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7mm厚で容量1TBを実現した2.5インチHDD「WD10SPCX」を試す

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 WD(ウエスタン デジタル)から、7mm厚で1TBの容量を実現した2.5インチHDD「WD10SPCX」が発表となった。日本国内でも近日中に小売販売される予定となっている。それに先立って製品を入手したので、ベンチマークを中心としたレポートをお届けしたい。

 先日、容量500GBで5mm厚の「WD5000MPCK」のレポートをお届けした。さまざまな独自技術を適用し、わずか5mm厚で従来の2.5インチHDDと同等の性能を実現した特徴は、すでにレポートした通りだ。

 WD10SPCXもこの薄型化技術を適用し、7mm厚でありながら2枚プラッタの内蔵を実現。500GBプラッタを採用することで、薄さと1TBの大容量を実現した。具体的には、超小型の基板と防振/静音性を上げる表面のシール、そして高いヘッド精度と静音性を実現するデュアル・ステージ・アクチュエータの採用などである。モーターの軸を上下から支えるタイドシャフト(Tied-Shaft)の採用は謳われていない。

 また、WD5000MPCKがSFF-8784と呼ばれる特殊なエッジコネクタを使用していたが、本製品は従来の2.5インチHDDと互換性があるSATAと電源コネクタを採用した点も見逃せない。これにより、7mm厚に限られたPCで大容量HDDへの換装を可能とした。

 主な仕様は、回転数が5,400rpm、バッファ容量が16MB、インターフェイスがSATA 6Gbps、消費電力がリード/ライト時1.7W、アイドル時0.57W、スタンバイ/スリープ時0.18W、騒音がアイドル時20dBなどとなっている。

7mm厚の筐体
コネクタは一般的なSATA HDDと互換性がある
シャーシに穴が開いており、将来的に表裏に基板を設けて繋げることも考慮しているのかもしれない
WD5000MPCKと同様、超小型の基盤を採用
重量は実測で89gだった
左から9.5mm厚製品、本製品、WD5000MPCK
5mm厚のWD5000MPCKと比較すると2mm厚い
シールも「Slim」か「Ultra Slim」かの違いがある

パフォーマンステスト

 それでは実力を見てみよう。テスト環境は下記の通り。前回と同様SATAインターフェイスはオンボードの3Gbpsポートだが、これがボトルネックになることはないだろう。

【表1】テスト環境の自作マシン
CPUCore i7-3770K(3.5GHz)
メモリDDR3-1600 16GB
マザーボードASRock Z77 OC Formula
ストレージPlextor M5P 512GB
ビデオカードGeForce GTX 680
OSWindows 7 Ultimate(64bit)
接続SATA I/F3Gbps

 まずはCrystalDiskMark 3.0.2 x64(テストデータサイズ1,000MB)での結果。シーケンシャルリードは119.3MB/sec、同ライトは118.2MB/sec、512KBランダムリードは44.1MB/sec、同ライトは60.26MB/sec、4Kランダムリードは0.554MB/sec、同ライトは1.606MB/sec、4K/QD32ランダムリードは1.579MB/sec、同ライトは1.709MB/secとなった。

 5mm厚のWD5000MPCKと比較するとやや高速。ほぼ誤差と捉えることもできるが、全ての値で上回っているので、これは性能や騒音に対するチューニングの差と見ることもできる。1世代前の375GBプラッタ採用製品と比較すると差は歴然で、高速だ。

WD10SPCXの結果(100MB)
WD10SPCXの結果(1,000MB)
WD5000MPCKの結果(1,000MB、参考)

 一方、HD Tune Pro 5.50の結果を見ると、リードは最大115.9MB/sec、ライトは最大112.3MB/secを記録。終盤はそれぞれ53MB/sec、51.4MB/secと約54%低下した。WD5000MPCKと同様、1プラッタを内周までフルに使っているので、当然の結果である。また、CrystalDiskMarkとは対照的に、こちらは全ての値で下回った。

 アクセスタイムはリードが18.3ms、ライトが16.1msと、これもWD5000MPCKと比較するとわずかに高速であるが、誤差の範囲かもしれない。また、ライトに対してキャッシュが効き、一部アクセスタイムが高速な点も同様である。

WD10SPCXのリード結果
WD10SPCXのライト結果
WD5000MPCKのリード結果
WD5000MPCKのライト結果

 温度は室温25℃の環境で30℃前後(バラック状態)で、こちらも低発熱。騒音に関してはWD5000MPCKと比較するとシーク音がやや目立つが、よほど静かな環境でなければ聞こえないレベル。オフィスなどではまったく聞こえないと言っていい。

ThinkPad X121eのシステムドライブとして使ってみた

 せっかくなので、7mm厚のHDDしか装着できないレノボの「ThinkPad X121e」(AMDモデル、Windows 8にアップグレード済み)に装着し、データを移行して使ってみた。このPCの初期HDDとしてHGSTの「HTS543232A7A384」が装着されており、容量は320GBだった。筆者は128GBのSSDに換装して使っていたが、アプリやデータが肥大化するため容量が足りない。しかし256~512GB程度のSSDを買ってしまうと、本体価格(実質27,800円)よりも高価になるため、それでは本末転倒になってしまう。

【表2】試用環境のThinkPad X121e
CPUE-450(1.65GHz、ビデオ機能内蔵)
メモリDDR3-1066 8GB
ストレージWD10SPCX
OSWindows 8 Pro(64bit)
接続SATA I/F3Gbps

 SSDと比較すると速度面では劣るが、それでもWD10SPCXは初期のHTS545032A7E380よりは高速だし、大容量も手に入るということで、試してみようと思った次第だ。

換装を行なったThinkPad X121e

 結論から言えば、思ったよりも快適。もちろんSSDと比較すればレスポンスは遅いが、Windows 7や8ではSuperFetchをオンにしておけば、よく使うアプリがプリロードされるので、ものすごく起動時間が遅いというわけではない。Windows 8の起動時間も、デフラグをちゃんとした上で、「SuperWin Utilities 3」 などを使ってサービスの遅延起動などを適用させておけば30秒程度で済む。

 筆者は全てのマシンでSSDに換装済みで、HDD環境は今回がしばらくぶりだが、過去に蓄積したノウハウなどを駆使すれば特に不自由なく使える感じだ。何より1TBの大容量は、モバイルノートなど限られた拡張スペースの中では特に心強い。また、書き込み回数がほぼ無制限な点も、やはり安心感がある。

 とは言え、モバイルだからこそ振動や衝撃など、HDDに与える影響も考慮しなければならない。ThinkPadならば「ハードディスク・アクティブプロテクション・システム」という対策ソリューションがあるが、そうでない場合は取り扱いに注意する必要があるだろう。

 なお余談だが、SSDからHDDに換装するというユーザーは少ないと思われるが、そのままコピーすると、Windows 8ではHDDをSSDとして認識したままとなり、Trimがオンでデフラグができない場合がある。そのような現象が起きた場合、エクスペリエンスインデックスを再評価すれば、HDDとして再認識してくれるようである。

メイン用ノートPCにも好適

 WD10SPCXは7mm厚ながら2枚プラッタの内蔵を可能とし、HDDの薄型化と大容量化という相反する要素を両立させた製品だ。薄型ノートの採用において、WD5000MPCKより2mm厚い点はマイナスポイントと言えるが、一般的なSATAコネクタで従来製品との互換性もあり、換装にも向く。

 時代はデスクトップPCからノートPCに移っており、多くのユーザーはデスクトップPCではなくノートPCだけを所持し、それを「母艦」として使っていることだろう。ノートPCが母艦である以上はHDDの増設が効かず、当初から大容量モデルを選択するか、既存のストレージを換装するかの二択を迫られる。特に薄型ノートを選んだユーザーは選択肢が少ない。本製品は、1ドライブで母艦PCとしても必要十分な容量を有しており、採用が進めば、今後ますますノートPCのシェアが高まるだろう。

(劉 尭)