レビュー

Maxwellアーキテクチャ「GeForce GTX 750/750 Ti」をテスト

 NVIDIAは2月18日、GeForce GTX 700シリーズのミドルレンジGPU「GeForce GTX 750」と「GeForce GTX 750 Ti」を発表した。今回、両GPUを搭載したビデオカードを借用できたので、ベンチマークテストでその実力を探った。

新アーキテクチャ「Maxwell」採用のミドルレンジGPU

 GeForce GTX 750とGeForce GTX 750 Tiは、既に発売されているミドルハイGPU「GeForce GTX 760」の下位モデルとして、GeForce GTX 700シリーズのミドルレンジを担うGPUだ。両GPUとも、Keplerの後継アーキテクチャであるMaxwellアーキテクチャを採用した新GPUコア「GM107」をベースとしている。製造プロセスは既存のKeplerアーキテクチャ採用GPUと同じ28nm。

 初のMaxwellアーキテクチャ採用GPUコアである「GM107」では、1つの制御ロジックで192個のCUDAコアを束ねていたKeplerアーキテクチャのSMX(Streaming Multiprocessor eXtreme)を見直し、128基のCUDAコアを4分割し、32個のCUDAコア毎によりシンプルな制御ロジックを割り当てた「SMM」を採用した。こうした改良により、MaxwellはKeplerに比べ、コアあたりの性能で1.35倍、ワットパフォーマンスでは2倍の性能向上を果たしたとされている。

Kepler比で2倍のワットパフォーマンスをうたうMaxwell
SMMのブロックダイアグラム

 GeForce GTX 750 Tiは、フルスペックのGM107コアを採用するGPUだ。640基のCUDAコアと40基のテクスチャユニットを備え、128bitのメモリインターフェイスで、5.4GHz相当のクロックで動作する2GBのGDDR5メモリと接続されている。自動オーバークロック機能「GPU Boost 2.0」をサポートするGPUコアは、ベースクロック1,020MHz、ブーストクロック1,085MHzで動作する。TDPは60W。

 下位モデルのGeForce GTX 750は、GM107コアが備える5基のSMMのうち1基分のユニットが無効化されたGPUコアを採用。512基のCUDAコアと32基のテクスチャユニットを備え、128bitのメモリインターフェイスで5.0GHz相当のクロックで動作する1GBのGDDR5メモリと接続されている。GPUクロックはベースクロック1,020MHz、ブーストクロックが1,085MHz。TDPは55W。

【表1】GeForce GTX 750/750Tiの主なスペック

GeForce GTX 750 GeForce GTX 750 Ti GeForce GTX 760
アーキテクチャ Maxwell(GM107) Maxwell(GM107) Kepler(GK104)
プロセスルール 28nm 28nm 28nm
GPU ベースクロック 1,020MHz 1,020MHz 980MHz
GPU Boostクロック 1,085MHz 1,085MHz 1,033MHz
Stream Processor 512基 640基 1,152基
テクスチャユニット 32基 40基 96基
L2キャッシュ 2,048KB 2,048KB 512KB
メモリ容量 1GB GDDR5 2GB GDDR5 2GB GDDR5
メモリクロック(データレート) 1,250MHz(5,000MHz相当) 1,350MHz(5,400MHz相当) 1,502MHz(6,008MHz相当)
メモリインターフェイス 128bit 128bit 256bit
ROPユニット 16基 16基 32基
TDP 55W 60W 170W

補助電源を必要としないGeForce GTX 750 Tiリファレンスボード

 今回、GeForce GTX 750 Ti搭載ビデオカードは、NVIDIAのリファレンスデザイン採用モデルと、ASUSオリジナル設計採用モデルの2機種を借用できた。ベンチマークテストは、NVIDIAのリファレンスモデルで行なうが、両製品の特徴をチェックしておく。

 GeForce GTX 750 Tiのリファレンスモデルは、ショートサイズの基板に2スロット占有のGPUクーラーを搭載しており、SLIコネクタなどは備えていない。リファレンスモデルの仕様で特徴的なのは、補助電源コネクタを省略している点だ。PCI Expressスロットからの給電のみで動作が可能というのは、TDPが60Wという低発熱かつ低消費電力なGeForce GTX 750 Tiの特性を活かした仕様と言えよう。

GeForce GTX 750 Tiリファレンスボード
ディスプレイ出力端子は、DVI-D×2、Mini HDMI×1
基板上に補助電源コネクタ用のパターンはあるが、コネクタは実装されていない

 ASUSオリジナル設計採用のGeForce GTX 750 Ti搭載ビデオカード「GTX750TI-OC-2GD5」は、GPUのベースクロックとブーストクロックを、それぞれ1,072MHzと1,150MHzに引き上げたオーバークロック仕様の製品だ。GPUクロック向上で性能を上げ、基板を覆う大型GPUクーラー搭載により静粛性と冷却性能を向上させた一方、6ピン補助電源コネクタによる給電を必要としている。

ASUS製GeForce GTX 750 Ti搭載ビデオカード「GTX750TI-OC-2GD5」。店頭予想価格は22,000円
ディスプレイ出力端子はDVI-D×2、Mini HDMI×1、ミニD-Sub×1
6ピンタイプの補助電源コネクタを1基搭載

 GeForce GTX 750搭載ビデオカードは、ASUSオリジナル設計採用モデル「GTX750-PHOC-1GD5」を借用した。この製品も、GPUのベースクロックを1,059MHz、ブーストクロックを1,137MHzに引き上げたオーバークロックモデルだが、ベンチマークテスト実行時はリファレンスクロック相当にダウンクロックしてテストを実施している。

 なお、GTX750-PHOC-1GD5もオーバークロック仕様のビデオカードだが、GTX750TI-OC-2GD5とは異なり、補助電源コネクタによる給電を必要とせず、PCI Express スロットからの給電のみでの動作が可能。

ASUS製GeForce GTX 750搭載ビデオカード「GTX750-PHOC-1GD5」。店頭予想価格は18,000円前後の見込み
ディスプレイ出力端子はDVI-D×1、Mini HDMI×1、ミニD-Sub×1
補助電源コネクタは備えていない

テスト環境

 それでは、ベンチマークテスト結果の紹介に移りたい。今回は比較用の製品として、NVIDIA製GPUの「GeForce GTX 760」「GeForce GTX 660」、AMD製GPUの「Radeon R7 260X」「Radeon R7 265」「Radeon R7 270X」を用意した。

GeForce GTX 760搭載ビデオカード「GTX760-DC2OC-2GD5」
GeForce GTX 660搭載ビデオカード「ASUS GTX660-DC2-2GD5」
Radeon R7 260X搭載ビデオカード「ASUS R7260X-DC2OC-2GD5」
Sapphire製のRadeon R7 265搭載ビデオカード
Radeon R9 270X搭載ビデオカード「ASUS R9270X-DC2-2GD5」

 今回用意したビデオカードのうち、オーバークロック仕様の製品であるGeForce GTX 750、GeForce GTX 760、Radeon R7 260Xについては、原則としてリファレンスクロックまでダウンクロックしてテストを行なっている。例外として、Radeon R7 260Xのみメモリクロックがリファレンスより300MHz高い6.8GHzでの動作となっている。

【表2】テスト機材
GPU GeForce GTX 750
GeForce GTX 750 Ti
GeForce GTX 760
GeForce GTX 660
Radeon R7 260X
Radeon R7 265
Radeon R9 270X
CPU Intel Core i7-4770K (3.5GHz/Turbo Boostオフ)
マザーボード MSI Z87A-GD65 GAMING
メモリ DDR3-1600 8GB×2
(9-9-9-24、1.5V)
ストレージ 120GB SSD (Intel SSD 510シリーズ)
電源 Antec HCP-1200 (1,200W/80PLUS GOLD)
グラフィックスドライバ GeForce 334.69 Driver GeForce 332.21 Driver Catalyst 14.1 Beta1.6
OS Windows 8.1 Pro 64bit

3Dベンチマークテスト

 それでは、3Dベンチマークテストの結果を紹介する。

 実施したテストは、BATTLEFIELD4(グラフ1)、3DMark - FireStrike(グラフ2、3)、3DMark11(グラフ4、5)、Alien vs. Predator DX11 Benchmark(グラフ6)、3DMark Vantage(グラフ7、8)、3DMark - Cloud Gate(グラフ9)、3DMark06(グラフ10、11)、3DMark - Ice Storm(グラフ12)、ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編(グラフ13)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ14)、PSO2ベンチマーク(グラフ15)、Unigine Heaven Benchmark 4.0(グラフ16)。

 BATTLEFIELD4では、DirectX 11時は、描画設定を中に設定した際はGeForce GTX 750 TiがRadeon R7 265を上回り、GeForce GTX 750もRadeon R7 260Xの9割程度のFPSを記録した。描画設定を最高にすると、GeForce GTX 750 TiはRadeon R7 265に逆転されるものの、Radeon R7 260Xより16%ほど高いFPSを記録しており、競合製品となるRadeon R7 260Xに対して優位を保っている。

 もっとも、AMD独自APIのMantleを使用した場合、同一の描画設定ではRadeon R7 260XがGeForce GTX 750 Tiを上回っている。GeForce GTX 750 TiがDirectX 11では優位でも、Mantleの普及次第ではRadeon R7 260Xに逆転されることもありそうだ。

【グラフ1】BATTLEFIELD4 DirectX 11/Mantle[1,920×1,080]

 そのほかのテストを見てみると、GeForce GTX 750 Tiは、下位モデルのGeForce GTX 750より1割強ほど高いスコアを記録し、競合製品のRadeon R7 260Xとは、テストタイトルによって概ね10%程度の差で優劣が逆転する結果となっており、Radeon R7 265には及ばない。

 得手不得手が際立つような結果こそみられないが、敢えて挙げるとすれば、3DMark06やUnigine Heavenベンチマークでアンチエイリアシングを有効にした際のスコアの落ち込みが比較的大きい。GeForce GTX 750 Tiが86.4GB/sec、GeForce GTX 750は80GB/secと、ミドルレンジGPUとしては比較的細いメモリ帯域がボトルネックとなっているようにも見える結果だ。

【グラフ2】3DMark - Fire Strike[Default/1,920×1,080ドット]
【グラフ3】3DMark - Fire Strike[Extreme/2,560×1,440ドット]
【グラフ4】3DMark11[Performance/1,280×720ドット]
【グラフ5】3DMark11[Extreme/1,920×1,080ドット]
【グラフ6】Alien vs. Predator DX11 Benchmark[1,920×1,080ドット]
【グラフ7】3DMark Vantage[Performance/1,280×1,024ドット]
【グラフ8】3DMark Vantage[Extreme/1,920×1,080ドット]
【グラフ9】3DMark - Cloud Gate[Default/1,280×720ドット]
【グラフ10】3DMark06[1,280×1,024ドット/ Default]
【グラフ11】3DMark06[1,920×1,080ドット/8x AA/16x AF]
【グラフ12】3DMark - Ice Storm[Default/1,280×720ドット]
【グラフ13】ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
【グラフ14】MHFベンチマーク【大討伐】[DX9]
【グラフ15】PSO2ベンチマーク(1,920×1,080ドット/フルスクリーン)
【グラフ16】Unigine Heaven Benchmark 4.0[DX9/1,920×1,080ドット]

消費電力比較テスト

  続いて、サンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を利用して測定した消費電力を比較する。

【グラフ17】システム全体の消費電力

 アイドル時の消費電力は、GeForce GTX 660とRadeon R9 270Xがやや高めとなっているが、それ以外の製品については約40Wでほぼ横並びの結果となった。アイドル時の消費電力については、大きな差は無いと考えても良いだろう。

 ベンチマークテスト実行時の消費電力は、Maxwellアーキテクチャ採用の2製品が100〜120W台と、抜きん出て低い結果を記録した。それに次ぐRadeon R7 260Xの消費電力は、GeForce GTX 750 Tiより16〜27W高い結果となっており、Keplerアーキテクチャの2倍のワットパフォーマンスを実現したというMaxwellアーキテクチャの電力効率の高さが伺える。

消費電力の低さが際立つMaxwell

 今回、初のMaxwellアーキテクチャ採用GPUであるGeForce GTX 750とGeForce GTX 750 Tiのテストを通して、最も印象的だったのは両GPUのワットパフォーマンスの高さだ。パフォーマンス的にはRadeon R7 260Xと抜きつ抜かれずな結果を残しながら、このクラスのGPUで20W前後の消費電力差をつけるというのは相当なものだ。

 実パフォーマンスで傑出しているわけでは無いが、補助電源供給を必要とせず、これだけのパフォーマンスを発揮できるというのは特筆に値する。上位モデルのGeForce GTX 750 Tiのパフォーマンスは、描画設定を調整すればBATTLEFIELD 4のような最新FPSゲームをフルHD解像度でプレイ可能な域に達しており、ゲーミングPCの小型化や省電力化の可能性を広げるGPUであると言える。

 競合となるRadeon R7シリーズには、Mantleによってパフォーマンス向上の余地という強みがあり、MaxwellベースのGeForce GTX 750シリーズにはワットパフォーマンスという強みがある。それぞれにはっきりとした個性がついたことで、ミドルレンジGPUの競争はより面白くなりそうだ。

(三門 修太)