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Macworld Conference&Expo /San Francisco 2002 ブリーフィングレポート
一般公開の始まった展示会場で、New iMacに殺到する来場者
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会場:San Francisco Moscone Center
会期:1月7日~11日(現地時間)
1月8日午前10時30分、Macworld展示会場の一般公開が始まった。すでに昨日の基調講演やニュース報道などから、New iMacの発表と展示を知っている来場者は、なにより先にApple Computerのブースを目指して入場していく。昨今の情勢から、これまでのように雪崩をうってという状態ではなく、丁寧にバッジを確認しながら整然にという感じではあるが、COMDEXで行なわれていたような金属探知ゲートの通過や、念入りな持ち物検査などは特に実施されていない。
来場者が真っ先に目指すのはAppleのブース。中央入り口から入れば正面に位置する。長テーブルに各16台ずつ、6個のテーブルで計96台が用意されたiMacの展示スペースはあっという間に人垣に埋め尽くされた。
前回までは基調講演の終了にあわせて一般来場者と報道関係者が同時にブースへ訪れ、それぞれの目的の違いから混雑だけではない不便さが発生していた。立場的にはどちらも申し訳ないと遠慮しつつ、いち早く撮影や詳細の確認を終えて報道したい側と、じっくりと触ったりスタッフに質問をしたい側が同居していたわけである。対応するスタッフも、目的や方向性の違う2種類の来場者をオープン早々同時に対処することになるわけで、難しい対応もあったことだろう。
しかし今回、基調講演と展示会オープンが分かれ、昨日お伝えしたようにプレビューの時間が用意されたことで、こうした混乱は一気に解消された。公開時のブースの熱気も十分に伝えることができる。率直な感想として今回のシステム変更は大歓迎であり、今後も継続されることを多いに期待したい。
■仕様には表れないさまざまな工夫が加わったNew iMac
New iMacを担当するのはJai Chulani氏。初代iMacが正式発表されたときに、当時新しいインターフェイスであったUSBについて、詳細な解説をしてもらったことが印象に残っている |
この日、メディア向けに今回発表された製品をより詳しく紹介するブリーフィングが開催された。Appleでそれぞれの製品を担当するProduct Manager各氏が製品の詳細を解説した後、Q&Aにも非常に熱心に対応してくれた。1時間を超えるセッションだが、ここではこれまで報道されていない部分を中心に紹介する。
iMacに搭載されている15インチのTFT液晶パネル。解像度は1,024×768ドットで、CRTモニタではほぼ17インチに相当する。本体とはアームの中をとおっているケーブル(外からは見えない)で、フルデジタル接続されている。iMacのProduct ManagerであるJai Chulani氏によれば、CRTモニタを使ったアナログ接続、外部LCDモニタを利用するアナログとデジタルの併用などに比べ、鮮明さにおいてアドバンテージがあるという。
液晶の額縁部分については、狭額縁化だけではなくチルトを前提としたサイズが検討された。可能な限り狭くしてしまうと、移動操作を行なった際に表示エリアに手の皮脂などが付く可能性もある。そこで操作をしてもこうした影響を与えない程度の幅と、持ちやすいようにクリアパーツの縁が付けられている。メディア側からは、頻繁な操作によりアーム部分がへたり、液晶パネルの自重で意図せず位置が変わってしまう可能性についての質問が挙げられたが、アーム部分に使われているステンレススチールが摩耗しにくい素材であり、他にもさまざまな工夫を加えているため通常使用ではそうした心配はないということである。
液晶パネルは左右に180度、上下は7インチの可動範囲がある。それに加えて、パネル自体が底面に垂直な状態から-5度および30度まで傾斜する。マイナスの傾斜が存在するのは、小さな子供が見上げて使うような状態を想定しているという。また、本体後部にある外部VGA端子からはミラーリングの出力のみが行なわれる。
発表されたスペックによれば、増設可能なメモリにはSO-DIMMが採用されている。これはやはり省スペースのためということだ。写真を見てもらえれば分かるように増設部分は非常にタイトなスペースとなる。そのため垂直にモジュールを挿入するSDRAM DIMMではなく、水平に挿入できるSO-DIMMとなっている。しかし、ロジックボード上にある内部のメモリスロットには168pinのSDRAM DIMMが使われている。ここはユーザーによるアクセスが可能な場所ではないため、工場側で生産時に管理される。エントリーモデルの標準搭載メモリの128MBと、ミッドレンジ、ハイエンドの256MBの差異は、この内部スロットに挿入されたモジュールの違いにより生まれているというわけである。
従来のiMacはファンレス構造により、その静粛性も売り物にしてきた。さて、New iMacはといえば、冷却用のファンは存在する。アームと本体の接続部分の周囲にベンチレーションのホールが見えるが、ファンもこの位置にある。本体下部のスリットが吸気で上部から強制排気する構造だが、静粛性は失われていないという。それはインテリジェントなファンを採用することで、本体内部の温度を監視しながら、必要な時に必要なレベルでファンを回転させるようになっているということだ。ファンが発生するノイズも抑えられており、ハードディスクの回転音と同等ということである。
興味深いのは本体内部の構造だが、どうやら鏡餅のような構造になっている模様だ。ロジックボードは円形のものが底面に位置し、その上に5.25インチの光学式ドライブ、さらに上に3.5インチのハードディスクが載っかっている。大きいものから順に下から積み上げられているというわけだ。そして、他の空きスペースに電源部分と内部スピーカーが納められているようである。
なお、New iMacの電源ボタンは本体に向かって左後部にある。リセットスイッチやプログラマーズスイッチはなくなった。これは、Mac OS Xが標準システムになったことで、電源オフや再起動ではなくスリープが中心の使い方で、またシステム全体のクラッシュもほぼなくなり、これらの必要性が薄れたことも理由の1つらしい。どうしても強制的な電源断が必要になったときには、電源ボタンの長押しで対応することになる。
■Mac OS X
Mac OS Xを担当するBrian Croll氏 |
今回、Mac OS Xにおける最大のトピックは、出荷されるすべての製品において最初にブートするシステムになったことである。今回、iPhotoが発表されAppleが提唱するDigital Hubの構想に重要な意味を持つiアプリケーションが四つに増えたわけだが、このうち「iPhoto」と「iDVD2」は、Mac OS Xでのみ動作するアプリケーション。こうした点からも、真のDigital Hubの実現はMac OS X環境下で提供されると強調された。このブートシステムの変更は、この発表のあった一月から生産、出荷されるすべてのMacで実施されるという。従来モデルが継続販売される米国内価格$799の最廉価iMacも例外ではないということだ。
初期起動時のブートシステムに選択パネルのようなものは存在せず、第1回目のブートからMac OS Xが起動することになる。もし、Mac OS 9を起動システムにしたい場合は、System Preferenceを開いて、手動で変更することになる。なお、今後発表される製品についてもMac OS 9を起動システムとして変更・選択することが継続されるかという問いについては、現時点での考え方としてはYesであるという答えが返ってきた。
日本国内事情から考えれば、PHSカードなどに代表されるメモリカード以外のPCMCIAカードのサポートも継続して期待したい案件だが(Mac OS X 10.1.2においてメモリカードは対応が実現している)、これについては従来と同じサードパーティとの調整や対応への期待という回答にとどまった。それ以外のレガシーデバイスについても対応の検討は続けていくが、比重はやはり新しい機器をより早く対応させていく方向に置かれているという。
■iBook
iBookを担当するDave Russell氏には、グラファイトカラーのiBook Special Editionが発表された2000年のMacworld/Tokyoでもお話をうかがっている |
14.1インチの液晶を搭載するハイエンドのiBookがラインナップに追加された。Product ManegerのDave Russell氏は14.1インチサイズの採用について、率直に「私はより大きい画面が好きだ(笑)」とコメントしている。やはり教育市場におけるヘビーデューティな利用を前提にしているようで、バックパックに放り込んで持ち歩いたりしても大丈夫な構造を強調していた。
14.1インチモデルのバッテリは専用のものが用意され、6時間の稼働が可能。12インチモデルからの流用はできない。今回、解像度という点では12インチモデルと同様に1,024×768ドットが採用されているわけだが、これについては最初のiBookが12インチで800×600ドットであったことを例にあげ、こうした大きめの文字表示に確固としたニーズが存在することを強調した。Mac OS Xが標準OSとなり、標準フォントやアイコンのサイズも拡大するわけで、表示域の狭さを懸念する質問もあったが、それはユーザーが必要に応じてシステム設定を変更できるMac OS Xの柔軟さで対処できるという答えが返ってきた。
■iPhoto
iPhotoについては、セールスポイントの1つであるインターネットを使った写真プリントのオーダーや、ブックの制作について質問が集中した。既報のとおり、これらのサービスは日本では当面サポートされず、Mac OS Xの日本語環境下でiPhotoを利用するときはメニューにも表示されない。これについてはいまのところ対応を強く願うしかすべがないのが現実だ。
iPhoto担当のMike Evangelist氏 |
それでも米国のサービスを基準にしてさまざまな点を確認してみた。まず、プリントのオーダーについては、Kodakとの協力によるサービスとして実現している(このあたりに日本でのサービスがどの時期に実現するかどうかのカギがありそうだ)。ブックレットの制作は別で、他に契約している企業があり、そこで印刷・製本を行なうことになっているという。ブックレットに利用できるフォントについては、内部的にはPDFによるデータの送付を行なう仕様になっているため、ノンスタンダードなフォントであっても埋め込んだうえで出力できるらしい。つまり可能性の1つではあるが、日本でサービスを提供する際に、送料などを負担する形で米国で一括生産管理を行なうことも決して不可能ではないということになる。とはいえコストの問題もあるだろうし、対処を待たざるを得ないのが現実だ。ブックレットのレイアウトのテンプレートについては、インターネットで随時アップデートし、新しいレイアウトが提供されていくことになるという。
iPhotoにストアされるデータは画像データのみで、Exifには現時点で対応していない。なお、iPhotoに関しては、後日機会を見つけてより詳細な情報や使用感などをお伝えしたいと考えている。
□Macworld Conference&Expoのページ(英文)
http://www.macworldexpo.com/
□米Apple Computerのページ(英文)
http://www.apple.com/
□関連記事
【1月8日】【Macworld】新型iMacの細部に迫る!
~アップルブース先行公開レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0108/macw03.htm
【1月8日】Apple、15インチ液晶搭載の新型iMacを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0108/apple.htm
(2002年1月10日)
[Reported by 矢作 晃(akira@yahagi.net)]
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