だ。ほぼ同じ時間、同じ場所でFREETELを試すと10Mbps近いスピードが出ているのを見れば、無線区間で問題が起こっているようには見えない。価格的にはリーズナブルなサービスなので、ベストエフォートとはいえ、3Mbpsを謳うに恥ずかしくない実速度を確保できるよう、今後の改善を期待したい。

(山田 祥平)