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米Apple Computer、Dave Russell氏インタビュー
決められた規格のなかで、よりポータブルな製品を目指す


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グラファイトが加わって、3色から選べるようになったiBook
Courtesy of Apple Computer, Inc.

 MACWORLD Expo/Tokyo 2000では、メモリとハードディスクの容量が倍増した新しいiBookと、366MHzのG3プロセッサを搭載するグラファイトカラーのiBook Special Editionがそれぞれ発表された。
 開催にあわせて来日した米Apple ComputerのDave Russell氏にインタビューをする機会を得たので紹介しよう。同氏は、コンシューマ・モバイル製品のマーケティングディレクターで、Apple Computerが示す4つの製品カテゴリーのなかで、iBookが位置するコンシューマポータブルの製品を統括する人物である。



Q:新しいiBookとiBook Special Editionは日本で発表されましたが、発表の舞台にMACWORLD Expo/Tokyo 2000を選んだ理由を聞かせてください。

Dave Russell氏(A): 私たちは、製品の開発が完了すればできるだけ速やかに製品を発表して、出荷したいと常に考えています。今回はたまたまそのタイミングが、日本でのMacworld開催に合ったということです。Apple Computerは世界中に製品を出荷していますので、新製品の発表を必ず米国内で行なうとは限らないのです。
 今回、iBookが標準搭載するメモリを64MBにできたことや、Mac OS 9の日本語環境でiBookを使う準備がきちんと整ったという点でも、日本で発表できたことに意義があったと思います。もちろん米国でも、64MBのメモリ搭載についてはニーズがありましたけどね。

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iBook Special Editionを前にするDave Russell氏。終始にこやかにインタビューに応じてくれた
Q:iBookは、米国でコンシューマとエデュケーション(教育)というふたつの市場にフォーカスされた製品だと思いますが、まだ充分に成熟しているとはいえない日本の教育市場にiBookを浸透させることはできるのでしょうか?

A: 私のApple Computerでの仕事は、新しい製品のコンセプトを開発してエンジニアと一緒に製品を作りあげていくことです。ハードウェアの面から見れば、コンシューマ市場も教育市場も、求める仕様は90%ぐらいはオーバーラップしている部分があると考えています。
 例えば、耐久性のために本体をゴムでコーティングしていたり、学校で一日使うことができるように長いバッテリ寿命があったり、ワイヤレスネットワーキングがあったりするのです。なかでもワイヤレスネットワーキングは、これから学校でも家でも非常に重要なフィーチャーになると言えるでしょう。これは米国でも日本でも変わらないと思います。日本の教育市場における今後の成長にも期待をしていますよ。



Q:iBookの大きさについては日米間で意識の違いがどうしてもあると思います。先日サンフランシスコで開催されたMacworldから帰る航空機のなかで、米国人と日本人の客室乗務員の方に、持っていたiBookを見せて話を聞いたところ、デザインについては口を揃えて素敵と表現されていました。しかし、米国人の方は気になさらない大きさや重さも、日本人の方には大きく重く感じられていたようです。こうした意識の違いを踏まえ、日本のマーケットを考慮した製品を今後検討される余地は存在するのでしょうか?

A:現在は、そうした日本向けというべき製品の計画は一切ありません。しかし、ノートブックをどんどんポータブル化していくことには常に興味を持っています。やはりポータブルでは、軽く、そして小さくということがカギになりますが、iBookの形を他のパソコンのように四角にしてしまうことには興味がありません。それをやってしまうと、他の良い面がなくなってしまうからです。
 例えばパームレストの使いやすさや、美しい外観などですね。他にもアンテナのためのスペースとか、こうしたさまざまなことが阻害されてしまうのです。私は常にデザインが素晴らしく面白い製品を出したいと思っているわけですが、部品の小型化はこれからも進んでいきますから、将来もっと小さくなることはあるでしょう。

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ノースウエスト航空の機内にて。エコノミークラスのシートでは、iBookの液晶モニタを90度以上開くのはなかなか難しい
Q:私は航空機に乗るときは、エコノミークラスを利用することがほとんどです。しかし、コンシューマ向けとされるiBookは、その座席で開いて利用するにはかなり無理があります。プロフェッショナルあるいはビジネス向けとされるPowerBook G3なら、ビジネスクラスで開くことができればいいのかも知れませんが、やはりコンシューマ向けの製品なら、エコノミークラスでも不自由なく利用したいと考えているのですが……。

A: それは仰るとおりですね。反論できないと思います(笑)。しかし、現在使われている液晶ディスプレイは12インチで、これ以上は小さくできないと考えています。また、Apple Computerはグローバルな企業ですから米国や日本はもちろん、他の地域でも成功しなければなりません。
 例えばヨーロッパがあります。ヨーロッパでは多くの国がキーボードのスペックを決めてしまっていて、19ミリのピッチと設定しているのです。これは法律によって規定され10%しか小型化の余地がありません。つまり、キーボードとディスプレイのサイズだけを考えても、ヨーロッパ市場に関して言えばこれ以上小さくすることは難しいのです。ただ19ミリピッチのキーボードサイズは、多くの人が楽にキーボードを使えるサイズであることは間違いありません。それ以外の我々がコントロールできるところについては、もちろんいろいろな工夫をしているわけです。
 例えば、ご質問のように航空機内で利用するなら、CD-ROMやDVD-ROMが前ではなく横から出てくるような工夫があります。もちろん、私はモバイル製品のディレクターですから、大きさや重量だけといった点からだけではなく、常によりポータブルな製品を作ることを考えています。


Q:日本でもiBookのデザインは、非常に女性に好感を持たれているようです。iBookをデザインするうえで、例えばチームスタッフのなかの女性の意見などは、どのように反映されているのでしょうか?

A:Apple Computerは、インダストリアルデザインに関して、とても秘密主義であるということは皆さんご存じのことでしょう。もしかしたら、唯一、社内でデザインスタジオを持ってデザインをしている会社ではないでしょうか。これらの点で、フォーカスグループなどを使って評価をしたり、あるいはテストをしたりすることはできません。皆がそれを目にするときは、発表、出荷のときなのです。
 そうした意味ではやりにくいのかも知れませんが、会社の哲学としてトップのSteve Jobsをはじめ全てのスタッフが、チームは小さければ小さいほど効果的であると思っています。それは、セールスであろうとマーケティングであろうと、プロダクトデザインであろうと、サポートであろうがすべてそうだと思っています。大きい組織になると本当に素晴らしいアイディアであっても、組織のなかでそれが薄れてしまうと考えているわけです。デザインに関しても、個人の意見が製品のデザインに強く反映されることになります、つまり非常に少数の人の意見しか入らないことになりますね。
 ただ、スタッフは常に美しく機能的な製品を作ることに焦点をあてています。もちろん、チームには女性もいれば男性もいますよ。iBookについて言えば、グラファイトが発表されるまではカラーが多少女性的だったりしたかも知れません。しかし実際にデザインをしたのはイギリス人の男性で、このことが関係あるかどうかは分かりませんが、同性愛者でもありませんよ(笑)。


Q:グローバルに製品を出荷しているという点で、日本やヨーロッパの意見は、製品を作り上げるときにどういう形で反映されているのでしょうか?

A:方法として一番いいのは、自分が日本あるいは他の国に実際に出かけて行って、その国の人々のニーズに対してもっともっと耳を傾けることだと思っています。でも、今回来ただけでも、大きさのこととか、競合製品のこととか、有益なさまざまな情報を入手することができました。自分にとっても開発に役立てることができるようになるでしょう。もちろんiBookだけではなく、他の製品も自分のプロジェクトのなかで進行させているので、将来的にそうした製品の発表もあることでしょう。それに向けて、今後もさまざま意見を採り入れていきたいと思っています。

Q:最後に、これからのコンシューマ向けポータブル製品へのビジョンをお聞かせください。

A: 私個人のビジョンになりますが、もっともっとポータブルにしてもっともっと機能をあげる、これは当たり前のことですね。そしてテクノロジーの統合だと思います。例えばAirMacのようなワイヤレスネットワークにしても、今はほんの始まりにすぎません。例えば、現在は150フィート(約45メートル)の接続距離しかありませんが、いずれはローカルのベースステーションから何マイルも離れてワイヤレスのLANとWANが実現できるときがくるかも知れません。そして、インターネットでは次々と新しい機能がでてきています。ビデオやオーディオのオンデマンド規格などもたくさん登場していますね。それらを統合するデバイスや環境も必要になるでしょう。これらの新しいテクノロジーを、ポータブルのマシンからもなんら制限を受けることなく使えるようにしていきたいですね。

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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000216/apple1.htm

(2000年2月24日)

[Reported by 矢作晃]


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