レビュー
「ALIENWARE Alpha」長期レビュー【4回目】
~ホームストリーミング機能でWindowsタブレットも3Dゲーム
(2015/4/4 06:00)
前回のレビューから間が開いてしまったが、「ALIENWARE Alpha」の長期レビュー第4回目となる今回は、実際のゲームをプレイしてみた感想、そしてSteamのホームストリーミング機能を使用してみた感想をお伝えしよう。
PC向けのゲームをTVでプレイする
ALIENWARE Alphaの仕様を見て既にお気付きの方もいると思うが、同機のディスプレイ出力インターフェイスはHDMIのみとなっており、DVI-DやDisplayPort、ミニD-Sub15ピンと言ったPCでは一般的なディスプレイ出力を備えていない。これまでのレビューの繰り返しとなるが、本機はPCがベースとなっているものの、やはりTVと接続して、大画面でゲームを楽しむための“ゲーム機”なのである。
もちろん、HDMIを装備したディスプレイに本製品を接続して楽しむこともできるのだが、PC用のディスプレイは一般的にスピーカーが内蔵されていないか、内蔵されていたとしても音質が貧弱なものが多く、出力はヘッドフォンとなることも多い。一方ALIENWARE Alphaは光デジタルしか音声出力を備えていないため、対応スピーカーを使用するか、別途DACが必要となる。そういった意味でも、TVとの接続が一番お手軽だ。
そんなわけで、筆者もTVでPCゲームを楽しむことになったわけだが、プレイする上で気になった点がいくつかある。
1つ目は、多くのゲームのUIがTVで楽しむことに最適化されていない点だ。PCゲームはやはりPCゲームだけあって、メニューやオプションで表示されている文字がディスプレイから約40cmの距離に最適化されていることもあり、2~3m前後離れているTVだと認識しにくい。
筆者の視力は0.3と決して良くないのだが、それでもXbox 360でプレイするゲームの大半の文字は読める。Xbox 360のタイトルはTVに特化されているので、当然と言えば当然だ。しかし一般的なPCタイトルをTVに映し出すと、視力を0.8程度に矯正するメガネをかけても、目を凝らさないと読みにくい。
2回目のレビューで紹介した通り、Steam自身は、TVに特化したUIの「Bic Picture」モードを備えており、またSteamの開発元であるValveは、2015年11月にTVでもストリーミングでゲームがプレイできる小型のセットトップボックス「Steam Link」を投入すると予告している。まさにPCゲームをリビングのTVで楽しむ環境が整いつつあるといった状況であるが、PCゲームタイトルもTVに特化したUIモードを備える必要が出てきたと言えるだろう。
ポピュラーなタイトルはストレスなし
それではいよいよゲームをプレイしてみよう。まず試したタイトルは購入後ずっとプレイせず放置していた「Tomb Raider」である。
これまでプレイしなかった理由は、筆者の家でメインPCのディスプレイとして使っているデルの30型液晶「3008WFP」でプレイすると“3D酔い”が激しかったからである。ところがこれをALIENWARE Alphaとリビングにある42型TVでプレイすると3D酔いをしない。
おそらくディスプレイまでの距離と、それによって変わる視野の違いの影響だと思うのだが、とにかくこれまで10分程度のプレイで気持ち悪くなった酔いが、4~5時間の連続プレイでもまったく気にしなくなった。この3週間、ちょこちょこプレイしているのだが、楽しくてつい2回クリアした。
前回のレビューでもお伝えした通り、ALIENWARE Alphaに搭載されるCPUとGPUは今となってはミドルクラス以下のものだ。そこで、ゲームの画質設定と性能の関係も気になるところである。Tomb Raiderに関して言えば、さすがにUltimate設定では30fpsを割ってしまい快適ではなかったが、1個下となるUltraでは、平均40fps程度で快適にプレイできた。
Ultimateで自動的にオンになる「TressFX」(髪の毛がサラサラになって風になびく)エフェクトは、本来AMD向けの実装であり、快適でないのは致し方ないところだろう。
続いてはALIENWARE Alphaにダウンロード権が添付しているレーシングゲーム「GRID 2」をプレイしてみた。こちらはAMDがRadeon HD 6000シリーズやAPUにバンドルすることで一躍有名となった「DiRT 2」と同じ、CODEMASTERSが開発したレーシングゲーム。DiRTシリーズはオフロードが中心のレースゲームだが、GRID 2は封鎖された市街地での走行がメインだ。
こちらは、グラフィックス設定を「最高」に設定しても80fpsを維持し、非常に快適にプレイできた。もちろん、Xbox 360コントローラならではのフォースフィードバックがあり、車同士のぶつかり合いや路面の状況が、振動で伝わってくる。グラフィックスもリアルであり、没入感が高い。
今回、MMORPGやFPSと言ったタイトルをプレイしていないが、これらのタイトルはキーボードが必須と言ってよく、ALIENWARE Alphaを使いリビングでプレイするのはあまり適さない。
ECSのLIVAやWindowsタブレットで1日中ゲームに浸る
筆者はALIENWARE Alphaを試用して行く段階で初めて知ったSteamの機能がある。それが「ホームストリーミング」だ。
これは、同じ家庭内ネットワークにある複数のPCそれぞれにSteamをインストールしておくことで利用可能な機能。ネットワーク内のいずれか1つのマシンにプレイしたいゲームをインストールしておけば、それをリモートで映像やコントロール操作をストリーミングし、そのゲームがインストールされていないほかのマシンプレイできる機能だ。
つまり、NVIDIAで言うところの“GRIDゲームストリーミングサービス”の家庭内ネットワーク専用版、またはタブレット/ポータブルゲーム機「SHIELD」向けのGAMESTREAM機能に相当する(こちらはいずれもクライアントはSHIELD必須だが)。ゲームを実際に実行するサーバーはある程度性能が必要とされるが、クライアントはローエンドでも問題ない。
利用方法は簡単で、まずはホストとなるマシンと、ゲストとなるマシン2台ともに共通のSteamアカウントでログインして(実は、ちょっと前までは同じアカウントでログインすることができなかったのだが)、ホームストリーミングの設定画面で「ストリーミングを有効にする」を選ぶ。するとクライアント側のライブラリ画面で、インストールされていないゲームの場合、「プレイ」のボタンが「ストリーミング」に替わるので、それをクリックするだけだ。
今回試した筆者宅のネットワーク環境を紹介しておくと、木造3階建ての一軒家で、1階にホストとなるALIENWARE Alphaを設置し、450Mbps対応のNECアクセステクニカ製IEEE 802.11nコンバータ「AtermWR9500N」を通して、2階のHuawei製ルータ「HG8045D」と接続。ゲストはECSの小型デスクトップ「LIVA」で、これも1階に設置。ゲストはASUSの無線中継器「RP-AC52」を介して、150Mbpsの11nで接続している。
つまり、ホスト→有線LAN→11n 450Mbps→ルータ→11n 150Mbps→ゲストという、お世辞にも低レイテンシ/広帯域ネットワークとは言えない環境だったのだが、ゲームの解像度を1,280×800ドット、画質を“標準”にしたところ、たまにカクつく以外は、意外と快適にプレイできた。画面は多少アラがあるのだが、反応に関しては非常によく、気持よくプレイできる。
なお、ALIENWARE Alphaと同じGigabit EthernetのHub(AtermWR9500N)を介する、筆者がメインで使っているCore i7-4770K+Radeon HD 290Xのデスクトップとも接続してみたが、こちらは画質を高にして、フルHDにしても全く問題ないレベルであった。
Steamの設定で、パフォーマンスに関する情報をリアルタイムで表示できるのだが、無線LAN経由で接続した場合は概ね50ms以下の程度だった。一方、Gigabit Ethernetで接続した場合は30ms以下。先述の通り無線ネットワークは非常に遠いルートを介しているわけだが、入力がシビアなFPS以外は、ほぼ問題なくプレイできる遅延と言えるだろう。
この機能を使えば、例えば一軒家ではALIENWARE Alphaのようなマシンをリビングルームに置いて常時起動しておき、各部屋ではLIVAのような低価格PCでハイエンド3Dゲームをプレイする、ワンルームマンションでも、8型のWindowsタブレットで寝っ転がりながら、またはトイレに籠もりながら(?)ハイエンド3Dゲームをプレイする、と言ったスタイルが可能になる。つまり“1日中ゲームにどっぷり浸かりたい”ユーザーには持ってこいの機能と言えるだろう。
さらに、Steamからダウンロードできない非対応ゲームも、Steamのライブラリに追加しておけば、同様のストリーミング機能が利用できるのがポイントだ。極端な話、WordやExcelと言ったデスクトップアプリも、Steamのライブラリに追加さえできればストリーミングで操作できる。これならば、例えばALIENWARE Alphaはコントローラだけ接続しておき、キーボードやマウス操作が必要なMMORPGやFPSなどは、別のマシンからストリーミングで利用する、といったことも可能になる。
なお、ストリーミングの場合、ホストで実際のアプリが走るので、その間ホストはほかの操作ができなくなる(そのストリーミング中のゲームの操作は可能)。ホストの音量は自動的にミュートとなり、これはなかなか便利なのだが、非対応ゲームがウインドウで起動する場合、稀にウインドウに切り替えに失敗することもある。こういう場合はフルスクリーンに設定して対処したい。
なおSteam開発元のValveは、11月にこのホームストリーミングの仕組みを利用した49.99ドルのセットトップボックス「Steam Link」の発売を予定しているが、これが日本でも発売されるのであれば、家庭内におけるPCゲーム環境は大きく変わると言って良いだろう(ただし、Steam Linkがキーボード/マウスをサポートしているかどうかは不明)。
散らばったゲームを1つにまとめられる
Steamは、複数のマシンに複数のゲームをオンライン経由でインストールでき、さらに管理できるプラットフォームとして脚光を浴びたのだが、ホームストリーミング機能の実装によって、(少なくとも家の中で1人がプレイする分には)複数のマシンにプレイしたいゲームを複数インストールする必要性がほぼなくなったと言えるだろう。
特にSSDやeMMCなど、小容量のストレージしか搭載されていないタブレットやノートPCでは有用であり、家の中のゲームライブラリを1カ所にまとめられるという意味でもスマートだ。
そんなわけで、当然ALIENWARE Alphaに自分が持つ全てのゲームをインストールしてプレイしたいという要望が挙がってくるわけだが、最下位モデル標準の500GB HDDでは、いささか容量と速度が心許ない気がする。そんなわけで次回は、ストレージ交換や増設も含めた“改造編”をお届けしたい。