シチズンとIBM、Linux搭載の“腕コン”「WatchPad 1.5」

10月11日 発表

連絡先:シチズン時計株式会社
     広報室 Tel.0424-66-1232
    日本アイ・ビー・エム株式会社
     ダイヤルIBM Tel.0120-04-1992



 シチズン時計株式会社日本アイ・ビー・エム株式会社は、OSにLinuxを採用した腕時計型コンピュータの試作品「WatchPad 1.5」を、両社の協業により開発したと発表した。販売時期等は未定だが、2002年3月には試作品を大学の研究室やソフトウェア開発者に配布し、一般販売を視野に入れつつ、新たな用途やアプリケーションソフトの開発を進める予定。

 「WatchPad 1.5」はARMベースで最高74MHzの32bit低消費電力CPU、8MBの低消費電力DRAM、16MBのフラッシュROM、QVGA(320×240ピクセル)のモノクロ液晶、音声通信対応のBluetoothとIrDA1.2を搭載した腕時計型のコンピュータ。液晶のタッチパネルとボタンのほか、リューズを応用したスイッチが入力インターフェイスとなっている。また、スピーカーとマイク、指紋センサー、加速度センサー、バイブレーターも搭載。電源はリチウムイオンバッテリで、専用のクレードルで充電する。標準的な使用でバッテリは1日もつという。クレードルはACアダプタと乾電池に対応しており、また、RS232CポートでPCと接続できる。本体サイズは46×65×16mm(幅×奥行き×高さ)で重量は43g(本体のみ)。

IBMモデルとシチズンモデルがある 左上の黒い窓が赤外線通信ポート。Bluetoothのアンテナはベルトに内蔵 WatchPad 1.5を構成するモジュールたち

 搭載されるOSはカーネル2.4のLinux。GUIには組み込みシステム向けのオープンソース・ウィンドウシステム「Microwindows」を採用、BluetoothドライバはIBM製でやはりオープンソースの「BlueDrekar」を搭載している。Linuxを採用したのは「世界のトッププログラマたちが作っており、信頼性が高く、セキュアである」(日本IBM東京基礎研究所の鷹尾洋一所長)ためとしている。

 販売価格は未定だが、シチズン時計 時計開発部 NW開発課の木原啓之課長によれば、「WorkPadの最上位機種程度」のコストがかかるということだ。

Linuxのブート画面 加速度センサーで傾きを検知すると、画面のTux君が手を振ってくれるデモアプリが搭載されている

 WatchPadの用途は大きくわけて、次の4つが考えられている。

●認証デバイス
 WatchPadの指紋センサーで本人認証し、Bluetoothでその情報を送ることができる。PCやワークステーションへのログイン、クレジットカードの代わり、などが考えられる。

発表会のプレゼンテーションも、WatchPadでPCをリモコン操作して行なわれた
●ポインティング・デバイス
 BluetoothでPCなどをリモコン操作できる。タッチパッドやリューズスイッチの操作はもちろん、加速度センサーで腕の動きを検知し、ポインティングデバイスとして使うこともできる。サーバーやPCのフロントエンド・インターフェイスとしての利用も考えられる。

●トリガー・デバイス
 機器に近づいたり、遠ざかったりすることでイベントをスタートさせるような仕組みを備えたデバイスのこと。認証機能と組み合わせて、セキュリティゾーンへの入退場制限、ホテルや空港でのチェックインなどを自動的に行なうことができる。また、車のシートポジションやミラーの位置を乗り込んだだけで自動的に調整する、世界中のどこでも時計の時刻を自動的に現地時間に合わせる、といった用途も考えられる。

●ビューアー・デバイス
 メールなどを液晶パネルで読んだり、トリガー機能や認証機能と組み合わせて、レストランのお勧めメニュー、駅の時刻表のような、その場に即した情報をもらい、表示できる。

2000年8月の「San Jose LinuxWorld Conference & Expo」に出展された「Linux腕時計」

 WatchPad 1.5の元となったのは、2000年8月に日本IBMが「パーベイシブ・コンピューティング(PC以外の携帯電話やPDAなどのデバイスによるコンピュータ利用)」研究の一環として試作した「スマート・ウォッチ」。

 鷹尾所長によればこれはあくまで「脆弱な試作品」であり、シチズン時計が基盤と筐体を設計し、日本IBMがプロセッサ性能の向上と消費電力の低減を図った結果、「日常生活に使えるレベル」のWatchPad 1.5が完成したとのこと。消費電力の低減は「グリーンPC(環境に配慮したコンピュータ)」研究にも役立っているそうだ。




□シチズン時計株式会社のホームページ
http://www.citizen.co.jp/
□日本IBMのホームページ
http://www.ibm.com/jp/
□ニュースリリース(シチズン時計)
http://www.citizen.co.jp/release/01/011011wp.htm
□ニュースリリース(日本IBM)
http://www-6.ibm.com/jp/NewsDB.nsf/2001/10111
□日本IBM東京基礎研究所 WatchPadのホームページ
http://www.trl.ibm.com/projects/ngm/
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(2001年10月11日)

[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]

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