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塩田紳二のLinuxWorld Conference & Expo会場レポート |
会場は広くなったが、その分来場者も増えた模様。米国経済は減速中だが、Linuxはまだ、人々の興味を保っているようだ |
会期:1月30日~2月2日(現地時間)
会場:Jacob K. Javits Convention Center , NewYork
ニューヨークで開かれているLinuxWorldは、東海岸では昨年2月に続いて2回目の開催になる。開催前にはいろいろ言われていたが、始まってみると出足は好調のようだ。
31日(現地時間)からは、展示会場もオープン。昨日のレポートで「会場は昨年並み」と述べたが、実際確認したところ、昨年よりも展示会場は広くなったようだ。主催者によると、来場者も事前申込みの状況からすると、昨年よりも増えるだろうとのこと。
IBMの社長でCEOのSamuel J.Palmisano氏。ホームグラウンドでIBMは威信をかけて人集めを行った模様。プレスよりも招待客であるVIPの数が異様に多かった |
IBMは、シェル石油やWeather.comなど、Linuxを導入した大手企業を紹介し、Linuxがいまや同社の一押しのシステムであることをアピール。また、日本のローソンに入った15,000台のLinuxマシンについても話が及ぶ。
IBMのねらいは、Linuxをメジャーなビジネス用システムに押し上げることである。インターネットサーバーなどでは、すでにLinuxを含むPC Unix系OSが多数使われているが、基幹システムと呼ばれる本来IBMが得意としていた領域などへの普及はまだこれから。IBMは、この領域へLinuxを普及させようというわけだ。
IBMの新型腕時計型コンピュータ。前世代機よりもさらに小型化している。画面の解像度はVGA(640×480)である |
この中で最も目を引いたのは、昨年公開された腕時計型コンピュータの第2世代機である。
今回は、表示に発光素子であるOLED(Organic:有機LED)によるVGAディスプレイ(640×480ドット)を装備している。これは、前世代で使われていた液晶ディスプレイと同等の消費電力ながら、発光素子であるため、視認性に優れるという特徴を持つ。サイズは、56×48×12.25mm、44gと前世代機に比べて格段に小さくなり、ようやく腕時計サイズとなった。また、Bluetoothを内蔵しており、直接PCなどとの通信が可能になっている。もちろん、OSはLinux。なんでも、まだ世界に2つしかなく、そのうちの1つが今回の展示、もう1つは現在日本にあるのだとか。
まだ、試作品の域を出ないが、ようやく本当の腕時計サイズになり、着実な進歩が感じられる。
腕時計型コンピュータの全体。幅がほぼバンドと同じになり、腕時計らしいサイズにまとまった | DOS/V時代の画面解像度がこのサイズに収まってしまう。米国では、ながらくビジネス用にCGA(640×200)が使われていたが、英語フォントならこの解像度で十分か | 内部に組み込まれているメインボード。銀色に見えるのがCPU。背面にはROMやRAMなどが配置されている |
組み込まれているBluetoothモジュール。実際に動作していて、横にあるThinkPadと通信を行っていた | 前世代機との比較。写真左側が昨年公開されたもの |
キーノートスピーチが終わった後は、来場者も増え、IBMブースが結かなり混んでいた。しかし、よく見るとIBMの社員が非常にに多い。キーノートの観客として動員された社員が説明員をさせられていたのかもしれない。
しかし、全体を通して来場者が減っているようすはなく、イベントとしてはとりあえずまずまずの成功というところか。昨年からはじまったニューヨークでのLinuxWorldも、イベントとして定着しつつあるといえそうだ。余談だが、今回は会期にあわせてホテルなどの料金の値上げなどはなかったが、イベントとして定着すると、開催時期、ホテルの宿泊費が値上げされる。かつてのComdexがそうだった。さて、来年はどうなることやら。
HPがOpenGL上で作った3次元ゲーム開発ツールキットで作られた3Dゲーム。ホーバークラフトのような乗り物を操縦してサッカーを行なう |
HPもプレスミーティングを開催。同社のプリンタをLinux対応させることなどを発表した。また、同社のグラフィックワークステーション上で動作する3次元サッカーゲームHover Ball(宙に浮くエアカーのようなものでボールをはじく。かつて流行ったルーカスソフトのBall Blazerのようなもの)や3次元ゲーム用SDKであるHoverWareなどを公開した。
展示は、ハードウェア系は、IBMやHP、Compaqなどのハードメーカーが中心で、ソフトウェア系は、Linuxのディストリビューターや組み込み系Linuxメーカーなど。そのほか、Linux関連の開発を行なうユーザーレベルの各種団体のブースもある。
Linuxといえば、サーバー用途が依然として大きく、最近はラックマウント型が流行り。ただ、キーボード、マウスコネクタなどを前面に配置するなど、使い勝手の配慮も行なわれてきたようだ |
ボード系メーカーは、ディスプレイデバイスやチップセットメーカーが少なくなってしまったため、ほとんどない。唯一、SCSIボードで有名なAdaptecがRAIDカードやファイバーチャネルカードを展示していた。
ソフト系では、Linuxカーネルと関連ソフトをまとめて、パッケージ化を行なうディストリビューターが中心。つい先頃、新しい2.4カーネルが発表されたため、その対応状況などを公開している。ただし、ディストリビューターといっても、パッケージを売るのが目的ではなく、そのサポートなどでビジネスを行なう。その中の大手であるRed Hatは、ローソンに入る15,000台のLinux機のOSとして採用された。今日は、その開発元であるダイエー情報システム(DIS)とともにプレスミーティングを開き、Red HatとDISが、戦略的提携を行なったことを発表した。
たしかに一カ所にこれだけLinuxマシンが導入されるのは画期的なことではある。このために、IBMのCEOもキーノートスピーチで触れるし、Red Hatも発表を行なうということになったのだが、これは同時に、そうそう大きな案件がないことの裏返しでもある。まあ、本格的な普及はこれからということか。来年ぐらいには、こうした導入事例が当たり前でニュースネタにならない程度まで普及してほしいものだが……。
□LinuxWorld Conference & Expoのホームページ(英文)
http://www.linuxworldexpo.com
□関連記事
【2001年1月31日】LinuxWorld Conference & Expoレポート前日レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010131/lwe1.htm
(2001年2月1日)
[Reported by 塩田紳二]
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