NEC、2002年3月期業績予想をさらに下方修正
~全社で14,000人を削減

NEC
西垣浩司社長

1月31日発表



 日本電気株式会社(NEC)は、2002年3月期の業績予想を再度下方修正するとともに、人員削減の大幅増および構造改革費用1,500億円の積み増しを行なう。

 2002年3月期の見通しでは、昨年10月に発表した修正値に比べて、売上高では2,300億円下方修正の5兆700億円(前年比6.3%減)、営業損益では870億円下方修正のマイナス570億円、当期純損益では1,500億円下方修正のマイナス3,000億円とした。

 同社の西垣浩司社長は、下方修正の理由として「前回の発表時に比べて、事業環境の急落および谷の深さがある。また、市場の変化に対して見通しが甘く、変化に即応した対処の遅れ、より高い業績を達成するために設定した積極目標の大幅未達が原因」とし、「経営責任は厳粛に受け止めている」とした。

■コンピュータは好調だが、通信と半導体が業績悪化

 具体的には、コンピュータ事業を担当するNECソリューションズが、ソフト・サービス事業の好調ぶりに支えられて通期の黒字化を達成するものの、第3四半期から急速に業績が悪化したNECネットワークス、過去最悪の市場環境にあるNECエレクトロンデバイスの業績悪化が影響し、今回の大幅な下方修正となった。

 NECネットワークスが担当する通信分野は、日本国内の通信マーケットや海洋通信プロジェクトなどに支えられ、他社の業績悪化を尻目に好調だったが、第3四半期に入ってから国内通信事業者の投資の大幅抑制や価格下落、海洋通信プロジェクトの見直しなどが相次ぎ「こうした急減速に対応しきれなかった」(西垣社長)のが原因。国内における携帯電話端末の新規加入の減速、端末の在庫調整も大きく影響した。

 同時に発表した第3四半期の業績では、売上高が前年同期比9.5%減の1兆1,250億円、営業損益がマイナス642億円、当期純利益がマイナス1,550億円と赤字決算となった。

 営業損益のマイナス642億円のうち、NECエレクトロンデバイスがマイナス553億円、NECネットワークスは5億円の黒字、NECソリューションズは82億円の黒字となった(別途、その他部門でのマイナス72億円、セグメント間損益の消去などが含まれる)。

■リストラ費用を1,500億円積み増し、14,000人を削減 、経営陣の減給も

 今回の第3四半期の業績悪化および通期の下方修正を受けて、「今年度中の一段のリストラ施策を決断、構造改革費用の積み増しを行なうことでリストラ効果を高め、来年度の業績回復を確実なものにする」(西垣社長)として、1,500億円の構造改革費用の積み増しと14,000人の人員削減を行なうことを明らかにした。

 NECネットワークスでは、インフラ事業の構造改革として、宮城、山梨工場のEMSへの売却、SAWデバイス事業の売却、開発プロジェクトの見直し、資材費の圧縮、人員のスリム化を行なう。当初計画100億円のリストラ費用を400億円積み増しする。

 また、NECエレクトロンデバイスでは、「半導体不況は、第3四半期に底を打ち,今後は市況が回復すると見ている」(西垣社長)というものの、DRAMの市況回復速度が遅く、なかでも通信市場向けの出荷が厳しいこと、在庫調整のための生産絞り込みによる稼動損の発生などで900億円のリストラ費用の積み増しで、1,900億円の特別損失を見込む。英国での工場閉鎖、広島の旧ラインの停止など、より強力に構造改革をすすめる一方で、高付加価値型のシステムLSIへのシフトを図る。

 「これまでは、構造改革を進めるといっても、従来からの投資もあり、残念ながら、DRAMを中心としたプッシュ型の体制から抜けきれていなかった。今回の構造改革で、必要なものを必要なだけ作るプル型の体制にようやく転換できる」(西垣社長)とした。

 NECソリューションズに関しては、サービス・ソリューション事業が好調なことから、これをカンパニーの柱とするとともに「全社の安定収益基盤の柱にしたい」とする一方で、低迷するパソコン事業のリストラを加速する。

 当初300億円のリストラ費用を100億円上積みして400億円の特別損失を計上、パソコン周辺機器事業に関しては、茨城工場をソレクトロンへ売却するなどのスリム化を図る。パソコン事業に関しては、今年度は黒字化を達成できないことを明らかにし、下期だけで100億円の赤字、通期では200億円を超える赤字とした。台数では前年比20%減となる見通し。

 今回の構造改革による人員削減は、NECソリューションズで4,000人、NECネットワークスで3,000人、NECエレクトロンデバイスで6,000人、コーポレイトで1,000人の合計14,000人となる。また、人件費の削減で1,000億円、固定費の削減で2,000億円を見込んでいる。

 経営責任を感じているとした西垣社長は、経営陣の減給を明らかにし、2月の報酬から会長、社長が15%カット、役員、執行役員の減給を実行、さらに「会長、社長、役員は利益が出なければ賞与はゼロ。社長の場合、昨年の年収に比べて50%以上のカットになる」(西垣社長)とした。

 会見の中では、来年度以降の半導体事業の回復の手応え、さらにはパソコン事業の回復にも言及した西垣社長だが、本当に、暗く長いトンネルの出口は見えているのだろうか。

□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.nec.co.jp/press/ja/0201/3101.html
□関連記事
【2001年10月26日】NEC、2001年9月中間期決算を発表
~リストラによりPC事業は回復の兆しも
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011026/nec.htm
【2001年9月28日】NEC、再度の下方修正。当初の黒字予想から赤字へ転落
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010928/nec1.htm

(2002年1月31日)

[Reported by 大河原克行]

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