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VAIO、ドコモと協業で法人向けにVAIO Phone Bizを展開

~日本マイクロソフトともパートナーシップを結びビジネス向けに基盤強化を図る

 VAIO株式会社は4日、Windows 10 Mobileを搭載した5.5型のスマートフォン「VAIO Phone Biz」を発表した。発売は4月を予定しており、詳細なスペックなどについては別記事にて紹介している(記事へのリンク)。ここではリリースに伴い開催された製品発表会の模様とハンズオンで撮影した実機の写真を掲載している。

新しいビジネスの地歩を固めつつ、ビジネス向けスマートフォン市場を狙う

VAIO株式会社 代表取締役社長の太田義実氏。手に持っているのは別事業で協業しているロボット「Palmi」とウェアラブルデバイス「Moff Band」

 発表会では最初にVAIO株式会社 代表取締役社長の太田義実氏が登壇し、VAIOの現在と今後の取り組みについて説明した。太田氏は自立したVAIOを持続的に成長できる会社にするために、VAIOの強みである「設計/製造技術」、「経験豊かな人材」、「ブランド」の3つの柱を生かして邁進していると述べ、以前はこの力をPCのみに投入してきたが、今ではさまざまな事業へと注力していることを述べた。

 大田氏はその例として、富士ソフト株式会社が展開しているコミュニケーションロボット「Palmi」および株式会社Moffが手掛けるウェアラブルデバイス「Moff Band」の安曇野工場での受託製造を挙げ、このほかにも新たな協業の施策として、株式会社マクニカが提供しているスタートアップ企業のための支援活動「mPRESSION for MAKERS」で協業し、量産化のサポートを行なっていることを語った。

VAIOの強み
強みの1つである「設計/製造技術」に含まれるもの
株式会社富士ソフトと株式会社Moffからの受託製造を安曇野工場で受けている。VAIOの強みを生かした事業展開の1つ
スタートアップ企業を支援する取り組みを株式会社マクニカと協業して行なっている

 大田氏は今後もVAIOは他社と協業して支援し、新規領域に着実に前進していく考えであるとした。また、PCに関してはこれまで通り基本的な設計方針などは変えずに、ターゲットをVAIOファンとビジネスパートナーに絞って製品を提供していくことを明確にした。

 そして、今回VAIOのビジネスの一環として、VAIO Phone Bizを投入したことを述べ、スマートフォンはPCを取り巻く環境として無視できない存在であり、現状ではiOSとAndroidが大半を占めている市場であると前置きしつつ、法人用途でのその可能性を信じて、Windows 10 Mobileを搭載したスマートフォンをVAIOが投入したという製品企画の意図を語った。

VAIO Phone BizはSIMロックフリーのスマートフォン。カテゴリは違うが、モバイルノートではVAIO S11が先にSIMロックフリーのLTEモデムを搭載。VAIO Phone Bizはその流れを汲んだもの
ビジネスにおいてスマートフォンの存在は無視できない
VAIO Phone Bizはビジネス用途でのスマートフォンとして開発された
日本マイクロソフト株式会社 取締役 代表執行役 社長の平野拓也氏

 大田氏はVAIO Phone Bizの投入背景を語った後、協業のパートナーである日本マイクロソフト株式会社 取締役 代表執行役 社長の平野拓也氏と株式会社NTTドコモ 取締役常務執行役員 法人ビジネス本部長の高木一裕氏を壇上に招いた。

 平野氏は1996年にWindows 95を搭載したVAIOが出てきて以来、ソニー時代から20年間のパートナーシップを築いてきたと両社の関係を話し、Windows 10 Mobileを搭載したスマートフォンの舞台でも協業できることを嬉しく思うと大田氏に感謝を述べ、今回のVAIO Phone Bizの投入によって、急速に拡大しつつあるWindows 10の法人市場における選択肢が広がり、Microsoftが推し進めるOne Windowsのシナリオをさらに強固にするだろうと語った。

日本国内ではWindow 10 Mobile搭載デバイスを8社が提供
Windows 10 Mobileによって提供される機能やソリューション
VAIO Phone BizがWindows 10を搭載したビジネスを拡大する

NTTドコモは法人向けの「ビジネスプラス」でVAIO Phone Bizを展開

株式会社NTTドコモ 取締役常務執行役員 法人ビジネス本部長の高木一裕氏

 続いて、NTTドコモの高木氏が壇上に立ち、VAIO Phone Bizをドコモの法人向けソリューションである「ビジネスプラス」にて、6月からラインナップに加えていくとの意向であることを明かした。現状日本ではエントリー向けデバイスばかりのWindows 10 Mobile市場において、ContinuumをサポートするようなミドルレンジクラスのVAIO Phone Bizが加わることによって、市場が広がることへの期待を見せる。

 高木氏によれば、2015年12月時点でWindowsデバイスとLTEを組み合わせた契約は35万件を超えているそうで、2012年11月から日本マイクロソフトとWindowsで協業して以来、新しい顧客の開拓に繋がっていると言い、Windowsを重要視する姿勢を見せる。現在では官公庁、銀行、製薬会社を中心に、学校や百貨店、流通でも活用されるようになってきたというWindowsデバイスの現状を語り、これまでのタブレット端末/クラウドサービス、そしてWindows 10 Mobile搭載のVAIO Phone Bizがラインナップに追加し、利用促進の施策を仕掛けていくとの展望を述べた。

エントリー向けデバイスばかりの日本国内のWindows 10 Mobile市場において、VAIO Phone Bizはミドルレンジを担うデバイスと位置付ける
日本マイクロソフトとは2012年11月から協業
NTTドコモでのWindowsデバイス+LTEでの法人契約は35万件を超えており、Windows 10 Mobile搭載デバイスやOffice 365を組み合わせたビジネスソリューションでさらなる拡大を狙う

 具体的にはVAIO Phone Bizをビジネスプラスにて、クラウドベースの管理を行なうMicrosoft IntuneとOffice 365、そして、ドコモのキャリアアグリゲーションであるPREMIUM 4Gで展開していく構え。Windows 10 Mobileでは初のキャリアアグリゲーションサポートとなり、受信速度で国内最速の225Mbpsを提供できると述べる。現在VAIOとNTTドコモは相互接続性試験を実施中であり、法人向けのデバイスとしての大きなウリにしていくようだ。

 現在4,500社のビジネスプラス採用企業がいるそうで、高木氏はVAIO Phone Biz、Microsoft Intune/Office 365、PREMIUM 4Gによる三位一体での展開を図っていく構えだ。

NTTドコモのビジネスプラスにて、VAIO Phone Bizを6月にラインナップに加える予定
VAIO Phone BizはNTTドコモのキャリアアグリゲーション(4G PREMIUM)をサポート。国内最速の受信225Mbpsが実現する
NTTドコモは、VAIO Phone Biz、4G PREMIUM、Office 365を筆頭とするMicrosoftサービスの三位一体で顧客獲得の拡大を図る構え

VAIO Phone BizによるContinuumを筆頭としたPCとの親和性の高さに自信を見せる

VAIO株式会社 商品企画担当の岩井剛氏

 自社およびパートナー企業との展望の後は、VAIO株式会社 商品企画担当の岩井剛氏がVAIO Phone Bizの解説を行なった。

 岩井氏はVAIO Phone BizがPCのVAIOシリーズと同じく、ビジネスでの快適さを追求して開発されたスマートフォンであることとする。PCが使えないまたは使いにくい状況であっても、シームレスに仕事をこなすための存在として、VAIO Phone Bizがあり、PCとスマートフォンでトータルでの快適さを提供ができることをアピールする。

 VAIO Phone Bizの主な特徴として、Windows 10 Mobileを搭載していること、SIMロックフリーで対応バンドが広いこと、安曇野品質の製品であることを挙げた。

VAIO Phone Bizのキャッチコピーは「ビジネスを加速させるスマートフォン」
VAIO Phone Bizの主な特徴

 その中でもWindows 10 MobileはPCや企業システムとの親和性が高く、仕事の生産性を高めるものであるとし、PCと共通のユーザビリティを実現し、アプリがPCと同じように使える連携のしやすさを述べ、特にContinuumによる擬似的なデスクトップPC環境の構築が目玉とした。VAIO Phone BizではContinuumのためにSnapdragon 617を採用し、快適さも求めてメモリも3GBとしている。

Windows 10 MobileはPCや企業システムとの親和性が高いとする
Windows OSを使えることのメリット
Continuumの利用の仕方
石井氏はContinuumを実演しようとしたが、会場の電波状況が悪く、デモを断念。実機がある展示スペースでは問題なくContinuumが使えていた

 石井氏は、そのほかにもVAIO Phone Bizの見所として、競合他社よりも一回り大きい5.5型フルHD液晶による操作性の高さ、SIMロックフリーによる通信業者の選択肢の広さ、PCの出荷工程と同じ工程で検査が行なわれる安曇野工場による品質の確保などについて語り、同製品の魅力を強調した。

VAIO Phone BizではSnapdragon 617の搭載により、Continuumをサポートしている
主な仕様
対応バンド
VAIO Z Canvasのデザインコンセプトを取り入れている
筐体はアルミ素材でできており、何工程かを設けて削り出しで製作している
安曇野工場による全品検査が行なわれ、高い品質を確保している

 なお、質疑応答では日本通信と協業で発売した「VAIO Phone」との立ち位置について質問が行なわれたが、VAIO Phoneに関しては日本通信がセキュリティを含めて独自のソリューションを提供しているものであり、VAIO Phone Bizと食い合いが発生することはないと回答していた。

VAIO Phone Bizの実機写真一覧

 以下、発表会場にて展示されていたVAIO Phone Bizの実機写真を掲載している。

5.5型の筐体
正面と背面
レーザー加工の「VAIO」ロゴ
筆者のiPhone 5sと大きさを比較
左側面
右側面
天面
底面
背面
ディスプレイ表面
ディスプレイとアルミ筐体部分の繋ぎ目
Edgeを使ってVAIOのWebサイトを開いたところ、ビジネス向けでも液晶の画質は十分きれいだった
右側面の上に電源ボタン、下は音量ボタン
左側面から並ぶように配置されているMicro SIMスロットとmicroSDカードスロットにアクセスできる。実はNano SIMスロットもあるが、microSDと排他仕様で動作保証外となっている
カメラ上部はプラスチックになっておりアンテナを内蔵
本体の下側もプラスチックで、こちらにもアンテナがある。電波状況に応じて両方またはどちらかを使用する
Continuumのデモ端末。デスクトップのディスプレイに表示されているExcelは左隣のVAIO Phone BizからContinuumして開いている
Continuumを使うにはContinuumアプリを起動すればいい
アプリ実行後、Miracastできる端末が検索される
Miracast端末が見つからなかった場合の画面
デモ機の後ろにContinuum対応のMiracast端末「ScreenBeam Mini 2 Continuum」が置かれていた。Y字でUSBケーブルの先にはキーボードとマウス用に無線アダプタがある。
ScreenBeam Mini 2 Continuumにはリセットボタンと電源供給兼用のUSBポートがある
Continuum動作中はタッチパネルとして動作
通常の画面に戻してContinuumをしたままで、Edgeを開くといった動作も可能
Continuumで表示したスタートボタン付近。当然ながらデスクトップを表示するといったことはできない
ContinuumでExcelを使ってみたが、動作は若干もっさりとしていたが、性能不足なのか会場の電波状況が悪いのか判断できなかった。なお、現場の説明員に聞いたところBluetoothのキーボード/マウスを使うと遅延が起きやすいとのこと
SIMが2枚入っていれば、どちらを使うか選択できる
実機で確認できたOSのビルドは「10.0.10586.29」
削り出し工程の段階ごとの筐体を展示
アルミインゴット状態
切削加工1
射出成型
切削加工2
レーザーエッチング
ブラスト加工
VAIO Zの展示
VAIO Sのラインも展示されていた

(中村 真司)