山田祥平のRe:config.sys

フリマが流行ればショップが儲かる

 二次流通市場、いわゆる中古市場を牽引拡大するフリマ。その隆盛が一次流通市場、つまり新品の販売に影響を与え、その消費を減少させているという可能性があるそうだ。本当にそうなのか。メルカリが実態調査を実施した。

年間約484億円の新品消費喚起をもたらすフリマ

 メルカリ総合研究所が「フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果」の実態調査を実施、それが年間約484億円に達することがわかったそうだ。風が吹けば桶屋が儲かる的に、中古が売れれば新品がさらに売れる。フリマアプリでもっとも流通量が多いファッションカテゴリは年間288億円と6割近くを占めるという。

 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター講師の山口真一氏との共同調査によるもので全国の15~69歳の男女2,000人を対象に調査を実施したという。

 同社によれば、2019年に経済産業省がまとめた調査で2018年のフリマアプリ推定市場規模は6,392億円(前年比32.2%増)で、調査開始以来3年連続で成長しているという。そして、その成長が新品の購入を代替しているという声が上がってるとも言う。

 その一方で、売却を前提とした購入行動をしているフリマアプリ利用者が確実に存在し、一次流通市場での購入意欲を刺激している可能性もあるらしい。

 調査の結果、フリマ出品経験者は新品購入金額が増加、フリマ購入経験者は新品購入金額が減少する傾向が明らかになった。出品経験と購入経験は重複するが、個々の値を合算すると、むしろ新品購入金額が増加していることがわかったのだ。また、消費者意識的にも「新品購入金額が増えた」と感じている人が多いという結果になり、消費者の主観的な評価と金額の分析結果の整合性もとれている。

 出品経験者にとっては売ればカネになり新品の購入頻度/単価が高くなり、売れば自分に似合わなくても捨てなくて済むからということで新品購入金額が増える。また、フリマで買えば節約ができて新品での購入頻度/単価が高くなったり、フリマでお試し、その後新品で買うようになったりもするそうだ。

売れることがわかっているからワンランク上のものを買う

 この調査の仮説は、フリマ購入は新品消費を減少させ、フリマ出品は新品消費を増加させるなら、フリマ購入経験者は非経験者に比べて新品購入金額は減少するはずというものだった。

 ところが、購入経験が新品購入金額も増加させる傾向にあることがわかった。相関による推定不可能な状況を生む内生性問題による課題推定を回避するために、因果関係を推定する操作変数法による回帰分析で推計したそうだ。経済学や統計学の知識が必要になる難しい分析モデルだ。また、推計の対象になる各金額は「過去3カ月以内の1月当たりの平均金額」を使ったという。

 調査にあたった山口氏はシェアリングエコノミーの時代、消費者と消費者をつなぐのみならず、価値感の変化が起こっているとし、情報社会における情報流通がモノの価値に与える影響は中長期的に拡大していくだろうとし、それを前提に商品を開発すれば売上げを伸ばすことができるかもしれないと解説する。

 つまり、売られることを前提にした商品の存在がカギとなるわけだ。消費行動としてモノを買う前に、もし売ったらいくらになるのかを検索し、リセールバリューを知った上で、その知識がワンランク上のものを購入することにつながるというわけだ。今後は、残価補償を前提とした商品の方向性もありうるという。

 どこかで聞いたような話だと思ったが、クルマやスマートフォンがまさにそれだ。使い切るのではなく、一定の期限を切って当初の約束の金額で買い取ってもらい、次の商品を新品で入手する。そういう消費のあり方が今後ますます拡大していく可能性がある。

捨てるより売るほうが地球にやさしい

 モノを捨てるのではなく、譲る(売る)ことで誰かの役にたつからうれしいという感情は、ある意味で免罪符とも言えるものであり、SDGs(持続可能な開発目標)の時代ならではのもののように感じる。個人的には何十年も前からそんなことをやってきた。

 PC-9800シリーズの全盛期、毎年秋に発売される最新機を毎年買い替えていた。定価は45万円程度だったが30万円台で購入できていた記憶があるが、1年使った旧機種は20万円台後半で売れ、増設メモリ等を追加で購入していた。ざっくり言って月に1万円で最新のキューハチを手に入れて手元で使うことができていたようなイメージだ。

 当時からPCには思い入れも希薄で、1年使ったPCを愛着で手放せないという感情もあまりなく、ずっと最新機種の最新機能だけを追いかけていた。すでに30年以上前の話だが、まあ、今で言うなら新しいiPhoneが秋に出るたびに、毎年買い替えるようなものだと思えばいい。

 そのときに重要なのはリセールバリューだ。1年手元で使ったら、どんなに大事に使って箱入り新品状態で引き渡せても、二束三文でしか引き取ってもらえないような商品では、こうした運用は難しい。PC-9800シリーズはその期待に応えてくれた。

 ファッション、アパレル分野はどうなのか。クリーニング代が高いので洋服は数回着たら、そのまま売ってしまうという若い女性のファッション運用術を聞いたことがある。確かにクリーニング代は高いし、洗ってもらう服の単価と洗濯代は比例しないから、洋服の価格によっては割高感もある。バーゲンで格安で手に入れたブラウスに数千円のクリーニング代は惜しいという気持ちもわかる。

 長く使えますよ、一生モノですよというのは、もはや購買意欲をそそる殺し文句ではないようだ。もっとも、PCを一生使うというのは無理というもの。そのはずなのに5年使ったPCが現役で今なお役にたっているのを見ると、ちょっと気分が複雑になる。